「やあ、影陽、今いいかい?」
永遠亭の庭に面した影陽、お気に入りの縁側
そこで影陽が晩酌ををしていると
萃香がいきなり現れる
手にはいつもの瓢箪に酒樽を抱えていた
「萃香か、ああ、いいよ」
「それじゃ、失礼して」
萃香が隣に座り盃に酒を注いでくれた
それを月が浮かぶそれを一気に影陽は煽った
「珍しい飲み方をするね・・・そんなに悪いのかい」
「悪いね、生き延びさせろと言っておいて生き延びさせたら、ふざけるな!だ、よくあれで博麗の巫女が務まるもんだな」
「そういわないでくれよ、親友としての言葉さ。あいつにとって魔理沙は一番の親友なんだから」
「いらん存在だな、一応調停者の立ち位置にいるのであれば切り捨てるものだってあるだろう、それが親友であっても、これからが問題だろうよ」
「・・・・霊夢の言いたいことは何となく分かる・・・魔理沙本人はどうなんだい?」
「・・・・あっさりしたものさ、内心どう思っているかはわからないが」
「自らも死ぬことも出来ないんだろう?」
「ああ、死神が迎えに来ることもない、魔理沙の魂そのものが消えたようなものだ、魔理沙と言う魂がないと判断され、死んでも輪廻に戻ることはない、霧雨魔理沙は死んだといってもいいな」
「じゃああれは誰なんだい?」
「イシュタルによって改造された肉体を持った、霧雨魔理沙のすべてを受け継いだ別人と思えばいい」
「それは・・・・」
「ひどいやつだと思うか?あの場ではあの方法しかないんだよ、時間をかけられるなら。ホムンクルスの体でも用意すればよかったさ」
あの時、すでに魔理沙の魂は疲弊していた
いつ消えてもおかしくはなかったのだ
死神が迎えに来る前に、この世から消えても仕方ない
だが、影陽はそのことを霊夢には言わなかった
一応霊夢には気を使ってやったからだ
魔理沙のことを頼んだのは彼女だったから
「それで・・・今魔理沙はどこに?」
「魅魔とアリスと一緒に魔界へ行った、力を制御して使いこなせるようにしないといけないからな」
イシュタルの神性は豊穣、愛、性愛、戦、王権の守護と複数の強大な神性だ
いくらかは弱くなっているといっても、この幻想郷ではかなり強大な力だ
幻想郷にも豊穣の神がいたとしても、その神よりもイシュタルの方が地位が上のため、不安定なままであると、魔理沙の期限次第で豊作か、不作か決まってしまう
さらに厄介なのが役割と与えられたものだ
イシュタルは「優美な衣装と女性の魅力」を授かり
「戦場に吉兆をもたらすこと、凶兆を伝えること。滅亡させずともよいものを滅亡させ、創造せずともよいものを創造すること」
というとんでもない役割を与えられている
さすがは、のちにギリシャ神話の美の女神、アフロディーテのもとになっただけあって、優美な振る舞いで男性を魅了するなどの逸話がある
夫がありながら120を超える恋人がいたとか
魔理沙がかなり美人に成長?したのもそのせいである
この幻想郷で役割を果たされても困るのだ
「とんでもないね・・・そりゃ・・・」
萃香が顔をしかめながら、酒を口に含む
同感である
説明するこっちとしてもだ
魔理沙にはいろいろ自重してもらわねばいけない
本泥棒もしかりだ
イシュタルも似たようなことをしてもいることだし
厄介ごとが増えた気がするのだが、仕方ないかもしれない
「それに、今、魔理沙を幻想郷にいさせるのは危険すぎる、今の説明以外にもな」
「・・・どういう事だい?」
「人里の中では魔理沙が今回の原因だと決めつけられている。」
「な!?」
「魔理沙は、異変解決等で有名なうえに、弾幕を見られることも多い、人里のを薙ぎ払ったものが魔理沙の弾幕と同じものだったんだから当たり前でもある、それに、仲の悪かった家族を丸々その時に消し飛ばしている」
「・・・・・どうにもならないのか?」
「無理だな、慧音にも一応報告はしてあるが・・・人の怒りや妬み、恨みの恐ろしさは知っているだろう?」
萃香は嫌に顔をしかめる
それが返事だ
「力が不安定な状態で、人里の人間と接触でもしてみろ」
「いい、いうな簡単に想像できる」
愉快じゃない話だ
「少しづつ、魔理沙の冤罪を晴らしつつ、今の状態を伝えなくてはな・・・」
まずは・・・稗田に行くか・・・
本当にめんどくさいことだ