東方魂探録   作:アイレス

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第61話

とても寒い

ただただ縮こまってガタガタ震えることしか出来ない

それは相手

八雲紫も同じだった

 

 

 

最初は武器を使った戦いだった

しかしいつの間にか殴り合いに移行してお互い服もボロボロだった

どちらももう限界だった

その時

風が強く吹いた

 

とても強く乾きり冷え切った風

 

それが二人を包み込む

 

「「ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?」」

 

からっ風が二人の破けた服の穴から入り込む

 

今の時期はちょうど9月の終盤

適温かちょっと肌寒いといったところだ

そこに、氷点下の強風が吹き込んできたのだ

 

ある意味当然だろう

 

紫がスキマで逃げようとするが

 

「あ・・・あら!?繋がらない!?なんで!?」

 

ここから移動できないようだ

今更なのだがいつの間にか別の場所に移動させられたようだ

実際に結構狭い空間だった

 

紫が布団なんかを引っ張り出す

それと火をおこす道具を取り出そうとしてスキマが勝手に閉じた

 

「ちょと!?なんで!?いったいここは何!?藍!?助けに来てぇ~!?」

 

もう余裕なんてないらしい

冷静に分析してはいるが私ももう危うい

死んでも蘇りはするがこれはちょっときつい

布団にくるまる紫に近づく

そして布団を引っぺがす

 

「ちょっと何するのよ!」

 

「自分だけいい物を持っていながら言う言葉!?協力しないと生き残るのは無理でしょう!?」

 

不本意であるが少しでも強引に行かなければならない

はっきり言って本当に苦手なのだ

だが今だけはどうしようもない

 

紫にひっつき布団を巻く

お互いの体温で暖めつつ熱を逃がさないようにするためだ

 

「いきなりなによ!?」

 

「こうでもしなきゃ死ぬわよ!私は死んでも蘇るけれどあなたは死んだら終わりでしょう!?死んだら影陽にも会えないわよ?」

 

影陽の名前を出して黙らせる

ちょっと卑怯な手だが仕方ない

博麗大結界は彼女が居なければ成り立たないのだ

 

 

 

 

訳が分からない

義兄のお嫁となった彼女

八意永琳

彼女は月の賢者だ

本人は元などと言っているが

そうそうやめたり出来るような地位ではない

逃げたらしいが・・・

 

そして義兄とのなれそめ

義兄への思いは簡単に忘れることが出来るようなものではない

それに

彼女に渡すことなんて出来なかった

諦めることが出来なかった

 

だから、争いになった

定められたスペルカードを使わない争いに

その罰が当たったのかもしれない

 

能力が使えずどこにいるのかも分からない

そしてとても寒い空間

とどめに相手から心配され密着して寒さに耐えている

 

 

 

 

しばらくしても風がやむ気配はない

心なしかもっと気温が下がってきている気がする

だんだん頭がぼんやりとしてくる

襲い来る眠気に抗いながら

必死に目を開ける

 

となりの永琳も同じなようだ

だが・・・

あっちは死んでもまた蘇る

不老不死の存在

なんとも理不尽だ

 

そんなことを思っていると

頭の中で今までの思い出が写真のように流れていく

 

((あっこれは・・・・もうダメかもしれない))

 

永琳も同じ物をみていた

このとき二人の心は一つだった

 

二人ともほぼ同時に意識を失う

 

それと同時に

世界は元の位置

永遠亭の庭に戻っていた

 

 

 

 

「ゆ・・・紫様ぁぁぁぁ!?!?!?」

 

「イナバぁぁぁ!担架持って来い!大至急だ!」

 

声を聞いて奥に引っ込んでいた鈴仙が飛び出してくる

 

「何事ですか!?」

 

「鈴仙!すぐにお湯を沸かせ!それと冬用の布団!後、余裕があれば暖かい飲み物!」

 

「え?は、はい!」

 

どったんばったんの大騒ぎだ

レミリア達も笑えず手伝ってくれた

 

まあ、どうにかなっただけましだろう

 

 

影陽は自分のせいでこんなことになったため

これからのことを恐れながら治療に専念していた

 


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