東方魂探録   作:アイレス

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幻想の外1

「空気が悪い」

 

「同感ね」

 

普段の和服姿ではなく、外の世界の服装で腕を組み、壁に寄り掛かった影陽がつぶやくと同じような服装をし、影陽の隣で壁に寄り掛かった永琳が答える

二人とも不思議と洋服が似合い風景に溶け込んでいた

まあ、二人の整った顔と永琳の長い銀髪が目立ちはしていたが

 

二人がいるそこは

高層ビルに囲まれた都会の中

草木も土もない、アスファルトに覆われたビル群の底

多くの人が目指し集まる場所だ

 

「妹紅に輝夜め、紫に妙な事を頼みやがって」

 

「あの二人は悪くはないでしょう、悪いのは外に放り出した紫でしょう?」

 

流れゆく人の流れを見ながら二人は会話を続ける

何処か気怠そうな雰囲気で

 

二人が来ている服は妹紅と輝夜が用意したものだ

というよりも贈り物が正しい

それを着たとたん

二人はスキマで外の世界の路地に飛ばされたのだ

 

 

 

「影陽、貴方の力ならすぐに戻れるでしょう?」

 

「紫の奴がしっかり対策して、一か所からしか入れないようになっていて無理だ」

 

永琳は顔に手を当てる

 

「あの子、妙なところだけしっかりしてない?」

 

呆れたような声が永琳から漏れた

 

「知らなかったのか?結構そういうやつだ、本気の時と遊びははしっかりしているが普段がな」

 

二人の間に沈黙が降りる

 

人の流れは途切れることなく続く

 

だが、さすがに留まり過ぎたのだろう

少しづつこちらを見てくる人が増えてきた

 

「行くか、永琳」

 

「何処へ?」

 

「幻想への入り口まで」

 

二人が手を差し出し、永琳はその手をつかんだ

 

そして、二人は歩きだした

唯一開かれた幻想の入り口に向かって

 

 

 

影陽は、人ごみの中を縫うように、永琳を連れ歩く

影陽にはここがどこだか分かっているような動きだ

永琳にはどうなっているかさっぱりだ

 

「影陽、どこへ向かっているの?」

 

「今は駅だ、そこで電車に乗って移動する」

 

「何処へ?そもそも、なぜ電車で?能力を使えば・・・」

 

「こんなところで能力は使えない、向こうにも人目がないとは言い切れないからな。そしてまず、諏訪に向かう。紫は、順番に通らないと戻れないようにしている。そしてそこからまた移動して・・・」

 

「・・・移動して?」

 

「・・・・私の生まれた町の神社に行く、そして外の世界の博衛神社に行けば帰れる」

 

「そう」

 

 

永琳はその言葉で思い出す

影陽の記憶を

そこで何があったのかを

そして、紫の思惑もなんとなく理解した

影陽だけでなく

自分も一緒に連れてこられたのかも

 

妹紅と輝夜はきっと気分転換が目的で、あとは二人だけの時間を作らせるために紫に相談したのだろう

それを紫は利用した

 

彼が両親の墓を作ったことは知っている

紫も協力していたはずだ

その町は影陽に知る、生まれた町ではないだろうが・・・

きっと・・・その自己のあった場所に行かせたいのだろう

 

 

 

影陽はまだ、あの時自分も共について行きたかったのだろうか

 

永琳は影陽に手を引かれながらそんなことを思っていた


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