東方魂探録   作:アイレス

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第29話

「いい場所だなここは・・・」

 

「そうね・・・静かで・・・自然の結界になった場所」

 

竹林に囲まれた屋敷

その縁側で光淵と永琳が月を見ながら酒をたしなんでいた

静かに吹いてきた風がさわさわと竹林の葉を揺らす

聞く人が聞いたら恐ろしく感じるかもしれない

しかし彼らにとっては穏やかにさせてくれる音だった

 

「師匠~、主さま~何所ですか~?」

 

奥の方から声が聞こえてくる

角から出てきたのは背の低い兎耳を持つ少女だ

 

「あ、こんなところにいたうさ」

 

「何かようかしら?てゐ?」

 

「姫様が畳の上で寝ちゃって・・・私たちじゃ動かせないから頼みに来たうさ」

 

「輝夜・・・何やっているのかしらね・・・風邪引くかもしれないのに・・・」

 

「疲れたんだろう、私が行こう。永琳、輝夜の部屋に布団用意してもらえるか?」

 

「いいわよ」

 

二人はそんな会話をしながら立ち上がり分かれる

 

ここは竹林の奥にある屋敷

もともとここには案内しているてゐと仲間の兎の住んでいた屋敷だ

 

 

 

 

「なかなかに深い竹林だな」

 

「そうね、若干方向感覚が怪しくなってきたわ・・・」

 

「そうだな・・・これはきつい・・・」

 

竹林を進んで1時間終わりすら見えない

どれだけ竹が密集しているのか日の光もあまり届かない

どうも微妙に坂になっていたり竹で視界が効かないことで狂わさせられているらしい

 

「なんか月の兎の目を見た時みたいね。あれとはベクトルが別だけど」

 

「そんな兎がいたのか?」

 

「ああ、あの玉兎のことね。狂気の目を持つ」

 

「またいやらしい能力持ちだな」

 

今、どうでもいい会話をしながら足を進める

 

「ダメだな、完全に迷った」

 

「・・・変に足を踏み入れたのは間違いだったわね。こんなに深いとは思いもしなかったわ」

 

「空から見てみる?」

 

「いや・・・ここが分からなくなるかもしれない。それにもうすぐ夜だ。」

 

全員が無言になる

べつにここで野宿することには何の抵抗もない

ただ自分達の感覚を狂わさせられた

そのことにショックを受けただけだ

竹林ごときに

 

「ん?」

 

「どうしたの?光淵」

 

「あれは・・・」

 

輝夜と永琳も光淵の指を指した方を向く

そこには小さな女の子がいた

こんなところに一人でいる時点で怪しいが

 

「・・・一応話してみるか・・・?」

 

「一応ね・・・」

 

永琳と二人で近づくと

突然浮遊感に襲われる

落とし穴があったらしい

何とも間抜けな話であるが

 

「あはははは! 引っかかった引っかかった!」

 

「・・・天の鎖」

 

落とし穴に落とした少女の周りに門が開き鎖が飛び出し縛り上げる

突然のことで少女は何もできず縛り上げられる

 

「な・・・なにこれ!はーなーせー!」

 

「うわ凄いこれ・・・光淵、永琳大丈夫?」

 

輝夜がのぞき込みながら聞いてくる

 

「無事だ、そこどいてくれ」

 

輝夜が2,3歩下がる

光淵が永琳を抱えて飛び出しそのまま着地する

なんの危なげも無い

 

「よし、そのままキスでも・・・」

 

「何をふざけてるんだ?」

 

永琳を下ろしながらあきれ顔で答える

ちぇ面白くないという感じの輝夜にちょっといらついたが

落とし穴を仕掛けた本人に向かう

 

「ん?なんだ兎の妖怪だったのか」

 

「あら、ほんと、可愛らしい耳が付いているわね」

 

「は・・・はなせー!」

 

ジタバタと鎖から逃れようとしている

しかし

 

「その鎖は神ですら縛り破壊できぬ物お前のような兎妖怪が抜けられる物では無いよ」

 

その言葉でがくりと力なく耳と体から力が抜ける

 

「何でこんなことを?」

 

「・・・・ただの悪戯だうさ・・・・」

 

むすっとした感じで答える兎

 

「お前名前は?」

 

「てゐだうさ」

 

「この竹林で暮らしているのか?」

 

うなずく

 

「ここに住めるような小屋はあるかしら?」

 

永琳が尋ねるそれは

 

「ここでいいのか?」

 

「ええ、隠れ住むにはちょうどいいでしょう」

 

「・・・・私と仲間の住んでいる古い屋敷ならある。」

 

てゐはそう答えた

 

「ではそこに住まわせてもらえないかしら?」

 

この手の交渉は永琳に任せた方がいい

私ではとてもじゃないがそんな高度なことはできやしない

鎖はといておく

後は永琳に任せっぱなしだ

逃げようとして数十本矢を打ち込まれたみたいだが

 

そしてなんやかんやあって

この屋敷にいる

兎たちに知恵を与える代わりにここの結界の強化などが条件らしい

 

 

 

「ねえ、主さん、聞いてもいい?」

 

「なんだ?てゐ」

 

「師匠と主さんは・・・どんな関係?」

 

「お前はどう思っているんだ?」

 

てゐはちょっと考えたようだ

頭を傾けながら答える

 

「気を悪くしたら悪いんだけど・・・師匠は主のことは気に入っている?と思うよ?愛?かは曖昧なところだけど。それは主からも感じる、かなりわかりにくいけど。・・・・主からは戸惑いもあるし・・・なんて言うんだろうね?何かを見つけるまでは・・・自覚する気がしないよ。」

 

「それは・・・幸運の兎からのアドバイスかな?」

 

「アドバイスとは言い切れないけれど・・・」

 

「なんとなく合っている気がするから文句は無い・・・捜し物か・・・私は何を探しているんだろうな。」

 

「それまでは分からないよ。さすがにね」

 

「最初は覚えていたはずなんだ・・・いつの間にか忘れてしまっていた。永琳のことも忘れていたんだが・・・」

 

「再会して思い出したのかい?じゃあ、探し物と言うより人捜しかな?会ったら思い出すかもしれないね」

 

「・・・そうか」

 

「・・・探しに、ここいいるみんなをおいて探しに行くことはやめた方がいいよ。光淵さん」

 

さっきまでの口調とはまた違う

なにか確信があるかのようなものだ

 

「なぜだ?」

 

「あなたの探し物はここに来るよいつかは分からないけれど」

 

「・・・なぜ、そう言い切れる」

 

「師匠達は永遠に変わらない屋敷。永遠亭なんて言っていたけれどそんな永遠なんてないよ。実際私がそうだった」

 

確かに彼らの平穏は崩れた私たちのせいで

 

「探している人も何かの拍子でここに何かをもたらす者かもしれないよ」

 

なんとも曖昧な物だ

だが一理あるともいえる

この兎は神代からの生き残り

あの因幡の白ウサギ

嘘をつくがまじめに言っていることはちゃんと聞いておいてもいいだろう

 

そんな話をしていて輝夜が寝落ちした部屋にたどり着く

周りにふわふわした毛並みの兎が周りにいてなんとも気持ちよさそうに寝ている

だが、このままにしておくのは悪い

このあたりは冷える

ちゃんと寝かせなければ

 

お姫様だっこして輝夜の部屋に連れて行く

 

やっと見つけた土地

そこでの初夜は静かに過ぎていった

 




ちょっとてゐの立ち位置が妙かもしれませんが
この物語ではこんな感じです

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