はい、その通りですね…。
ですが、これはこれで意味がないわけではないので、宜しければ適当に読んでやってください。
※サブタイトルを分りやすくしてみました。
――
一晩明かした次の日の朝。
私達は朝一の飛行船に乗って町へと出ていた。
洋館へ行くには道案内をしてもらった方がいいから。
そう提案してきたまではよかったんだけど…。
「どうしましょうか、リーシャさん達」
「と、言われても…知ってる人なんているのかな」
そう呟く私。
ソルも困ったような顔をしている。
するとカウンターに行っていた悠希が私達のそばにきた。
「どうだったの?」
「ああ、精霊による情報と依頼書の情報のおかげで多数ある洋館から特定ができたらしい」
「そうなんだ。…にしてもなんか探すのだけでも苦労するのって空いた洋館はいくつあるんだろうね…」
確かに…。
依頼書を見る限り、そこまであるように見えなかったんだけどなぁ。
最初に聞いた時はビックリしたし。
「ところで誠也さんは?仲間がどうの、出会いは酒場からだのと言ったきり戻ってこないけど。…こんな時間から開いてるわけがないと思うんだけど、どうかな」
「……」
「そ、そうだよね。誠也もなんであんなふざけたことを言うんだろうな。まだあいつも未成年なのに」
最初にソル、次に悠希がいった。
でも不思議なことにソルは気まずそうに、悠希は心なしか作り笑いを浮かべているような…気のせいかな。
うん、多分気のせい。
そう思っているとようやく待っていた人物がやって来た。
…私からすればそれなりに大きな人を連れて。
褐色のとても短い髪、黒色の瞳で尚且つ元気そうな澄んだ感じがする。
体つきもよく、夏だからなのか半袖に膝より少し上のハーフパンツといった動きやすそうな格好をしている。
この人…性別はどっちなんだろう。
「この人が案内してくれるんだとさ。酒場で見つけたからちょいと飲んでるかもしれん」
「そ、そんなに飲んでませんよ、失礼な。…まあ、こんな朝から飲むのもそりゃおかしな話ですが。……え、ええと、洋館に一緒に行ってくれる方ですか?」
そう話した人の声はそれなりに高かった。
頬がほのかに赤いのは…なんでだろう。
そんなまさかとは思うけどね。
「あー、うん。そうだよ。…ところでさっきはどこにいたの?会って早々の私が聞くようなことじゃないけど…平気なら聞いておきたいかなって」
失礼にあたるかな、と不安に思いながら聞いたせいか若干ソルが私の顔を見ているような気がする。
気がするだけで確認はしていないからそうしてるかどうかなんて分からないんだけど。
「……洋館に1人で行ったら怖い目にあったので。その怖さをまぎらわすために開いてた酒場で酒を飲んでたところですよ」
と言ってハハと笑ったけど、大分乾いて聞こえた。
だ、大丈夫なのかな…と不安に思った。
そこの人もあるけど、これから行くであろう洋館への不安も含め。
「敬語で話さなくても大丈夫だよ。あ、俺は幸野悠希って言う。んで、洋館は…そう遠い場所にあるわけじゃないんだよね?」
「あ、ああ…分かったよ。そうだね、そんな遠くじゃないね。むしろ馬車で近くまで行けるレベルさ。しかもまだその付近は安全だよ。因みに僕は
「なるほど…。それなら大丈夫そうかな。え、そうなのか」
そう頷いていた悠希だったけど、ジャイアントと聞いて驚いていた。
…人間より大きいからそれ以外なんだろうなぁと思っていた私にとってはそこまで驚きじゃなかったけど。
嘘。かなり驚いた。
「なるほど。でも、俺達も準備しなくちゃだから悪いけどいいか?」
「あー、構わないよ。そればっかりは仕方ないからね。んじゃ、僕も用意するかな…。村の広場…って分かるかな?そこに借りた馬車でもつれてきておくから終わったら広場に来てもらえると嬉しい」
それにそれぞれ語尾はちがくとも分かったと返し、解散することに。
因みに私も名乗っておいた。
もう少し遅かったら名乗りそこねるところだったけど。
準備は軽く済ませた。
傷を治す飲み物ことポーションがあったから、それを数個。
ハーブは念のために同じく数個。
武器も一応、揃えた方がいいよねと言うことで、弓と矢筒。
それと誠也さんが持つことを前提に小さめな盾を買った。
矢はかなり安かったのでそれを多めに買った。
そこまでやって広場へ向かった。
…ついたとき、祐菜さんって人がやけに暗い顔をしていた。
なんて言うか酔いも覚めてそうだった。
「あれ、祐菜さん。準備は終わったの?」
「先にいるとは予想外だなー、びっくりだなー」
と声をかけると祐菜さんがビクリと体を震わせてから顔をあげた。
なに、そこまで怖い思いしたの?
あ、今関係ないけどさっきのは上から私、次に棒読みの悠希のセリフだよ。
「…そ、それで大丈夫か?佑奈さん。行けなさそうなら直前まで案内してくれれば俺達3人…ともう1人のソルでどうにかなると思うからさ」
「だ、大丈夫だよ。僕は大丈夫だからさ。ハハハ……」
と乾いた笑みを浮かべたと思ったらため息をついた。
本当に大丈夫かなぁ。
ってよく見ると背中にやけに大きな剣が見えた。
大剣…なのかな。祐菜さん本人もでかいからなんか分かりづらいけど。
あ、でも普通の武器持たせたら今度は小さいかな……。
「ん?…ああ、この背中のは大剣だよ。愛用してから間もないんから、扱いきれるとは言いきれないんだけどね」
「あっ、そ、そうなんだ。でも大丈夫だよ。“普通”はすぐに扱えるようになるもんじゃないらしいから。素人だからこう、とは言えないけど」
苦笑いでそう言った祐菜さんに悠希や誠也さんのことをチラチラと横目で見ながら答える私。
私は幼い頃、やらかしたせいもあって体術とか精霊魔法を教えてもらってたけど(今考えるとどうしてすぐに覚えられたんだろうね?今度調べるか)、悠希達のは知らない。
独学…にしては素人目からしても素人っぽくないし。
特に悠希のは顕著だった。あんな振り方をしてよく平気だな、と思うぐらいに。
…こっちも、どうしたものか。
「…リーシャさん?」
「あっ!ご、ごめんごめん。まあ、気にすることはないって。ね?悠希」
いきなり名を出された悠希は一瞬驚いたようだったけど、すぐにいつもの優しそうな顔に戻った。
ぎこちなさがあるのは気のせいだと思いたいけど。
「そ、そうだね。それと準備が平気そうなら例の洋館に向かいたいんだけど…」
「分かった。ここしばらく達成できていなかったんだ。君達とならきっとできる。うん、できるはずさ」
…本当に大丈夫かな。
「そ、そんな目で見なくても大丈夫だよ!今度は酒に逃げないでやるつもりだからさ。……あ、さっき酒に逃げてただろって言うのなしね。自覚はしてるから」
「そ、そうか。んじゃ、行こうか。リーシャも逃げたら駄目だからね?」
「中身が外見より大人びているからと放り込まれたダンジョンより怖いものはない」
そう言うと何故か悠希が申し訳なさそうにこっちを見てきた。
しかもなんか謝ってきた。
平気だと私は返したんだけど、このままいると土下座してくる勢いになってきた。
誠也さんと祐菜さんに視線を送るとなんか苦笑いしてた。
「と、とりあえず行こうな?終わらないぞ」
「…それもそうか。もう行ける?リーシャ、祐菜さん」
「いつでも大丈夫だよ、問題はない」
「情けない姿はもう見せれないからね…。僕も僕なりに頑張らせてもらうよ」
ようやく洋館へと向かう私達だった。
長かったな。
――優季視点
洋館の近くについた俺達は馬車をリーシャに頼んで精霊にある程度守ってもらえるようにしてもらった。
リーシャ曰く『久しぶりに任せてもらえるから頑張るらしい』とのこと。
俺はそこでようやく馬車にさっき買ったばかりのクッキーを置いてきた理由が分かった。
紙も残してきたらしいけど、なんでだろうな…。
なんて色々考えながら歩いていたら、もう入り口の前に立っていた。
外見は放置されて間もないようなものじゃなかった。
「これで怖いって…中でなにがあるのやら。不思議なもんだね」
「リーシャは落ち着きすぎなんですよ…。ああ、でも放り込まれたダンジョンで最初に見たモンスターが実はスケルトンだったと言うのなら落ち着くのも無理はないですかね」
「それは言うんじゃない。今からしたらある意味黒歴史なんだから」
「こりゃまた失礼しました~」
と話すリーシャとソル。
なんかさっきの謝り方が軽いような気がしたけど、リーシャは半目で見るだけでそれ以上はなにもしていなかった。
仲が良いんだな…と思う反面微笑ましいと思ってしまった俺がいた。
「因みに俺が開けてもいいかな?多分俺なら色々となんとかできると思うからさ」
「誰が先頭でも変わらないと思うんだけどな。なんだったら2人で開けないか?俺が危なかったらリーシャ辺りにでもなんとかしてもらうし」
そう言って半身だけ振り返る誠也。
リーシャに何を期待しているのやら。
ほら、なんか気まずそうな顔をしてるし。
「ま、まあ…分かった。なんとかできるようだったら、するね?」
「ああ、遠慮なく蹴って平気だからね、リーシャ。気にすることはないからさ」
そう言ってあげるとリーシャは複雑そうな顔をしていた。
その後、横にいたソルがリーシャに近づいてなにかやっていたけど、なにをしたんだろうか…。
あとで聞けそうだったら聞いてみるかな。
っといけないな。
これじゃいつまでたってもらちがあかない。
「誠也、とりあえず開けようか。かけ声は“せーの”でも平気かな?」
「あ、あぁ…そういえばそうだな。ここを開けないと話は進まないもんな。んじゃ、いいか?」
「お前こそ」
と話してからほぼ同時にさっき決めたかけ声を言って開ける。
エントランスは中央に2階にあがれる階段が一つあり、それ以外に大して気にするようなものはなかった。
強いて言うなら扉とか多いし、なんか変な鎧がかざってあったり絵画みたいなのが飾ってあるぐらいかな。
絵画はなんか日に焼けてるのかそれとも空気に触れていたからなのかここから見えるもので元が分かりやすいのはあんまりなかった。
「…うわー、なんか出てきそうな雰囲気だねー。怖いわー」
「棒読みで言ってもあんまり意味は……ああ、1人にはありましたね」
「そんなこと…」
ありえない、と言おうと思ったら祐菜さんが叫んでいた。
いきなり『いやぁー!』なんて叫ぶからびっくりした。
「い、いきなり叫ぶなよ…。ビックリしたな」
「…怖がりだから仕方ないんじゃないか?それこそ諦めた方が…」
「だ、大丈夫だよ。大丈夫だから…」
そういうけど、声が震えていてなんか頼りない。
って言うか隠しきれてないよ、祐菜さん。
でも…なにもないと思うんだけどな。
あ、でもある意味あるか。
外見と中とのギャップ
…建てられてから何年とか分かったりはしないのかな。
「一応この人数で動くのもあれだし、分かれない?」
中に入るなり、リーシャが今みたいに提案してきた。
確かに2階もありそうなこの洋館を団体で探すよりそれぞれ分かれて探した方が手っ取り早いのは分かる。
でも…
「怖がりもいるし、下手に分けたら大変なことになりそうだから2人で分けようか。ソル…はリーシャと一緒で1人で数えさせてもらう。悪いね」
「仕方ないですよ。一応行けないことはないんですが、私はリーシャの方がとても落ち着きますので」
…そういう問題か?
「んで、分け方はどうするんだ?」
「それはだね…誠也、お前が祐菜さんと一緒に行ってほしい。大丈夫だろ?お前なら」
俺がそういうと半目で見てきた。
いやだってお前…怖がりじゃないはず、だったよね?
「そうじゃないけどさ、魔法が使えるのってリーシャさんぐらいじゃないのか?祐菜さんはどうかなんて知らんが」
そう振られた祐菜さんは何故か気まずそうな顔を浮かべた。
「あー、もしかして使えない、とかじゃないよね?」
「あ、いや…全然使えないわけじゃないらしいんだけどね?僕達はそこまで魔力を体内に
頑張ってみた後…どうしたんだろうか。
まさか怖がりなだけに魔法も怖くて出来なかったとか?
さすがに幽霊系とかそういう苦手なものがあるのは人それぞれだし仕方ないだろうとは思っている。実際俺は怖いものがないようなものだし。
「その後、どうしたの?頑張ってみて一つは使えるようにでもなったの?」
俺の考えを代弁するような感じで言ったのはリーシャ。
偶然……なのか?
「いやぁ、魔法はまだ覚えてないよ。個人差はあるけど、僕はまだ平均なんだってね」
「なるほど…。それで、人数分けって大丈夫?」
そう言われると祐菜さんはどこか嫌そうな顔をした。
そんなに誠也が頼りないのだろうか。
初対面だから無理もなさそうだけど。
「俺とリーシャとソル、誠也と祐菜さんにしたいって考えてるけどむりかな。広そうだから、出来れば手分けして探したいし…」
「……。…分かった。誠也さん、宜しくね」
ようやく折れた祐菜さんは誠也と行動することになった。
そして調べる場所は誠也達は2階へ、俺達は1階に決め、お互い向かうことにした。
まだその時の俺はこの洋館をただの誰も住んでいない建物だとばかり思っていた。
人ならざる者も含めて。