名前のついたモブとかいるのは呼びやすいように、などの理由が多いというどうでもいいことを言ってみますね。
そのうち、水着回とかしたいですね。
では本編どうぞ。
※サブタイトルを分りやすくしてみました。
――
…見えなくても精霊がいたら驚くものだと思ったけど。
ま、まあ…ほら、まだ実感がわかないだけだよ、うん。
私なんて最初は驚いたのになぁ……。心の中で泣きそう。
でもなんか…この町に前来たときより精霊が減ってる気がするような。
いつまでも黙ってるのもあれだし、ね。
「それで…こっちから広場に行く道ってどれだっけ?」
と気まずい思いで聞いた。
まさかこの町育ちの精霊に聞けば分かるなんて言えないし…。
「あ、ああ。案内するけど…誠也と母さんはどうする?家でも見に行く?」
そういうと誠也さんは首を横に振って、悠希の母さんは肩をすくめた。
誠也さんはまだなんとなく分かるから(転生後の優季の家と誠也の家はほぼ近所レベル)なんも思わないとして、悠希の母さんは別行動しないらしい。
うん、私は未だにギャップを受け入れきれてないから分からないや。
「因みに私はついていく、ですよ」
「あっ、悪い。念のためでも聞いておけばよかったな。…あと、なんでリーシャの背後にいる?」
「えっ?」
と間抜けに声をもらしてから半身だけ振り返る。
私が手を伸ばせばあっさりと頭をなでられるんじゃないかってぐらい近距離にいた。
「なんとなく触れば雰囲気をぶち壊せるきっかけを作れるかと思いまして」
「それは今しないでね。すんごく迷惑だから」
と言いながらジト目で
「そ、そこまで言いますか…。分かりました、やめます」
「問題が解決したところで行こうか。それ以外にも気になることはたくさんあるんだしさ」
「そうだね。そうしよっか」
と私が頷くことで会話が終わり、目的地へ皆で向かうことになった。
そこから歩いて少しかしばらくしたあと。
建物は半壊…でいいのだろうか。
ほとんどが壊れていて、木造が多かったのだろう。
骨組みも見えていたり、途中で折れ曲がっていたり…。
直すのに苦労しそうだな、と思った。
と、いうかよく燃えなかったなあ。
そんな光景を見ながら歩き、広場についた私達が見たのは3人組が1人は歌っていて、残る2人はなにかを弾いている。
そしてその周りには…人がいた。
怪我をしているのか、所々包帯が巻かれていたけどね。
「もはやライブだね。分かりやすく言えば演奏会みたいな」
「そうだね。…でも、なんか演奏してる人達…あんまり見ない髪の色だね。緑とかっていた?」
そう聞く私に
「私は知りませんよ。聞いたこともなければ見たこともありませんし」
「さすがに情報ぐらいしか知らんし、実物を見たのはお前達とドワーフだけだから参考にすらならないぞ」
「わ、悪いわね。必要な知識とか私個人の趣味とかをいつでもできるように…とは頑張っていたけども、そういうのまでに手を出してなかったから分からないのよ」
と順番に答えてくれた。
ふむ、手に入れた収穫は私も含め全員知らない…と。
詰んだかなぁ、こりゃ。
そう思っていると
「俺は近寄ってくけど、他はどうする?」
と悠希が聞いてきた。
「私はさすがにそろそろ、家とか町とか見てきたいから悪いんだけども離れるわね。なんかあったら
そういうと少し腰から頭を下げ、そのまま別の方角へ行ってしまった。
「母さーん、任せたー。……それで、残りは?」
「ついてくぜ。気になるしな」
「気になるのは私もなんだけどね。なんでああしてるの、とかさ」
「それには同感だな。というか昨日はいなかったし」
「昨日の騒ぎで出てくるのはもう人ですらないじゃないですか。人間以外のなにかじゃないですか」
人間…以外?
それを聞いて、私は少し前にいる悠希の方を見る。
悠希もなにか言いたいことでもあるのか、私の方に半身だけ振り返ってきた。
「まさか…ね」
「うん、ないと思う」
短く発せられた言葉にあっさりと否定する私。
「は、はやくないかな…リーシャ…」
なんか残念そうに言ってくるけど、さすがにないかなーって思って、ね。
まさか転生の時に関与した神とかあの時いなかった神がまさか来るわけないし。
ごめんね、悠希。
そう思っていたら平気そうだと気づくことになった。
何故なら…
「とりあえず近づいてみたら分かるんじゃないのか?な、そうだろ?」
そう言われ、ハッとしたのか悠希は頷き、
「そう…だね。離れた場所から見て分かる情報だけが全てじゃないしね」
といった。
「そうですよ、皆さん。行きましょうよ。それに聞いてる感じ、もうすぐで終わりそうですよ?」
「そうなると聞けるものも聞けなくなる。行こうか、
そう悠希が聞くと紗耶香さんはすぐに頷いた。
「はい。問題はありませんよ」
「んじゃ、行こうか」
広場だった場所の中心につき、怪我をしている人達に紛れてその歌を聞く。
多分、私の耳とか紗耶香さんの身長で目立ってそうな気がするけど。
それから1~2曲を聞いたところで終わった。
「ありがとー」
そういって手を振ったのは緑色の髪を一つに結った少女。
他の2人と比べると比較的身長が小さいみたい。
後ろにいる2人は…なんか呆れていたり、面倒くさかったりするのかな。
っていうか顔に出すぎ…。
そう思っていると私達以外の人達は皆離れていった。
「ここでなにをしていたの?」
「そりゃ元気付けだよー。助けたあとは放っておくのは嫌だからねー」
「ほんと、お人好しなんだから…。あとあんたはちょっとはなしすぎよ」
と後ろから波打つ長い金髪の女性が前に出てきた。
そんなことより…
「助けた……っていうわりには3人しか見えないけど?」
「よく普通に聞けるなぁ、リーシャ。見違えるよ」
何故か悠希にそう言われたので、周りから怪しまれないようどうにかこっそり足元周りに薄い氷をはっておいた。
多分あとで悠希はこける。
一度使用したら溶けるぐらい薄いからきっと平気。
一度あるものは二度ない(無理矢理)だから。
なんて思っていたら
「あー、もう。あんたは私らがしたっていったら信じるの?」
と聞かれた。
なにを疑う必要がある?
私は素直に首を縦に振った。
「ちょっ、リーシャ。本当に信じる気か?いくなんでも3人じゃ――」
とまで聞こえたと思ったら滑る音がした。
半身だけ振り返ると、そこには尻餅した悠希が。
んまぁ、ですよね。
そう思いながら悠希に手を差し出す。
「でもよ、リーシャさん。同じことをいうようで悪いがどう見ても無理そうだぞ。後ろのあいつは分からんが」
そう言われた人(波打った少し長い白髪っぽい銀髪をしてる)は面倒くさそうに片手をあげた。
「まだ分からないよ。もしかしたら本当にこの町を助けてくれたのかもしれないんだよ」
「…うん、リーシャ。やっぱりお前は変なところでお前だったよ。少しは疑えって」
そういって私の頭に手をのせたのはさっき立ち上がったばかりの悠希。
「それより、名前はなんていうんですか?私は
「そうなんだー。私はガブリエル・タリスって名前だよ。私のことは自由に呼んじゃってー」
と言いながら
「んじゃあ、ガブガブかタリスレディーで」
あえて真顔でいってみた。
「こ、後者はさすがに遠慮するね?」
ガブガブはいいんかい。
それはそれで変わったあだ名だと思うんだけど。
「ああ、私はリーシャ・フェルマーって名前だよ。…そういや、紗耶香さんに名字はないの?」
「え?ドワーフには名字なんてありませんよ。だから名乗れないんです。聞かれるのが凄く遅かったですが」
忘れてた、とか気にしてなかったとか言えない……。
「んで俺は幸野悠希だ。他の人も名前ぐらいは教えてくれるよね?」
「分かったわよ。名前はね。私はルシファー・メディナとあそこにいる面倒くさがりの男はサタン・ブロウズ。もういいわね?」
そういうルシファーって名乗った人は私達になにも話すことがない、と言わんばかりの冷ややかな顔を向けてきている。
「もしかして用事でもあった?それだったら悪かった。ちょっと好奇心で…な。許してくれるか?」
「ん、別に気にしてなんかいないわ。ガブリエルは怪我人の方に行ってたら?私達は勝手にやってるわ」
そう緑髪の子より少し大きな女性がいうとその人より少し大きな男性に言葉をかけ(離れていて聞き取れなかった)、そのまま立ち去ってしまった。
「ご、ごめんね。ルシちゃん、は元から素直じゃないの。あと…私達、ただの通りすがりだから。それに追い払う、だったらある程度の強さを持った人ならできたりしてね」
「そういうものなのかなぁ…。料理とかで胃袋を掴むとかそういう類じゃなさそうだし」
と私が不思議そうにいうと目の前の人物にきょとんとされた。
ふむ、料理で人を落としたことないのかな?
それかそもそもボケてると分からないとか?
多分後者だろうけど。
どっちでもありそうで、ある意味怖いね。
「それで、怪我人ってどこですか?私も手伝いたいのですが」
そう紗耶香さんがそのガブリエルと名乗った人に聞いている。
「あ、それだったらいいよっ。私、歓迎しちゃうー。名前はー…さやさやでいい?」
「さ、さやさや…?そ、その呼び名で私のことを呼ぶんですか…?」
「大丈夫じゃないなら普通に呼ぶよー?」
なんて会話が聞こえるけど、呼び名なら大丈夫でしょ。
そう思ってそこから離れた。
「リーシャ?どうしたの」
「話をするにも離れて、ね?」
半身だけ振り返ってから肩をあえてすくめてみせた。
「っと。それもそうだね。誠也もそれでオーケー?」
「オーケーの意味は分からんが大丈夫だ。にしてもあれ…なんだったんだろうな」
少し離れようと歩き出しながら誠也さんがそう呟いた。
「んー…俺は歌で元気つけようとでも思ったんじゃないかって推測するけど。でも、こっちじゃあんまり見ないな…」
「歌ってそもそもあったんだな。てっきり、歌なんて存在しないものかと思ってたんだが」
不思議そうな口調でいう誠也。
「……えっ?」
と驚きの声をあげたのは悠希。
私は驚きのあまり声すら出なかった。
なにせこっちの村には歌に良く似たものを歌ったりしていたものだから。
そうか、もしかして歌を聞く機会とかって場所によってなかったりするんじゃあ…?
となんとなくそう思った時。
「あれ、悠希とかリーシャさんはあるのか?なんだよ、羨ましいな」
といっていたので、私は首を横に振った。
「私は歌と言えば歌なんだけど、そういう人に聞かせるっていうような感じのものじゃないの。どっちかっていうと精霊との踊り…というか舞というか」
どういうのか、と言おうとしたけど、どう説明したものか悩んでしまいつい言葉を濁してしまった。
「なるほど、分かった。なんとなく想像できたし、ありがとな」
そういって誠也さんが私の頭に手をポン、とのせた。
少し驚いたが、すぐに口元を少し緩める。
それを見て、誠也さんも口元を笑みの形にすると手を離した。
それから悠希の方を見て。
「悠希もいいか?聞いても」
「あ、あー…。その、俺は覚えてないんだ。どこで聞いたんだろうなー」
と棒読みで言いながら顔ごと視線を私達からそらしている。
誤魔化すなんて…悠希も大変だね。
前世の話をしたところで分かってくれるかどうか、だし。
「そ、そんなことより都市とか行かない?町がこんな状況だというのに…とかって言われそうだけど、気分転換とか情報が手にはいるかもしれないし、どうかな」
「おっ、それはいいな。リーシャさんもまだ平気か?」
そう聞かれ、私は素直に頷く。
「そうだね。もし、読めなかったり分からなかったりしたら私が役にたつしね」
「精霊にも聞けるようだしね。いいんじゃない?あと魔法とかあるしね」
「そうだな。んじゃあ、悪いけど一緒にきてくれると助かる。魔法の方は俺達も頑張るからさ。な?」
といって悠希を見る誠也さん。
悠希は曖昧な笑みを浮かべていた…。