青春memory 作:N"our"vice
今回の投稿は、私、さとそんです。
よろしくお願いします
「知略と武力を兼ね備えて、初めて本当の強さを得るんだ!!」
今は新緑の風が女子高生のスカートをヒラヒラ揺らす、五月の休日。
いつものように、俺、詠斗、実音、創の4人(彩は家族と出かけるらしく、今日はいない)で、我が高道家に集まっていた。
しかし、集まっただけで特にすることもなく、各自スマホを弄ったり、単語帳を読んでいたり、ゲームをしたり、ワクワク顔で勝手に人のパソコンを使ってエロゲをしたりと、自由に行動していたところ、突然スマホを弄っていた詠斗が立ち上がり、宣言した。
「はぁ……詠斗、特に興味がある訳でもないが特別に聞いてやる。いきなりどうした?」
「いや、たまたまT〇itterを眺めてたらな、なんか面白そうなカードゲームが今日発売らしいんだ」
「それがどうした?」
「やろう。」
『却下』
なんで俺達がいまさらカードゲームなぞに興じなきゃならんのだ。しかも詠斗が目をつけるものだ、確実にクソゲーと言ってもいいだろう。
しかし詠斗はまったく引こうとしない。
「えぇ〜、いいじゃん。やろうぜ〜! 今ならスターターパック1000円で買えるらしいぞ!」
「そうは言ってもなぁ……創、お前はどう思う?」
1歩も引こうとしない詠斗は対処がめんどくさいので、創に問いかける。
「んー? 俺は別にいいぞ。どうせこのままダラダラするくらいならなんかやった方が有意義だろ?」
「マジかよ……実音は、聞くまでもなく賛成だろうな」
「まぁね、半数がやりたいって言うんだから僕もそっち側につくよ」
先程までエロゲをやっていたノートパソコンをそっと開き、実音も同意する。こうなったら仕方ねぇか……。
「じゃあ、早速TS〇TAYAでも行くか」
そう呟き、俺たち4人は喧騒に包まれた休日の住宅街を歩き出した。
~~~
というわけで、あれから1時間後。
「よし、じゃあ……まずは、俺と実音でやるか!!」
TSUT〇YAから帰ってきた俺たちは、早速買ってきたカードゲーム──デーモン・バスターズのスターターパックを開封し、デュエルをスタートしようとしていた。
まずは、発案者である詠斗と、詠斗によって選ばれた実音が勝負をするようだ。
「いいけど、僕はカードゲームなんか遊〇王しかやったことないよ?」
「まぁ、安心しろ。これの遊び方は見た感じ、デュエル・マス〇ーズと同じ感じだ」
「いや、それ大丈夫じゃないんじゃ……」
「……やってりゃ、そのうち慣れるだろ。それでも不安なら、実音のサポートには海人が付いてやってくれ」
「あ、あぁ。じゃあ実音、よろしくな」
急に話を振られたおれは、戸惑いつつも実音の隣に胡座をかく。
~ルール説明~
・カードにはクリーチャーと、スペルが存在する。クリーチャーには体力と攻撃力があり、スペルには、色々な特殊能力を付加したり、攻撃するものがある
・それぞれのリーダーにはシールドと呼ばれるカードが5枚あり、攻撃から守ってくれる。シールドはダメージを喰らうとなくなる。(その攻撃は無効化される)
・シールドか無い状態で攻撃を受けると負け
その他ルールはその都度説明。
と、まぁ、こんな感じだ。要するにデ〇エマとシ〇ドバを足して2で割った感じ。
隣に座っている実音は、初めてのゲームに戸惑いつつも、少し楽しそうにデッキをシャッフルしている。
すると、机を挟んで反対側に座る詠斗が口を開く。
「よし、じゃあ準備も終わったし、早速──」
『決闘開始《デュエル・スタート》!!』
こうして、詠斗VS実音の闘いの火蓋が切られた。
「じゃあ、まず先攻後攻を決めるか。先攻は、最初のターンのドロー無し。後攻はドロー1だ。よし、じゃーんけーん……ぽんっ」
出した手は、実音がグーで詠斗がパー。
「よし、じゃあ僕が先攻だね。えっと……海人、どのカードを出せばいいかな?」
「ふむ……そうだな、1ターン目はコストが1のカードしか使えないからこいつだな」
そういって、実音に『ブラッドゴブリン』と書いてあるカードを出させる。攻撃力、体力は1/2だ。このカードを出して、実音のターンは終了。
「俺のターン! 山札からカードをドロー!」
やけにテンションの高い詠斗がものすごくウザったいポーズを取りながら、カードをドローする。率直に言って殴り飛ばしたい。
「呪文《スペル》発動!!」
「名前は『オールフィクション』……? えーっと効果は……『相手の全クリーチャーとシールドを消滅』!?!?」
1ターン目からいきなりぶっ壊れ性能キターーーーっ!!
「コスト1の割に最強カードじゃねぇか!!」
「そんな文句言われてもなぁ……このゲーム作ったの俺じゃないし」
「その通りだよ、こんちくしょう!」
そう吐き捨てて、とりあえずルール通りにシールドを全て墓地へと置いていく。なにこれ、1ターン目でシールド全部消えたんだけど。王様が裸になるの早すぎません?
とにかく、1コストであんな化け物カードが出るとなるとこの先なにが起こるか予測もつかねぇな。なんだこのクソゲー。
心の中で悪態をつきつつも、俺は実音に指示を出し続ける。
時間は少し進み、3ターン目の詠斗のターン。
「俺のターンッ! ドローっ!!」
相変わらずのハイテンションで、心からゲームを楽しんでいるようだ。控えめに言ってウザい。
「はっ……これは……!?」
「ん? 詠斗、どうかしたか?」
「いや、なんでもねぇよ? ふは、フハハハハハハ」
なんか……怖い。いや、これが詠斗のいつも通りなんだが、それでもどこか狂気めいた気配を感じる。
「ふっ……とくと見るがいい! 俺の美しきカード捌きを!!」
そう言って、詠斗は1枚のカードを人差し指と中指の間に挟み、それをクルリとこちらに向けて叫ぶ。
「泣いて喚いて懇願しろ……スペル! 死の恐怖《デッドリースケア》!!」
うん、やっぱりウザい。端的に言って気持ち悪い。このカードはなんだろうか。死の恐怖か……なんか少し嫌な予感がするんだが……。
「説明しよう! このスペルは相手のリーダーにダメージを与えるのだっ!……物理的に」
「最後の一文が怖い!!」
「まぁまぁ、大人しくやられろって。……いや、殺られろって!」
「わざわざ言い直さなくてもいいわ!」
「よし、じゃあ何にする? バット? ハンマー? それとも……バ・ー・ル・の・よ・う・な・も・の?」
「語呂悪いわ!!! そこは3文字のものにしろよ!」
「おーけー。それじゃあナイフだな」
「鋭利!!!」
「ん? 生理?」
「それも確かに苦しいらしいけども!」
だめだ、このままじゃ埒があかん。もうほっとこう。どうせ物理的ダメージ喰らうのは俺じゃなくて、プレイヤーの実音だし。
「なぁ海人。さっきから何を言ってるんだ? 僕にもわかるように説明してほしいんだが……」
「おぉ、そっか、それもそうだな。まぁ簡単に説明すると──今からお前は死ぬんだよ」
「なんてデスゲーム!?」
「これは決闘だ。もちろん負けたものに待ってるのは死だろ」
「いやいやいやいや!! え、デュエリスト怖っ! 毎回命賭けてんの!?」
「まぁまぁ、いいから逝けって。な?」
「いや、「な?」じゃなくって。待って詠斗、その手に持ってるの何!? 」
「バールのようなもの」
「バールのようなもの!? ちょっと待て、詠斗! 無言で近づくのやめて! 怖い怖い怖いぎゃぁぁぁぁぁーっ!」
はぁ〜、俺、しーらね。
「……あれ、そういえば創のやつ、めっちゃ空気じゃね??」
そんな俺のどうでもいい感想とともに、実音の悲鳴が俺の家にこだました。
結論:とりあえず知略よりも、武力に重きを置くべし。
次回の投稿は、雪桜(希う者)さんの予定です。
よろしくお願いします