東方魂探録   作:アイレス

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幻想の外2

永琳と影陽はガタゴトと電車に揺られ一路諏訪を目指す

なぜ諏訪なのか

影陽にも分からない、もちろん永琳にも

紫の考えることは時折突飛すぎてわからない

 

 

二人掛けの座席で乗る前に買った駅弁をつつく

 

お金等は影陽が用意したものだ

他にも必要なものはすべて用意しての旅路だ

 

 

 

「何なんだろうな?」

 

影陽が不意に食べる手を止め呟く

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、今まで永琳と二人きりで出かけたりしたことないはずなのに、落ち着いている自分がいて・・・」

 

「今更じゃないかしら?何年一緒に暮らしてきたと思っているの?緊張も何もないでしょう?」

 

「ククッそれもそうか。それにしてもこういう旅は一人でしかしなかったから、緊張というか違和感を覚えると思ったんだがな」

 

「あら?そうなのなら私は嬉しいわ」

 

「?」

 

「貴女が違和感を覚えないほど、私がそこにいることが当たり前になっている。そういう事でしょう?」

 

二コリと永琳が笑顔を影陽へ向ける

影陽も見たことのない明るい永琳の笑顔だった

 

影陽は少し、気恥ずかしくなり顔をそむけた

その反応を見て永琳はクスクス笑っていた

永琳は楽しんでいた

そして、うれしく思っていた

影陽の珍しい反応を見ることができたから

少し紫に感謝した

 

 

 

 

 

「ここは自然が残っていていいな」

 

「そうね、多少は残っているみたいね。相変わらず地面はアスファルトだけれど」

 

「日本にアスファルトじゃない道なんてなぁ・・・・ほとんど覆われているよ」

 

二人は諏訪大社へ向かう道を歩いていた

ここにもビルは建ってはいたが都会ほど高いわけでもない

それに道の端の方にだが木が立ち並んでいる

それによって多少は空気がよくなっていた

 

幻想郷はアスファルトに覆われた場所などない、コンクリートもだ

そして、自然だらけだ

 

そもそも江戸時代後期レベルの場所なのだから幻想郷の空気と比べる方がおかしいのだが

 

 

 

「・・・・む」

 

影陽がいきなり立ち止まる

 

「ん?どうしたの?かげ・・・・あら・・・」

 

 

ビルとビルの間

影陽はそこに目を向けていた

永琳も目を向けて影陽が立ち止まった理由を知った

 

 

 

「離してください!」

 

「まあ、まあ落ち着いてよ嬢ちゃん。変なことするんじゃないって」

 

「そんな露骨に嫌がられるとショックだわ~」

 

暗がりで、緑髪の少女に言い寄るチャラい恰好をした青年ども

影陽は昔義妹に群がってきたクソガキどもを思い出しだ

 

「ちょっと行ってくる」

 

「はいはい」

 

影陽は永琳に荷物を預け、路地に入っていった

 

 

「ちょっと一緒に遊んでくれるだけでいいからさぁ」

 

「嫌です!離してください!」

 

掴まれた手を振り払い逃げようとするしかし

 

「まて!」

 

他の男に掴まれ、壁に押し付けられた

 

「きゃ!?」

 

「なあ、そう逃げ・・・」

 

 

「おい、そこで何をしている。」

 

影陽が声をかけたのはそんな時だった

 

「なんだ、あんた」

 

声をかけて来た奴を無視し、少女に話しかける

 

「助けてほしいか」

 

「!」

 

少女は即座にうなずいた

 

「そうか、それじゃ・・・」

 

「おっと、何もするなよ」

 

少女を壁に押し付けている者を含めて皆ナイフを持ち向けていた

 

「へへ、これで何もできないだろう?」

 

一人、近づきナイフを突きつけきたが

 

その手を片手でつかみ

思いっきり捻った

 

バギッ

 

そんな音が響き

ナイフを突きつけた人物が宙を舞い

壁に叩きつけられた

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!腕!うでがぁぁぁ」

 

手首と腕をへし折られその場に蹲る

 

「な!?この!」

 

もう一人、刺すような勢いで突っ込んでくる

 

ナイフを持った腕をつかみそのまま背負い投げを放ちその勢いで腕を折る

 

「ひいぃぃぃ!?」

 

「動くな!」

 

少女にナイフを突きつける

しかし

影陽の背後からメスが飛びそのナイフを掴んだ手を貫通した

 

「に・・・逃げろ!」

 

誰かがそう叫ぶと皆一斉に逃げ出した

腕を折られた者も無事だった者も一斉に奥へ逃げ出し、静寂が戻る

 

「大丈夫かい?怪我は?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そうか」

 

「貴女も大丈夫かしら?影陽?」

 

永琳が路地に入ってくる

 

その美貌に少女は目を丸くしていた

 

「ああ、何ともない、ありがとな」

 

「どういたしまして」

 

「じゃあな、気を付けて帰れよ」

 

メスを拾い、呆然としている少女を置いて二人で路地をでる

そして、諏訪大社へ向かい歩き出す

 

 

 

残された少女は我に返り、慌てて二人を追いかけた

しかし、もうすでに何処かへ行ってしまっていた

 

「・・・お礼を言い損ねてしまいました・・・・また会えるでしょうか?」

 

そうつぶやくと家に帰る前による神社へ足を向ける

さっきのことを二人に話さなければいけない

 

 

そして、古びた大きな神社にたどり着く

 

「諏訪子様、神奈子様!聞いてください!さっき・・・・」


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