東方魂探録   作:アイレス

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明らかに本編より長い気がする。


第5話

「あら?今日も早いのね。」

 

日が昇り始めた頃、まだ誰もいないと思って来てみたらもう彼は来ていた。

 

「おはようございます、八意様、あなたも早いですね。」

 

そう、光淵が返す。

その手元には書類があり、机の端にも積み上がっている。

彼がここに来てもう数年がたっている。

そして仕事はきちんと完璧に仕上げてくれている。

それも、2部署の書類をだ。

それだけならまだいい

 

「光淵・・・それどう見ても他のところの書類混じってるでしょ・・・?」

 

「そうですね。」

 

「返してきなさい」

 

「どうせもう終わります、それにこっちでやった方が安心ですし上に早いでしょう?」

 

これである。

確かにその通りだ、その通りなのだ。

彼が入ってすぐこの部署の予算が減らされる。

等があった。

 

 

嫌がらせで、渡されたのが予算系の書類という相手の致命的なミスによってこちらが一気に有利となったことは否めない。

そして、グダグダとしてなかなか決まらなかったことが、書類のできと早さによって強制的に相手にお返しすることになった。

そこでやめれば良かったのだ。

上に褒められて、こっちがその書類を受け取らなければ苦労しながら奴らがするしかない。

 

だがこのお人好しは・・・

 

「どうかいたしましたか?」

 

「いいえ何でも無いわ」

 

そこに扉をノックする音が響く

 

「どうぞ」

 

「失礼する、おや、これは、八意殿」

 

「あら?鳳扇隊長何かご用で?」

 

「光淵を借りていってもよろしいですかな?今日は訓練がありますので一緒にどうかと思いまして」

 

私はチラリ、と光淵の方を見る、機械のごとく書類をめくり処理している。

 

「いいわよ、彼も身を守る技術を高めることも必要でしょうし、こんなところにいては体も鈍るでしょう?」

 

「そうですね、言っては悪いですがここにいたら凝り固まりそうです。」

 

鳳扇がそう答える。

それには笑うしかない

事実、腰や肩を痛めている者もいる。

時には体を動かさせた方がいいかもしれない

 

「光淵、行ってきなさい。その書類の山もうできあがっているのでしょう?」

 

「ばれましたか。さすがですね。」

 

彼は苦笑しながら答える。

 

「鳳扇隊長、あの書類運ぶのを手伝っていただけませんか?そのまま連れて行っていただいてかまいません。」

 

「もとよりそのつもりです。」

 

隊長には珍しくいつも飄々とした表情を崩しにこやかな顔で答えた。

 

鳳扇と光淵が書類を持って運んでいく

ある意味目立つ2人組だ

目線が2人に集中するが気にもしない。

 

さっさと元の部署に差し戻していく。

 

 

「光淵一枚余ったんだがこれは何所のやつだ?」

 

「それはお前のとこのやつだ、昨日出していた書類忘れたのか?」

 

「あ、あれか!?早いな・・・」

 

軽い会話をしつつ訓練場へ向かう。

2人の仲は出会ったときからそんなに悪くはない

本当なら敬語で話すところなのだが、鳳扇自体敬語が好きではない

そして、暇があると話しに来ていたのでとても会話がスムーズだ。

 

 

 

訓練場ではもう兵が自主的に訓練を始めていた。

鳳扇は続けるよう指示を出し、光淵の元へ戻ってきた

 

「お前の能力は魔法を使う能力だったな?」

 

「ええ、そうです。」

 

「特殊な魔法は八意殿に習ってくれ、私が教えることが出来るのは、身体強化を行う魔法になる。お前は、無意識でそれを行っていたが、不安定だ、これは安定させるための訓練だと思ってくれ。」

 

「分かりました、よろしくお願いします。」

 

「深呼吸をして、体の中に扉をイメージするんだ。その扉が魔力の調節を行う壁と思えばいい。それをイメージしたら扉を開き、その力を全身に纏うように流すんだ、一カ所に集中させると力は増すが肉体が耐えきれないから注意しろ。」

 

「・・・はい」

 

「うん、それを維持する感じだ。それで体術を組み合わせるとなかなか強い攻撃になる。繰り返すごとに精度は高まるから、書類仕事中にも出来るはずだ。」

 

「・・・意識するとこんなに違うもんなんですね・・・。」

 

「むしろ、無意識でそれを行っていたお前がすごいと思うんだが・・・」

 

「そうなんですかね?」

 

集中して全身に流し続け、均一に流し安定させていく。

 

「安定させることができたら、軽く体術の練習をしていていいぞ、ちょっとあいつらの方も見とかないと拗ねるからな、おぞましいが・・・」

 

「クククッ、違いない。」

 

鳳扇が部下たちの方へ向かうのを見送ると、そのまま続ける。

少しずつ楽になってくるのを感じていた

しかし

鳳扇がその場にいたら、即座に止めただろう。

何故なら・・・・

4分の1程度の力だったが、その時点で鳳扇の最大出力の2倍を超えていた

それを全身に力を巡らして纏っていたからだ。

 

 

「さて、そろそろ体術使ってみるか・・・」

 

さっきも言ったが鳳扇の最大出力の2倍で強化中である。

 

力を維持したまま横なぎにする感じで思い切り蹴りを・・・放つ!

空気が圧縮され、そのまま前方に放たれる。

その跡を三日月型の弾が少し遅めで追従する。

 

「あれ?」

 

 

鳳扇は次の瞬間、悪寒を感じ、背筋が寒くなる

ドン!!!

という音とともに体が吹き飛ばされる感覚がした。

目に入ったのは同じように飛んでいる部下と真下を通り抜けていく薄紫の三日月

それは、訓練用の壁に向かっていく。

魔法を打ち込んでもびくともしない壁それが

 

爆音を立てて崩壊していく

 

(あ、ありえんだろ・・・・あいつ・・・)

 

地面に叩きつけられ意識が飛んだ。

 

 

 

 

「4分の1の出力でぶっ放してあれが崩壊ねぇ・・・さすがの私もびっくりだわ。」

 

部隊の治療のためやってきていた、永琳がそう答える。

 

「はあ、すいません・・・」

 

「直すときは、前の10倍の強度はいるかしらね?」

 

「私が壊したので私が直します・・・。」

 

「今回は、鳳扇にも問題があるわ、始めから一人にして勝手に進めていいなんて言った方も悪いわ。」

 

 

「はあ・・・」

 

「鳳扇もそこは了承済みよ、まあ、腰を痛めてるからしばらくは無理でしょうけど。」

 

「・・・・・・・」

 

「部隊は副長が引き継ぎます、部下はいつもの半分弱ね。・・・光淵あなたに命じます第一部隊の支援に回りなさい、暇を見つけて壁の修復もです。私のところの仕事は結構、そちらを優先しなさい。」

 

「了解いたしました。」

 

光淵は、頭を下げあっさりと了承する。

自分が悪いことを十分に理解している証拠だ。

ほかの連中ならごまかすか何かして、腹が立つことこの上ないのだが。

 

副隊長も鳳扇ににていい人だあの人なら何とか光淵ともうまくやれるだろう。

そう思いながら部屋に戻る。

そしてふと気が付くのだ。

 

光淵ってどこで寝泊まりしているのだっけ?

 

と・・・・

 




続きます
時間稼ぎのために
予想外に筆が乗ってしまったが故に

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