ファンタジーライフ ~転生先は異世界でした~   作:篠崎零花

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文章力以外に上げたいもの、見つけました。

最近、寒いので皆様もお体にお気をつけください。


下から本編です。

※サブタイトルを分りやすくしてみました。


第24話 エルフの村でしかやれないこと

――碧喜(たまき)視点

 

村へ続く道を進めば進むほど左右に見える木々が増えていく。

んまぁ、そりゃそうなんだけど。

村は森の中なんだし。

 

「道になるように地面がある程度いじられてるんだね…」

 

「そうだね、そうしておかないと色々と危ないし、村につくのが遅くなるかもしれないしね」

呟いた悠希にそう返した。

 

道にいればどういう原理かよく分からないけど、魔物とかに襲われにくくなるらしい。

襲われないってわけじゃないけど、それだけでも大分安心して歩けるっていうね。

 

 

 

 

 

それからある程度歩くとすんなり村が見えてきた。

家は普通に建っているものからちょっと少年少女の時に作りそうな秘密基地よろしく木に建てられている家とか。

はしごとかでのぼる様を見ると秘密基地っぽいけどね。違うから仕方ないね。

 

 

「なるほど…。色々と面白そうな建て方だね。ちょっと住んでみたいかもしれん」

 

悠希がそういうのを聞いて少し苦笑いを浮かべてしまった。

夏とかにはいいけど、冬は寒かったりするからなぁと。

一応寒さ対策はしてるんだけどね。

 

「住んだら住んだで大変だけどね。買い物とかの帰りは特に」

 

「あっ、そうか。一回でたくさん…とかそんなことしたら袋ではしごだとのぼりづらいか」

 

「案外工夫してたりな。はしごを変えて小さな階段みたいになるようにー、とかさ」

 

「一応それも出来なくはないみたいだよ?」

 

そういうと誠也さんは驚いたような顔になる。

まあ、意外か。木だからあんまりやれそうにないって印象がつきやすそうだしね。

仕方ない話かもしれないけど。

 

 

 

 

 

「まあ、とりあえず話が完全に横道にそれる前に…本題に移るね。私の家に向かってもいいかな?準備とか色々あるし」

 

全部家に置いてきちゃったし。

と、いうか持ってくるようなもんじゃないし。

 

「はいよ。ついでに両親に挨拶とかできそうだしね」

 

うん、挨拶してなにをするのかな?

特にないはずなんだけど。

 

「悠希はなにを考えて…まあ、いいけどな。俺も知り合いとして自己紹介とかしておきたいね」

 

「そ、そうか…。ご自由にどうぞ…」

 

まさかそういう風に返されるとは思わなかったから思わず困ったような笑みを浮かべてしまう。

特に悠希のがちょっと怪しい。

別にいいけど。

 

「とりあえず、リーシャの家ってどっちにあるのかな」

 

「っと、そうだったね。こっちだよ」

 

そういって村の方へ歩き出す。

と、案内しようとしたら

「……それはいいんだけどよ、昼食べてからとか駄目、か?」

と背後から申し訳なさそうというか、弱々しいというか。

そんな声が聞こえてきた。

 

2人して振り返る。

そりゃそんな声出されたら気になるしね。

悠希はそうでもなさそうだけど。

 

「ん、じゃあ…リーシャ。悪いけど、食べるところ知らない?出来れば安くて美味しいところがいいんだけど」

 

「構わないよ。ちょっと裏に入るから食事時と重なっちゃうかもだけど」

 

「俺はそれでも構わん。あるんなら行きたい」

 

「それについては俺も賛成かな」

 

…ふむ、そういえば朝食をとってから大分たったしね。

それに蜘蛛退治って内容の依頼をこなすっていう慣れないことしてるし。

そりゃお腹も減るか。

 

 

「分かった。仕方ないけど、先にそっちに行こうか。2人ともいいかな?」

 

「俺はいつでも大丈夫だよ。リーシャがいうなら多分美味しいだろうし」

 

「俺も大丈夫だぜ。どんな店か気になるな」

 

それを聞いて頷くと私はその店へ向かって再度歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏にあるので多少時間がかかってしまったが、安くて美味しい店の前についた。

因みに有名じゃないし、支店なぞ存在していない。

 

理由はちゃんと店長から聞いたけどね。

それがあるのか、それともはたまた偶然か。それとも裏にあるからなのか。

最低でも店前から見える位置にあるテーブル席が1つだけ残っていた。

 

「おー、空いてるんだね。さっそく入ろうよ、2人共」

 

「偶然っていうか凄いってレベルだねぇ、空席があるだなんて」

 

そういうと左右から驚きの声が聞こえた。

そりゃ安くて美味しい上にお昼頃なんだから今は並んでてもおかしくはないはず。

 

「と、とにかく入ろうよ。リーシャがそういうぐらいなら俺達より先に入られるかもしれない」

 

それを聞いて頷く。

確かにそれについては否定はできない。

なにせよくお昼頃に来ると列が出来ていて、長時間待たされているから。

 

そうだね、ちょうどいいし、入るかな。

 

私が先頭で入り、後から悠希と誠也さんが入ってきた。

どうやら良い匂いがするらしく、後ろから「美味しそう…」って声がした。

匂いだけでご飯とかいけるタイプなのかな?多分いけなさそうだけど。

 

 

「いらっしゃいませ、今日は何名様でしょうか?」

と言葉とはうらはらに親しげな声音で話しかけてきたのはここの店員のお兄さん。

 

「3人だよー。まあ、今日は知り合いを連れてきたんだけどね」

 

「そうなんですね。では、あの窓側のテーブルでよろしいですか?」

といってから「仕事中だからごめんね」と言わんばかりに私に向けて小さくウインクをした。

仕事中なら私語なんて出来ないし、仕方ないと思うんだけどな。

 

「うん、平気だよ。んじゃ、座ろっか」

 

「そうだね。あ、メニュー、俺先ね」

 

「おい、俺も見るんだぞ。俺も先でいいか?」

 

「はいはい…。お先にどうぞ」

なんて話をしながら入口から少し歩いた窓側のテーブルに悠希、私。正面に誠也さんが1人で座った。

4人席なだけあって1人分の椅子があく。

そこやテーブルの下に荷物などをおく。

 

メニューは二つしかないので悠希と誠也さんに手渡した。

実は私はある程度、覚えているから見なくともなんともないんだよね。

 

 

「んまぁ、ゆっくり決めていいからね。私はもうほとんど決まってるから大丈夫だよ」

 

そういうと大きな葉っぱ型のメニューから目を離した悠希と誠也さんから驚きの目を向けられた。特に悠希からは分かりやすいほど。

 

「結構早いね、リーシャ。ってことはメニューは見なくてもいいのかい?」

 

「んー、出来れば少し見たいけど、見なくても大丈夫って感じだからなぁ」

 

「ってそりゃそうか。感じからして常連みたいだしね」

 

「じゃなきゃ俺達に教えてこないだろー?」

 

「それもそうか」

とまでいうと笑い出す2人。

いや、頼むもの決めなよ。

 

そう思った私は呆れたようにため息をつく。

「笑うのはいいけどさ、注文するもの決めたの?」

 

「「あっ」」

 

「待ってるから考えて決めてね。一応大抵のものはあっさりしてるから。濃いのもあるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで頼み、来てから食べ終えて出るまでにそれなりの時間がたっていた。

私は定食系、悠希は獣肉を使ったものとパン、誠也さんはパスタ系を食べた。

支払いはもちろん前に受けた依頼の報酬金からなので悠希が払った。

 

「いやぁ、案外獣肉ー、なんて臭みとか味とか色々あると思ったら結構あっさりしててびっくりしたよ」

 

「へぇ、そうだったのか。パスタもなかなか美味しくてびっくりしたわ」

 

「弓による狩りとかをやってるからね。それを生業としている人にでも直接もらえるよう、頼んでるんじゃないかな。パスタは初耳だからすんごい気になるけど」

 

そういうと誠也さんは「おー、ならまた今度一緒に来ようぜ」といってくれた。

わざわざそれのために来るなんて大変じゃないのかね。

まあ、いいけどさ。

 

 

「それにしても弓で狩りってしてるもんなんだね。なにを狩ってるとかは知らない?」

 

「私は知らないかな。弓より先にある程度体を鍛えられたもんだから…」

そういって顔をそらす。

弓も扱えるけど、多少しか出来ないなんて言えないし。

 

「メニューに書いてなかったのか?いくらそういう村とはいえ、なにかぐらい書いてるだろ」

 

誠也さんにそう言われた悠希は首を左右に振った。

「そこまでは見てないから知らないんだよね。絵を見て美味しそうだなーと」

 

「さすがに料理名も読もうよ…」

 

「だな。んじゃないと大変だぞー?」

 

なんて話をしていると悠希が困ったように笑った。

くせ、なのかな?

 

「お腹も満たされたところで、私の家に向かうんだけど…どうする?準備が終わるまで観光でもしてる?」

 

そう私が聞いてすぐに反応したのは悠希だった。

「俺はやめておくよ。そこまで広い村じゃないとはいえ、連絡手段がないから別れた後にまた会うのが面倒。ってなわけでついていく」

 

誠也さんは肩をすくめ

「あとで店によったりとか…するのか?」

と聞いてきた。

 

「うん、寄るつもりだよ。他にも買うものあるか見ておきたいしね」

 

「あ、それなら俺もなに売ってるか気になるから色々寄ってくれると助かる」

 

「分かったよ。ある程度案内してあげる。なんか誠也さんにも欲しいのがあるっぽそうだし?」

 

「おっ、さすが…って何年ここから離れたことはないんだ?」

 

なにかを言おうとしたらしいけど、急にその話になった。

私は少し自宅の方に進んでから半身だけ振り返り、横目で

「そうだねぇ、生まれてから十数年だよ。そもそも何歳かなんて私自身もあんまり詳しく数えてなんかいないんだけどね」

といった。

 

「あ、曖昧な年数だな…。って待て、お前自分がいくつかなんて知らないとか言わないよな」

 

「ところがどっこい、言うんだよ。大体の年齢なら分かるんだけど、なにせ何歳かまではあまり話題にならないんだよね」

 

両親も実年齢はかなり高いらしい。確か数十歳とか数百歳……あれ、いくつだったかな?

 

「ところがどっこいってもう聞かない言葉だね」

 

「人間、出るときは出ちゃうんだよ。だから仕方ないね」

 

そういうと苦笑いされてしまった。

そ、そういうときもあるもんだよ…?

 

 

 

「ところでリーシャさん…準備はしなくていいのか?」

 

「あっ、そうだった。行こ?」

 

そういって私は今度こそ自宅へ向かい始める。

「そうだね」とか「じゃないとまた遅くなりそうだな」とか後ろから聞こえたけど、まだ日が長いから平気だと思うんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからある程度歩いたところに私の家はある。

悠希達の住んでいる町と似たような作りの方の家なので、驚きはしなかったようだけど。

 

家の前につくなりすぐに扉を開けた。

そのまま、流れで入る。

「たっだいまー。お父さんって今日はいるー?」

 

後ろからは「お邪魔します」とかそういうのが聞こえた。

因みにこっちも靴は脱がないよ。

 

「あら、リーシャ。帰ったのね、おかえり。ええ、しばらくぶりにね。会う?」

と言ってきた長い波打った濃い金髪をした女性は私のお母さん。

長くとんがったその耳はたれていて、性格を表してるなぁと思った。

 

「うん、会うー。それと友人の悠希と誠也さんだよ」

とあっさりめに紹介する。

 

「どうも」

「初めまして」

 

「あらそう。私はアニス・フェルマーよ。とりあえず貴方達もあがって」

 

「「あ、はい」」

 

と、普通にあげるお母さん。

他のエルフ達同様、人間であることに興味を向けていない。

そも、むしろ種族にまで意識を向ける人の方が少ない。

 

 

 

「ところでどこにいるの?」

 

そういえば聞いていないことが一つあるなぁ、と今さら思い出したので聞いてみた。

 

「ああ、そうだったわね。今はリビングにいるわよ。貴方達のこと、お父さんにも紹介してあげるわね」

 

「それはどうも」

と素っ気なくいったのは悠希だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングにお母さんを含めた4人で入るとお父さんが珍しく椅子に座り、手のひらサイズの犬の頭を撫でていた。

 

因みにその精霊の見た目は全身の基本色はライトブラウンで、額にまろまゆみたいなのが自然に生えていて、それまた可愛い。

尻尾は中ぐらいの長さで耳は立っている。

なんかこう見ると精霊って言うより本当に犬を飼っているみたいで面白い。

 

 

 

「あなた、リーシャが帰ってきたわよ。あと一緒に友人も来たわ」

と明るい声でお母さんがいった。

 

すると犬(※注意:精霊です)の頭から手を離すと半身だけこちらに顔を向けてきた。

「ほほう、外に何事もなく出れたんだな。それはなによりだ。その2人が友人かな?」

 

「うん、色々あったけど、大丈夫だったよー」

と言ってから加えて「うん、友達だよ」といった。

 

「ああ、なるほど。僕はダレン・フェルマーっていってこの子は土の精霊のアルスって言うんだ」

 

「よくこの人はダレン?とかっていじくられてるんだけどね」

 

「あはは、そうだね。でもそんなこと言ったら自己紹介しきれないじゃないか」

と言いながら笑うお父さん。

うん、やっぱりこうなるのね。

 

 

「そ、そうか…。とりあえず、俺は幸野悠希っていう。こっちは及川誠也だよ」

 

「宜しくな、ダレン。なかなかに可愛い犬だな」

 

そう誠也さんが言うと困ったように笑った。

おぉ…お父さんの困り顔、初めて見たわ。

 

 

「ああ、そうそう。私、そろそろだからってあれを持っていきたいんだけど、なにならいいの?」

 

「あー、それはだな―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父さんと私が準備している間、悠希と誠也さんにはお母さんと話をしてもらった。

 

準備を終わらせ、下に降りたときに何故か悠希と誠也さんが驚いたような顔をしていた。

一体どんな話をしていたのやら…。あとで聞くかな?

 

「2人共、お待たせ。準備が終わったから出るんだけどいい?」

 

「はいよ。この村にはもう一度戻ってくるのか?」

 

「うん、そのつもりだよ」

 

「なら、誠也。荷物置かせてもらおうか」

 

「そうだな」

 

と話しているとお父さんが近づいて

「なら、リビングにおいておくといい。僕とアルスとで見ておくから問題はないだろう?」

といってくれた。

 

「あ、なら…言葉に甘えさせてもらうことにします」

 

「いいよいいよ、構わないって。気軽に見れた方がいいだろうしね」

 

「そ、そういうものなのかね……」

 

お父さんにそう言われた悠希が曖昧な笑みを浮かべた。

気軽に見れるようなもんじゃないと思うけど…。いいのかなぁ。

 

「どうなんだろうね。それで、行ける?」

 

「俺は行けるよ。誠也は?」

 

「いつでも大丈夫だ、問題ない」

と得意げに言ったが、つっこみがされないことが分かると「……相手にしないのはよくないぞ?」なんて寂しそうに呟いていた。

あれでボケたつもりだったのだろうか。

 

「ちょっとあるところにいってくるね」

 

「分かったわ。ところで悠希くんと誠也くんは夕食の予定とかどうしてるのかしら」

と首をかしげて聞くお母さん。身長が私より高いとはいえ、その外見…本当ややっこしいね。

 

「食べる場所はまだ…だったね」

 

「そうだな。ならあとで決め――」

「ここで食べていくといいわ」

とお母さんが誠也さんがそういうのを遮っていった。

 

「い、いいのなら…」

 

「アニスがそういうんだ。大丈夫だよ。安心して行っておいで。リーシャもね」

 

「分かったー。んじゃ、行こうか」

 

「「ああ」」

 

そうはなし終えると、私達はある場所へ向かうために私の家を出た。


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