青春memory   作:N"our"vice

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今回はうぉいどさんによる執筆です。よろしくお願いします!


キャンプと失態と恋心

 

 

もうすぐGWを迎える私達は休日は何をしようと考えていた頃、それは突然の事だった。

 

「キャンプ?」

 

「そうよ。GW中に1泊2日で行ってらっしゃいな」

 

「誰と行けばいいのよ」

 

「海斗君誘っちゃいなさい」

 

「な、なんでそこで海斗の名前が出るのよ!」

 

 

 それは夕飯時だった。今日は帰りが遅いお父さんをほっといて2人で夕飯を食べていた。その時にお母さんからキャンプの話が出てきていた。でも、海斗かぁ……。海人とキャンプに行ってあーんなことやこーんなことを……、えへへ♪

 

「あらあら、にやけちゃって♡」

 

「そ、そんな事ないわよ!」

 

 おかしい。何故お母さんは私の心を読んでくるのかしら。そう易易と心を読まれるのは肉親とはいえ引いてしまうわ……。でも、キャンプはいいかもしれない。健誠くんも誘っていこうかしらね。

 

「分かった。GW中に行ってくるわ」

 

 そう言って、私は海斗にこの事を話すために自分の部屋を戻ろうとした。その時、お母さんから呼び止められた。

 

「彩」

 

「な、なによ」

 

「お母さんのあるけどいる? ひにn」

 

「いらないわよ!」

 

 お母さんったら! 私にまだそういうのは早いってのよ!

 ……でも、海斗となら……。

 

 今日の夜はその事でモヤモヤして、結局キャンプのことを話したのはその翌日だった。

 

 ☆☆☆

 

「で? 創くんはともかく、なんで詠斗がいるのよ!」

 

「なんだよ! 俺が来ちゃダメなのかよ!」

 

 今、俺たちは駅前に集まっていた。彩からの誘いで、俺、彩、詠斗、創、健誠、実音の6人でキャンプに行くことになっている。健誠は彩が 俺は詠斗と創と実音を誘ったのだが……そういや、こいつら仲悪かったな。でも、たまに協力する素振りを見せるから仲は良いのか……? どっちなんだろ。

 

「そんなことより、早く行こ? 健誠も待ちくたびれてるよ?」

 

「そうだぞー! 食料しかないとはいえ重いんだからなー!」

 

「それはジャンケンに負けたお前が悪いんだよ」

 

 創が声をかけ、健誠が愚痴をこぼす。今から電車に乗り、バスを乗り継いでキャンプ場へと向かう。テントなんかはおばさんの知り合いの人が用意してくれるらしい。これは楽で助かるってもんだ。さて、電車に乗ってキャンプ場へと向かうとしますか。

 と、ここで何かを思い出したかのように創が言う。

 

「……ところで実音は?」

 

「「「「あ……」」」」

 

 哀れ実音。わ、忘れてたわけじゃないんだからねっ! でも、おかしい。9時に駅前集合になっていたはずなのだが……。

 

「ま、いっか」

 

「そうね。早く行きましょ」

 

 こういうのは遅れる方が悪い。ただでさえ今日は早起きだったんだ。少し辛辣にいかせてもらうよ。彩も彩で朝早くから起こしに来るし……。強く出れないのは確かなんだけどさぁ……。

 

「そうだな、行こうか」

 

「え!? 実音はどうすんの!?」

 

「勝手にくるだろ、勝手に」

 

 どうやら創も同じ意見だったらしい。こういう時の創は一番冷たいからな。

 

 と、どうやら実音が来たようだ。

 

「はぁ……はぁ……。スマン! 遅れた!」

 

 申し訳なさそうな顔で誤ってくる実音。こいつがここまでの反応を見せるのは珍しい。恐らく本当に反省しているのだろう。今回くらいは許そうと、俺は実音に声をかけようとした。すると創が前に出てきて、笑顔でこう言い放った。

 

「焼き土下座ね♪」

 

「「「厳しすぎるッ!」」」

 

 俺、詠斗、実音。心からの叫びである。心が叫びたがってるんだッ! って、そうじゃなくて……。というか、彩と健誠はポカンとしてるよ。意味わかってないなありゃ。

 兎にも角にもだ。メンバーが揃ったことだし、そろそろ行くとしますか。

 

「それじゃ、キャンプ場までれっつらいどー!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

 かくして、俺らの大波乱のキャンプが幕を開けたのだった。

 

 ☆☆☆

 

 キャンプ場に着いて、早速問題が発生した。いや、テントなんかは既に建ててあるし、寝袋なんかの準備もとうに終わっているのだけれども……。

 

「食料がないー!?」

 

「そうなんだよ! どうするッ! これは自分たちで調達するしかないよなそうだよなァ!!」

 

 妙に高いテンションで健誠が叫んでいた。どうやら食料が無いせいで壊れてしまっているらしい。

 ……だが、腑に落ちないことがある。食料を用意したのは彩のはずだ。彩はそんなミスをするはずがない。一体何があったというだろうか……。

 

「あー!!!」

 

「うわっ! どうしたんだよ! 彩!」

 

 突然、彩が大声で叫びだした。ん? ケータイを見てる……? 一体何が……。

 

「これ……お母さんの仕業だ……!」

 

「「「「「はいぃぃぃぃ!?」」」」」

 

 事の顛末はこうだ。昨日の晩におばさんが食料は自分が用意すると言っていて、彩はそれを任せたそうだ。ん? 持った時に気づくだろって? ……大量の保冷剤が入っておりました……。ブロック型の……。いや、それでも普通気づくでしょうに。まぁ、今回は彩には責任はない。彩を責めるのは酷だろう。それぐらい、ここにいる全員分かってる。……分かってるよなぁ!? 特に実音!

 

「何で気づかなかったんだよ!」

 

 実音んんんん!? 何言ってんの! そんな事言っちゃ、責任感が強い彩は……

 

「ごめんなさい……私のせいで……」

 

 泣き出してしまった。罪に罪を重ねるのか貴様はぁぁぁぁぁ!!! バカだから仕方ないとか言えねぇぞ!

 

「実音……?」

 

 とりあえず睨みつけておく彩が泣いた時、黒い感情みたいなのが湧いてきていた。なんでから知らないんだけどね。

 

「な、なに……。忘れたのは彩の責任だろ……? 僕は悪くないぞ……」

 

「それでも泣かしただろうが」

 

「いや、それは彩が――」

 

「黙ってろ、ぶっ殺すぞ」

 

「――ッ!?」

 

 俺は彩の頭を撫でる。もう大丈夫だと安心させるために。

 

「よ、よし! それじゃあ俺と詠斗は川へ! 健誠と実音は山へ! それぞれ食料を取りに行こう! 海斗と彩はここに残って荷物を見ててくれ! んじゃ行くぞ!」

 

「スマン……創」

 

 創が仕切ってくれたお陰で、少し落ち着くことが出来た。後で実音に謝らないと……。でも、それよりもやらないといけない事が俺にはある。それは目の前の幼なじみを泣き止ませることだ。現に彩は今でも泣き続けていた。もう、そんな姿は見たくない。一体どうしたものかと思ったが、ある時に詠斗から教えてもらった方法があった。そうだ、これを試してみようと俺はそれを行動に移すことにしたのだった。

 

 ☆☆☆

 

 私のせいだ……。私のせいで海斗達が喧嘩をしてしまっている……。実音だって私は少し苦手だけど海斗にとっては大切な友達。そんな人にあんな言葉を吐くなんて動揺してるのはあんたの方じゃない、海斗。

 私は海斗にあんな言葉を吐かせてしまった事とキャンプを食料がないというトラブルを引き起こしてしまったという……なんというか責任感みたいなもので押しつぶされそうになっていた。

 たかが遊びのキャンプ。そう言ってしまえれば楽なんだけど、少なくとも私にとっては遊びではなくとても大事な事だった。私に友達を紹介してくれた海斗に、詠斗達だって普段はあんな態度とってるけど私にとっては大事な友達なの。その事を感謝したいが為にキャンプの話に乗ったのに……。涙が止まらない……。ダメだなぁ、私。

 

「彩」

 

 自己嫌悪に陥っていたその時だった。私の背中にふわっとした、それでいて力強い何かが抱きしめてきた。直接姿を見なくてもわかる。

 

 海斗だ。

 

 私はそれを理解した瞬間、どんな顔をしたのだろう。いや、客観的に見なくても分かる。顔は真っ赤になっているでしょうね。

 不思議ねー。人間って予想外のハプニングが起こると普段とは違う行動を取るらしいけど、まさかこうなるとはねー。あははー。

 

「彩、悪気がなかったのは分かってるし、彩がこのキャンプを楽しみにしていたのも知ってる」

 

 考えバレてるし。なに? 普段鈍いくせにこういう所は鋭いの?

 

「だから気に病まないでくれ。俺はお前を泣かせたくないんだよ……」

 

 ――――――――えっ?

 え、え、え、え、え、え?

 

 その瞬間、私の意識は顔の熱さと共に失ってしまった。

 

 ☆☆☆

 

 

 

 あ、あれ? 詠斗に教えてもらった方法で彩を励まそうとしたらなんか気絶したんだけど? え、どうしよ。でも、なんか幸せそうだしいっか。

 俺はそう思いテントの中へ彩を運ぼうとすると奥から詠斗達が食料を持って戻ってきていた。

 

「お、お疲れ。じゃ、調理にs」

 

「その前にリア充の調理だな」

 

「「オゥケィ」」

 

 目からハイライトが消えた友人3人がいる件について。あ、これやばい奴やん。

 

「け、健誠……?」

 

 とりあえず、頼みの綱として健誠に救難信号を出しておく。……結果は見えてるけど。

 

「ゴメン、止めらんない」

 

「ですよねー!」

 

「あ、逃げたぞ! 追え!」

 

 逃げるが勝ち。俺はその場から脱兎の如く勢いで逃げ出した。当然、詠斗達も追いかけてくることとなる。走りながら考えるけど、なんであんな怒ってるんだろうと俺は思い、声をかけようと走りながら後ろを向く。

 すると

 

 そこには鬼が3体いた。

 

「大人しくミンチにされろやー!」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

 

「僕だって……僕だってー!」

 

「もうやだこれー!」

 

 その日のキャンプ場には悲鳴が木霊したらしい。後から聞いた話だが、そのキャンプ場では後に鬼が出ると度々噂になったそうな。

 

 その後、俺がどうなったかは任せる。……結果は予想の通りだけどね。

 

 この後、1泊した俺らは無事に街へと戻ってくることが出来た。その道中、彩とは一言も会話することがなかった。どうやら彩が俺のことを避けているように感じた。……俺の心にポッカリと穴が空いたように感じたのも同じ頃だ。

 一体これはなんだろうか。

 

 普段通りの日常が戻って来た。そして、GW終わり間際、俺が自宅にいる時に詠斗が突然こんなことを言いに電話してきた

 

『おい! 勉強会やろうぜ!』

 

 大波乱の予感しかしないんですがねぇ! 私はぁ!

 

 こうして俺達はキャンプの次に勉強会をやる事となったのだ。

 何がどうなってこうなったのやらと俺はスマホを耳から離し空を見上げて、はぁ……とため息をつくのだった。




次回の投稿は夏風 櫂さんの予定です!次回もよろしくお願いします!

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