青春memory   作:N"our"vice

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今回はイチゴ侍さんによる執筆です。
よろしくお願いします


熱盛りッ!なリア充共

 

 

──これは海斗と彩が無事付き合って、少し経った頃の話。

 

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『熱出た』

 

 朝、俺の眠気を吹き飛ばしたのはたった三文字のメッセージだった。

 俺はすぐさま着替え、朝食をすっぽかして隣の凪咲の家に向かった。インターホンには凪咲のお母さんが出て、お見舞いに来たと言いすぐに開けてもらう。

 

 俺が中に入ると、凪咲のお母さんは“あとはお願い”と言い残し仕事に向かった。どうやらすぐに仕事に行かなきゃいけなかったようで、凪咲をどうしようか考えていたそんな時に俺がタイミング良く来たのでお願いされたということみたいだ。

 

 

 「凪咲〜入るぞ」

 「ちょ、ちょっと待って──」

 

 凪咲の部屋に入った俺を待っていたのは、凪咲だった。いや、正確に言うなら、“下着姿”の凪咲だった。

 俺と比べれば小柄な凪咲が、見た目に合わず黒いレースの下着を上下付けてましたねはい。一体どこでそんな破廉恥(はれんち)な下着を買ったのだろうこの子は……。

 

 

 「どしたの」

 「着替えてた」

 「一人で?」

 「いけると思って」

 「寝てなさい」

 「下着で?」

 「……パジャマどこ」

 

 短い言葉で会話を交わす俺達。

 フラフラと今にも倒れそうな凪咲をまずベッドに横にし、凪咲が脱いだであろうパジャマを再び着せる。途中で他にも大人なブラやパンツが落ちていてそれが見え隠れしていた。

 ……非常に目が幸せになった。夜の営みをする際にあれ履いてくれたらめっちゃしあわ……(自主規制)

 

 ともあれ、思考がピンク色になったりと一波乱あったが無事に凪咲をパジャマ姿に変えることができた。

 辺りに散らばっていた下着類は、下手に触る訳にも行かなかったのでそのままにしてある。目がチラチラ向かってしまうのが辛い。

 俺は、勉強机に付いてくる椅子をベッドの傍に持ってきてそこに座り、凪咲に寄り添う。

 

 

 「凪咲、なんか食べたか?」

 「食べてない」

 「なら薬も飲んでないか。お粥でも作るかな」

 「材料は多分ある……かも」

 

 無ければ買ってくるさ、と言い残し一旦凪咲の部屋を出る。するとその時、現在進行形でイチャイチャしてるであろう海斗から連絡があった。

 本来なら今日、新婚ホヤホヤの(結婚はしてない)海斗と彩と共に俺と凪咲がデートするという巷で言うダブルデートというのを計画していたのだ。きっとその連絡だろうと考え、凪咲が熱を出したから無理だとメッセージを送った。初デートかどうかはよくわからんが2人で楽しんでこいと付け足し、携帯をしまい再び台所へ向かう足を進めた。

 

 

 「こればっかしは仕方ないな……気を取り直して凪咲の看病に専念しますか」

 

 冷蔵庫を開けるとあ〜ら不思議、何にもなかった。恐る恐る炊飯器を覗くとやはり期待を裏切らない凪咲母、こちらももぬけの殻。

 

 

 「お願いって、まさかこっちの事も入ってたんじゃ……?」

 

 俺は静かに仕事に向かった凪咲母に怒りを向けるのだった。

 

 

 「悪い凪咲、ちょっとばかし買い物行ってくるわ。なんか食べたいものとかあるか? できる限り買ってくるぞ」

 「……今日発売の新かn──」

 「よし、リンゴだな。任せとけ! 行ってくる」

 「…………むぅ」

 

 そんなもの買ったらお前寝ようとしないだろ、と心の中でツッコミを入れ凪咲を一人にするのは少々不安だが、俺は近くのスーパーに全速前進するのだった。

 

 

 

 

 

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 春希がお見舞いに来てくれた。

 

 今朝、いつものように起き、ベッドから降りようとした私は謎の違和感に気づいた。

 まず視界が定まらない。起きたばかりだから目が開ききっていないのだと思ったが、いざ立ち上がると何だか体全体が重く感じた。確かこういう時って熱があったりするんだっけ、なんてどこか他人事のように考える私。しかしそんな予想は、手をおでこに当てた瞬間に確信に変わった。

 

 

『熱が出た』

 

 

 世界で一番大好きな人に1番に私は連絡した。彼氏という事もあるけれど第一に家が近いからっていうのもある。後、一番信頼してるから。

 

 そしてしばらくしないうちに春希はやってきた。連絡してからまだ5分も経っていないことに何故だか嬉しくなってしまった。

 

 しかし嬉しくなってる暇が無い事に気づく。私はある作品で読んだ看病のシーンを思い出し、なんとか下着だけでもと新しいのに変えている途中だった。そんな時だ、部屋のドアがノックされたのは。

 

 まだ下着姿の私は、反射的に“ちょっと待って”と声に出していた。しかしそれで春希が止まるわけもなく、ドアは開けられてしまった。

 そして目が合った。数秒ほど沈黙し先に口を開いたのは春希だった。

 

 

 「どしたの」

 

 

 当然の反応だった。

 もうちょっと照れたりしてくれても良いのに……なんて思う。

 

 

 「着替えてた」

 「一人で?」

 

 これも当然の反応だ。

 普通、熱が出たなんて言う人が一人で着替えるなんてまず無い。しかも下着だけ。

 

 

 「いけると思って」

 「寝てなさい」

 

 素直に従おうと思ったが、ほんのちょっとだけからかってみたくなった。

 

 

 「下着で?」

 「……パジャマどこ」

 

 あんまりいい反応は貰えなかった。でも一瞬間があった。きっとそれもいいかもとか考えたに違いない。

 その後、私は素直にパジャマを着せられた。途中、春希の顔が赤くなる時があったけど何考えたんだろ?

 

 

 「凪咲、何か食べたか?」

 

 私が食べていないと答えると、春希が作ってくれると言ってくれた。正直、いやかなり嬉しかった。もう今ならどこへだって行ける。どんな夢だって叶えられる。そんな気がする。

 いや、一旦落ち着こう。まず家に材料と呼べる材料があっただろうか? 昨日全部使ってしまおうとお母さんと話してなかっただろうか?

 どうだったか分からなかったからとりあえず曖昧に“多分ある……かも”と言っておいた。それを聞いた春希は部屋を出て台所へ向かっていった。

 

 少しすると、再び春希は部屋に戻ってきた。どうやら何も無かったらしく、買い物に行ってくるらしい。

 何か食べたいものとかあるか? と聞かれ私は迷わず今日発売の新巻を買ってきて欲しいと、そう言う前に春希に遮られてしまい失敗に終わった。

 

 

 「それじゃ行ってくるな」

 「ん」

 

 

 ……。

 

 

 …………。

 

 

 ………………。

 

 

 ……静かだ。

 

 春希がいなくなった家の中はとても静かで、自分以外誰もいないのだと再確認する。

 

 

 ──寂しい。

 

 

 ここまで心細くなるのは初めてだった。誰でもいい、誰かそばにいて欲しい。もしかしたら今までの人生でこんなに弱気になったのは初めてかもしれない。

 

 

 「……こんなとこ、春希には見せられない」

 

 彼氏にベッタリしてるだけなら誰だってできる。私は春希が安心して背中を預けられるような強い彼女になりたい。私の目標のヒロイン、あの黒の剣士を支えた閃光の彼女。あの人のように。

 

 目標に近づくためにまずは、治すことに専念しよう。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 「よし、無事に薬も飲んだな。後は寝るだけだぞ」

 「このままじゃ寝れない」

 「あぁ……汗かいてるからベタベタして落ち着いて寝れないか」

 

 うーん、ここは俺が拭いてあげるべきか。いや、しかしいくら恋人だからと言って平気な顔して拭けるかと言われたら無理だ。しかしこのシチュエーション、どこのラノベ場面だよ。

 

 悩んでいるとその時、凪咲の家内にインターホンが鳴り響いた。

 凪咲にちょっと見てくると伝え、玄関に向かう。そしてドアスコープから外を覗くとそこには見知った顔の2人が見えた。

 

 

 「海斗に彩じゃないか。悪いな今日は約束通りいかなくて」

 「いいって、それよりこれお見舞いに買ってきたんだコンビニのだけど」

 「ありがとう」

 

 海斗からビニール袋を手渡され中を見るとブル○リアヨーグルトとフルーツゼリーなるものが入っていた。片方は俺への差し入れらしい。

 

 

 「春希先輩、凪咲の様子はどうですか?」

 「今ちょうど食事と薬を済ませた所なんだ。ただ、ちょっと問題が起きてな……」

 「問題って?」

 「実は……」

 

 俺は、凪咲が汗をかいていてそのままでは寝れない状況な事。そして体を拭こうにも、いくら恋人とはいえ男の俺が拭くのはどうかと悩んでいた事を話した。

 体を拭く〜の辺りで海斗がめちゃくちゃ頷いてたが共感してくれたってことでいいのか?

 

 

 「なら私がやります。同性なら大丈夫ですから」

 「わかった。今、タオルとか用意する。2人は先に凪咲の所行っててくれ」

 

 2人を先に向かわせ、俺は洗面所からタオルを取り、少し小さめの桶に水を半分くらい注いで2階まで運んだ。

 

 その後、俺と海斗は凪咲の部屋から出て終わるの待っていた。凪咲の部屋に海斗が居続けようとしていたのを彩にドヤされた時は少々笑ってしまった。

 

 

 「仲睦まじいようで」

 「そっちこそ」

 「尻に敷かれてないか?」

 「……その生々しい質問はまだやめてくれ、ほんとそうなりそうで怖いから」

 

『ううっ……何この大きさ』

『いつも春希に……してもらってるから』

 

 時々凪咲の部屋から聞こえる彩と凪咲の声に反応してしまってる俺。男ってサイテーと言われるのも頷ける、うん。てか、凪咲さん? しれっと嘘つかないでね。

 ふと隣を見ると同じ事を思っていたのだろう海斗と目が合った。これには思わず苦笑い。男の(さが)を再確認した気がした。

 

 

 「ありがとうな。せっかくの休日デート邪魔しちゃったのに」

 「それはもういいって、それに彩が黙ってないしな」

 「そっか、この埋め合わせはいつかしないとな」

 「おう、楽しみにしてるよ」

 

 俺たちはどちらからともなく握手をしていた。男同士の熱い友情という奴だ。

 すると終わったのか部屋のドアが開き2人が顔を覗かせていた。

 

 

 「一応着替えも済ませましたけど……って、何してるの?」

 「……恋人のBLはお断り」

 

 女には男の友情は理解されないらしい。

 

 


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