ファンタジーライフ ~転生先は異世界でした~   作:篠崎零花

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道のりは遠く険しい。でも、実際今通ってる道は何故か安全。

はい、特に意味はありません。
余談ですが、主人公は2人扱いになっています。
補正がかかっているか、かかっていないかなんですが…それは追々分かると思います。

それでは、下から本編です。平気な方は適当に読んでやってください。


第30話 成果のある調査?

――碧喜(たまき)視点

 

2階を任された2人はそれぞれ複雑そうな顔をして上がっていった。

誠也さんはそんな幽霊とかいないだろって顔をしていたけど、そうなると精霊の説明がつかないよ。

あれ、エルフもしくはエルフの血を受け継いだ人達以外に例外がいないと見えない理由が精神体のせいって説があるし。

 

それに精神体は簡単に言えば霊体。つまるどころ、幽霊。

契約すれば確かに全員に見える、姿が変わると言った感じになるけどそれって幽霊みたいなものをいつでも見れるってわけで……。

 

言わないでおこう。

 

 

祐菜さんもいたし、話したらまた叫びそうだし。

その人はほぼ幽霊とか怪奇現象が起きないかどうかが不安なんだろうって簡単に想像がつくぐらいの怖がりみたいだしね。

理由があるんだろうけど、聞きづらいし。

 

まさかミミック(笑)とかの類いじゃないだろうし。

というかいないでほしい。

 

 

「1階はどこから調べる?私はしらみつぶしで片っ端から見ていくつもりなんだけど」

 

「俺は特に考えてないからしらみつぶしでいいよ。時間が結構かかりそうだけどね」

 

「大丈夫だよ、ソルもいるんだし一緒に探してもらえると思うよ?」

 

「リーシャか悠希産のどっちの手伝いとかそういうのでも少しは早く別の部屋を見ることが出来るので損はないと思いますよ」

 

私とソルの2人(?)に言われた悠希は苦笑いを浮かべた。

あんまり変わらない…とでも思ったのかな。

どうなんだろう。

 

私がそう考えていると悠希が気にせず手身近な扉へ向かっていく。

姿を見失うと探すのが大変になると言うのに。ひどいな。

 

 

 

 

 

 

 

その後、数部屋見たもののなにも出なかった。

強いて言えば虫やらほこりなどのゴミやらがたくさん出てきたことかな。

あとボロボロになった絵画が少し。

 

なんで空いてるんだろうな、この洋館。と疑問に思うほどなにもない。

なんかソルが反応するものが道中にあったけど、なんだったんだろうか?

 

そう思って振り返ってみると裸体の女性の彫刻があった。

 

 

「うわっ」

 

「どうかした?……あれ、こんなとこにそんなのあったっけ」

 

「なんか変な感じがしますね…。あれ、それはどうしたんですか?」

 

 

その声に反応した2人がそれぞれの反応を示した。

驚いたのは私だけかい。

 

 

「…一応言っておくと持ってきてはいないよ?私の覚えている魔法に物を軽くする魔法とかそういう便利魔法はないし。悠希……はまず持ってこないか、こんなの」

 

「一緒に行っている子が女の子なのにわざわざ持ってこないよ。変態扱いされかねないし。…それに持っていけるとは思えないね。重そうだし」

 

 

女の子って…。

ま、まあ嬉しくないわけじゃないからいいんだけどさ。

っていうか重そう?

持っていけるかも、って一度でも考えたのかな。

別にいいんだけどさ。

 

 

「そっか。んでもってソルはそういうの覚えてないみたいだし、彫刻より違うのが欲しいみたいだから可能性は低いし…」

 

「そうすると消去法で考えて…自分で移動してついてきたってなるんだが?」

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

思わず押し黙る私達。

どうしたものか。

そう考え始めると目の前で形を変えていく。

どうやら変わったモンスターみたいで見え始めた緑色が橙色になりはじめた。

その橙色になった液体みたいな固体(言うならばゼリーみたいな)がねちょねちょと音を出しながら動く。

 

 

「…ええと、笑われているみたいですよ、私達」

 

精霊ってそこまで分かるものなのかな?

そう思っていると目の前で液体になっていくそれ。

顔はスライムにそっくりだったけど、スライムと違って大きさは半分以下だった。

むしろ前の世界にあったスライムをモンスターにしたらこうなるんじゃないかって感じの見た目をしている。

 

「元に戻ったみたい…だね」

 

「だね。しかも襲ってこない…。これって単純に驚かしたかっただけだったりしないか?」

 

「そんなまさか……」

 

 

モンスターって知性がないって言うし。

そう困惑している私に悠希が苦笑いを浮かべた。

 

「でもそう考えるしかないよ?じゃなきゃ不意打ちした方がそこにいるスライムもどきに得なはず。わざわざ地の利を捨ててまですることじゃないよ。例え精霊がいたとしてもね」

 

思わず私は頷いてしまった。

全くもってその通りだったし。

「た、確かに…」

 

「でも、そう考えると今私達が入ろうとした部屋って……」

 

そのソルの言葉に悠希は不思議そうな顔を浮かべ、私は苦笑いを浮かべた。

 

それから少しもしないうちに私は絶句し、悠希は失笑してソルは呆然と口を開ける出来事が目の前で起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――優季視点

 

まさか、あの部屋に変わった人がいるとは思わなかった。

本当のことをいえば人なんかではなかったけど。

どうやら魔法使いらしい。

男勝りな性格をした女性だってことも話してて分かった。

因みに服は最初、死体(いわゆるゾンビ)みたいな雰囲気を醸し出していて話しづらかった。

それをなんとか説得して着替えてもらった。

なんで服を着替えられたのかってツッコミはしないでおく。

 

「いやぁ、本当に悪かったな。でも、二手に分かれてるんじゃなかったのか?」

 

「あれ、なんで知ってる?俺はそういうこと言ってないし、リーシャ達も言ってなかったはず」

 

「ああ、いやね。2階の方が酷くしてあってね……リビングアーマーを2体呼んであるんだ」

 

「それって……」

 

そう呟くが否や2階から叫び声がした。

…あれは大丈夫かな。

 

「……助けにでも行く?一応安全なんだと分かっててもほら、心強い人がいてくれた方が落ち着くでしょ?」

 

「だからってなんで俺のことを見つめながら言うのかな?不思議でならないんだけど」

 

「いいから、悠希も行く。あなたは――」

 

「ついていっても問題ない外見なはずだけど…どうかね」

 

 

そう言われてから気付いた。

そういや、容姿とか見てないなと。

一見問題なさそうな感じはするんだけど…どうだろうか。

 

 

「大丈夫だと思いますよ。……多分」

 

「だと良いんだが…。あと最後になんか言わなかったか?」

 

「気のせいですよ、やだなぁ。ね、リーシャ」

 

 

いきなり振られたリーシャは驚いて『にゃっ!?』なんて声を出していた。

どんな声を出して驚いてるんだか。

こっちがビックリするわ。

 

「そ、そうだね?」

 

「とりあえず行こうか。恐怖のあまり腰が抜けてそうな人が1人いるし。誠也でも平気だけど、周りに怖がりな女性がいなかったから持て余してると思うんだ」

 

リーシャは「あぁ…」と納得してくれたが、ソルだけが首をかしげた。

まあ、それは仕方ないか。

 

 

俺達はその流れのまま、2階に向かうためにエントランスへと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エントランスへ向かう最中はなにも起こらなかった。

んで2階にあがってみたら…

「ああ、あれは大丈夫なんじゃないですか?」

 

とソルから冷静なツッコミを言わせる見事な光景(笑)だった。

どんな感じかって言うと背後から歩いてついてくるリビングアーマーから逃げ惑う2人…っていう風景とでも言えばいいんだろうか。

2体とも対応にでも困ってるのかそれともなんなのか計り知れないけど、あわてふためいてる。

 

ある意味シュール…。見た目もあいまって余計にね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくした後、リーシャがどうにか説得して(ソルが途中から手伝っていた)、冷静になった2人は恥ずかしがっていた。

黒歴史の一つや二つぐらい、出来ても仕方ないことだと思うんだけどね。俺だけか?

 

因みに今は2体いた内の片割れであるリビングアーマーに案内された客室にいる。

さすが広い館。驚くことに別館もあるんだそうな。

 

 

……あれ、確か俺達は依頼できたはずなんだけどな……

 

「まあ、クリアってことになってると思うよ。ソル、確認してもらっていい?」

 

言われたソルは頷いてからなにかを詠唱して虚空に依頼書を――

 

「うん、それはいいけどさ。俺はなにも言ってないはずだよ。どうして考えてたことを知ってる?」

 

「いや、思いっきり呟いてたし」

 

「そうですね。突然独り言を言うものですからビックリしましたよ」

 

「そ、そっか…。疑って悪かったな」

 

「別に~?」

 

そう話していると扉が開く音がしてローブを身に(まと)った女性が出てきた。

さっきはよく見る暇もなかったから見てなかったけど、大分お洒落なローブを着ている。

それこそ、目深に被ったフードとかそういうのがなければローブに見えないほどにはお洒落な柄をしている。

色は…白色なんだ。汚れが目立ちやすそうだな。

 

 

「驚かせてしまってすまなかった。館に入る無関係者は外に出すよう指示しててな。怪我だけはさせないように言ってたからなにも問題ないとばかり…」

 

「い、いや…悪い人じゃないって分かったんで問題ないですよ。祐菜さんもよかったね」

 

「あんまり心臓に良くない依頼だったけどね。もう勘弁願いたいわ。ってなわけで先に帰らせてもらうね。後は君達に任せたよ。僕はもういいからね」

と言うとそのまま帰ろうとした。

 

「ああ、ちょっと待ってくれないか。君に渡すものがある」

 

そういうと祐菜さんになにかを手渡した。

遠目からして小さな物だと思うんだけど、なんだろう。

 

「それを肌見離さずもっているといい。大した物じゃないけど、困らないはずだからさ」

 

「分かったよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐菜さんが出ていってしまった後、向かい合う形で俺達は座らせてもらうことになった。

俺の正面左側に誠也、右側にローブを着た女性。

俺は誠也から見たら左側にいて、その左隣はリーシャとソルだ。

 

うん、こう見るとややこしいな。こうするか。

 

誠也 ローブを着た女性

  机

リーシャ達 俺

 

うん、分かりやすくなった。

これで大丈夫だな。

…で、なにが大丈夫なんだっけか。

 

 

「そういや聞いてなかったね。どうしてここに来たんだい?今のところ、あの子達が人に害を与えたとかそんなことはしてないはずなんだが……」

 

「あ、いやそれじゃないんです。俺達が来たのはここが…この洋館が誰もいないのにも関わらず人々が近寄らない、近寄れないからなんです。それで偶然掲示板にあったのを取りまして」

 

「他にも洋館調査はあったんだけどね、ここのが興味あってとった……ってソルが」

 

「そ、そこでどうして私に振るんですか!?」

 

「なんとなく、かな?」

 

その返答に苦笑いを浮かべるソル。

大変そうだな、ソルも。

 

「なるほど。なら、文面に害のないモンスターがいるものの要注意とも書かれていそうだな」

 

 

それを聞いた俺は苦笑いを浮かべざるをえなくなった。

確かに書いてあったから。

 

 

「そんなまさかー……。え、嘘。そうだったの!?」

笑いながら俺やソル。誠也の顔を見たリーシャはすっとんきょうな声を出した。

 

「ま、まあ…その。もう大丈夫みたいなら俺達、帰りますんで」

 

「そうか。お礼に渡したいものがあったのだが…時間がないならひきとめておく訳にはいかない。一応そこまではついていくが、その後は…」

 

「大丈夫です。それで、お礼…とは?」

残念そうな顔をしていた(見えないけど、そんな感じがする)女性の顔が明るくなった気がした。

 

「ああ、そのお礼にこの館を譲ろうと思っている。屋根裏はないが、別館もあるし不便はしないはずだ。どうかな?」

 

「えっ、ですけど俺達…」

 

「そこは大丈夫だろ。ほら、俺達の親って俺達がたまに顔を出しゃ平気とか言うような奴だろ?んだったらここにまず拠点を置いて、冒険者ギルドを行き来してもいいんじゃないか?幸い町からそう遠くないしよ」

 

「そうだけどさ…」

 

「ああ、もしかして連絡手段か?そうだな…実験台になってくれるんならあるんだが…」

 

「実験台って……」

 

俺が気にしてることを当てるとは…まさか、ニュータイプか。

とか思っていたら実験台という物騒な単語が出た。

意味を察したっぽいリーシャが苦笑いを浮かべてたけど、あえてなんも言わない。

 

 

「んまぁ、とりあえず報告に行かないか?私がいれば失敗にはならんだろうからさ」

 

「あ、あぁ…はい」

 

なんともまぁグダグダな…。平和に終わってよかったけどさ。

ということで俺達はローブの女性と共に町にある冒険者ギルド(支店)にとんぼ返りすることとなった。


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