オーバーロード ー小鬼の調停者ー   作:ASOBU

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個人的ドラゴンに言わせたいセリフランキング一位
ひかえ目に言ってDエンドのアンヘル大好き

12巻読みました。あとがきにちょこっと内容に関して書いてます。


接近&遭遇

悪魔を倒したその後、エンリは周囲の冒険者から向けられる目が怖くてその場を離れた。

その視線に込められていたのは畏怖。

やはり姿をみせたのは失敗だったと思った。

オラサーダルクに頼み一緒に隠密化して上空へ。そこでオラサーダルクが一か所に集められている人間の気配を察知した。

今度はこっそりと助けに向かおう。そう決めて隠密状態のまま大きな倉庫の上空へ。

そこに、ソレはいた。

屋根の上に座る金髪の女性らしき姿。仮面で顔を隠している。

何であんなところに、と思っていたらその女性はオラサーダルクを見た。

少し驚いた様子の女性。オラサーダルクも看破されたのだと気づいて警戒する。

そして、エンリと視線が合った。

仮面越しでも驚きが伝わってきた。女性は俯き肩を震わせる。

次の瞬間、女性は紅い鎧を身にまとい独特な形の槍を構え歓喜の笑みを浮かべてエンリを見上げ絶叫した。

「みぃーーーーーつけたぁーーーーーー!!」

オラサーダルクが回避できたのは本当に幸運だったといえよう。

視認できないほどのスピードで、オラサーダルクを即死させるつもりの突進はギリギリのところで片腕を吹き飛ばすにとどまった。

「エンリ、しっかりつかまっていろ!」

ドラゴンの生き物としての本能が告げていた。オラサーダルクは強者だ。だが、アレはそのはるか上にいる存在だと。逃げ切れる可能性は絶無。戦い抗っても生き延びる可能性は皆無。だが、アレがエンリを狙っている以上止まるという選択肢もまた存在しない。

心を縛る恐怖をねじ伏せ、方向も定めず全速力で翼を動かす。あっという間に王都上空を離れてそれでも止まらず。

かなりのスピードで、かなりの距離を飛んでいるハズなのに。それは前方にいて。

「ざーーーーーんねぇーーーーん!」

最高に楽しそうに声を張り上げた。

相対してしまった時点で詰みなのか。

逃げることもかなわず勝つことも不可能。

「何なのだ、これは! どうすればいいのだ!?」

誰に問うでもなく恐怖から衝動的に口に出たソレはエンリにちゃんと聞こえていて。

幼子をなだめるようにオラサーダルクの背を撫で己が願いを声にする。

「お願い、オラサーダルク。勝って!」

主の願いが体に染み渡る。少しでも邪魔にならないようにとオラサーダルクの背にしがみつくエンリの体温が心地よい。

数秒前まで混乱し恐怖していた自分が嘘のよう。

体中に力が満ちていく。

「ふははははっ、無様な姿を見せてしまったな。振り回すぞ、エンリ!」

それが無駄な抵抗と知ってはいても、振るわれずして何が剣か。

オラサーダルクは獰猛に牙を剥くと翼を打つ。

スピードで勝る相手にできることは少ない。絶対強者が勝ち誇り油断している可能性、今に賭ける初撃必殺。

大気を輝かせる渾身のブレス。それと等速まで加速し着弾と同時に残った片腕で繰り出す超高速の爪撃。

甲高い金属音。アイスブレスを物ともせず小さな化物はオラサーダルク渾身の一撃を槍で受け止めた。与えた影響といえば受けた瞬間、想定以上に威力があったのか少しだけバランスを崩した程度。その表情に少しの驚愕をもたらした程度。

覚悟していたとはいえ、あんまりな実力差に乾いた笑いがこぼれそうになる。

カウンター気味に、とはいえ、ぞんざいに振り払われただけのランスの穂先はオラサーダルクの脇腹辺りを一文字に裂き白い鱗を赤く染めた。

「雑魚ドラゴンと思っていたけど、私にダメージを通すだけのレベルではありんすね。では、ご褒美に『特殊技術』を一つだけ使ってやりんしょう」

本気ですらなかったという。そんな相手が何か使ってくるという。

オラサーダルクは何が来ても対応できるように―出来るとは思っていなかったが―身構える。

化物が手にしたのは召喚した光の槍。濃密な魔力を纏った致死の兵装。

直撃したら死ぬ。

大きく振りかぶって投擲。思ったよりスピードの遅かった光の槍を回避。嫌な予感がして通り過ぎるハズの光の槍を視界の端で追う。

曲がった。真横にきた途端、光の槍は直角に進行方向を変えたのだ。

羽ばたきによる回避行動はすでにとっており2度目の回避不能。幸いエンリには当たらない位置。

あくまでエンリに当たらないだけであり、槍は片翼の根元に大穴を開けた。

そして、回避の為に羽ばたいた勢いでオラサーダルクの片翼は根元から引きちぎれた。

「ぐがぁ!」

片翼では飛ぶことができない。百m上空から地面にたたきつけられれば強固な肉体を持つドラゴンといえども無事では済まない。ドラゴンよりはるかに脆弱な肉体を持つ人間など言わずもがな。

このまま一緒に落下すれば間違いなくエンリは死ぬ。

一か八か。オラサーダルクはエンリと自分を繋ぐロープを切った。そして、エンリを上に突き放すように押し出した。同時にもがいていた翼を閉じ落ちる向きを調整する。

地面に叩きつけられるタイミングをほんの少しでもずらす。自分が先に地面に叩きつけられた後瞬きするだけの時間があればあるいは。

体中がバラバラになったかのような衝撃。全身の骨が砕けて気が遠くなるような激痛が走る。折れた骨が内臓をえぐったのだろうか喉の奥から血があふれてくる。裂けた脇腹からはぐしゃぐしゃになった内臓の残骸がどろりとあふれ出た。

だが、死んではいない。死ぬ前にやることがある。

猶予はコンマ数秒。

翼を広げ翼膜でエンリを受け止める。翼の骨が何本もへし折れるが気にするほどの事でもない。比較的柔らかい翼膜でも衝撃は殺しきれず、すでに意識を失っているエンリが大きく跳ね上がる。たったそれだけで全身が軋み耐えきれず悲鳴を上げた。

再び空に舞ったエンリは高度10mほど。脆弱な人間は十分に死ねる高さ。

ズタズタになった神経を全力でもってねじ伏せ尻尾を伸ばす。

タイミングを誤っても地面に叩きつけられたエンリは死ぬ。

もはや感覚の無い尻尾で力加減をし損ねても骨を砕かれエンリは死ぬ。

何という綱渡りか。

幸いにももはや痛みはない。痛みとは危険を知らせる警告でありもう死に片足どころか首まで浸かっているオラサーダルクには関係がない。

極限の集中。

刹那、エンリの体を捉え尻尾をばねに衝撃を殺しきる。

何とかなった。酷使した己の肉体は見る影もないがエンリに少なくとも外傷はないようだ。

もしかしたら骨の何本かは折れているかもしれないが自然な呼吸や顔色から大事には至らないと判断しそっと草地に寝かせる。

アレが地上に降りてきた。おそらく何の意味もないだろうが、オラサーダルクは最期の力を振り絞りエンリを隠すように立ちふさがった。

ゆっくりと体を起こし小さな化物を王たる威厳をもって見下ろす。

「来るがいい化物……相手してやろう」

 

そして―

 

 

「早いなぁ……保険かけにわざわざ遠くまで行ってきたというのに、それが効く前に動いちゃったか」

ジュゲムがいる場所、それは王都を囲む城壁にある尖塔の屋根の上。

超高速で飛んで行ったオラサーダルクと追跡者を見送っていた。

傾城傾国を手に入れた時にいたナニカ。元気にオラサーダルクを、ではなく傾城傾国を着たエンリを追っていた。想定通り勘違いしてくれているようで清々しいほど。

「ガキ共を連れてっても仕方がないだろうし……また一人で綱渡りかよ。自分で選んだ道とは言え嫌なもんだねぇ」

やる気無さげにぼやく。

「インベルンの嬢ちゃんの協力をと思って王都に来たのに。……くそババアに払った情報料もったいなかったな。まあ、結果オーライだし、これでいいっちゃいいんだが」

ため息を一つつくと気持ちを切り替える。事態が動いてしまった以上さっさと行動しなくてはならない。

「さぁて、100年ぶりの……お仕事の時間だな」

じゃらりと鎖が腕に巻き付く。

次の瞬間その姿は消えていた。

 

 

「キーリ」

王国農民の朝は早い。日が昇るとともに起きて働く。ネムも農村育ちのため朝は早い。

だが、今日はまだ日が昇っていない時刻。さほど長い付き合いではないがこの時間に起きてくるのは初めて見る。

「キーリ」

姿を隠してはいるがばれている。隠密状態のまま場所を変えても移動先に向かって名を呼ばれる。おかしい。ネムにそんな力はないはずなのに。あのブレインという男ですら極限まで集中力を高めた状態でやっと気配を察知できたに過ぎない。

「キーリ!」

涙目になりつつ名を呼ぶネム。これ以上黙っているわけにもいかなくなり隠密状態を解除する。

「おはよう、ネム。今日は早いのね」

さも、今起きたかのように。半眼で睨んでくるネム。嘘は通じないようで。

「お姉ちゃんはどこ行ったの?」

「一緒に寝ているはずじゃ?」

「いなくなってた。オラサーダルクもヘジンもいない。どこ行ったのかしってるんでしょ?」

素直に答えていいものか思案する。例の炎の壁は先ほど消えた。だが、ほぼ同時刻にオラサーダルクの気配が遠くへ離れていき感知できる領域から出て行ってしまった。ヘジンマールも追いかけていったようだがおそらく追いつけてはいないだろう。

少なくとも何かあったのだ。あのオラサーダルクが形振り構わず逃走を選ぶほどのナニカが。

正直嫌な予感しかしない。

「お姉ちゃん、かえって来る、よね?」

もちろんすぐに帰ってくるというのは簡単だ。だが、納得はしないだろう。

正直に、最悪の想定も踏まえて聞かせるべき。そう判断し口を開きかけたその時。

「ははははっはは、母上!」

空気を読まない息子が降ってきた。勢いあまって着地失敗し転倒、地を揺らす。隠密状態にすらなっていない。着地の振動や姿をさらし飛んできたことによって大騒ぎになっている気がする。

「落ち着きなさい、ヘジンマール。何があったのか、何を見てきたのか話しなさい」

「申し訳ありません、母上」

ヘジンマールは2度3度深呼吸をする。そして、覚悟を決めたように。

最悪の想定を口にした。

「父上が……あの、父上が殺されました……」

何かの襲撃を受けたオラサーダルクはそれこそ全力で逃走に移ったらしい。ヘジンマールも必死に後を追ったが追いついた時にはすべて終わっていた、と。

「……お姉ちゃんは、いた?」

「いえ、近くに姿は……」

一瞬で決壊した。庭に突っ伏すようにして大泣きだった。

「ヘジンマール、近くに姿はなかったのね?」

「はい、探しましたがどこにも見当たりませんでした」

「ネム、聴きなさい。エンリは生きているかもしれないわ。ヘジンマールは死体を見ていないから」

生きている可能性は低いと思うが、わざわざエンリの死体だけ持ち帰る可能性も低いと思った。オラサーダルクがどこかへ先に隠した可能性もある。それをヘジンマールでは見つけられなかっただけかもしれない。

どちらにせよここにいては何もわからない。

ひょいとネムをつまみ上げると背に座らせる。

それだけで力はないが知恵はある息子はちゃんと察したようで先導するように飛び立った。

「ネム、泣くのは後にしなさい」

「……うん。ありがと、キーリ」

不思議なほどこの娘には優しくしてしまう。オラサーダルクはエンリの支配下にあるため影響はほとんどなさそう。ヘジンマールも知識を得て変質しているためかこちらも影響は薄いようだ。

だが、キーリストランは。

何と言っていいのか、ある意味母性本能に近いかもしれない。

場合によっては親子でも縄張りを奪い合うドラゴンが母性本能を語るのも変な話だとは思うが。キーリストランがネムに抱くのは大事にしたい、悲しませたくないそういった感情。

ネムに笑顔を取り戻させるため、冷静さを保つように自分に言い聞かせ空を駆ける。

 

「っ……」

ひどい有様だった。片翼は根元から引きちぎられ、腕も片方しかない。翼を奪われ高高度から墜落したのだろう。折れた骨が体中あちこちから表皮を突き破っていた。内臓もぐしゃぐしゃにつぶれあちこちからはみ出している。そんな状態にもかかわらず落下の痕跡から動いた形跡もある。さすがの生命力といえようか。

服が額の大穴から流れる血を吸って変色するのも厭わずに、少女はドラゴンの死骸にすがり泣いている。

自分とて目で見てみるとショックは大きい。だが、そこは人間とドラゴンの死生感の違いなのだろう。すぐに受け入れてしまった。悲しむ事はそれができるネムに任せればいい。

ヘジンマールに周囲の警戒を任せ何か残っていないか徹底的に探る。

調べてわかったのはオラサーダルクの血にエンリの臭いは混ざっていないという事。少なくとも出血するような怪我はしていない。ならば、どこかへ連れ去られた。

「……どうしてかしら?」

理由が思いつかない。そもそも、王都へ来たのは昨日だし悪魔による王都襲撃も偶然起きたに過ぎない。エンリと悪魔に与する者とに接点がない。

何か見落としていないか思考を進める。

 

「あれ、ドラゴンの死体が一匹って聞いてたんだけど?」

何の気配もなくそこにいる小さな影。

まだ100年も生きていないであろう子供のダークエルフ。

背後には濃密な魔力が渦を巻きそこから別の存在も出てきた。

ギュッと心臓を握られた気分を味わう。白銀の毛並みを持つ魔狼ににらみつけられただけで実力差を一瞬で理解させられた。

「シャルティアもどうせ『転移門』使うの自分なんだしあいつが働けばいいじゃん」

ダークエルフが何やらぼやいている。そこから漏れる怒気に触れるとこの場にいる絶対的強者が誰かこれまた一瞬で理解した。

キーリストランは不快に思われないようにゆっくりと地面に頭を付けた。オラサーダルクがエンリに見せたポーズ。最大限の敬服と服従の証。それしか選択肢はなかった。ヘジンマールもガタガタ震えつつ母に倣う。

「ん? ああ、相手の実力に気づくだけの知恵はあるんだね。どうしようかな、命令はドラゴンの死体を回収してこいであって、雑魚ドラゴンを拾ってこいじゃないんだよね」

雑魚と呼ばれても異を唱える気にもならない。

子供らしいかわいい顔で悩むダークエルフの次の言葉をひたすら待つ。

「よし、雑魚はいらないし死体にして運ぼう」

告げられたのは死の宣告だった。

「フェン、やっちゃって」

巨狼が動く。あのクラスの魔獣にとって彼我の距離などあってないようなものだ。

せめて、ネムだけでも逃がしたかったができそうにない。

後ろで震えるヘジンマールと共に抵抗したところで瞬き一つする間に殺されるだろう。

緊迫する空気を破ったのは守ろうとしていたネムだった。

人間など一瞬で挽肉にしてしまう暴威の前に軽い足取りで進み出る。あまりに想定外だったため止めることもできず。

「ねえ、わんちゃん。お姉ちゃん探すの手伝ってくれない?」

緊迫した状況に、あまりにそぐわない一言。

思わず目を閉じる。次の瞬間に何が起きるか想像できるから。

しかし、巨狼がネムの体を破壊する音は聞こえない。

「ありがとう、これお姉ちゃんのハンカチだよ。この匂いで探せる?」

唖然とした。巨狼の殺気はどこへやら。ネムの顔をぺろぺろと舐め親愛の情を示している。

「え、ちょ……フェン?」

この状況が理解できないのはダークエルフもだったらしい。困惑の表情で巨狼と少女がじゃれる姿を見ている。

ふと、あの表情を見たことがあったのを思い出した。王都であった人間にしては強そうな二人が見せたソレ。同時に思い出す。ジュゲムが仮定した上で話していたドラゴンがこの少女に敵意を覚えない理由。

人間種に発現する『生まれながらの異能』という力。一定確率で生まれた時から備わり効果は千差万別。まったく才能とかみ合わず無駄になるモノから場合によっては世界を変えるほどの力を有するものまであるという。

あくまで仮定だがとしたうえでジュゲムが口にした能力は―

「フェン、私はそこの雑魚を始末してって命令したよね? なんで?」

困ったようにネムを見る巨狼。

「お友達だからダメ!」

「お前は黙っていて! 私はフェンに聞いているの!」

相反する二つの命令。主の命令と逆らってはいけないという本能とその本能が訴える少女のお願いに板挟みになり巨狼は動くことができなくなった。

それを見たダークエルフから濃密な殺気があふれ出る。一瞬でも気を抜けば意識が飛ぶほど。いつの間にか手には鞭が握られている。

「そう、そいつに従うんだ。それならそいつを始末してから、もう一度誰が主か教育しなおしてあげる」

人間相手だからだろう。振るわれた鞭はキーリストランにでも視認できるほどの威力だった。人間一人殺すならそれで十分なのだが、何もない所から飛び出した太い鞭のようなそれには弾かれてしまう。

「クアドラシル……あんた、まで?」

今の今まで全く知覚できなかった魔獣の舌が伸びダークエルフの一撃を反らした。

理解できない事の連続でダークエルフの動きが止まった。

介入するのは今しかない。言葉を間違えれば死ぬ。信じてもらえなくても死ぬ。必要以上に不快感を与えても死ぬだろう。緊張で吐き気すらしてきた。だが、やるしかないのだ。

「いと高き御方、どうか発言をお許しいただけないでしょうか?」

「何さ!?」

視線だけで殺されそうだった。後ろにいたヘジンマールはすでに意識を手放している。これに関しては情けないなどといえない。正直キーリストランもそれができたらどれほど楽かと思うほどだったから。

「この人間にはいかなる獣も魔獣も等しく逆らうことができません。我らも主と認め従っております」

「この……ただの子供が私の支配力を上回っていうの!?」

「人間には『生まれながらの異能』といものを持つ者がおります。この娘が持つ力もおそらくそれによるものなのでしょう」

『生まれながらの異能』という言葉を聞いたとたんダークエルフから怒気が薄れた。

キーリストランは表情に出さないように安堵する。

ただの賭けだった。ネムの力に興味を持ってもらう事ができたならこの場で殺されることは無いかもしれない。むろん、脅威に見られて即殺される可能性も高かった。

「『生まれながらの異能』……アインズ様が仰っていた調べるべきこの世界固有の力……」

悩むそぶりを見せるダークエルフ。実際はほんの数秒だっただろうがダークエルフが黙り込んだその時間がとても長く感じた。

「あんた、ついて来なさい。少し検証してから価値ありと判断できたらアインズ様にお伺いを立ててあげる。協力するなら姉とやらの捜索許可をいただけるかもしれないわ」

「うん、じゃあついてく!」

ネム即答。とりあえず、この場は繋いだらしい。

「……こっち」

本当なら神聖なるナザリックに人間を連れていく事に大きな抵抗があった。

だが、この力の解明はナザリックの為になるかもしれないという可能性も無視できない。

自分ごときでは判断できないため不敬とは思いつつも至高の御方に判断を委ねることにした。

「死体の回収は一旦保留。みんな戻るわよ」

「どうか、私も同行をお許しください!」

「好きにすれば? 死ぬかもしれないけど」

ダークエルフは興味なさそうに魔力の門をくぐっていった。続いていつの間にか巨狼の背に乗ったネムが物おじせず続く。

「ヘジンマール、起きなさい」

尻尾の先で気絶している息子を引っぱたき覚醒させる。

「お前はオラサーダルクの側にいて獣が寄ってこないように見張っていなさい」

「母上は……?」

「アレの向こうの世界へ。……お互いの運が良ければまた会えるかもしれないわね」

キーリストランは覚悟を決めてソレをくぐった。

 




12巻にてリュラリュースの言っていた茶飲み友達の未亡人ってオラサーダルクの嫁のどれかだよね!?
と、かってにおもっています。

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