青春memory 作:N"our"vice
初めましての方は初めまして、バンドリ、ラブライブなどを書かせてもらっていますイチゴ侍と申します。
今回はN"our"viceの一人としてオリジナル作品を書かせていただきました。
僕はある一組のカップルの話を担当します。実体験の無い僕が書いた恋愛模様ですが、見てくださると幸いです。
それでは、どうぞ!
高校2年に上がった。それで何が変わったかと言うと、さほど変わってない。朝起きる時間も、アラームが鳴る時間も何も変わってない。このまま普通に高校生活も終わるのかと、そう思っていた時、なかなかに面白い奴らに出会うことになった。
これは俺、大矢根春希という一人の主人公が登場する“俺の物語”でもあったりする。
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────朝は嫌いだ。
朝の訪れは全てをリセットさせる。例えばどんなにその前の日、充実した1日にしようとも次の日になってしまえば、また1から始めなければいけない。まるで苦労して作ったパズルを一瞬で壊される気分だ。
朝は嫌い。だが、朝の全てが嫌いなわけじゃない。そう思わせてくれる“者”が、今日もやって来る。
「はーるーきー」
「おう、凪咲」
「いつもいつも起きるのが遅いですね。あたしの彼氏さん」
「いつもいつもご苦労さまです。俺の彼女さん」
これが俺達2人の日課だ。一切表情も変えずに俺の部屋に入ってきて、何の感情もなし……かどうかは分からんが、呼んできたのは、俺の幼馴染みで恋人の蒼井凪咲だ。凪咲は、俺と一歳差で、今年から高校1年である。
「で、どう?」
「……どうって?」
「同じ高校で幼馴染みの恋人に起こされる気分は」
「大変素晴らしいです」
実は凪咲と俺は、互いにやってみたいシチュエーションをやり合うという変な付き合いをしている。ちなみに今日のこのシチュエーションは、俺がやってみたかったやつだ。……そこ、変人だとか言わない。
「でもこれ、普段と変わらないと思うんだけれど……」
「いや、気持ちの問題だ」
「気持ち……?」
「大抵の熟年夫婦って初心な心を忘れるもんだからな。だから今日、“俺は幼馴染みの恋人に起こされているんだ”って意識して起きた」
ちなみにお前ら高校生だろっていうツッコミは受け付けない。後、夫婦なの? とかいう疑問も抱かないでくれ比喩表現だ。小さい頃からずっとこうやって起こされてるせいか、恋人になったはいいものの、いつもと変わらないと感じてしまうのだ。感覚的には、生まれた時から夫婦な感じ?
──多分麻痺してるんだと思う。まひなおしか、なんでもなおしをください。
「それより早く顔洗って、じゃないとカッコいい春希の顔がすぐに見れない。今でもカッコいいけど」
「うい〜ってか、凪咲が来るの早いんだよ。俺のアラームが鳴る前とか……」
口ではグチグチと言いながら自室を出て、一階の洗面所に向かう。あ、ちなみに家は二階建てだ。それで凪咲の家はお隣さんなのだが、多分俺の家にいる時間の方が長いんじゃないか? と思うようになってきた。
「……ふぅ、すっきりした」
「はい」
「サンキュー」
熟年夫婦のような会話でタオルを受け取り、顔にあてがい水気を取る。拭き終われば何も会話をせずに凪咲は、タオルを受け取ってくれる。
今さら言うのもあれだが、凪咲は既に我家の中を熟知している。俺の親が仕事の都合上、朝が早いのでいつも凪咲が朝食を作ってくれる。
「今日は和食」
「ご飯、味噌汁、漬物、魚……なるほど、確かにTHE・和食って感じだな」
「THE・和食は嫌だった?」
「そんな事は無い」
なぜなら俺は、凪咲の作るものは全て好きだからだ。だって美味しいから、ちなみに特に肉じゃがは格別だ。理由は凪咲の好物だから。
「「いただきます」」
「どう?」
「うん、味もバッチリだ。また腕上げたな」
「それは……春希に褒めてもらいたい……から」
「…………」
はいー! うちの嫁くっそ可愛いー! なんだこれ何だこれぇ! こういうふとした時に突然キュンとくる事言うんだよこの子はァ! (※春希は時々キャラ崩壊します)
「……どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
危ない危ない……キャラ崩壊する所だった(※本人は気づいてません)
それにしてもこんなふうに、のんびりと朝食を取れるのはいい事だな。それに目の前には美人の恋人と来たもんだ。……普通の男子高校生ならチャイム鳴っちまう! みたいなこと思いながら遅刻ギリギリに学校着く……とかある意味青春してるんだろうな。
「あ……」
「なんだ凪咲」
「ご飯粒付いてる……取ってあげる」
そう言うと凪咲は、指を伸ばして俺の口元に付いていたご飯粒を取る。するとその指は、そのまま凪咲の口に運ばれ食べられた。俺にして見れば何気ない行動だが、傍から見ればこれも青春って言うんだろうか。
「ありがとう」
「どういたしまして」
短く会話を済ませ、また再び食事に戻る。やはりどこか俺達はズレている気がする。普通のカップルなら初々しく、あーんとか話に花を咲かせてみたりとかするんだろうけど、俺達のこれは、もうカップルとかじゃなく夫婦だな。
「ねぇ、春希。約束」
「あーあれか、今日発売の新巻一緒に買いに行こうって約束だったっけ? ……俺TUEEEE物って見てて飽きないか?」
「飽きない」
凪咲は、容姿こそ美人ですれ違う男が全員振り返るレベルなのだが、中身を開けば、ラノベ好き、某有名小説サイトの完結済作品はほぼ読了済み、だがアニメは好まないというオタクなのだ。そして凪咲が一番好きなジャンルが、俺TUEEEE物で簡単に言えば、主人公最強の無双ストーリーだ。ただ主人公が無双して女キャラを侍らせて、ハーレム作って……それの何が良いのか、俺にはさっぱりだ。
「そこまで断言されるか……」
「だってみんなカッコいいよ?」
「……妬くぞ」
「春希に嫉妬されるならいくらでも言う。それにあたしにとって春希は、他の主人公よりも最高にカッコいいあたしだけの主人公だもん」
こうやってたまーに意識させられること言うのが非常に堪らない。俺が俺TUEEEEが好きになれない理由、まぁ察しがいい人はすぐ気づくんだろうけど、凪咲を夢中にさせられる主人公達が妬ましい。だから今みたいに凪咲に言われると、とてつもなく優越感に浸れる。
「とっても嬉しいお言葉感謝します。ヒロイン殿」
「お気に召したようで何よりです。それじゃ」
「「ごちそうさま」」
今日も今日とて、何気ない普通の一日が始まるのだ。
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「俺と付き合ってくれ!」
「……」
はぁ……またか。もうこの告白の言葉は聞き飽きた。これならまだ電電文庫の黒の剣士さんとか、さすおにさんが無双してる所見てた方がきゅんきゅんする。それに図書館に来てまで告白しに来るなんて……ストーカーか何かなのかしら。
「ごめんなさい生理的に無理です。まず、あたしの読書の邪魔をする時点であなたは終わっているので、以上」
「あ、え……あの……」
「……」
何やら男の方は(名前は知らない)読書に戻ったあたしの横で、何か言いたげにしているがどうでもいい。はぁ……結局、今日も平和で平凡な1日だった。
「くそっ、ちょっと可愛いからって舐めんじゃねぇぞ! 1年のくせに」
その1年に必死に告白してたのは、どこの誰かしらね。少し毒を吐けば、寄ってくる同学年、先輩方はみんな態度を変えたり、この先輩のように逆上したりしてくる。
「やっぱ名前の通りだったな! 毒姫!」
あたしはよく冷めていると言われる。それは他人にだけだ。他人に無関心なだけで、物には関心は持つ。そんなあたしの性格も合わさって、入学後から頻繁に告白してくる男の方々をボロボロにするような毒を吐く。その結果、一部であたしに“毒姫”という二つ名が付けられたらしい。竜だったらハンターに狩られそうな二つ名だ。
気付いた時には、さっきの男の先輩はいなく、図書館が静かになっていた。もう外はすっかり日が落ちかけている。しかし、あたしには待つ人がいる。多分今日も物陰に隠れているのだろうか。
「冴えない彼氏の育成……だったっけ……あれ」
「なんじゃそりゃ彼氏育ててどうすんだよ。ヒモか? そいつヒモなのか?」
あ、出てきた。こうやってツッコミを求めて呼べば出てきてくれる。なんかペットみたいで可愛い……そうだ、主従関係みたいのやってみたいな。今度お願いしようかな?
「今日も告白来たのか」
「最初から見てたんでしょ?」
「まぁな、お迎えにあがったら先客が来てたもんでね」
「隠れてみてなくてもいいのに……」
どうせなら「こいつ、俺の奥さんだからさ、あなたみたいなモブキャラが付け入る隙なんて無いんだよ。精々、神様転生でもして主人公になってから来てください」くらい言って欲しい。
「しっかし、毒姫って名前付けたやつセンスいいな」
「それなりにあたしも気に入ってる」
「綺麗な姫にも毒があるってか?」
「それを言うなら薔薇と棘だけどね」
「綺麗だって褒めてんだよ」
……こういうとこずるい。あたし達の間柄は、昔から長く一緒にいるせいか恋人になってもあまり変わった気がしない。でも、春希に褒められるのは別だ。何よりも凄く嬉しいし、他の人が褒めなくても春希が褒めてくれれば、それだけで満足。
「春希、大好き」
「Dai○uke……テレレレ~テレッテレテ~♪」
「……素直に受け取って」
「お姫様の仰せのままに……さ、目指すは書店、ジーとしててもドーにもならねぇ、行くか」
春希は、あたしが荷物を整え持ったのを確認すると、手を差し出してくれた。あたしは、あたかも自分がシンデレラのように手をゆっくりと手の上に乗せ、エスコートをお願いする。
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「あ、なぁ……一つ聞きたいんだが」
「ん? なに」
俺は、学校を出たすぐのところで気になっていることを思い出した。一つ、これだけは聞いておきたい。
「凪咲、お前友達できたか?」
「……」
「こら、反応しなさい」
「…………」
「一緒に買いに行ってやらんぞ」
「ごめんなさい」
すると凪咲は観念したのか、渋々と言った感じに白状した。
「一人できた」
「お、意外な返しだな」
「でしょ」
「ああ、いや〜てっきり俺は、“先生という友達ができた”みたいな事言われるとばかり……」
「…………」
全てを察した。先程から下を向き、大量の汗を垂れ流す凪咲。実の所、この会話は中学の頃にやっている。その時、こやつは“黒板はマイフレンド”とかぬかしたのを覚えていて、まさか今回も同じだったとは……。少し成長したのだと感心した俺の心を返してくれ。
俺の恋人は、本人から聞いたところ「春希さえいればいい。友人不要」という普通なら嬉しい主義を持っている。どうやら凪咲は、良くいる群れる女子を毛嫌いしている。そのせいで高校に入ったはいいが、周りの女子のグループに入らず古典的なボッチとなっているらしい。
「友達作れよ」
「いやだ。春希だけいればいい」
「ばっ……照れるだろ……とか言うと思ったか、昼飯とか一緒に食べる人もいないだろそれじゃ」
「春希がいる」
「俺がいない時どうする気だよ」
「……トイレ?」
この時俺は、静かに悟った。一度も学校を休むわけにはいかないと。
「わかったわかった。俺もお前の友達探し手伝ってやるよ」
「頼んでない」
「俺がやりたいんだよ。で、どんな友達が欲しいんだ?」
「ネコ型ロ○ットくらい便利な子」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった」
どうやら俺の高校生活は変化し、大変になってしまったようだ。主に恋人のおかげで、しかしそれも大事な変化だと思い込ませ、頑張ろうと誓うのだった。
次回の投稿はへびーさんです!
次回もよろしくお願いします!