「マイク、なんでお前と共同調査なんだ」
「シヴィー!!つれないなぁイレイザー!」」
今俺たちが訪れてる場所は、巷で有名な心霊スポットだった。
四日前、ここに肝試しで訪れた人達が、物音がすると狼狽えて通報した。
そして一昨日、とあるヒーローが調査するも何もなく、俺たちは一応…というより、俺が今日再調査依頼をなんとなく引き受けたらこいつも勝手に参加しやがった。
「ん?イレイザー。地下室があるぞ」
「あぁ?こんなの報告にはなかったが…」
そういえば調査をしたやつは怖がりだったな。
慌てて見過ごしたのか…ちっ、怠慢だ。
「!Stop!声が聞こえる!」
「はぁ?」
マイクの個性はヴォイス。故に、音に敏感なところがある。
けれど完全な聴覚強化という訳ではない。
「空耳じゃねぇのか、何も聞こえねぇぞ」
「しっ!…」
指を口に当てるマイクに、俺はジト目を送る。
「やっぱ地下からだ!行くぞイレイザー!」
「は、え、おま」
鉄製の、頑丈な扉の前に立つ。
マイクの行動は早く、ドアに耳をつけた、
「…イレイザー…ぜったいいるぜ…」
その言葉に、俺も耳をつける。
ガリ…ガリ…
まるで爪で引っ掻いたような、ドアを壊そうとするような音。
「Hey!大丈夫か!?誰かいるか!?」
耳を扉につけたまま、マイクは個性を調整し声を発する、
すると、ピタリと音が止まった、ホラーだ。完全な。
でも生憎、俺は幽霊だの信じない。合理的ではない。これで完全に何かがいることがわかった。
「おい、開けるぞ…」
扉にかかった板を外し、ドアノブを回す。
念のため、個性をいつでも使えるようにしておいたのだが…
「っ!!おい!!大丈夫か!!おい!!」
テンパっているマイクに落ち着けと促す。
しかし…ヒーローとして悲惨な現場に立ち回ってきたが…これはひどい。
白い壁に赤いクレヨンで書かれたらしき文字。とても狭い部屋。
そこに座り込む、衰弱しきった子供
目は虚ろで何も写してなく、身体中傷だらけで呼吸は酷く荒い。
…これはどういう事だ?
「…お父さんごめんなさい…ヒュ…ハァ、もうしません…だから、」
「喋るな!」
目から涙がポロリと落ちると、少年は事切れたように気絶した。
驚くほど軽いその小さな体に、苦虫を潰した気分になる。
「マイク…これは…」
「あぁ。虐待、だな。」
やはりそうか、と舌打ちする、
「この一年空き家だった家に、四日前我が子を地下室に閉じ込めた親がいるってことか…」
「日常的な暴力込みで、重罪だぜ。」
で、どうする?とマイクが目で問いかける。
どうしたもこうしたも、 まずは報告、ついでにリカバリーガールに診てもらうのが得策だろう。
雄英高校は、ヒーローを育てると同時に依頼の受託も行なっている。
もちろん依頼を受けるのはプロヒーローである教師のみだが、公式な依頼と違っているのは必要事項を記入した紙を掲示板に張り出し、機械に報酬をセットするだけで良いという点。
そして受けたヒーローは依頼書が張り出されていたところに報告書を張り出し、それを確認した機械から報酬をもらう。
これは気軽にプロヒーローを頼れる反面、報告が公になってしまう。
故に、重たい内容などには報告書に「要相談」と書かれ、都合が合えば相談室で報告する、ということになっている。ちなみにこれは無視することも可能だ。
そして今回は、要相談の張り紙が出されることになるだろう。
どうせ雄英高校に行くならば、病院よりもリカバリーガールに診てもらった方が早い。
「____切り傷、擦り傷、打撲…衰弱している以上、私の個性は使えないさね」
「ありがとうございます、リカバリーガール」
後は校長先生に報告するだけだが…
「その必要はないよ!」
「根津校長!?」
ふむ、と高い声で呟きながら、ベットに横たわる彼を見る。
そして手元の機械でピッと彼を図ると、こちらに向き直った。
「この子、預かることにしたのさ!」
「え"」
声を揃えて驚きの声をあげる俺達に、校長は話を続ける。
「警察に個性測定器をもらってね。強個性そうだから、下手に孤児院に預けるのもアレだろ?だから警察の指示で預かることになったのさ!部屋は…そうだね、これから作るよ!」
「しかし、義務教育が…」
「HAHAHA!ここ高校だよ?高校教師が小中学校の勉強教えられなくてどうするのさ!」
できるよね?できるよね?と目で訴える?校長。
…忙しくなりそうだ。
ちなみにこの家の主は本当に脅かし好きです。
今回度が過ぎて、都市伝説「クレヨン」をもとに罠付きの地下室を作り、わざと雄英高校に依頼。
家主的には"プロ"ヒーローが罠に引っかかる寸前回避したところで「いやぁ見事!」と驚かす予定だったのだが、たまたま翔が引っかかってしまい、こうなった。
このあと家主は、報告書の「要相談」を見て、『やばい!!引っかかったんだ!!知り合いが根津校長と仲良いとはいえ、怒られる!!』と相談を無視。勘違いはそのままに。