オーバーロード ー小鬼の調停者ー   作:ASOBU

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はい、いつも通りの投稿ペースですね……

熱いとダメです

9月になりましたがまだまだ油断できませんので熱中症にはご注意を


丘陵地帯へ

「ふーん、あんたが新しく傘下に加わった亜人ね」

亜人連合軍宿営地、その数キロ手前にて、ネムが呼び出した魔導国からの助っ人にバザーは今日何度目かの平身低頭を見せていた。もはやプライドなぞ持っているだけ害悪だ。

規格外の王の部下は規格外。少し考えれば誰でも理解できる。

「ちゃんと調教もできてるみたいだし……まぁ及第点かな」

そう言ってバザーを騎獣の上から見下ろす小さな闇妖精。本人と騎獣の銀狼、それだけで恐らく10万を超える亜人連合が滅ぼされるだろう。隠す気もない気配はそれを如実に伝えてくる。

そして、今更ながら王を過小評価していたことに気づく。

魔導王は周囲にいる者を委縮させないためにその力のほとんどを隠しているのだろう。

幹部だというこの闇妖精ですらこれなのだ王の力を測るものさしなど想像もつかない。

「じゃあ、ネム、部族長はそっちでいいのね?」

「はい。アウラ様は戦えない人たちを囲んでる悪魔さん達を追い払ってください。部族長さん達はネムとバザーさんで説得します!」

「……デミウルゴスが策を与えたのなら大丈夫だろうけど。ネム、あんたが怪我するたびにアインズ様が悲しむから怪我しないように。そこのあんた、ネムに怪我させたらどうなるか、理解してるわね?」

「無論です。この命に代えましても必ずや」

それに関しては言われるまでも無く。この少女がバフォルクを含む全亜人種族の、否、『この大陸に住まう全生物の存亡を担う存在』だという事は重々に理解した。

万が一ネムが死亡し、魔導王がネムを手にかけた下手人に、生者に敵意を向けたなら。

確実に、間違いなく世界は悉く滅ぶ。残るのは蠢く死者だけだろう。

それは一部族の問題などではなく。バザーは密かに決意を固めていた。

そして今、下賜された剣と鎧がある以上レメディオスの時のような醜態は晒せない。

「本来の護衛も二度目の失敗はしないでしょうし信用するわ。じゃあね、ネム。また後で」

「お待ちください、どうか、これを」

バザーが差し出すのは妻や部族の者に向けた手紙。羊皮紙にしたため血判も入れたため渡されさえすれば皆言うとおりにしてくれるだろう。

「はいはい、アインズ様から届け物があるなら請け負うように聞いてるからちゃんと渡してあげるわ」

これであちら側は問題ないだろう。

後は、ネムと共に可能な限り亜人を味方につけこの地を支配している幹部級悪魔を倒しきるだけである。普通に考えれば不可能と断じてしまうだろう。

「じゃ、いこー」

ネムの位置はバザーの肩の上である。病み上がりで歩かせるのは抵抗があったためこうなった。

いざ乗せてみれば、それこそハイキングにでも行くかのような気楽さで不可能と思われる事を成し遂げてしまうのだろう。

 

―亜人連合軍 司令部

約10万いると言われている亜人連合軍、そのうちヤルダバオトから待機命令を受けてアベリオン丘陵で待機しているのは主に5種族3万人。

その宿営地の内一際大きな天幕に各種族の有力者が集結していた。

「急な呼び出しをしてすまない。緊急事態が起きたためなのだ」

口を開いたのは形式上司令官の役割を担う亜人、『七色鱗』の二つ名を持つ蛇王―ナーガラージャ―のロケシュ。

「緊急事態、か。ようやく待機命令が解除されるのか? いつになったら俺達は動ける!?」

喰ってかかるように言葉を投げる亜人は黒い毛皮を持つ獣身四足獣―ゾーオスティア―という種族の強者。

「ヴィジャー殿、先に話をさせてくれ。質問などは後で聞こう」

『魔爪』の名を継いだばかりで戦功を欲しているヴィジャー・ラージャンダラーはずっと続く待機命令にうんざりしていた。そこへ齎された緊急事態の報である。期待しないわけがなかった。

「……わかった」

だが、場をわきまえるだけの知性は持ち合わせているので不満気にではあるが腰を下ろし聞く体勢をとる。

「うむ、では続けよう。先ほど悪魔の先触れから連絡があった。『豪王』バザー殿の敗北と支配都市陥落の報だ」

「何!?」

「なんと、あの豪王殿がか」

「俄かに信じられんが……」

この場に集まるのは十傑と呼ばれる力ある者たちだ。バザーもその一角に数えられる。

その一角が落ちたとなると確かに緊急事態と言えよう。

「驚くことにまだ話は続く。豪王殿は人間に一騎打ちで敗北、その後あろうことか恭順し……今こちらに兵を進めている」

「なんじゃ、それは?」

一際老獪な雰囲気を持つ亜人が思わず身を乗り出す。白く長い体毛に黄金の装飾品を多数身につけた彼は石喰猿―ストーンイーター―の王『魔猿』ハリシャ・アンカーラ。

「反逆、ということかえ? あの豪王殿が?」

まさかと驚く表情を隠しきれていない彼女は4本腕を持つ魔現人-マーギロス―という亜人の女王。『氷炎雷』の二つ名をもつナスレネ・ベルト・キュールという。

彼女はバザー同様次代を継がせる予定の一人娘を人質に取られ悪魔への恭順を受け入れた。その彼女からすればバザーの反逆という行為は信じられなかった。

「情報を直接受け取った私でもいまだに半信半疑だ。だが、物見を向かわせたところ少なくとも進軍は事実だ。それ故にこの場で対応を協議したい」

「豪王殿の部隊は3000と少ないが精鋭じゃな。下手にぶつかればタダではすまんな」

「10倍の兵力で包囲し押しつぶすにしても死兵となられては数の優位も怪しかろうて」

「ロケシュ殿、豪王殿の部隊に人間はいるのでしょうか?」

質問したのは半人半獣―オルトロウス―の将軍であるヘクトワイゼス・ア・ラーガラー。彼は稀代の用兵家としてその名を轟かす者だ。

「いや、いない。ただ、確証はないが一人だけ人間のような者が見えたらしい」

「では、伏兵の可能性は?」

「ないとは言い切れん」

「ならば、俺が斥候に出よう」

今まで黙ったままだったこの場にいる最後の一人が口を開く。

彼もまたヴィジャーと同じ種族獣身四足獣だが、少し変わっている。彼は影の中を走るといわれる野伏であり隠れ潜み不意を打つ暗殺術を得意とする。

二つ名を『黒鋼』と呼ばれるムゥアー・ブラクシャーだ。

「ふむ、ムゥアー殿に任せるとしよう。では残りをどうするか?」

「一族の存亡がかかった場面じゃ、捨て身の豪王殿を生半可な者で止められるとは思えん。故に儂は強者のみでこれに当たることを提案するぞ」

「確かに。いつ解除されるかも知れぬ待機命令の最中だ。徒に兵を減らすわけにもいくまい。では、ヘクトワイゼス殿に兵を任せ包囲陣形を取ってもらい残りの4人で豪王殿に当たる。これでどうだろう?」

ロケシュが纏め他の者もそれに同意するように頷く。

「ロケシュ殿や、豪王殿と相対したら戦端を開く前に少し時間をくれんかえ? 何故かの者が反旗を翻したのか、興味がある」

女王たるナスレネはこの状況下で逆徒となったバザーが不思議でしょうがなかった。

比較的似た境遇であるはずなのに。

「それは確かに気になるな。よろしい、ヘクトワイゼス殿の包囲が完了次第会談の時間を設けるとしよう。ではいったん解散とする」

こうして会議は終了し亜人連合軍はバザーの到来に備えたのだった。

 

一方で宿営地まで2時間ほどの距離の地でネム一行は暢気にお弁当を食べていた。

「全員分ありますよ!」

ネムはポーチから次々と弁当箱を取り出す。中身は副料理長お手製のスタミナ弁当。素材はエ・ランテルから取り寄せた現地品なので本来の性能とまではいかないが名前通り持久力に大きなバフを齎す。アウラと合流した際にネムが受け取りそのままポーチへ格納していた。

人間より体格の大きなバフォルクには少々量が物足りなかったが全兵員分用意されたソレを食べたバフォルク達は湧き上がる力に驚きを隠せないでいた。

場合によっては10倍の兵力と事を構えることになる。バザーから聞かされていたがそうなってしまっても何とかなる様な気にさえなる。

「肉とは手の加え方を変えるだけでこのように変わるものなのか……」

一方で真剣に考え込む者も。元王であり種族内では高水準の食事をしていたバザーだ。

バフォルクにも料理という考えはある。が、岩塩で肉を煮込むとか香草と共に肉を焼くとかその程度のものだ。目から鱗が落ちた。

バザーもあまりの美味さにがっついてしまい弁当箱はすでに空。

隣では専用弁当(バフもりもりの特別製。素材もすべてナザリック産)を少しずつ味わって食べるネムが。その隣には野菜をぽりぽりと齧るうさぎと姿は見えないがこんがりと焼けた大きな肉塊にかぶりつくドラゴンもいる。

まったくもって緊張感がない。

「バザーさん、足りましたか?」

「む、ああ、問題ない」

腹を満たすには足りていないがこの弁当がもたらすという恩恵は十二分に感じていた。

「ネムはもうお腹いっぱいです。残すともったいないので食べてください!」

本来なら残り物をもらうなどバザーのプライドが許さないのだが。

美味いものをもっと寄こせという身体からの要求を、きゅるきゅるきゅると妙にかわいい腹の虫の声を聞かれてしまえば拒否するという選択肢は無かった。

にこにこ笑顔と共に差し出された小さな弁当箱を受け取ると気恥ずかしさを紛らわせるため速攻で食べきった。

「デザートもありますよ?」

デザートは流石に全員分用意できなかったのでネムだけだ。ナザリック第6階層の果樹園で栽培された数種の果物が綺麗にカットされ小さな器に盛られている。弁当もそうだが保存の魔法が掛けられておりみずみずしい状態に保たれている。

流石にバザーもそれに手を出すのは躊躇われたので断っておく。

「ふう、満腹満腹。すぐ動きますか?」

「いや、先ほど5人ほど偵察に向かわせた。そろそろ戻ってくるはずだ」

「え、じゃあ、お弁当は……?」

「……持たせていないな」

ネムが休憩すると言い出したのですぐに偵察部隊を派遣した。それ故彼らは貧乏くじである。

「じゃあ、少し先に進んで迎えに行きましょー」

腹が膨れて元気になったのかネムは先んじて歩き出す。

まぁ、疲れたと言い出したらまた肩に乗せようと考えつつバザーは全軍に合図を出し進軍を再開した。

 

しかし、その足は間もなく止まる。

 

「この傷……完全なる不意打ち……『黒鋼』か」

30分も歩かないうちに先に進んだ偵察隊の死体が転がっていた。

死体はすべて一刀のもとに首を切られておりその技量から相手が見えた。

「奴が偵察に来ているとなるとこちらの情報はすべて筒抜けだな」

あの男相手では何人偵察に送っても意味がないだろう。そしてこちらの情報はすべて握られているだろう。もう少し進めば全軍が待ち構えているに違いない。

ふと見るとネムが死んだ兵士の前で手を組んでいた。

「ここは戦場だ。死者に一々祈っていては聞く側の神とやらも飽きるぞ」

「それでも、です」

「……そうか、好きにしろ」

バフォルクにしてみれば意味の分からない行為だがよく考えるまでも無くネムは人間。種族が違えば考え方も違う。

王の下ではすべての種族が平等だというが種族の個性はどうやって折り合いをつけるのだろうか。どのような種族であれ折れたくない部分も少しくらいあるだろうが。

「バザー様、やはりすでに迎撃準備は整っているようです」

部隊の先頭は小さな丘陵の頂上に差し掛かっていた。そこから見えたのだろう。

「わかった。そのまま陣形を維持しろ。おそらくいきなり仕掛けてはこないとは思うが……万が一の際は俺が行くまで持たせろ」

「はっ」

「ネム、先を急がねばならない。そこまでにしておけ」

「大丈夫、終わったよ」

「そうか。なら肩に来い。少し走るぞ」

「はーい」

本当は小脇に抱えて走る方が速そうだがここまでくる間妙に気に入っていたので肩に乗せ、あまり揺れないように気を使いながら速度を上げる。

「わぁ……すごい数」

「見える範囲以外にも兵はいるだろう。すでに後方にも回り込まれているかもしれん」

待機部隊に用兵に長けたあの男がいるのだから間違いはなさそうだ。

そして、予想通りなら奴らも出てくるはずだ。

「バザーさん、強そうな人達がいます」

「ああ、予想通りだ」

丘陵に残された兵力は3万。それらに対して悪魔はいつでも動けるように待機せよとの命令を出していた。その命令は最上位であり、何かしらの障害が発生して『いつでも動けるように』なっていなければそれこそ悪魔から何を言われるかわかったものではない。

そこそこ強力な部族が反旗を翻し待機部隊に向かっているという知らせを受ければとれる動きは決まってくる。斥候能力の高い者もいるのだから有利な地形での待ち伏せからの包囲殲滅。先頭には強者が立ち初撃で痛打を叩き込む。

「……予想通り、か。こちらとしては逆だな。人間どもに唆され死兵となって玉砕しに来るのかと思っていたが……普段より落ち着いて見える」

「久しいな、ロケシュ殿。見ての通りだ。俺に戦意は無い」

「何を馬鹿なことを! 人間に尻尾を振り部隊をここへ向けた以上反意は確実! 戦意が無いだ!? 『豪王』とあろうものが、その名が泣くぞ!」

「『魔爪』殿。先に訂正させてもらう。ここにいるのはただのバザーだ。バフォルクの長ではあるが豪王ではない。王を名乗るのはやめたのだ」

「どういうことなのじゃ? 王をやめた? 何を言っておる? そもそも反旗を翻す意味をお主が忘れるわけがあるまい?」

「無論だ、ナスレネ殿。本来なら残してきた者が皆殺しにされるだろう。だが、逆に考えてみるといい。そうならない自信があるからここにいる、と」

「なるほどなるほど、豪王殿……失敬、バザー殿は囮。悪魔が守る居住地へ人間の部隊が、それもおそらくかなりの精鋭部隊が奪還に向かっているという事じゃな?」

「あのー、ネムからもいいですか?」

聞いた事のない声。亜人の強者達の視線はその声の主へ。

そこで今更ながら人間の子供がバザーの肩に座っていることに気づく。

「えっと、右から『虹色鱗』のロケシュさん、『氷炎雷』ナスレネさん、『魔猿』ハリシャさん、『黒鋼』ムゥアーさんで合ってます?」

その子供が自分達の名前まで把握していると知りさらに驚く。

一人を除いて。

「ふざけるな! 俺は『魔爪』だ! 『魔爪』ヴィジャー・ラージャンダラーだ!!」

「あ、ごめんなさい。どっちかなーって悩みました」

つまりもう一人のゾーオスティアについても把握している。この娘はそう言っている。

何者なのか? 亜人の強者に囲まれていながら平然としている様子からしてただ者ではない。ヴィジャーを除く3人の警戒度が一気に上がる。

ヴィジャーは怒り狂いつつもひどい違和感に戸惑っていた。名を間違えられ殺気立っているにもかかわらず、それを向ける先が無い。名前を間違えたのは目の前にいる人間の子供のはずなのだが。

「バザー殿、ソレは……なんだ?」

把握しにくいためかロケシュは言葉を濁しつつ問う。

「はい、ネムは特使です。アインズ・ウール・ゴウン魔導国から来ました!」

なお、ネムの本籍はガゼフの養子であるため王国にある。が、ネムはいまいちその辺を理解していない。少なくとも今はアインズ様の特使としてここにいるつもりだ。

「魔導国、だと? アンデッドが興した国と耳にしたが……人間もいるのか? そもそも、お前は人間なのか?」

熱を感知するピット機関を持つロケシュだが目の前にいる存在を人間であると断定する自信は無かった。確かに冷たい死の気配はないが逆に熱の大きさが安定しない。見た目通りの時もあれば巨大な『何か』に見える時もある。通常ならこのような揺らぎはあり得ない。

「ネムは人間だよ? えっと、ね。特使として来た理由はアベリオン丘陵の亜人さんに魔導国の民になってもらいたくて!」

「「「「……は?」」」」

理解できないという表情を浮かべるロケシュ達。種族が違えばその表情などは本来読み取りにくいもの。しかし、今に限れば誰であっても理解できてしまうほどあからさまになっていた。

バザーは、まぁ、そうなるなと一人頷く。誰だってああいう反応になるだろう。

100人に聞けば100人がまず正気を疑う。

「アインズ様の国は誰もが安心して暮らしていけるすごい国になります! 人間も亜人も異形種も関係ありません!」

ロケシュ達は呆然としている。

「と、いうお話をしても誰も信じてくれないのでこうしましょう」

想定通りの反応を見て、やはり言葉だけでは理解してもらえないと受け入れる。

少なくとも聞く耳を持ってもらわないとダメなのだ。

だからこそ、亜人の事を勉強し『とりあえず、圧倒的な力でねじ伏せること』が重要と理解した。

殺し合いは嫌いだが守ってくれる仲間とちゃんと手加減ができる攻め手がいるからそうはならない。ちゃんと薬もたくさんもらってきた。準備もばっちり後は一方的に降参させるだけである。

ブレスレット型の早着替えアイテム(アインズ様の目の前で着替えた時渡された)を使い普段着からメイド服へ。

中央についた宝石を押して決められたポーズを取れば体がキラキラ光り、そのままくるくる回ればあっという間に着替えが終わる。

へんしんばんくとはいったいどういう意味だろう?

続いてポーチから斧とボールを二つ。

一つには時間を操るお友達が。もう一つには最近戦士としての格が上がり鎧を装備できるようになったと大喜びしていた相棒が入っている。

「ネム達と勝負してください! ネムが勝ったら一緒に悪魔さんやっつけに行きましょう! 負けたらなんでも言うこと聞くよ?」

事態についていけないのか罠の可能性でも考えているのか総大将たるロケシュは眉間に指をあて何やら考え込んでいた。

ハリシャは地面を叩いてゲラゲラ笑い、ナスレネは憐みの視線を送る。

ちょっとネムの想定とは違った。今の言い回しには『お約束』が存在すると教わったのだが。

まぁ、でも特に問題なかった。少なくとも一人は乗ってきてくれているから。

「悪魔さんが強いから従ってるんでしょ? じゃあ、ネムやアインズ様がもーっと強ければお話くらい聞いてくれるよね?」

相手が人間ではないので読み取りにくいが明らかに信用されていないのがわかる。

だからこそ、もう一押し。

「それとも、勝負を受けないのは……ネムには勝てないって本能で理解してるから?」

ギシリと空気が軋む。

直接殺気を向けられたわけではないバザーでも思わず身構えるほどの殺意。

それでもネムは怯む様子もない。自分が想定外の行動を取らない限り絶対に安全だという確信があるから。

「その挑発乗ってやる。八つ裂きにされてから後悔しろ、人間!」

何か隠し玉があるからこその挑発であるという事はヴィジャーも重々に理解していた。

それでも、ヴィジャーには許せない言葉であった。

彼は己が武器『刃翼』というバトルアックスを身構え進み出る。

「やらせてもらうぞ、ロケシュ殿」

「止めても止まる気ないだろうに」

「当たり前だ」

「勝負ですね、準備します!」

 




・変身ブレスレット
目の前で着替えだしたネムにアインズが与えたもの。
これを使えば装備をマイセット登録できる。ボタンを押して決めポーズをとると装備変更が完了する。ボタンを押した瞬間から着替え完了まで短時間だが一切の被弾判定を無くす効果も。ブレスレット型だが通常の装備枠外に設定できるため他の装備品と干渉せず消耗品でもないためごく一部には重宝された。なお、消耗品かつ課金品で同様の効果を持つアイテムもあるがこちらは折るだけというワントリガーで装備変更できるためこちらを使うプレイヤーの方が圧倒的に多かった。



変身中の魔法少女は無敵
あ、ここテストに出ます。

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