青春memory   作:N"our"vice

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はじめまして!N"our"vice所属&一応リーダーやらせて頂いてます、さとそんと申します!

この作品はハーメルン作家高2勢によるグループ投稿ですが今回は私、さとそんが書かせていただきました。一次創作は初めてなので不安も少し残りますが楽しんで頂ければと思います!

それでは第1話スタートです!




秋原 詠斗の日常

 

 

「おい、急げ!もうすぐチャイム鳴っちまうぞ!」

 

「分かってるっつーのッ!お前が足遅いから合わせてやってんだろうがっ!」

 

「んだとっ!?というか元はと言えばお前が待ち合わせに遅れてきたのが悪いんだよ!」

 

「あー!もううるさい!そんなことよりまずはどうするか考えようよ!」

 

朝の車通りの少ない通学路に男3人のけたたましい声が響き渡る。普段ならば同じ高校の生徒で溢れかえっているはずの道だが今日は全くと言っていいほど人の影は見られない。

 

──理由はそう、遅刻しているから。

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……よし、校舎が見えてきたぞっ!」

 

3人の視界が高校の校舎を捉えた頃、時刻は既に8時43分。つまり始業の時間よりも3分ほど遅れている。

 

「今日の一時限目は英語だからな、北条先生はいつも5分くらい遅れてくるしまだ間に合うだろ!」

 

しかし高校生というのは不思議なもので、自分の意思で高校に通っているにも関わらず授業を受けたくないが為に先生の細かい情報を調べあげているのだ。

 

「いや〜、それにしても北条先生は美人だよなー!特にあのたわわに実ったおっぱ((ry」

 

「そんなこと言ってる場合か童貞!いいから急ぐぞ!」

 

「童貞とは何事だ!?俺はもうヤリt……じゃねぇや、まぁ安心しろって。お前ら、あそこを見てくれ」

 

少年が指を指している先を見ると彼らの教室である2-5の窓から顔を出している少年がいる。

 

「あれは……実音??どうして、、」

 

「さっき俺が某SNSで命令しておいた。先生が教室に来るまでは後2分がいいとこだろうから、生徒玄関から入って階段を登ってちゃ間に合わないかもしれないしな!そこで海斗、お前と俺で創をあそこの窓に投げ入れるぞ!」

 

「……え? 詠斗、それ本気?」

 

「おう、もちろんだ。出来るよな?創、海斗?」

 

「いや、俺は構わないが……創は行けるか?」

 

「はぁ〜……、わかったわかった!行きますよ、行けばいいんでしょ!こんな無茶な作戦立てて、、詠斗!後で仕返ししてやるからなっ!」

 

「よく言った、創!それでこそ男だぜっ!それじゃあ先生が来てたら適当に誤魔化しといてくれよ!海斗、手を出せ!」

 

「おう。創、後のことは頼んだぜ!」

 

「はぁ……仕方ないな。了解」

 

そういって二人の少年──海斗と詠斗はお互いに身体を向けあって手を組み合わせ、腰を低く構える。

 

二人に向かって走っていく少年──創は覚悟を決めたような顔つきで全力で走っていく。

 

「「いっけえぇぇーーっ!」」

 

「うおおぉぉーっ!……やっぱり怖い怖い怖い怖い怖いいやぁあぁぁーっ!」

 

3人の雄叫びが揃った時──創は翔んだ。悲鳴をあげながら。

そして見事に教室へとホールインワン。

 

「うおっ!?九重!?」

「どうしたの創くん……?」

「いつも冷静な創がこんなアクロバティックな動きをするなんて……ギャップ萌え…堀りたい…//」

 

創が入っていった(投げ飛ばされた)教室からは歓声(?)が聴こえてくる。先生の声が聞こえてこないので恐らくまだ来てないのだろう。

 

「無事成功したな!それじゃあ俺達も行くか!」

「創……無事だといいけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

「あ゛ぁ゛ーやっと終わったーっ!」

 

時間は流れて今は放課後。

紅く染まった夕焼けが照らす教室では4人の男子が机に向かってグッタリしていた。

彼らの机の上には『始末書』と書かれたプリントが大量に置かれている。

 

「創っ!お前許さねぇからな!なにが「詠斗くんと海斗くんは一緒の布団で抱き合ってて遅れました」だクソ野郎!」

そのうちの1人、秋原 詠斗が音を立てて立ち上がり、隣の席にいる九重 創を指しながら言う。

 

「あははっ!だからやり過ぎたって謝ってるじゃないか」

それに対して創は顔をニヤつかせながらおどけた様子で反論する。

 

「まぁまぁ詠斗、こればっかりは俺達もやり過ぎたしもういいだろ」

 

「……創も、やりすぎ。」

そして海斗は詠斗を、実音は創を諌めている。

 

 

何の話かと言うと、今朝の1件で詠斗と海斗により教室へと投げ飛ばされた創は仕返しとばかりに、すぐにやってきた先生へとキツすぎる嘘の情報を言ったのだ。

その内容は「海斗と詠斗が一緒のベッドで抱き合っていた」ということ。もちろん2人とも男の子である。決して男の娘ではないのだ。

つまり、……まぁ、そういうことである。

 

さらに運の悪いことにやってきた先生は北条夏子先生という、生徒のいうことはなんでも信じてしまう人である為、余計におおごとになってしまったのだ。

 

結果として虚偽の申告がバレ、海斗と詠斗は始末書、創は責任を取ってその手伝い、教室の窓を開けておいただけの実音も何故か詠斗に強制連行されて今に至る。

 

「それにしても……君達はなんで遅れてきたの?まさか本当に抱き合ってたわけじゃないでしょ……?」

 

先に学校に着いており、詠斗たちが遅れてきた理由を知らない実音からの質問に対して詠斗が口を開く。

 

「実音も冗談はよしてくれ、──俺が昨夜にアニメ大量消化してたら寝落ちして時間に遅れただけだよ」

 

「「「「はぁ〜……」」」」

 

何故か軽くキメ顔で理由を説明する詠斗に対し、その場にいたほかの4人は盛大な溜息をつく。

 

「なんて言うか……いつも通りだなぁ」

 

そう、秋原詠斗はオタクである。それも極度の。

休み時間は同じ系統の友人とアニメについて語るorラノベを読みふけり、家では積みゲー積みアニメの消化に徹する。

これだけを見れば根暗そうな人間にも見えるが、とても社交的で趣味の範囲が広いせいか明るいオタク、一緒にいて楽しいやつ、ぐらいの認識を周囲からされているためオタクに厳しい現代社会でも浮かずにいる。

 

「そうそう、でさ!昨日はラブr……」

 

「詠斗、もうそのへんにしておけ。お前は語り出すと長くなるからな、このままじゃ家に帰れなくなる」

 

「んだとっ!?あの作品はな、秋に2期も決定していて……」

 

「わかった、わかったから。ほら、これ(始末書)生徒指導室に提出して帰るぞー」

 

「「「はーい」」」

 

「ちょ、待って!今日は布教のためにBlu-ray全巻持ってきたから!視聴覚室でも借りて鑑賞会しようぜ!な!?」

 

「「「「…………スタスタ」」」」

 

「……無言で俺を置いていかないでぇぇぇーっっ!」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

「じゃあな、実音、創」

 

西日が駅の近くのビルに反射し、辺り一面をオレンジ色に染め上げる。

駅前にある気温計は20℃を示しており、春の陽気が感じられる。

 

「あぁ、また明日な〜」

 

この駅が俺たち4人の別れ道となっており、実音・創の2人は線路を跨いだ向こう側へ、俺と海斗はそのまま駅を過ぎた住宅街の中へと入っていく。これがいつもの帰宅ルートだ。

 

「あぁ、2人ともお待たせ〜」

しかし今年度からは今までとは少し違う。

 

「早かったな、彩、健誠」

 

今年の春から俺たちと同じ楠葉学園に通っている、一つ年下の幼馴染みである天谷 健誠と英莉星 彩もこの駅で合流して帰ることになっている。

 

「何言ってるのよ、そっちが遅かったんじゃない」

 

長い黒髪を右手の人差し指でクルクル巻きながら少しふてくされたような態度をしている貧にy……ロリ体k……幼い少女が英莉星 彩。

 

「まぁまぁ彩、落ち着いてよ。2人は部活も無かったはずなのに一体なにやってたんだ?」

 

そして彩を宥めながら話題を振ってくるのが天谷 健誠。優しそうな顔つきとは裏腹に高1とは思えないくらいのガッシリとした身体付きで、運動神経が良くボクシングをやっている。

 

「簡単に説明するといつものアレだな」

 

「「あぁ、なるほど……」」

 

健誠と彩は呆れたような表情を浮かべてこちらを見やる。

 

「詠斗も普通に過ごしてればモテるのに、勿体ないわね……」

 

「いいんだよ、俺はオタクであることに誇りを持ってるんだ。だからソッチの教養があって趣味に寛容な人か声優さんと結婚するって幼稚園児の頃から決めてんだ」

 

「まぁたそうやって開き直ってさ……詠斗らしいというかなんというか」

 

「なんだお前ら、俺に反抗する気か?この重たいリュックに入ってるラブライブ〇サンシャイン〇Blu-ray全巻で頭かち割ってやろうか?」

「「ごめんなさい許してください」」

 

おい、即答やめろや。

 

 

「なぁ、早く帰ろうぜ?朝からバカとバカなことしたせいで疲れてるか寝たいんだが……」

 

そんなバカバカ連呼しなくてもいいじゃないかよぅ。君も案外乗り気だったろうがよぉ。

 

 

 

 

「それにしても、お前らが入学してからもう半月か?」

 

先程までいた駅を離れ、4人で夕焼け空の下を歩いていると突然隣を歩いていた海斗が呟く。

今は四月の下旬。並木道に咲いていた桜も少しずつ散り始め、やがて春の暖かな陽気も夏の熱気へと変化していく。

 

「あー、確かにもう半月だね。意外とあっという間だなぁ……」

 

「そういや、お前らはなんで楠葉受けたんだっけ?」

 

自慢ではないが俺の通っている高校である楠葉学園はそれなりに偏差値の高い、地元でも有名な進学校だ。なのでここに入学する者には少なからず目的がある。

 

「俺はやっぱりボクシングかな。ここが県内でもトップクラスの設備があるし。なにより詠斗たちもいるしね!」

 

お、おう……なかなか嬉しい事言ってくれるじゃないか健誠よ。

 

「私は特に理由はないわよ?……た、ただ、海斗がいるだけで……」

 

「ん?最後なんかいったか?」

 

「な、なんでもないっ!」

 

だがしかし、彩。てめぇはダメだ。なんだそのテンプレなツンデレは。こんな公衆の面前でイチャつくんじゃありません。

そして海斗、お前もそろそろ彩に好かれてることくらい気づけよ、朴念仁。

 

 

そんなことを話しているといつの間にか4人が別れる交差点へとたどり着いていた。

やっぱり人と話しながら帰ると時間って早く感じるよな〜。

 

「それじゃ、また明日な〜」

「おう、じゃあなー」

「うん、また明日」

「じゃあね」

 

いつものようにみんなへ別れの挨拶を告げ、自分の家へと1人で歩き始める。

俺は交差点を右へ、健誠は左へ、海斗と彩はそのまま真っ直ぐ。あのふたりは家が隣だからな、どうせ夜になったらベランダでイチャコラしてるんだろう。(彩が1人ではしゃいでるだけだが)

 

1人で歩いているとやはり色んなことを考えてしまう。

あ、そういや今日はあのアニメの放送日じゃん!という実にアニメ好きらしい思考だったり、あー明日はレポートの提出日か、めんどくせぇ……という学生あるあるの思考だったり、そろそろ進路決めなきゃな……というこれからのこと。

 

先程も言ったようにうちの高校は進学校だ。早い奴らは1年生の頃から、だいたいの奴らは2年生の今頃から受験勉強を始めている。

だからといって、じゃあそろそろ俺も……なんていうのはなんだか周りに流されているだけのようで……でもやらなきゃ将来が……etc.……なんて思考が空回りしてしまう。

 

やだなぁ、俺ってば思考がウロボロスしちゃってるっ!

 

……はぁ、ほんとどうしようか。

ただ1つ言えるのは、自分はいまの状況が好きだ。

 

海斗がいて、健誠がいて、彩がいて、実音がいて、創がいて、──みんながいて。

みんなでアホなことやって怒られて、それでも懲りずにもっとアホなことをしてもっと怒られて。

そうしてキレた俺をみて笑っている創をその他大勢で宥めて。

 

だからこの日常をまだまだ続けたい。

 

高校2年生という1年間は人生に1度しかないのだから。

 

この1年間は、青春は──終わらせない。

 





次回の投稿は雪桜(希う者)さんです!
今後ともよろしくお願いします!

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