東方魂探録   作:アイレス

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第88話

ドサリ

 

そんな音が響く

そこには・・・

左半身を失った幽香が霊夢を下敷きに倒れていた

幽香から溢れる血が霊夢を真っ赤に染め上げ

地面に赤い水たまりが広がる

 

「ゆ・・・幽香!?」

 

「幽香!?しっかりして!?」

 

紫と下敷きになった霊夢が幽香を抱え起こし必死に声をかける

 

影陽は幽香を見ずに土煙の方に目を向けたままだ

だが、彼の出す威圧が今まで感じたことがないレベルまで跳ね上がる

 

「やってくれるな・・・悪魔が・・・」

 

先ほどと同じように武装を展開し構える

 

しかし、土埃が晴れたその場所に思いがけない姿で攻撃した者がいた

 

魔理沙の姿をしたそいつは

膝をつき頭を下げていたから

 

「ここに居られましたか、混沌の君、さあ、早くこんな消え失せる末端の世界から元の世界に戻りましょう?」

 

「・・・」

 

「どういう・・・?」

 

「兄さん・・・?」

 

霊夢と紫の目線が影陽に向く

いや、全員の目が向けられた

 

「少しだまりたまえ、アスタロト」

 

「混沌の君、私はイシュ・・・」

 

「黙れ、我が娘をも傷つけるやつなど悪魔の名前で十分だ」

 

「っ!?」

 

凄まじい重圧が彼女にかかる

全く動けないほどだ

しかも、重圧はどんどん強くなっていくばかりで耐えることしかできなかった

 

その間に紫が幽香にできる限りの治療を施す

もちろん周りにいる者も手伝った

結界を最大限に張って

まあ、ないよりはまし程度の考えだが

かなり上位の悪魔の名前が出てきたのだから自分たちではとてもじゃないが相手にならない

だが、皆の疑問は別にあった

魔理沙の体を奪った存在からは神性しか感じない

幽香の傷の治りを遅くしているのもまた同じだ

それもかなり強力な

妖怪とは対極に位置するその力は強力だ

かなり強い幽香がこの状態なら、他の妖怪は近づくこともままならないだろう

 

 

「兄さん、このままじゃ幽香が・・・」

 

「大丈夫だ、その程度じゃ優華は死なない、私が100年以上育ててきた子だ、あいつの神性程度でやられる魂じゃない」

 

事実ゆっくりとだが回復している

それに・・・ばれない程度に優華に力を渡し、こびりついた神性を洗い流していた

 

少し優華に目を移した時、影陽は気が付いた

一人足りなくないか??

 

アリスもこちらにいる

だが・・・アリスと共にいたもう一人がいない

 

「・・・アリス、一緒にいたやつはどこ行った?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「あ?」

 

誰もその存在に気を留めていなかったようだ

 

「魅魔!?どこに!?」

 

 

「あああああああああああ!!!!!!」

 

「この!?何を!?」

 

 

叫び声と驚愕の声が響く

それは、さっきから動けなかった人物のところから

 

魅魔が魔理沙の体を奪った者と組みあっていた

 

だが、魅魔は、神に近い存在とはいえ悪霊

肉体はない

ある意味、魂だけの存在だ

 

悪霊と神

 

相性は最悪だ

 

想像を絶する激痛が魅魔を襲う

 

だが、決して魅魔は手を離さなかった

 

大切な弟子

いや、娘のような魔理沙を助け出すために

 

そのまま、激痛に耐え憑こうとする

 

「魔理沙ああああああぁぁああぁぁ」

 

 

 

 

 

何も見えない

何も感じない

ただ、真っ暗だ

だんだんと考えることすら億劫になてくる

闇に全てを任せようとしたその時だった

 

「まりさあぁぁぁぁぁ・・・・」

 

声が聞こえた

 

それは・・・

魔道に手を染め親に捨てられた私を育ててくれた師匠の声

 

一人前になるまで会わないそう、約束した

師匠の声

 

その声の聞こえた方へ

魔理沙は進む

何も見えない

感じない

だが、聞こえた声だけを信じて前に進んだ

 

そして・・・

 

 

突然光が魔理沙を包みこんだ


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