ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか   作:もんもんぐたーど

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《ここに百合の花を挿入》


第18話

ダンジョンに駆逐艦を求めるのはまちがっているのだろうか18

 

ふぁぁ……。

おはようございます。

今日はアイズお姉ちゃんが遠征に行って7日目になります。あ、密造回復薬(バケツ)は一応昨日完成しました。まだ材料費を削減できる場所があると思いますが効果はバケツに相当する物になっているので一応完成なのです。

 

完成までには小説数冊分の壮大な物語があるかもしれませんが今回は省くとして、とうとう日程に折り返しであるところの7日経ったことでお姉ちゃんの抱擁を求めて身体が疼き始めました。

 

というのは半分は冗談で発作が出ているわけではないですが、なんか具合が変調しているのは間違いないので、明日の夜は延命策としてロキを抱き枕代わりに寝ようと思います。

 

「いってきますね」

 

「おう、気をつけてな-。」

 

2日目からちゃんとロキの返事を確認してからホームを出ることにしたので多分同じ事は起こらない、はずです。

 

今日は朝食の前にまずダンジョンへ潜ります。今日は25階層まで。一応日帰りは可能なのですが、収集予定の素材の種類や量が多いので明日中に帰る予定になっているのです。食料は常に炊き出し出来るくらい持ち歩いているので食料以外のものを整理しておいてあります。

 

「♪」

 

ダンジョンはダメージを負うとモンスターを生み出すことをやめて自身の修復を優先するので人が居ないタイミングで縦にぶち抜いて階層を移動すると17階層まではあっという間です。

 

18階層までぶち抜くのは抜いた後高いところに放り出される上に18階層の空を破壊しながら落下するので滅茶苦茶目立つと思われるのでやりたくないのです。

 

サクッと階層主(ゴライアス)を轢いてドロップを回収しつつ18階層で一休み。

 

 

突撃姿勢で凝り固まった身体をほぐしながら朝食の準備をする。

 

ちょうど良い森の近くで水辺の空いているところがあったのでサバイバルキット的な何かを展開して火をおこしたりご飯を炊いたり串に刺したお魚を直火焼きにしていく。

 

こういう場所でご飯を食べるなら普段の料理のような味付けではなく粗塩だけの素材を活かした(てをぬいた)料理をするのもまた一興なのです。

 

簡易テーブルの上の食器の上で魚を箸でほぐしながら狙い通りにお焦げのついたご飯を食べ進める。良いことを思いついたとばかりにたくあんを取り出しサバイバルナイフで適量切り分ける。ちょっと厚めに切ったたくあんは食べ応えがありよく噛むことで食欲と胃液が増してくる。刺激が脳を活性化し、咀嚼によって消化がよくなり健康寿命が伸びる。みんなで食べる食事とはまた違った、一人飯特有の孤独な満足感、自然の中の抱擁。

 

"モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず 自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで・・・"

 

お姉ちゃんとか鎮守府のみんなで食事を食べることが多かった時には半分も理解していなかったあの漫画の台詞を思い出す。ゴローさんの気持ちになるですよ。

 

汁物が足りない。そこに気づいた私はご飯が炊けて空いたスペースに火にかけた小鍋を用意する。中には水と油揚げとわかめ。具材に火が通り一煮立ちしたあと、一度火から下ろして味噌を溶かし入れる。沸騰しないように位置を調整しながら混ぜ最後に沸騰直前まで加熱してネギを入れ、火から下ろす。

 

「ふぅーふぅー。……あぁ…。」

 

ご飯とお魚を脇に出来立てのお味噌汁をいただく。きっと日本(じん)はこの汁物から逃れることが出来ないのです。身体の方もあっつあつの汁によってエンジンが掛かってくる。外気にさらされて程良い温度になっていくお味噌汁を今を好機とばかりにいただきつつ、残すところ僅かとなったご飯とお魚にも箸をのばす。

 

完食

 

満足してしまったのです。お腹いっぱいですからね。満足したなら仕方ないのです。

 

諸々を片付けながら今日の予定と今の時刻をつき合わせる。予定より若干早いので森を歩いて抜けられると考える。全力で移動すれば一瞬だけど食後でもあるし時間があれば歩きたいと思っていたので好都合なのです。

 

今回は25階層までといっているのですがほとんどの時間を19から24階層での収集にあてる予定なので25階層にいる時間はかなり短いと思うのです。諸事情で一度24階層で軽く収集して各種の障害に備えてからいこうと思うので階層抜きは程々にしつつ上手いことやっていきたいのです。

 

ーーーー

 

ロキ・ファミリア遠征部隊は51階層および50階層において未知のモンスターと遭遇し依頼であったものの確保には成功したものの装備を中心に多数の物資を消失し新規階層の開拓は失敗して帰路に就いてる。帰路2日目、ダンジョンに潜り始めてから7日目になっていた。

 

当然誰か一人の問題ではなかったし未知のモンスターの攻撃で装備や物資だけでなく少なくないけが人が出てしまったので無理も利かない状況だった。こういう想定外が起こるダンジョンでは階層攻略はロキ・ファミリアのような大きなファミリアでも確実に成功するわけではない。そういう事実を再認識させられた遠征になった。

 

「流石にここではイレギュラーはなさそうだね。」

 

先の戦闘で自慢の専用装備(オーダーメイド)を失ったアマゾネス、ティオナ・ヒリュテが呟く。前方の警戒として組まされた彼女は持ち前の五感の良さを存分に発揮して警戒に当たっていた。

 

「そりゃ、何度もあんなのに当たるかってぇの。次あれが来たら一人で逃げるからな。」

 

相方として組まされた狼人、ベート・ローガも同様に優れた五感で警戒を怠ってはいないもののテンションは下がり続けているようだった。

 

「へぇ、そんなこと言っちゃうんだ~。真っ先に前に出てアイズに良いとこ見せようとしたおおかみくんが。」

 

「うざい。黙って周り見てろ。」

 

ベートは先のキャンプ地防衛でアイズのエアリアルを載せて先陣をきったは良いもののここぞというタイミングでアイズが見ておらず若干滑っていた。そんな残念狼は自由人アマゾネスと組むとこうなることを予想していて……、不幸にも的中した事でより一層気怠いといった雰囲気を醸し出していた。

 

「ん?あれ、新人の……。」

 

ティオナの視線の先には一人の少女が見える。ダンジョンのこの階層にいるにはどうも心許ない容姿の彼女が、そこにいた。

 

「いなづまか。」

 

茶髪に比較的低い身長、セーラー服という珍しいタイプの服……背中を覆うように存在する固有武器、そしてレベル5。いろいろな要素を詰め込んだ謎多き存在は手際よく素材を判別し収集しているようだった。

 

「え、ベートが名前覚えてるなんて……。」

 

「少なくとも今の装備のないおめーよりは強いから安心しろ。」

 

ここ24階層はクエストによく出てくる素材の収集階層ではあるものの素材収集自体かなり大変な仕事(クエスト)であり、少なくともソロでやるものではなかったような、あとベートに名前を覚えられるなんて、と思考を展開するティオナ。

こういうこともするのかと一種の関心を持ってみるベート。

 

2人と1人の距離は徐々に詰まり……、二人が声を掛ける前に彼女は振り返った。

 

「どちら様なのです?」




制服を捲りたい

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