ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているだろうか 作:もんもんぐたーど
ダンジョンに駆逐艦を求めるのは間違っているのだろうか15
実のところ初撃はいなづまが守りきるのではなくレフィーヤが防御を抜くことに賭けていたお姉ちゃんです。
と言うのも単純にいなづまの場合防御を抜かれてもそこそこ無事というかなんというか、普通に戦闘を続けられるので普段通りに普通に受けちゃうんじゃないかと思っただけでいなづまを信じてないわけではない。ほんとだよ?まあ、詠唱完了から魔法着弾まで1秒もないけど、いなづまなら防御まではできるって話なんだけど。多分回避はしないだろうとは思ってた。あのルールなのにね。
「えへへ……。」
「レフィーヤ、本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫です。」
「……。」
私の背中にはエルフの魔導師、レフィーヤが乗っていて彼女の部屋へ移動中。なんだか理由もなくテンションが上がってるみたいだけど本当に大丈夫なのか心配。私の隣を歩く妹(かわいい)こといなづまもレフィーヤについて心配しているようだった。でも、多分今のことじゃない。
「レフィーヤさんは遠征、行くんでしたっけ?」
いなづまのわざとらしい質問に私は内心動揺する。レフィーヤは遠征の前線に出ることが決まっている。私からは本人に言わないよう言われているので言っていないが、フィンとリヴェリアの判断であるしいなづまも聞いているはずなのにその質問。つまり答えるべきは
「行くけど……。それがどうかしたの?」
「今回の遠征は少なくとも51階層までは確実に潜ると思うのですが、本当に……いえ、えっとレフィーヤさんは強くなりたいですか?」
いなづまはぎりぎり自然に言おうとしていた内容を飲みこむと質問を変えた。それは私が居るときに敢えてしたかのような、私も巻き添えを食らう広範囲攻撃。妹からでなくとも効く。妹だからより強烈に効いてる。
「……っ。もちろん、強くなりたい。今のままじゃ……。」
背中から感じる焦りと震えに自分の事かのように心拍数が上がる。
「焦らなくても良いのですよ?」
思わず足が止まる。本当にレフィーヤに向けて話しているの?実はお姉ちゃんにだったりしない?
そんな心配の胸中を知ってか知らずかいなづまは続けた。
「急がば回れとも言うのでステータスの上昇だけではなくてレベル3のうちにつぶせる弱点を潰していくことも意識するとランクアップにもいくらか貢献するのです。ここには心強い
ニコッと笑う彼女の
「でも、このままだときっとレフィーヤさんは後悔するんじゃないかなぁって。」
「っ!?」
「レベル3で基礎的な内容を繰り返すまでも無いと思うので、遠征までいっぱい模擬戦しましょうねっ?」
さっきのレフィーヤとの模擬戦では放たれていなかった強者のオーラにレフィーヤの心拍数が跳ね上がりきゅっと縮こまるような錯覚に陥る。ここで、最後の最後でサクッと威圧するのがいなづまの常套手段だとここ数日で学んだ。
いなづまが言うには"なんかいつも通りお話しすると和みがちなので大事なお話の時は戦場の空気感を思い出して貰おうかと……怖い、ですか?"と言うことだったのでその時は思いっ切り撫で回しておいた。全然怖くないよ。かわいいだけだよ。
「う、うん。そうしよっか。」
だけど初見なら相当な威圧感だとおもう。ギャップ萌えならぬギャップ威圧感。レベル0からレベル5に一瞬で化けると言う意味では絶望的な威圧感を感じる事になるのかな。
それも含めていなづまはかわいいのだけどね。同格の存在感で済むと言う点で自分がレベル5に至ってて本当に良かったと思う。ギャップが楽しめるから。
「それじゃ短い間ですがよろしくお願いしますね。」
最後にそれだけ言うといなづまはレフィーヤから目を離し半歩前に出る。この時点で威圧感はもう無い。するとレフィーヤは張っていた緊張の糸が切れたのか力が抜けてぐったりとした。
「すぅ……。」
「ふふっ、寝ちゃいましたね。」
レフィーヤの寝息を確かめたいなづまは私と話すのにちょうど良い位置として真横に移動してきた。お姉ちゃんセンサーでいなづまの笑顔を判定……
結果、ポジティブ90%ネガティブ10%
ネガティブは僅かに嫉妬……?レフィーヤを
「いなづまもおんぶ、されたいの?」
「っ、あ、う……はぃ……。」
無意識の嫉妬だったのか視線をレフィーヤと私と床でローテーションしながら、小さく肯定した。一瞬呆けた表情から沸騰するように赤く染まる様は妹でなくともかわいいし妹なので尚更かわいいと言うこと(本日2回目)。
今触れればきっといつもより何割か増して暖かい体温を返してくれる妹は、無意味にピンと伸ばされた左手、自身を落ち着かせようと彼女の慎ましやかな可愛らしい胸に添えられた右手、うつむく度にチラ見せになる白いうなじ、そして呼称としての姉妹という
「お姉ちゃん……?」
またやってしまった感がすごい。目の前にはレフィーヤのベッド。もう現場に到着しても気づかない姉を心配してくれる妹の鑑。
「ん、あ、よいしょ。」
レフィーヤを寝かせるといなづまの方へ向き直る。僅かに痕跡が残っているもののほぼ平常運転に戻ったいなづまを正面に、今思いついた画期的な提案を提示することにした。
「いなづま、ダンジョンに行こうか。疲れたら帰りにおんぶするから。」
「はわわ、良いのですか。甘えちゃいますよ?」
戯けた表情で左手を握りながらそういう彼女はもう次の一言で本拠地を飛び出す勢いを感じさせる。
「もちろん。お姉ちゃんだからね。」
この後ダンジョンに潜ると、ゴライアスをサクッと倒したいなづまが(ちょっとわざとらしいけど)倒れ込んだのでじゃが丸くんをあげつつおんぶして帰った。その日の夜はすうすうと寝息を立てるいなづまの寝顔に満足して瞼を閉じた。
オネーチャン絡めるといなづまに時間を割けるようになるので大変良いのです。
なんかルール忘れてるんじゃないかってかんじの繋がりだったので直しました。