青春memory   作:N"our"vice

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今回は夏風 櫂さんによる投稿です。よろしくお願いします!


青春はレモンの皮の味

 

 

あのちょっとした事件が起こったキャンプから帰ってきた翌日、俺は気がかりなことがあった。帰りの道中、彩が海斗と喋らない上に視線すら合わせなかったことだ。

 不自然きわまりない。気持ち悪すぎる。

 

 《ぶつからなきゃ伝わらない事だってあるよ……例えば、『自分がどれくらい真剣なのか。』……とかね》

 

 テレビからボクっ娘の音声が流れる。スラッと流れる紫色の髪。あー、もう可愛すぎる!

 つーか、SAO見ながら考える内容じゃないよなこれ。

 

 《ぶつからなきゃ伝わらない事だってあるよ……》

 

 おいおい、なんでここの台詞がリピート……って、そうか。ここって閃光さんが悩んでるときのだっけ。

 

 (……ん?悩み?伝えたいこと……ぶつかる……。そうか、この手があった!)

 

 いいことを思いついた俺はDVDプレイヤーを手に取り、再生を止める。充電中のスマホを乱暴に取り、すぐさま海斗に連絡を掛ける。

 時刻は午後10時。さて、アイツは出るだろうか?

 

 「……ぅんー…………もしもし?」

 「おい!勉強会やろうぜ!」

 

 寝ぼけて電話に出る海斗に考える余地を与えないように早口で伝える。

 

 「……は?」

 「明日の朝9時から俺ん家で泊まりでな!久々に集まって遊ぼうぜ!」

 

 伝えることだけ伝えて早々に切る。

 なんか、言いたげにしてたけどまぁいいよね。あ、後は皆にも連絡入れとこ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 Q.次の漢字の読みを答え、一つの例文を作りなさい。【国語】

  「嬲る」

 

 A.日比谷実音の答え

  「ほる」

  (ふたりの男は我慢できずに一人の女を嬲った)

 C.秋原詠斗のコメント

  お前はイチイチ下ネタぶっこんでくるのやめろ

 

 A.秋原詠斗の答え

  「なぶる」

  (ふたりの男は一人の女を焦らして嬲り続けた)

 C.高道海斗のコメント

  読みはあってるが、お前はプレイ内容をひっぱってくんじゃねえ!

 

 

  「賽子」

 

 A.英梨星彩の答え

  「さいこ」

  (彼女はいわゆる、賽子パスだった)

 C.九重創のコメント

  読みが惜しかったかな。これは「さいころ」って読むんだ。先生によってはテストで満点を取らせないクズもいるから覚えておくといいかもね。

 

 

 Q.次の空欄に当てはまる英語を書きなさい。【英語】

  「Happiness of human beings makes from ( ).」

 

 A.九重創の答え

  「happy white powder」

 C.英梨星彩のコメント

  ここはサービス問題のつもりだったのに……。白い粉、ダメよ絶対。

 

 A.高道海斗の答え

  「pleasure」

 C.秋原詠斗のコメント

  お前もソッチ系のこと書いてんじゃねえか!何だよ!「人間の幸せは快楽でできている」って‼同人誌とか成人男性向け写真集の読みすぎなんだよ!

 

 

 Q.次の質問に日本語で答えなさい。【英語】

  「Why do people fall in love?」

 

 A.日比谷実音の答え

  「恋に堕ちたと錯覚して一人で過ごす者たちを見下し、嘲笑うため」

 C.九重創のコメント

  そのひねくれた考えには少し同意するけど、テストでは無難な回答をしようね?

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 「創ー、まだ終わんないのー?」

 「実音、まだ午後は始まったばっかだよ?頑張ろ?」

 

 「……………………。」

 「……………………。」

 

 「だー!もう文系教科は疲れたー!お前ら、次、理数行くぞ‼」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 Q.等加速度直線運動の公式で二乗の文字が入ってないものを答えよ。【物理】

 

 A.英梨星彩の答え

  「V=V0+at」

 C.秋原詠斗のコメント

  正解だ。基礎中の基礎はしっかりできてるな。これから先、思いもよらない形で使うときもあるから気を付けろよ。

 

 

 Q.次の空欄に当てはまる日本語を入れて答えよ。【物理】

  光は波であって(  )である。

 

 A.高道海斗の答え

  「切り札」

 C.日比谷実音のコメント

  バーカバーカッ!間違えてるとか恥ずかしいだろw

 

 A.日比谷実音の答え

  「聖剣」

 C.高道海斗のコメント

  お前も同じようなボケしてんじゃねえか!

 

 ※答えは粒子です。

 

 

 Q.ある一定の条件下で6倍の大きさになる人間の器官はどこか?【生物】

 

 A.男性陣の答え

  「ち○こ」

 C.英梨星彩のコメント

  アンタたちはバカなの⁉答えは瞳孔よ!暗くなると6倍になるの!下ネタばっかり考えてないでちゃんと勉強しなさい!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 「詠斗ー、もう疲れたよー!」

 「そう、だな……。あー、疲れた!久々にこんなに勉強した」

 「もう勉強したくない……」

 「今日もけっこう頑張ったねー」

 

 『うぁぁ…………』

 

 男子グループから重いため息が出る。それもそのはず。普段、家庭学習などしない俺たちが六時間ぶっ通しで教えあっていたのだから。

 

 「ごめんね。私、帰る……」

 

 勉強会終了した余韻に浸っていると彩が不意にそんなことを言い出す。やはり、キャンプの件を引きずっているのだろうか?海斗は……声をかけそうにないな。

 

 「やっぱり、私、邪魔でしょ?これからは無理に誘わなくてもいいよ?その……楽しい雰囲気を壊したくないから…………」

 「な、何言ってるんだよ!そんなことないじゃん!」

 「そ、そうだよ。いきなりどうしたのさ?」

 

 人一倍責任感が強く感じられる彩はまた自分を責める。それに対して、実音と創が立ち上がって反論する。

 創だけはこちらをチラッと見てきた。……はぁ、そういうことね。

 

 「彩、一回あっちの部屋に行こ?」

 

 実音も何かを感じ取ったのか、彩の肩をガッチリつかみ廊下へ歩みを進めていった。

 さて、こっちはこっちで片付けますか。

 

 「…………で実際問題、彩とはどうなんだ?」

 

 しんみりとした雰囲気をこの場に残しながら去っていったアイツらに対し、俺は海斗に問いただす。

 

 「…………いや、何もねぇよ」

 「嘘つくなっつの。今日、お前ら一回も言葉交わしてねえだろ?少なくとも勉強会の間は」

 「…………分かった。全部話すよ」

 

 そう言った海斗からキャンプの時から何があったのか教えてもらった。

 食料詐欺に引っ掛かった彩を実音が問いただし泣かせてしまい、泣き止むことのない彩をなだめる為に格好つけた言葉を言ったら頬を紅潮させて倒れた、と。

 

 メチャクチャ羨ましいわコンチクショウ。ぶっ○してやろうか?

 

 「オマエハアホカ?その頭はただの飾りか?バーカバーカ!」

 「は⁉人が真面目に考えてんだから少しはまともに考えろよ!」

 「あ?うるせぇよこの鈍感野郎!少しくらい自分で考えろや!」

 「考えてもどうにもならないからお前に相談してるんだろ!」

 「じゃあお前の思ってること全部吐けよ!彩にぶちまけろよ!」

 「……そんなことして関係が壊れたらどうすんだよ…………!もう元に戻れなくなったらどう責任とるつもりだよ⁉」

 「……こんなことで崩れるような仲じゃねぇだろお前らは。とっとと仲直りしろ」

 

 そう言い残してその場を立った。キッチンに立ち、飯の用意をする。

 あぁ、もうなんでこんな損な役回りしか来ないんだ俺は。自分で仕組んでジョーカーを引くとは運が良いんだか悪いんだか……。

 

 「あとは彩、か…………」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 彩が自暴自棄なってしまい、なだめる為に詠斗の部屋を使わせてもらってるんだけど……つくづくオタクだなぁ、って思ってしまう。みかん少女に百合好きピアノ少女にヨーソーロー少女のフィギュア、機動戦士のプラモデル、ポスターなどが部屋一面に飾られている。

 

 話の内容と環境が噛み合わない……。

 

 「その……彩。この前はごめん!」

 「……え?なんで、謝るの……?」

 「彩の知り合いがいたずらしたっていうのは彩から聞いてたのに責めたりしてごめん!」

 

 ここでそばにいた実音が先日の謝罪。本当に悪いと思ってたのか、この場を乗りきるための材料なのか。ま、実音の場合は前者かな?バカ正直だし。

 

 「いや、謝るのは私の、ひゃ⁉」

 

 彩の言葉を遮るようにして実音は彩の肩に両手を勢いよく置く。ナイス、実音。って、僕に寄越すのかい!

 

 「彩、落ち着いて聞いてほしいんだけど……キャンプの時、海斗と何があったの?」

 「……ふぇ?えっ、あ、うっ……きゅー」

 

 驚きを隠せない彩は一瞬戸惑った。キャンプの失態を責められるとでも思ってたのかな?あと、彩が赤面していくのが分かる。というかもう、沸点越えたんじゃない?

 海斗のやつ、やっぱ変なこと言ったんだな……。あそこで調理すべきだったか……。いいや、後で制裁しとこ。

 

 「えっとね、彩?僕たちはね、海斗と彩が心配だったんだよ。いつもバカやって騒いでるけど、見てるところはちゃんと見てる。だから、詠斗も勉強会にかこつけて仲直りさせる場を設けてたんだ」

 「うん、それは……薄々気づいてた。けど…………」

 「「けど?」」

 「海斗を見るとあの言葉が脳内でリピートして……え、えへへ」

 

 笑ってる彩に「どうしたのさ?」と問うと、耳打ちしてくれた。どうやら、僕たちが食料探しに行ったときに言ったらしい。

 カイトユルスマジ。ギロチン確定。

 

 「あー……うん。落ち着いたことだし、一回戻ろうか」

 「え、あ、でも……心の準備が…………」

 「ほら、いいから早く行くよ!」

 

 詠斗と処刑方法についても話さないと。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 彩がリビングに戻ってきて1分も経たないうちに、海斗は立ち上がって向かい合った。

 

 「実況は私、日比谷実音と」

 「解説は九重創です。よろしくお願いします」

 「お前らは何やってんだ……」

 

 ちなみに俺らはキッチンで手を動かしながら談笑している。

 

 「彩!」

 「ッ⁉ひゃ、ひゃい!」

 「あのさ、なんで、俺を避けてるのは分からないよ?けど、今まで当たり前だった彩との会話が日常から無くなるのはすごい寂しかった」

 

 「お、ここは海斗選手の領域!そこでいきなり、右ストレートが炸裂した!」

 

 「……みかんが喉を通らなかったんだ」

 

 「次はお得意の左フックぅ!」

 

 「しかも皮がキレイに剥けなかった」

 

 相手の目を見て真剣に話す海斗に対し、彩は身体をプルプルさせて震えている。顔も少し赤い。あ、顔あげた。そして、覚醒した。

 

 「あー、もう!我慢できない‼大体ね!なんで、みかんなのよ!みかんみかんうるさいのよ!」

 

 「英梨星彩さんの右アッパーがキレイに決まった!」

 

 それから飯ができるまではずっと聞き耳をたててよく聞いていた。まぁ、これで仲直りしたのかな?面と向かって喋れるからな。

 

 「「カイト、後で処刑するよ!」」

 

 




次回の投稿は山ちゃんさんの予定です!次回もよろしくお願いします!

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