ファンタジーライフ ~転生先は異世界でした~   作:篠崎零花

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今回、誰かがひどい目にあわされる!!


なんてふざけてみたくなった、篠崎です。
全年齢対象を目指したらこんなことになりました。

そんなぐだぐだでも平気な方は下からが本編ですので、適当に読んでやってください。

※サブタイトルを分りやすくしてみました。


第27話 女性の天敵もいるもんだね

――優季視点

 

宝箱に近付いた俺達は(ソルは少し離れている)それをどうするか話し合うことにした。

 

「……ところでどう確認しよっか。魔法とかで壊す方法もあるけど、本物だったら中身が駄目になるし、悩み所だね」

 

「そこなんだよなー…。本物かミミックの見分け方なんてまだ分からないみたいだし」

 

「だからと言ってなにもしないわけにはいかないんじゃないかな?…そうなると必然的に開けるわけになるんだけど、誰が開ける?」

そう言って3人を見やる。

 

どうなるんだかわからない以上不用意に手を出したくはない。

出来れば誠也に開けてもらえれば面白そうだなーと思った。

ちょっと卑怯だろうけど。

 

 

「んじゃ、全員でまずは近付いてみようか。そこから1人が開ける動作をしてみるとか…」

 

「そんなんで分かるんだったら苦労なんてしなさそうだけどね。分かった。もう少し近付いてみようか。ソルは万が一に備えて離れたところから見てくれないか?」

 

「なんとかなりますよ、きっと。ね、リーシャさん」

 

急に話題を振られたリーシャは驚いた表情をしてから微妙な顔をしながら何度も頷いた。

なにかでも考えていたのかな?やけにボーッとしていたし。

 

 

ということでソルは少し後ろに下がり、俺達は1歩進んで手を伸ばせば箱を開けることが出来る距離まで近付いた。

 

どうやら近付いただけではやっぱり駄目なようでミミックなのかそうでないのか分からない、という結果に。

 

俺は半身を少し右横に向けて

「やっぱり誰か開けないと――」

いけないんじゃないか?と言おうとした。

その時だったか。リーシャが突然消えた。

 

 

「…はっ?」

「お、おお…?」

とそれぞれが驚いたように呟く。

消えた。目の前からいきなり。

魔法にテレポートなんてあったか?

いや、多分ないだろうな。

あったとしてもリーシャがなんの理由もなしに使って姿を消すなんてことはないと信じたい。

 

 

「…魔法、か?その割には詠唱すら聞こえなかったが。どうなんだろうな」

 

「それを俺に聞かれても分からないんだよね。ソルは?」

 

 

そう聞くために半身だけ振り返る。

誠也も同じように振り返ってるのが少し見えた。

 

 

「……その中に入れられてましたよ。なにか赤く長いものに」

と腕のようなもので俺達の背後にあるものを指差した。

 

2人そろってその指している方を見る。

そこにあったのは宝箱。

それ以外で目立つものや地形をいうんだとすれば左に小さめな部屋、目の前には少しくぼみができるように作られた壁に宝箱から少しはみ出てるなにかの白いすそぐらいかな。

 

 

「なあ、あのすそってスカートみたいじゃないか?しかも似たようなのを着てた奴いたよな」

 

「…着てた、というかその服だよね。リーシャ以外に女の人は来てないはずなんだけど。性別不明は置いておくとして」

 

後ろから「性別不明じゃないですよ。元から性別はありませんっ」なんて言われたけど、あえて気にしないことに。

 

 

 

「じゃあ、リーシャさんって…」

 

「十中八九あの中だろうね」

と俺が言うと誠也が「うわぁ…」と呟いた。

 

にしても違和感がある。俺達が近付いて反応されたのはリーシャのみ。

俺と誠也には見向きもせず、性別があるかどうかよく分からないソルに対しても無視を決めている。

 

…まさか女食いのミミック?

そう思っているとペッと吐き出す音がした。

思わずその方を見る俺と誠也。

 

 

そこにはさっきまで着ていた服のほとんどが溶け、下着も最早ないに近い状態になってしまったリーシャが。

「いや、ちょっ、おま!?」

 

焦ったように声をあらげたのは誠也。そりゃそうなるわな。

ほぼ一糸纏(いっしまと)わぬ姿に近いのだし。

俺?俺は友人から知り合いまでたくさんいたし、よく小さい子を風呂に入れる手伝いとかをしていたもんだから裸は慣れている。

 

…ああ、それは今から少し前の話だけどね。

 

でも、暑いのに上着を着る必要はないし、慣れているとはいえ、変に女性の体を見るわけにはいかないし…と誠也の方をチラッと横目で見た。

どうやら誠也も同じらしい。

頬が赤いのを見る限りそういう耐性はないらしい。

 

どうやって隠そうか…。

そのことを考えているとリーシャが俺達に背を向け立ち上がった。

 

 

 

 

 

「……へぇ、いい覚悟だねぇ。ミミックゥ…」

と低い声でいうのを聞いた。

 

その方を見ると周囲にそれなりに大きな火の塊をいくつも浮かせていた。

しかも、やる気満々らしく独自の構え方をしている。

 

 

こ、この場合は…リーシャに同情すればいいのか、はたまたこうしたミミックに同情すればいいのか。

……横にいる顔を真っ赤にした誠也の目を塞ぐなりパーで頬をひっ叩いてやればいいのか。

 

 

「とりあえずー…これ、食らってみよっか」

そう言ってその浮かせてあるものを正面から真っ直ぐのものと弧を描くようなもの、という二種類の方法で飛ばしていた。

 

ミミック自身にはその魔法を回避するための手段がなかったらしく、閉じたまま動かなかった。

 

 

 

…因みに関係ないけどリーシャが着ていた服は駄目になったとさ。

その後は宝箱を見つけるなり、ミミックかどうかを確かめる前に回し蹴りをしたり地属性らしき魔法の中ぐらいの石をぶつけたり…などのことをリーシャがした為、中身が駄目になった宝箱がいくつが出てしまった。

 

 

 

 

そんなんで進んでいると一番奥についた。

更に最奥にある大きめなフロアには上半身が人間の女性、下半身が蜘蛛というモンスターがいた。

 

扉とかは存在しなかったけど…いつの間に奥まで来たんだろう。

そんなつもりはなかったんだけどなー…と思っていると先にリーシャが中に入って魔法を唱えるなり放ち始めた。

ソルに至っては詠唱するのは一緒だけど、リーシャに向かって使っている。

大丈夫なのか?あれ。

 

「悠希さん、誠也さん。多分さほど強くないと思うので、どちらか片方にリーシャさんより前で戦って援護をしてほしいのですが…大丈夫そうですか?出来れば裸を見ても反応されなかった方に来ていただきたいのですが…」

 

 

「わ、分かったよ。どうしてこうなったって感じが強いけど俺が手伝う。誠也は…鼻血出すかもしれんから後ろにいた方がいい。変態扱い受けるかもしれんから危ないし」

 

そういうと誠也が不満げな表情を浮かべる。

しょうがないだろう、こればっかりは。

なにせ実際不可抗力とはいえ、俺の知り合いのパンツを見てしまい鼻血を出し変態扱いを受けてしまっているから。

一応広めないように、とは言ってあるんだけどね…?

 

「分かったよ。ソルもそれで平気か?」

 

「はい。むしろ助かります。多分早く終わらせてあげた方がこれ以上の恥ずかしい思いをさせずにすむと思うので…」

 

俺はそれに対して「そっか」とだけ返すと剣を構えて前に出た。

その時、背後から金属音がした。多分鞘にでもいれたんだろうな。

 

 

 

案外、倒すのには苦労した。

放たれた魔法や剣を跳ねて回避したり、糸を飛ばして動きを鈍くしてこようとしてきたから。

まあ、これが普通なんだろうけどね。

 

途中誠也が入ってきてリーシャの方をなるべく見ないようにしながら応戦してくれたのでどうにかなった。

 

 

そのモンスターが落としたのは蜘蛛の糸数個と紙切れ3枚。

 

「悪いけど、ちょっと奥の宝箱見てくる。落としたものは悠希達で見てくれる?」

 

「分かったよ…。でも拾うだけ拾ったら全員で開けるとかそっちの方がはやいと思うけど、どうかな?」

 

そういうリーシャにそう返すと悩むような仕草を少ししてから頷いてきた。

 

「んじゃあ、そうしようか。誠也は…ま、まあ気合いだね。頑張れ」

 

「えっ、ちょ、悠希!?そりゃないぜー。っていうかどう開けるんだ?最後の宝箱って」

 

「……」

その言葉にパッとすぐに動いたのはリーシャ。

そういう時の行動は早いんだなと関心したけど、そんなことしてる場合じゃない気がした。

 

 

「鍵が3つあったよー。宝箱も3つあったー。あとで2人の分渡すから開けても大丈夫?」

 

「俺は大丈夫だよ。と、いうかクリアするつもりはなかったんだけどな……どうしてこうなった」

 

「仕方ないな。これはミミックとの確認の仕方を危機も調べもしなかった俺達にも責任があるな。特に俺だろうけど。あ、構わないぞー」

 

「もう終わったことだから仕方ないね。…それよか違和感を感じたって言うべきだったかな」

 

「お前なー!気づいてたんなら言ってくれよー!確かに報酬金とか貰える物ばっか気にした俺も悪いけどさー!」

 

 

気にしてたんかい。

それで受けたのか…。

まあ、過去の事だしうだうだ言っても終わらないけど。

 

「んまぁ、お互い…ドンマイって話だね」

 

「ああ…そうだな…」

 

という話の後、リーシャは素朴なものの、半袖Tシャツとスカートが繋がったようなワンピースを手に入れて着ていた。

全部開けてしまったらしいが、俺達の分を手渡してくれた。

 

大した物ではなかったけど、それなりに良いものを入手した気がする。

俺は半月に一ヶ所だけ穴が開いたものと木の板。

誠也は木の板と何故か本。

 

本なんてどうやって…と思ったけど気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

町に戻った俺達はすぐ冒険者ギルドへ向かった。

 

支店のせいかやや狭めだが、この際気にすることじゃない。

問題はいくらになるか、だけど…。

 

「おかえりなさい、皆様。依頼の方はどうですか?」

と受付の人に聞かれ、依頼書と人数分の紙切れを無言で出した。

資金にでも困らない限り二度と受けるまい、と心に決めながら。

 

「アラクネも倒してくれたんですね。でしたら、その分上乗せしておきます」

 

うん、アラクネ?

そんなのいたっけか。

 

「アラクネって…モンスターのこと?」

 

「はい、そうですよ。見た目は…そうですね、上が人で下が蜘蛛です。ミミックと違い、そこまでの個体ではないようなんですが、女性に目がないようです。特に露出の有無に関係なく可愛らしい人なら優先的に狙ってくる厄介なモンスターです。良いモンスターでもあるようですが、前例はありませんね…」

 

そう、受付の人が言うとリーシャが固まった。

と言うかマジで?

 

「…ミミックは女性の服、アラクネは可愛い女性に…。強くなると更に厄介になるのはどっち…とか情報はあるの?」

試しにそう聞いてみた。

 

いや、あっても困るんだけどさ。

知っても得するような話じゃないし、聞くようなことでもない気がする。

 

 

「噂の範囲を出ませんがあることにはありますよ」

 

「お、おおー……そ、そうなんだ。どうもありがとう…」

 

気まずさのあまり、ためらいがちに言ってしまった。

まさか噂とはいえあるとは思ってもみなかったし。

 

「……確認しても良いけど、資金に困った時だけね。…あと人数によって考えるけど…」

 

そう呟いたのはリーシャ。

い、いいのか。そういうのだったら。

多分この人数ならまず資金は尽きないだろうな。

でもちょっとやりづらいな…。そのうちどうにかするか。

 

「…とにかく情報ありがとう。依頼掲示板の前にもう一回行ってからここ離れようか」

 

「それには賛成だな。でも、リーシャさんに悪いから一着服買ってやりたいし衣服屋寄ってもいいか?」

 

「はいよ、分かった。リーシャもそれで大丈夫?」

 

そう聞くと頷いて

「別に問題ない。服の方は選ばせてもらうね」

と言って精霊のソルの方を見る。

どんな反応をしたのか淡い光のそれに見えて分かりづらかったけど、肩にとまったのを見て多分そこにいたくなっただけなんだろう。

 

受付から離れてすぐ近くにある依頼掲示板へ歩み寄った。

他にあと一つぐらいは受けても平気そうだったしね。

まあ、登録してるんだし明日に回しても大丈夫みたいなんだけど。

いいか、別に。

資金源はあっても困らないから。


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