東方魂探録   作:アイレス

76 / 113
第76話

「優華」

 

名前を呼んだ

懐かしい名前だ

チルノの後だが一番思い入れのある子だ

旅の途中無意識でいないか探していた子でもある

妖精から妖怪になってしまったようだが、そんなことなど関係ない

ちゃんと生きていてくれたこと

それだけで十分だ

 

優華がボロボロと涙を流しながら飛びついてきた

それをやさしく抱きとめ、優しく頭を撫でてやる

 

「ごめんな、一人っきりにして・・・大きくなった・・・」

 

泣き続ける優華に優しく声をかける

今まで、記憶を失っていたことが

とても辛い思いをさせていたようだ

誰にも理解されなかったのだろう

彼女はあまり話したがらない

基本的に人見知りするような子だ

そして・・・会話相手が私しか居なかった

あの後、どうなったか分からないが

あの頃から成長はしていても中身が変わっていない気がする

幻想郷縁起に、書かれていたことが本当のはずがない

 

そのまま、影陽は優華が泣き止むまで抱きしめていた

 

 

 

 

 

「お?おおおお!?これは!スクーーーーーープ!これは大スクープです!早く号外を出さなければ!」

 

一人の少女が高速で一片羽を残し飛び去った

 

 

 

 

ああ、ああ!

本人だ

この声、私の名前を呼ぶ、この声だ

私の名前を正しく呼んでくれる

彼が何か言っている

だが何も聞こえない

私はただ彼がそこにいる

それだけで十分だった

ついつい、そのまま涙が枯れるまで泣いてしまった

 

 

 

「落ち着いたかい?優華」

 

「・・・・はい・・・」

 

「突然来て、ごめんな?それに、今まで見つけてやれなかった」

 

「いえ・・・私のために、あんなことに・・・」

 

「気にしないでいい、私も、何も説明せずにあんなことをしてしまったからな」

 

私は軽くなずいた

本当に突然のことだった

 

「そして・・・もう一つ悪いんだが・・・ちょっと花をもらいに来たのが目的でな・・・」

 

ショックだ

何か用事があって来ただけとは・・・

少しむくれて、ポカポカ叩いてやる

 

「名前の字が違ってきたし、風見って名字までついていたからな、それと、妖怪のことをまとめられた本に書いてあったことが君とは正反対でな」

 

?優華が首をかしげる

 

「凶暴で、容赦のない妖怪だって書いてあった」

 

その言葉で優華は目を見開く

だが、すぐに思いあったたことでもあったのか俯いた

 

「たぶん・・・襲ってきた妖怪を逆に倒した時・・・かと・・・」

 

「あーー・・・・そうか・・・・」

 

そうだった、優華に教えていた戦い方は相手を確実に殺すなどの技だ

多少は非殺傷のモノも教えてはいたが・・・

後は・・・

この豊富な妖力による大火力のせいか・・・・

 

「そこらへんも・・・私が原因な気がしてきたな・・・」

 

「来てほしくないのに・・・来るので・・ガツンとやったらそのまま、地面で花に・・・・」

 

「言わなくていい、うん、理解した」

 

 

奇妙な沈黙が二人に降りる

仕方ないことではあるが

ふと、幽香は気づいた

 

「あの・・・私・・・あなたの名前を聞いたことがないです・・・」

 

「ん?ああ・・・そういえば言ったことがなかったな・・・・私の名前は八雲影陽だ」

 

「八雲・・・影陽・・・八雲?」

 

「ああ、妖怪の賢者のことは知っているだろう?八雲紫は義妹だ」

 

「ああ・・・あのどこか胡散臭い・・・あまり似てない・・・」

 

「うーん・・・あいつ・・・そんな評価しかないのか・・・」

 

頭を抱えるしかない

 

その様子に幽香はクスクス笑う

 

「そういえば、用があったのでは?」

 

軽い調子で会話ができていた

 

「ああ、そうだ、忘れるところだった、花を欲しいと思ってな、菊とか」

 

「なるほど、それなら・・・」

 

優華はしゃがみ込んで手を地面にかざす

そこから、芽が出てきたと思ったら、あっという間に花が咲いた

それをいくつも

あっという間に花束ができる

 

「はい、どうぞ」

 

「すごいな、ありがとう。」

 

「これぐらいなら・・・」

 

少し照れる

 

「本当にありがとう」

 

「・・・・あの・・・私との関係って・・・いったい何なのでしょう?」

 

「ん?関係?」

 

「知り合いなのか、友人なのか・・・」

 

「決まっているだろう途中までだがお前は私が育てたんだ、親子だろう?」

 

その言葉にまた、目を大きくする

 

ああ、家族

家族とそれも娘と言ってくれるのか

こんな私を

血のつながりのない無関係な私を

娘という親子の縁

永遠に切れない絶対的なもの中に、私を入れてくれるのか

 

「それじゃあ、また」

 

「まって」

 

そう言って影陽の袖をつかむ

不思議そうな顔で影陽がこちらを見る

 

「一緒に・・・一緒に家まで行って・・・・いいですか?・・・お父様・・・」

 

影陽はふっと微笑んで

 

「いいよ、まず着替えておいで」

 

その言葉で自分がまだ寝間着であることに気が付いた

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。