鉄騎~大地を征く艦娘たち~   作:にいやん黒須賀部

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おはこんばんちは!
にいやん黒須賀部でございます。

夏真っ盛りですね?
毎日暑くてとろけちゃいそうです。
こんな時は涼しい高原なんかをバイクで走りたくなります。

行くまでが地獄ですがね(汗




さて、第15話です。
今回からしばらくは、時間軸を戻して終戦直後のお話しをば。
ぼんやりと先のいめーじはあるんですが、はて、どう形にしたものやら?
とりあえず、2代目赤城(元赤城、現一般人女性婚約済み)の結婚式のあたりから
お話をすすめていこうかなぁと。


では第15話、始まります。




終戦直後編:まっかなスカーフ
15:~にいやん愛の旅立ち編~その1


時は20XX年。

5年にわたる深海棲艦との戦いに一応の勝利を収め

オレや艦娘達は、比較的穏やかな毎日を過ごしていた。

 

季節は終戦後はじめての夏。

戦いがおわってなお鎮守府の工廠では、艦娘の艤装の改良や点検でそれなりに忙しくしていた。

オレは終戦と時を同じくして、予備役となり、地元の田舎に帰って田んぼ仕事をしながら

気が向いたらバイクで走り回って、ダラダラと過ごしている。

 

 

 

ドコドコドコ…。

 

 

 

青く澄んだ晴天の空のもと

無限マフラーの排気音を響かせ、オレは久しぶりに舞鶴鎮守府までバイクを走らせていた。

 

 

 

「ハァ…」

 

 

 

オレはまたしてもため息をつく。朝から何度目だろうか?

好きなバイクで走っていても、どうも気分が晴れない。

何故かと問われると…、明日はかつての想い人、先代赤城の結婚式が行われるからだ。

 

彼女とその伴侶となる提督から、丁寧な招待状が届いたのが3か月前。

気分的には参加したくはなかったが、マナーでもある、参加に〇を書き返信してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

「はぁ~~~ビバノンノンってか…」

 

 

 

こんな気分の時は、バビューンとかっ飛ばしてスッキリしたくなるモノだが、今はそんな気さえ起らない。

ああ、青い空が今は恨めしい。

 

 

 

『ため息ばかり、うっとおしいです』

 

 

 

我が愛機の妖精さんが、うんざりした調子で話しかけてくる。

 

 

 

「わぁーったよ、黙っとくわ」

 

 

 

チクショー、言ってることはわかるが…。

どうも自分の感情がコントロール出来ないので、さらにイライラしてくる。

頭ではわかってるんだ、赤城は提督を選んで、オレはフラれた。それだけの事だ。

 

明日は盛大な式となるだろう。

こころからお祝いしたいが、オレのなかのドス黒いモノは、心をジワジワと蝕んで来る。

 

我ながら情けない。

舞鶴についたら、酒でものんで誤魔化すしかなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の事を考えようとがんばってみたが、最後には同じところに戻ってくる。

 

 

 

………そうだ、告白したのは初代赤城が轟沈し、二代目がドロップして3か月ほどの頃だった。

 

海軍工廠で頻繁に顔を合わしていた黒い長髪がとてもよく似合う彼女。

やわらかな笑顔とおだやかな性格。

誰にでも優しく、己には厳しく、誇り高い戦士。

戦闘時は凛々しく、食事の時は心底楽しそうに過ごしているステキな女性。

オレが彼女を意識するまでには、ちょっとの時間で十分だった。

 

あぁあの肩を抱いて髪をなでてみたい!とか毎日モンモンとしていたものだ。

 

ある日、なけなしの勇気を振り絞って

 

 

 

「赤城さん、あとで工廠の裏まできてもらえませんか?」

 

 

 

と伝えた際。満面の笑顔で「ええ、では後程」と答えをもらい

もしかしてイケるかも???と思っていた。

 

 

 

 

 

 

「すみません、私は今、提督と結婚を前提にお付き合いしてるのです、ゴメンナサイ」

 

 

 

その言葉で世界が暗黒にみえた気がしたものだ。

今思えば、いい年したオッサンがなに中学生みたいに…って苦笑いするところだ。

 

あの日、フラれたショックで盗んだバイクで走り出したい気分にとらわれたが

それは犯罪なので、おやっさんの実家に連絡しておニューのバイクを即金で契約。

届くのは3日後とのことで、仕方がないし、泣き顔みられたくないから

おやっさんに頼んでタロー(犬)の散歩にいってきます、と、夜の舞鶴に飛び出した。

 

 

 

 

多少街灯のあかりがともってはいるが、暗い波止場に一人と一匹。

オレはタローには申し訳なかったが、そこでわんわん泣き出した。

 

 

 

「うおおおぉぉぉぉ!!!おおおお!!!!」

 

 

 

海に向かって叫びながら、流れる涙と鼻水を拭いもせず、ただただ泣き続けた。

 

 

 

いつまでそうしてただろうか、少し落ち着いてタローの散歩を再会しようとしたその時。

 

 

 

「おやおや、青春ゴッコってかぁ?オッサン」

 

 

 

見渡すと、薄暗い街灯に照らされた10数人の若者が集まっていた。

いままで気が付かなかったか、そばには暴走族っぽいバイクが多数停められている。

 

ガムをクチャクチャしながら鼻ピアスの金ぴか頭の男が

 

 

 

「せっかくココで酒でも飲もうとおもってたのによぅ何邪魔してくれちゃってんの?」

 

「そうだぜぇ~やべぇぜオッサン、カズちゃん怒ったらパネェからよう」

 

「とっとと、どっかいけよ、フケた中学生!」

 

 

 

ギャハハハと大爆笑の暴走族たち。

 

オレはかかわっちゃいかんのに近づかれちまったなぁと、そのまま後にしようとした。

そこでタローが族に向かって吠え出したのだ。

 

 

 

「ガルルゥゥゥ、ワン!ワンワン!」

 

「なんだぁ~このくそ犬、オレ様に向かってイキってんじゃねぇよ」

 

 

 

ドガッ

 

 

 

「キャイン」

 

 

 

タローは鼻ピアスにけられてもんどりうった。

 

 

 

「なんてことをしやがんだ!相手は子犬だろう!?」

 

「うるせーよオッサン、てめーの犬ならちゃんと躾ろってんだよ」

 

 

ドガッドガッ

 

オレは鼻ピアスに蹴られまくっていた。

まともに腹に一発受け、くるしさにへたり込んでしまう。

 

 

 

「おぃぃここは土下座だろ~オッサン中学生?ぇぇ?」

 

 

 

糞、なんでこんな奴らに何もできないんだオレは…。

 

 

 

「はやくしやがれよ」

 

ドカッガスッ

 

 

 

まるでサッカーボールのように蹴られまくるオレ。

痛い、まるで息ができない、くそっ、タローすまんオレの所為で…。

 

 

 

 

パィィィーン

 

あれ?2stバイク???

 

キキィー

 

今時2stライダーもおったんやなぁ

 

シュタッ

 

次の瞬間、誰かがオレのそばに着地した。

ぼんやりとだが、小柄で首に闇にも映える白いマフラーを巻いた(夏なのに!?)少女らしかった。

 

ガシャーン

 

2stバイクが転倒して、彼方に滑っていく。

 

オレは、あーもったいねー、と場違いな感想をつぶやいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんだてめぇわよ?」

 

 

 

鼻ピアスがすごんだ声を上げる。

 

 

 

「…よくもアタシの大事な友達に手を出したな?」ゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

見間違いだろうか、少女からは赤いオーラが立ち上っているように見えた。

闇の中に赤く燃え上がった瞳だけがみえる。

その視線の先には族たちがいた。

 

 

 

「なんだぁ?スーパーヤサイ人のマネってかぁ?」

 

「ギャハハハハ」

 

「ガキは帰っておべんきょでもしとっけての」

 

 

 

ブンッ スカッ

 

 

 

鼻ピアスは少女を蹴ろうとして、思いっきりハズしていた。

 

 

 

「このアマ!」

 

「シッ!」ドガッ

 

 

 

少女の拳が鼻ピアスの腹に突き刺さる。

そのまま鼻ピアスは崩れるように倒れてしまった。

 

周りを取り囲んだ族たちの雰囲気が一変する。

 

 

 

「こんガキャいてこませ!!」

 

 

 

それぞれ手に角材や鉄パイプ、金属バットなど持ち、少女に襲い掛かかろうとする。

おまえら素手の女の子に武器もって囲むとか…。

ヤバイよそこの女の子、はやくにげてくれ。

オレは声にならない声をあげた、その時!

 

 

 

 

 

 「収錬!絶対無敵!!」ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

中腰に構えた少女の怒声が波止場に響き渡った。

 

 

 

「…なんじゃそりゃ、アホがぁ……、てめーらやっちまえ!」

 

 

 

腹をおさえてうずくまる鼻ピアスの号令に、一気におそいかかる族達。

 

その後の展開は常識をはるかに逸していた。

瞬きする間に、少女よりも大柄な男たちが、次々と倒れていく。

あるものはすごい轟音と共に吹き飛ばされてゆく。

 

オレこれ知ってる、ゲームでだけど見たことある。

たしか…そうだ!二の撃要らずの八極拳!!??

 

 

瞬く間に10数人いた族は、鼻ピアスを残し、身じろぎ一つする者さえ居なくなっていた。

 

 

 

「ば、ばかな…12人のオレの舎弟が、たった3分ももたずに…」

 

 

 

テクテクテク

 

 

 

当の少女は鼻ピアスに近づき、彼の髪を持ち上げる。

 

 

 

「ひぃぃぃバケモノ…いててててててて」

 

「悪夢を見せてあげる」

 

 

 

そう言うと、少女はおへそのあたりに力を籠めると、空いた手のひらを鼻ピアスのはらに軽く添えた。

 

 

 

 

 ドンッ

 

 

 

 

 

鼻ピアスは口から泡を吹き崩れ、それを汚いモノをみるような目で少女は放り捨てた。

 

 

 

 

 

「ぽいぃぃぃ」

 

 

 

深く息を吐いて、なにやら構えを解く少女。

 

は、ぽい???ってポイ?

 

 

 

「またつまらんモノをたおしてしまったっぽい」

 

「夕立なのか?」

 

「アレにいやん?なんでこんなところで寝てるっぽい?」キョトン

 

「寝てねーし」

 

 

 

 

あれ?オレを助けに来てくれたんじゃあ…。

 

 

そう思っていると、夕立はタローに駆け寄り、よしよしと撫でまわしている。

タローも嬉し気にペロペロと夕立のホッペを嘗め回していた。

 

………あー。お友達って…タローの事なのね、納得。

 

 

 

 

オレはとても寂しかった。ガクリ

オレは気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一連の出来事をナイトスコープで覗く人影が2つ。

 

 

 

「姉上終わったようですよ?」

 

「よかった、大事にならなくて…でもにいやんが…」

 

「ふむ、派手に蹴られていたな」

 

「私介抱してきます、武蔵ちゃんは夕立ちゃんをお願いね」

 

「心得た姉上」

 

 

 

二人は夕立たちに向け歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?なにやら後頭部が暖かくて、おでこが冷たくて気持ちいい。

どうやらオレは気をうしなっていたらしい。

ぼんやりする頭で思い出すと、そうだオレは…てか夕立は?

 

目を開けると、そこには心配げな表情をした大和がいた。

なんとオレは大和の膝枕でねむっていたようだ。

おでこには大和のやわらかくて冷たい手が添えられている。

 

 

 

「にいやん?気が付きました??」

 

「お、おぅ」

 

 

 

目線をあわせるのが恥ずかしくて、そっぽを向く。

 

 

 

 

「ところで夕立は?」

 

「武蔵ちゃんのお説教タイム受けてます」

 

「そうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「すこしは加減をしろ夕立」

 

「だって~タローいじめる奴に加減なんてしたくないっぽい」

 

「殺してしまったら取り返しがつかんのだぞ?」

 

「でも~」

 

「デモもストライキもない!大体いつも言ってるだろう、闘わずして勝てと」

 

「むずかしくてわからないっぽい~」

 

「…まったく、本気出したいなら今から私が相手になろうか?」

 

「ぇー武蔵さん次元がちがうっぽいからパスっぽい」

 

 

 

なにやら物騒な会話が聞こえてくる。

内容からして、武蔵は夕立の師匠?なのか???

 

 

 

 

「なぁ大和、オレなにも出来なかったよ…」

 

「まぁ世の中そんなに甘くはありませんし」

 

「だよな」

 

 

 

「ねえ、にいやん」

 

「なんだ?」

 

「悲しい時は思い切り泣けばいいんです、それでいいんです」

 

「……見てたのか???」

 

「はい」

 

「どこから?」

 

「……赤城さんにフラれた所から…です」

 

 

 

ブフォ!

最初からやんけ!

 

 

 

 

 

「いいですよ?今なら私しか見ていませんから」

 

大和の言葉がスイッチだったのか、オレはしずかに泣き始めた。

 




はい、過去のお話し第一回目終了です。
殺陣のシーン、もっとかっこよく書きたかったですが
ここらが限界のようです。

精進せねば、ですね。

次回もこのつづきからです。

お楽しみに!


【キャラ紹介】その12:カズちゃん(鼻ピアス)22歳

 19の頃から暴走族を結成、そのリーダー。
 本文では三下のやられキャラだったが、それなりに有能。
 夕立にのされて改心し、のちに白バイ隊員となる。
 以後、夕立は「お嬢」武蔵には「姐さん」と呼ぶようになる。
 釣りが大好きで、非番には舞鶴などで日がな一日つりを楽しむ。
 病弱なとしの離れた妹が居る。





本文一部修正しました。

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