東方魂探録   作:アイレス

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闇鍋の悪夢の別視点版です


闇鍋

「やれやれ・・・どうやら私には退屈という言葉とは縁がないようだ」

 

呆れたような口調で影陽はそんな言葉をもらす

だが、その声は誰にも届くことはなく

漆黒の闇の中に溶けて消えていった

 

 

 

影陽は結界の様子を見るために幻想郷の外れにまで足を運んでいた

本来は紫と霊夢の仕事のはずなのだが

紫はなんだかんだ言って藍に押し付け、霊夢は修行と一緒にさぼり気味だ

最低限のことはやっているからましであるが

そのしわ寄せは、ほぼ影陽に来ていた

藍も優秀ではあるのだが、できないものは影陽に回ってきていたのだ

 

藍が頼みに来るたび

若干涙を浮かべながら本当に申し訳なさそうに頭を下げてお願いをしてくるから断りづらい

それに、自分にも関係があるのだから、仕方なしに修復などを行っていた

 

紫と霊夢には何度か説教をしたがあまり効果はなかった

 

藍には少し橙を借りたりしている

個人的には動物は好みなのだが・・・

動物は警戒して近づいてこないから、猫状態の橙を借りて愛でて居るのだ

橙もそんなに悪い気分ではないから、少し楽しみにだったりする

藍は抱き着いたりとちょっと激しい愛で方だが、影陽はそっと膝上に乗せ、優しくなで、眠りを誘うような愛で方だからだ

時々、永遠亭の人にも可愛がってもらえるからでもあるが

 

 

そんなこんなの事情で幻想郷の外れにまで来た影陽だったが、そこで綻びを直していて、突然結界が開き吸い込まれたのだ

そしてその穴はすぐにふさがり

影陽は、この空間に取り残されたのだった

何故かは知らないがここでは能力も使えなかった

そして影陽は気づく

 

ここは、世界の定まらぬ場所だと

 

ありとあらゆる世界の狭間、境界と境界の間、世界の交わる混沌の空間だと

 

どうすれば出られるのか影陽にも分からない

そもそも、能力が使えないのだ

 

仕方なしに歩いていると、不思議な空間に出た

薄暗いが妙に明るい雰囲気のある場所だ

そしてものすごく広い

その場所を探索すると、なぜか超巨大な鍋が固定されてあった

 

訳が分からない

 

そこにしばらくいると、人がやって来た

互いに驚くしかないが、こんな場所に来てしまったどうしだ

すぐに、仲は良くなった

そして、それを皮切りにどんどん人が集まりこの空間が人で埋まるほどの人数になった

 

集まった者の名前を聞いていると、皆偽名だ

だが、それでいいとも思った

ここは、不思議な場所だ

本名でないほうがいい

影陽も、別の名前を使った、自分とはまったく関係のないマエスという偽名を

 

他の人はもっと個性的な名前だったが

 

みんな、ここから出る方法を探していた

探していたはずだった

 

誰かが鍋をしようと言い出すまでは

 

ここの空間で鍋という言葉は大勢の人がいた場合

禁句だったようだ

みな、狂気に感染した

 

すると、自分の望んだものが手元に表れる

 

そして・・・・

 

 

 

 

「祝えーーーー!!!!鍋にするぞー!!!!!」

 

 

 

そこ声で鍋が始まった

 

鍋は鍋でも闇鍋だ

 

放り込まれる物はカオス

その一言に尽きる

 

出汁の時点で

 

鰹節 昆布 アゴ出汁 ワカメ 煮干し 豚骨 鶏ガラ

 

もう何が何だかわからない

だが誰も突っ込まない

もう、なんでもかんでも放り込みたい

そんな狂気だったのだろう

 

生きたままの蛸 アンコウ チョコレート 白菜 コ〇キ〇グ ハバネロ 明太子 新鮮なオリーブの木 一樽分のオリーブオイル しらたき シュールストレミング Gの卵 ザッハトルテ

 

古事記 燃料 愛と勇気 恋 血液

 

 

火力が弱くなれば、ジェット燃料を炎に投入した

 

そしてカオスは、狂気はさらに加速する

 

松〇修〇

 

とうとう人まで放り込まれる

ただのその人を模した偽物だったが

 

脱ぎたて靴下 タキオン粒子 原爆 水爆 ウラン プルトニウム コアメタル 仮〇ラ〇ダーの変身道具

 

ザビーゼクタ 溶源性細胞 冥王星 閃光玉 ガ〇ダム

 

「カナヘビ」

 

「じゃあ!カナヘビ!お前も入れぇぇぇ!」

 

カナヘビを入れた人が鍋に蹴り落とされる

 

「〆サバ」

 

「お前もじゃぁ〆サバぁぁぁぁ!」

 

ここに集まった人たちまで入れ始めてしまった

だが、狂気の中、気が付いた

あの鍋が

ここの空間から出るカギだと

 

皆そこに気が付いたようだ

本当に何者達なのだろう?

 

 

家紋

 

「葱!そして私!」

 

葱を大量に持った人がそのまま鍋に飛び込む

 

「ヒャッハー!最高だぜぇ!」

 

並葱、そう呼ばれた人が飛び込む

 

「闇!」

 

「ルーミア!」

 

あ?

 

「なのかー!?」

 

「扶桑、山城!」

 

「「不幸だわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

「ギルガメッシュ!」

 

「ざっっっっっっしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」  

 

「文!」

 

「いいぞ!紅葉!」

 

「椛ぃぃぃぃぃぃ!?」

 

「橙と橙で釣れた藍」

 

「ゆかりしゃまぁぁぁぁあ」

 

「ゆかりさまぁぁぁぁぁあ」

 

「えーりん!」

 

「もこたん!ぐーや!」

 

「てゐ!」

 

「優曇華!」

 

「博麗神社!」

 

「霧雨魔法店!」

 

「チルノ!」

 

「幽香!」

 

「メディスン!」

 

「ニトリ!」

 

なんか見覚えと聞き覚えのある名前と声だなぁ・・・

そんな感想を思いながら影陽は準備する

一番最後

とっておきのものだ

 

「メガ粒子砲!アトミックバズーカ!」

 

「そろそろラストだ!最後!行け!」

 

「ブラックホール」

 

影陽はそれを鍋に投げ込んだ

 

「おっしゃぁ!!!!」

 

「みんな!いくぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 「祝砲フレンズ!祝砲だ!うてぇ!」

 

祝砲(実弾)が爆音を上げ連続発射される

それと同時に皆が鍋の中に舞った

 

そして影陽は、振り返って、ここにいるはずのない者を見つけた

 

近づくと、逃げだそうとしたから捕まえ、鍋にまで連れて行った

 

そして

 

「紫」

 

名前を呼ぶと同時に投げ込む

 

こうなった、根本的な原因に対する怒りもなかったとは言わない

 

悲鳴を上げながら紫は混沌の鍋に消えていった

 

そして、影陽もその中に飛び込んだ

 

 

 

気が付くと、夜が明けた幻想郷

己の住む、永遠亭の屋根の上で寝っ転がっていた

 

下から、紫と永琳の声が聞こえる

どうやら、あれを悪夢という形で体験したらしい

有無を言わさず、放り込まれた側だが

 

今思うと、影陽はあの時

狂気に駆られていた時、笑っていた

永琳にも見せたことのない、心の底から楽しんで笑っている顔を

 

あの空間で会った者達にまた会いたいなぁ

そう思う影陽だった

おそらく、会うことはもうないだろうが

 

人の夢そう書いて儚いと書く

夢は儚いものだが

現実を忘れることのできる場所なのだろう

囚われてしまったら、二度と帰ることは出来ないが

多少の楽しみならよいのかもしれない

 

 

パキパキッ

 

何処かで、あの空間が開く音が聞こえた

 

それはどこかは分からない

それはきっと

誰かのために・・・・

カオスを広げるために

 


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