ファンタジーライフ ~転生先は異世界でした~   作:篠崎零花

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次の話から戦闘が入ります。

なるべく想像しやすいよう頑張ってみます。

因みに両開きの扉の向こうの部屋は入って正面、左側、右側に扉があって、右側の扉はエクジットです。
※8月16日追記

※サブタイトルを分りやすくしてみました。


第5話 戦闘経験は素人にあれが生えただけ?

――悠希?視点

よりにもよって何故ここに…。

そう不思議に思ってリーシャの顔を見ると建物を(いぶか)しんでいるのか、そんな眼差しで見つめている。

 

「俺達の移動ルートの付近にお化け屋敷なんてなかったはずだし、こりゃあ出ないように不自然だな」

 

「そうだな。…っていうかどうやって確認するんだろうか。入る以外になにか手段はないのか?」

と返しているとリーシャも参ったような表情を浮かべた。

 

「スタッフに言う、のもありだろうけど普通に入っていったって言われたら私達も入るしかなくなるね」

 

「そうだな…」

「そうだね…」

俺と愁斗(しゅうと)がほぼ同時に返事をした。

 

どうしたものか…。

方向音痴のノーラが迷子になった時、手伝うと言った反面断りづらい。

愁斗もそう考えているのかどうかは分からないが、困ったような笑みを小さく浮かべている。

 

「とりあえず確認のために…入ろうか」

とリーシャ。

 

「「えっ?」」

思わず声をあわせて驚く俺達。

 

いやいや、そんなまさか。

普通、迷子を探すだけで入るわけないしね。

 

「どうする?」

 

「ひとまずリーシャさんの動きを見ようぜ。それからにしても――」

と2人でこそこそ話していたらリーシャは平然と向かおうとしている。

 

「…ためらっている場合じゃないらしい。愁斗(しゅうと)、この際だからついていくか」

と俺は半目で。

 

「ああ、そうみたいだな。なんでこんなことになったのやら」

愁斗は渋々といった顔で。

 

それぞれついていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

――碧喜視点

正直言って本当はこんな場所にいてほしくないと思う。

だっていくら人がこういう日でも多いからと言った所で、お化け屋敷に迷いつくような子じゃない。

 

「入る、か」

と呟いて入ろうとした。

 

「…ちょっと待って、リーシャさん。あそこ、なんかおかしい気がする」

そう言われ、振り返ると真顔の悠希が。

 

「おかしい、って?」

そう聞くと、驚きの返事をしてきた。

 

「……自衛はできるよね?」

 

「ま、まあ、ある程度はできると思うよ。どうして?」

と聞くとなにも言わずに先に入っていく。

 

「またあれか。リーシャさん、とりあえず頭の片隅にいておくだけにしておけ。気楽に行かないと大変だからな」

ニコリ、と微笑みながら「行こう」と言ってくれた。

 

「うん、分かった。そうするね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――碧喜視点

 

 

――お化け屋敷内部

入るとやけにおかしいような感じがした。

悪意、というべきなのだろうか。

 

「リーシャさん、愁斗(しゅうと)。ちゃんと後ろについてる?」

半身だけ振り返りながら聞いてきた。

 

「いるよ。でもやっぱりお化け屋敷だから薄暗いね」

 

「仕方ないな。雰囲気から怖がらせたいんだろうし。あ、俺もいるぜ」

と順番に返事をした。

 

「分かった。なら進もうか」

悠希(ゆうき)はそう言い前を向くとそのまま歩き出した。

私達もそれに倣って歩き出す。

 

 

 

 

それでしばらく歩いたが、機械によって驚かされることもお化け役に驚かされることもなかった。

むしろ…

 

(普通の人が、いない?何故?)

 

そこに疑問を持たざるおえなかった。

 

「不思議なくらいに(なに)もないな」

 

「そうだね。…凄く変な感じがするけど」

なんて話ながら歩いていると黙っていた悠希がいきなり両手を広げ

「止まった方がいい。この先になにかいる」

と私と愁斗(しゅうと)にしか聞こえないような声で言った。

 

「この先?でもこの先って…」

と言いながら前を向く。

 

そこにあるのは両開きの扉。

このお化け屋敷特有の少し広めの部屋があるらしい。

 

そもそもこのお化け屋敷は古い館をイメージしているらしく、2階建て。

短く歩いてちょっとだけ怖い思いをして帰るのもよし、長く歩いて恐怖を体験するもよしのなんとも変わったアトラクション。

 

「そうだな。本来ならあそこはさらに恐怖を引き立たせるためのものがあるはずだ」

 

「でも今は…。気を引き締めた方がいい。多分やっかいなことになってる」

 

私はなんとなく首をかしげた。

そう、なんだろうか。

 

「まぁ、でも気づいたのが早かった(・・・・)。だからまだここにいるんじゃないかな?今回はノーラさんって子の親に感謝だね。面倒なことにならずにすんだ」

そう言って指をポキポキと鳴らし始める。

 

この先になにがいるんだっていうのだろう。

 

「悠希が言うんならそうなんだろうな。とりあえずそろそろ開けても大丈夫そうか?」

 

「俺は平気だよ。リーシャさんは?さすがに心構えとかなしでいきなり、は大変だろうしね。あー、今回もなんとかなるといいんだけど」

 

……

「うん、分かった。」

 

そう言って私が頷くと愁斗(しゅうと)悠希(ゆうき)が両開きの扉のそれぞれ左右についた。

 

「悪いんだけど、リーシャさんもいけない?先行はしてあげるからさ」

 

「分かった。少しならお父さんからトレーニングの一環で教えてもらったし、頑張ってはみるね」

と言うと愁斗の方が手招きしてきた。

 

「なら大丈夫そうだな。悠希、こっちはいつでも行けるぜ」

 

「分かった。なら行くよ」

と言うと悠希(ゆうき)愁斗(しゅうと)が扉を思いっきり蹴って開けた。

 

 

両開きの扉の向こうに広めの部屋があり、真ん中に人が1人横たわらせるのに十分な(つくえ)がおいてある。

 

その上に誰かがのせられているが、元から薄暗く作られているせいかやや見えづらい。

 

そうやって見ていると2人は先に入って警戒しながら別々の場所を見ている。

 

(なら、私はあの机…かな?)

 

 

私も中へ入り、真ん中へ近付く。

机に横たわっている人物は肩まで届きそうな金髪をしているように見える。

耳は…(とんが)っている。

 

「ノーラちゃん…?」

 

その子の名前を呼びながら揺する。

なにかで拘束されているのか体だけがそれにあわせて左右に揺れる。

 

「多分手足がなんかで繋がれてるんだろうね。ところで愁斗、なにか見つけた?ここでもある程度の収穫はあったけど」

 

「……ああ、俺も手がかりまでとはいかないがちょっとした収穫があった」

 

と言うと早足で歩き、私の背後まで近寄ると「3人一緒になってた方がいい」と言い、急かすように背中を押した。

 

私は頷き、悠希の近くに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――悠希?視点

 

「収穫があった、というわりには同じ場所に集めるんだね」

 

「ああ、その方が伝えやすいのもあるしな。それでな…?」

と言うと俺達にも聞こえるギリギリの小声で教えてくれた。

 

幸いこのお化け屋敷はBGMというような音が大きく流されていない。

おかげさまで全部聞き取ることができた。

 

「そこでなにをしているのかな?君たち」

 

いきなりそんな声が正面からした。

 

「そういうお前こそここでなにしてる?」

と俺はその方を向きながら警戒心丸出しで問う。

 

「俺はここの関係者だ。お前らは無関係者だろう?ここから早く出ていくんだ」

 

と言って追い出そうとこちらに来た瞬間。

 

「―――」

 

リーシャが突然呪文らしきものを唱えた。

すると氷が虚空から現れ、声の持ち主の方へ飛んでいった。

 

パリン

 

「いきなりなにをするんだ?危ないじゃないか」

と言いながら姿を見せたのは赤黒い髪を少し長めに生やした男性。

既に得物である両刃の槍を手にしていて、臨戦態勢をとっているようにも見える。

 

「私達に敵意のようなものとかを向けておいてそれですか?それに、関係者なら手にしているそれはいりませんよね」

 

「ほう…それもそうだ。だが、まさか分かるとは。いや、よく見れば君もエルフか。そりゃ比較的敏感なわけだ」

と私の耳をしげしげと見ながら言った。

 

「…んで、その子はどうやって連れてきたんだよ。さっきまで俺達と一緒にいたはずだけど」

 

「ああ、それはとても簡単なことだよ。もう1人と一緒に優しく声をかけ、『何度もここに来てるから、君が望むような場所に案内できるよ』と言ってやるだけ。それだけで十分だ」

 

私は驚きを隠せなかった。

あの子(ノーラ)はそこまで無警戒な子ではなかったはずだから。

 

「それで、その子になにをしたんだ?さっきからビクとも動いてないんだが」

 

「ああ、その子か?その子は潜在魔力が高かったもんだから利用させてもらったよ」

と言って机の上のノーラ(あのこ)に近寄りお腹を撫でる。

 

「…ノーラちゃんは冗談気味に前世の話をしても信じてくれるような良い子だった」

 

そう言われ、男性は怪訝そうな顔をした。

「それがどうした?」

 

碧喜(たまき)だったあの時には出来ない方法であなたを―――牢屋へ送ります」


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