病院の予約、今日じゃなかった!にいやん黒須賀部でございます。
番外編が連続しますけど堪忍しておくれやす。
自分で自分のネタにニヤけて、他が手に付かないんどす。
注意:時間軸が若干進んでます。
お花見から約1~2週間時間が進んでいます。
先の予定で、時雨、村雨、夕立、武蔵、島風の5人が
主人公宅に合流予定なのですが、既に合流した後のお話しです。
では第39話はじまります!
あたしの名前は夕立、白露型駆逐艦の四番艦。
深海棲艦との戦いが終わって、今は舞鶴から兵庫県に移って暮らしてるっぽい。
平和になったのは良いけど、最近ちょっと退屈っぽい。
今の暮らしは好きっぽいけどね。
ご飯は美味しいし、ぐっすり眠れるし、近くにタローも居るし、バイクは愉しいし。
でも何か足りないっぽい、なにかもっと楽しいことないっぽい?
お花見のイベントから数週間後、夕立は時雨・村雨とは別行動で出かけていた。
最近おやっさんの所のタローに会っていなかったので、今日は一緒に遊ぼうと決めていたからだ。
愛機KSR80赤黒デビルカスタムのアクセルをふかし、まるで一陣の風のごとき動作で国道を駆け抜ける夕立。
たなびく白いマフラーは、まるで変身ヒーロー、いや某サイボーグ戦士のようでもあった。
姉妹で仲良く走るのも良いけど、こうやって一人で自由に走る方が自分には合ってるようだ、と考え頬がゆるむのを感じた。
かつて「ソロモンの悪夢」と呼ばれ、敵味方問わず恐れられた夕立。
深海棲艦との争いで、同じ駆逐艦たちの中でも飛び抜けて戦闘的で、実際多くの実績を残した彼女だが、好戦的というわけではない。
彼女は「楽しんで」いただけなのだ。戦時中あえて自らを危険にさらし続けたのは、それが心底「楽しかった」からだ。
あの快感は今の生活では得られない…まるで戦争帰りの兵士が一般社会に戻れないような、そんな状況によく似ていた。
あえて遠回りをしまくり、1時間ほどでおやっさんのバイクショップに到着。
さっそくタローと待望のお散歩タイムに突入した。
「~♪」ワンワン♪
1人と1匹、仲良く歌を口ずさみ(?)お気に入りの川沿いの土手を歩いていく。
この時期はまだはやいが夏になるとタローは川に入り遊びたがる。
そんな時夕立も一緒に川に入って共に遊び、ずぶ濡れになって帰ると、よく時雨に叱られていた。
あんなに怒らなくても良いっぽい、と当時を思い出す。
そんなことをかんがえていたら、既に結構な距離をあるいてきたらしい。
まわりは見覚えのない風景が広がっていた。
堤防の川側にアスファルトで舗装された広い駐車場?のような場所があった。
そこに1台見たことのない小型のバイクが停まっていた。
黒と白でペイントされたそのバイクは、色合い的には目立つものではなかったが
なにか背筋に冷たいものが走るのを夕立は感じていた。
デザインが攻撃的すぎるからだ、と夕立は思い至った。
バイクの側面には『WindBeast』と英語の文字が暴風をイメージしたデザインでえがかれていた。
夕立のバイクも色とデザインはやや攻撃的であったが、そんなのは比較にならないものがあった。
そのバイクにしゃがんで何やら弄り回している人物が居る。
全身真っ黒のバトルスーツにも似た、バイク用と思しき革に身を包んだやや小柄の少女だった。
髪は島風のような銀髪でショートカット、その目は夕立ソックリで瞳が赤かった。
少女は夕立に気が付いたらしく、立ち上がって声をかけてきた。
「やあ、お散歩かい?今日は天気もいいもんね、バイクにも絶好の陽よりだよ」
「コレ貴女のバイクっぽい?」
「ああ、そうさ、ボクの相棒だよ。ってキミ変な喋り方するんだね」
「クセだから治らないっぽい」
「あははは、いいよ、なんか似合ってるしね」
「ありがと」
「ところでさ、キミもバイク乗ってるでしょ?オイル臭がするよ?」
「あたりっぽい!」
「機会があればいっしょに走ってみたいね、キミは速そうだ」
「んー、良いっぽい。今はちょっと遠くに停めてるから、また次会ったときにっぽい」
「ああ、ボクはよくココに来てるから、見かけたら声をかけてよ」
「ぽい♪」
「楽しみだなぁ、あ、ボクはレイ、それじゃあね」
「あたし夕立、またっぽい」
ふたりは別れ、夕立は元来た道を引き返す。
しばらくすると単気筒の排気音が聞こえ、レイのバイクだな、と夕立は思った。
その次の瞬間、すさまじい爆音とともにレイのバイクが駐車場を縦横無尽に駆け回り
夕立が見たこともないような挙動と速度で右へ左へ曲がりまくる。
と思えば、いつもある場所で静止し、脚もつかずにバイクだけでたっていたりと
一見曲芸のようにも見えた。
その様子にしばらく見入っていた夕立だが、とりあえずタローを連れて帰らなきゃ、と帰路を急いだ。
「あー、そりゃジムカーナの練習してるんちゃうか?」
バイクショップに戻り、おやっさんにさっきの様子を話すとそう答えてくれた。
ジムカーナとは、比較的狭い場所で、パイロンやコーンを置き、それをあらかじめきめられたコース通りに走り
ゴールまでのタイムを競う競技である。
狭い場所でタイムを競うワケであるから、高い運転技術が求められる。
夕立はいままでそんな競技があることは知らなかった。
今日のあのレイと名乗った女の子の走りを見たのがはじめてだ。
「夕立もやってみたいっぽい!」
「ん?そうか興味を持ったか…ちょうど良いじゃねぇか、お前さんのバイクはジムカーナ向きや」
「ぽい?」
「腕次第で全然違ってくるんや」
「お前さんのバイクは軽いし良く曲がるし、低速域のトルクはないが腕で十分カバーできる優れモンや」
「ぽーい」
おやっさんお話しに興味津々な夕立。
今まで山の峠道などの下りを散々攻めてきたが、レイのような走りはしたことが無い。
新しい世界に何かを見たきがした夕立は居てもたってもいられなくなり、おやっさんに頼み込んだ。
「ジムカーナ用に改造できるっぽい?」
「お安い御用や、簡単なところから教えたる」
「ぽーい♪」
そうして、夕立は陽が暮れるまでおやっさんのガレージで愛車の改造を手伝った。
その瞳には炎のような闘志が宿っていた。
とりあえずのチューニングを終え、夕立はにいやん宅のガレージに帰宅したのは19:00頃だった。
時雨に「遅いじゃないか」と少しお咎めを受けたが、今はそんなの全然きにならない様子で夕食に向かう。
「やけにご機嫌だね夕立は」
「うーん、タローと遊んでたからじゃないの?」
時雨の疑問に答える村雨。
まあ何時もの事かと二人は夕立に倣ってキッチンへとむかう。
その日の夕食は寄せ鍋で、みんなでワイワイと楽しく食べていたのだが
何故か夕立だけはどこか恍惚とした表情で、食事もそこそこにガレージへいってしまった。
不思議に思った夕張が様子を見にいったら、即引き返してきて
「夕立ちゃん、ジムカーナでも始めるの?」
「「???」」
皆聞きなれない言葉に首をかしげる。
夕張から一通り説明をうけ、納得する皆。それで今夜は様子がおかしかったんだ、と。
夕立は両肘両膝に専用のプロテクターをつけ、愛機に跨り、干渉しないか色々ためしていた。
その様子をじっと見ながら夕張は
「大マジみたいね、あれは」
「でもなんでいきなり?ボクには訳がわからないよ」
「えっとね、最近この近くで運転の凄く上手なXRモタード乗りの女の子が話題でね」
「その子、各地のジムカーナの大会でかなりの成績をあげてるっていうのよ」
「なんでも実家はおやっさんのバイクショップに近いとか」
「たぶん夕立ちゃん、その子に会ったんじゃないかなって」
「へぇ、詳しいね夕張」
「えへへ、青葉情報なの、今こっちにきて加古古鷹といっしょにくらしてるのよ」
「どおりで詳細な情報だと思ったよ」
「たまには青葉も役に立つのよ、通称『鎌鼬(かまいたち)』本名レイ、日本人離れした銀髪美少女だって」
夕張の言葉に我に返る夕立。
やっぱりあの子は只モノじゃなかった、燃えてきたっぽい!
そのまま朝まで愛機をいじりまわった夕立。
むりやり付き合わされたにいやんは、日付が変わるころイスにすわって轟沈していた。
えー、前編終了です。
若干書き方かわってる?
この番外編だけだから堪忍ね。
次回更新までしばらくかかると思います。
では、次回もお楽しみに!