ーーー仮面ライダーアマゾンネオ・オリジン
通常のネオとは違い、纏っていた装甲は剥がれ青い体色が剥き出しに、瞳は赤く父と同じでタレ目の姿。
この姿は、千翼の精神的成長が促した姿なのか、それともネオアマゾンズドライバーの機能なのか、それとも千翼に隠されたもう1つの力なのか。
「消えろッ!!」
ドラゴンアマゾンの口が大きく開き、そこから赤紫の炎が放たれネオへと押し寄せる。アマゾンとしても規格外。おそらくは千翼と同じく通常のアマゾンとはまた異なった存在なのだろう。
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インジェクターを押し込み、フットカッターによる斬撃でその攻撃を防ぎきって見せる。
それを見たドラゴンアマゾンは、その表情を歪める。腹の中心から湧き出る怒りを発露させて。大気が震え、悲鳴を上げる。
「ふざけるなよ。俺は、この強さまでひたすら自分を鍛えて、鍛えて、鍛え抜いてきた。血反吐を吐こうが何を失おうが。人間であろうとするお前に、人間を捨てた俺がぁ!!」
幾たびの衝突を経て、いまここに二人はまたぶつかった。互いの攻撃が攻め合う旅に2人の戦いは更に激化していく。2人のぶつかり合いは周囲の地形を変化させるほどに強烈だが、徐々にネオはドラゴンアマゾンに押され始める。
「千翼!」
そのぶつかり合いにディケイドが割って入り、一旦お互いは離れ合う。
「ちょっとくすぐったいぞ!」
「え、ちょ……」
-FINAL FORM RIDE NNNNEO-
ネオの背後へ回り、背中に手を突っ込む。そしてそれを開くと、ネオから1つの影が飛び出した。
「と、父さん………?」
その姿にネオは絶句する。
彼こそが千翼の父親であり、自分を殺した仮面ライダー、『鷹山 仁』。
「ッ………」
ジッと横目で此方を見つめる仁に、ネオは警戒する。なにせ、親といっても自分を殺した相手なのだから。
「…………」
暫くネオを見つめ終えた仁はドラゴンアマゾンの方を向き、アマゾンズドライバーを腰に巻く。
-ALPHA-
「……アマゾン」
-BLOOD&WILD WWWWILD-
グリップを捻り、呟くと身体から衝撃波と共に赤い蒸気を放った。その蒸気から現れたのが赤い体色に緑色の瞳のタレ目、『仮面ライダーアマゾンアルファ』。
「これがお前達、親子の力だ!血みどろだが、親子始めての共同作業だな!」
ディケイドの言葉と共にアルファはドラゴンアマゾンの元へ向かい、ネオもそれに吊られて走り出す。
まだ視力を失っていない頃、動きに無駄のない洗練された動きでドラゴンアマゾンを圧倒していくアルファ。
自分の見た事のない、全盛期の父の姿があった。
そんな父の隣に立ち、ネオも戦いに加わりドラゴンアマゾンを圧倒する。その攻撃は、ドラゴンアマゾンの装甲のような皮膚をはがしてしまう。
「ゥゥゥ……ヴェア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
圧倒されたドラゴンアマゾンは翼を広げ、空中からネオ達を一気に破滅させようと炎を撒き散らす。
森が燃えるとか、そんな生易しいものではなく、触れたもの全てを焼き払い破滅させていく炎。
「もはやヤケクソだな!」
-FINAL ATTACK RIDE・DDDDECADE-
カード状のエネルギーが何束にも重なり合う。炎はそれらを焼き消そうとするも、その束はくねらせ方向を変え、ドラゴンアマゾンの真後ろに現れたのが。
「はぁ!!!」
「ゴヴァア!!」
『ディメンションキック』の直撃を受けたドラゴンアマゾンはその場に落下する。
しかしこれで終わりでらない、準備は完了した。この一撃が、彼らへの最後の一撃。
-FINAL ATTACK RIDE NNNNEO-
落下地点にはネオとアルファが待ち構え、頭上からはディケイドがキックの態勢で落ちてくる。
ネオとアルファの親子ダブルキックと、ディケイドのキックが同時にドラゴンアマゾンへと叩き込まれた。
「ヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
悲鳴を上げ、ドラゴンアマゾンは爆発する。
光が収まると、そこには何もいなかった……ドラゴンアマゾンとの戦いは、こうして幕を閉じた――ただ、最後の一瞬…………何も抵抗をしなかったような気がしたのは、気のせいだったのだろうか。
▼▼▼
「………………」
戦いが終わり、千翼は爆散したドラゴンアマゾンの死骸をジッと見つめていた。
『ふざけるなよ。俺は、この強さまでひたすら自分を鍛えて、鍛えて、鍛え抜いてきた。血反吐を吐こうが何を失おうが。人間であろうとするお前に、人間を捨てた俺がぁ!!』
今でも頭の中に蘇るドラゴンアマゾンの言葉。もしかしたら、彼も自分と同じような存在だったのかもしれない……そして、食人の欲に負けた姿。
彼は千翼の可能性の1つだったのだろうか。
「………俺も、お前みたいになるのか?」
死骸は答えない……答えてくれない。
『FINAL FORM RIDE』によってディケイドが作り出した仁と共闘した千翼は、短い時間だったが始めて『父』というものに触れた。
「父さんもこんな気持ちだったのかな」
胸を押さえ、父が自分に向けた眼差しを思い出す。どこか抜けているが、それでも真っ直ぐな光を放って………その光が、彼に不幸を呼んだ。
まったく、なんと皮肉な事だろう。
「千翼くん!」
茂みを揺らしながら姿を見せたのはレムだ。千翼の姿を見て唐突に、飛び付いてきたレムの抱擁を受けて千翼は尻餅をつく。
「生きてる。生きててくれてる。千翼くん、千翼くん」
千翼の胸に顔を押し付け、じんわりと温かい滴が胸を濡らす感覚。こそばゆさと色々な感情がごちゃまぜになって到来し、もはや千翼の脳の処理能力を越えた。
「お前は生きていいって事だ」
頭を抑える千翼に声をかける士。
「お前を慕う奴がいる……それだけで、そこがお前の居場所だ」
「……俺の、居場所」
「それでも分からないなら、せめてそいつの為に生きろ……必死にお前の名を呼んでいたそいつの隣に立ってろ」
「……………分かった」
まだ、生きる理由も意味もわからない。士の言っている言葉も、半分までしか理解できない。
ーーーそれでも、生きてみよう
ーーー
「千翼くん………帰ってきて…くれますか?」
胸に蹲りながら涙声で言うレム。そんな彼女の頭をソッと撫でる。
「………うん、帰ろう」
ーーーなぁ、イユ……俺はもう少しここにいるよ
ーーー折角、また拾った命だ
ーーー生きるっていうのが、どんな事なのか……知りたいんだ
ーーーそれでも俺は、生きたい
ーーー俺は……生きたいんだ
Re:ゼロから始める千翼の苦難 -完-
誠に申し訳ございません。
『Re:ゼロから始める千翼の苦難』はこれにて完結とさせていただきます。
こんな終わり方で申し訳ありません。
実は、ハーメルンでお馴染みの
『書く気が無くなって完結できない』ノイローゼ
にかかってしまいました。
さすがに完結しないより完結した方が読者の皆様のストレスもたまらないかと思い、打ち切りであっても一応は完結した次第です。
最初はほっぽって別の作品を投稿しようかと思ったのですが、今まで自分は何作品も完結しないで別の作品へと浮気してしまっていたので、今回のは完結させました。
でも、いつかは投稿する意欲が復活すれば、続編としてリメイクを投稿しようかと思っています。
それでは最後に、これまで読んでくれてありがとうございました!