艦隊これくしょん ‐NextArea‐   作:セルラ

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二十四話です!

レ級のような深海棲艦に襲われてしまった古鷹達。

彼女達に勝機はあるのでしょうか!?

本編をどうぞ!


第二十四話  (伝えられない思い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足柄「ぇ…ぃゃ…いやあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

足柄の悲痛な叫びが聞こえる。それもそうだろう、救える事が出来たのに

救えられなかった…これほど辛いことはない。

 

その足柄の声につられるかのように瑞鶴も声を上げた

 

瑞鶴「翔鶴…姉ぇ?何処…行ったの?」

 

瑞鶴は未だに現実を受け入れていないようだった。

彼女が現実逃避するのも無理はない。つい先ほどまで笑いあっていたのだ。

だがここは戦場。その一瞬の油断が死に直結する。

数秒間何かを呟いた後に瑞鶴は気絶した。

 

レ級のような生物が今度は瑞鳳に砲塔を向けた。そして、そのまま間髪入れずに砲撃した。

 

瑞鳳「ッ!!」

 

瑞鳳は砲塔が向いていたことに気付いていたからこそギリギリ回避できた

だが回避する事が出来た瑞鳳だからこそ気付いたことがある

 

瑞鳳(弾速が速すぎる!?)

 

さらに通常の弾道ではない。本当に読めないのだ。

当たれば即轟沈、さらに弾道が読めないのなら危険すぎる。

 

古鷹「キャッ!」

 

古鷹の声が聞こえる、どうやら小さな深海棲艦達の魚雷が掠ったようだ。

 

利根「おのれ…仲間をよくも!」

 

利根が怒りを露にしてレ級のような生物に攻撃した。

だがその生物には全く効いていない。

 

筑摩「姉さん!急いで撤退しましょう!そんな傷では無茶です!」

 

利根は既に大破している。さらには小さな深海棲艦達によって右足をやられていた。

 

利根「じゃが、仇を…ッ!!」

 

筑摩「姉さん!」

 

筑摩と利根がもめている。その隙をその生物が見逃すはずがなかった。

 

筑摩「姉さん!危ない!」

 

筑摩が利根を庇おうとした。だがその瞬間筑摩は利根に突き飛ばされた。

 

筑摩「ね…ぇ…さ…ん…?」

 

利根「吾輩はもうダメなのじゃ…筑摩よ、死ぬな。生きてくれ。おぬしなら…きっと…」

 

笑顔で筑摩にそう告げ、その砲撃を受けた。

 

筑摩「嫌!姉さん!利根姉さん!」

 

黒煙が晴れ、その場にはもう・・・利根はいなかった。

 

筑摩「姉さん…ぁ、ぁぁ…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

筑摩の声にならない悲鳴が聞こえる。

彼女はそのままその場に座り込んでしまった

 

そして、レ級のような生物は再び筑摩へと狙いを定め…その砲弾を放った。

 

古鷹「筑摩さん!危ない!」

 

小さな深海棲艦達の相手をしながら古鷹は筑摩へそう言った。

だが筑摩は動かない。

 

筑摩(姉さん…私も…すぐにそちらへ…)

 

だが筑摩のその願いは叶わなかった。

突然筑摩の前に何かが出てきたのだ。

 

黒煙が晴れた後、そこにいたのは樹奈だった。

 

筑摩「樹…奈…さん…?」

 

樹奈「遅くなりました。…ここは私に任せてください」

 

いきなり現れた樹奈に驚いたがここは樹奈の言うとおりにした方がいいだろう。

 

古鷹「わ、分かりました。ですが樹奈さんもすぐに撤退して下さい!」

 

古鷹は瑞鶴を抱えて他の艦娘と共に撤退しようとした。

だが筑摩だけはその場から離れようとしなかった。

 

筑摩「離してください!私は…私は・・・!」

 

筑摩が何かを言う前に瑞鳳が彼女の頬を思いっきり叩いた

 

瑞鳳「筑摩さん!貴方は利根さんの言葉を聞いたのでしょう!?

  それなら生きないと!利根さんの最後の願いすら叶えないのですか!?」

 

筑摩はしばらく考えた後に

 

筑摩「…そう…ね…姉さんの願い…叶えないと…姉さんに怒られちゃうわ…

  ごめんなさい。瑞鳳さん。手間をかけてしまって。」

 

どうやら筑摩は正気を取り戻したようだった。これなら安心だ。

 

古鷹「皆さん!撤退します!可能な限り早く!」

 

古鷹の号令の元、生き残った艦娘全てはその戦闘海域から撤退した。

 

 

数分後、金剛達と合流する事が出来た。

 

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樹奈「さて…お久しぶりですね。」

 

生物「ウググググ・・・ヒヒィヒヒ」

 

樹奈はこの生物を何度も見たことがあった。何故ならば

 

樹奈「研究番号0017…人工的深海棲艦…確か、Shangri-la…でしたっけ?」

 

Shangri-la「ヒヒッ…シッテルッテコトハ…キミモカンケイシャダネ?」

 

Shangri-laと呼ばれた深海棲艦がそう言った。

 

樹奈「そうですね…どうやら貴方は覚えていないようですが…」

 

Shangri-la「ソウダネ、ワタシハオボエテナイネ。マアソンナコトハドウデモイイケド」

 

Shangri-laが樹奈に砲塔を向けた。それと同時に彼女の周りの深海棲艦達も砲塔を向けて来た。

 

Shangri-la「シズメ!」

 

Shangri-laの号令で、他の深海棲艦達も砲撃を開始した。

 

樹奈はその両手に持っている盾でその全ての砲撃を受け流している。

 

樹奈「弱いです…ね!」

 

樹奈は片方の盾を器用に利用してその砲撃を反射し始めた。

いきなり自身の攻撃を反射された2体の深海棲艦はそれに直撃し、そのまま沈んでいった。

 

それを見た3体の深海棲艦が近接戦闘に持ち込もうと寄ってきた。

それを樹奈が見逃すわけもなく、

 

樹奈「近接戦闘ですか?私、大好きなんですよ!」

 

樹奈は壊れたような笑顔でそう言った。

 

殴りかかろうとした1体の深海棲艦の腕を掴み、そのまま引き千切った。

片腕をなくしたその深海棲艦は大量の青い血液とともに声にならない悲鳴を上げている。

その深海棲艦にすかさず近寄り、頭と胴体を引き千切った。

 

その光景を見た残りの深海棲艦は若干怖気づいてしまっているようだった。

 

樹奈「来ないんですか?それなら…私から!」

 

樹奈は瞬間的に1体の深海棲艦の懐へと飛び込んだ。

その深海棲艦を片手でつかみ、Shangri-laの砲撃中に投げた。

当然その深海棲艦は砲撃の爆発で即死した。

 

樹奈「やっぱり脆いですね…よくもまあこんな装甲で生き残れましたね。」

 

樹奈は即死して浮かんでいる深海棲艦に軽蔑の目を向けてそう言った。

小さな深海棲艦達が一斉に寄ってきた。

 

小さな深海棲艦「キャハハ、キャハ」

 

赤子のような声で何発も魚雷を放つ。

だがその魚雷が当たることはなかった。

樹奈は魚雷の中を軌道を読んでいるかのように回避したのだ。

 

樹奈「PT小鬼群…ですよね?確か。貴方たちの対処法は既に理解していますよ。」

 

樹奈はPT小鬼を分断させるかのように中心にその群れの中に飛び込み

分断された1体を空中に投げた。

 

PT小鬼「!?」

 

2匹のPTは驚いているようだった。分断されたこと自体が初で、どうすればいいのかが分からない。

 

樹奈「・・・貴方たちの弱点は簡単…1体でもいなくなればその戦闘能力は激減する。

  つまりは1体だけでも消せばいいだけでしょう」

 

樹奈は1体を沈めた後もう1体の腕を掴んだ。

何をするのかと思えばその砲塔らしきものをそのPTから抜き取った。

PTが何か悲鳴を上げていたが関係ない。大量に出血していたがそのまま奪い取った。

砲塔を奪うとついさっきまで暴れていたPTが急に大人しくなった…というよりも息の根を止めた。

それに合わせて後ろにいたPTも急に動きを止め、そのまま沈んでいった。

さらに空中から落ちて来た最後のPTも同じように全く動いていなかった。

 

樹奈「・・・そして貴方達は1体でも沈んでしまえばそれに共鳴して他の2体も

  沈んでしまうのでしょう?」

 

樹奈はたった一人でShangri-la以外の深海棲艦を沈めた。

 

樹奈「後は…貴方だけですね。Shangri-la」

 

樹奈が狂気じみた笑顔でShangri-laに語り掛ける。

その笑顔は、仲間たちが見てしまったら失神してしまうほどの威圧感があった。

 

Shangri-la「イヒヒ・・・イイヨ。スコシダケ、アイテシテアゲルヨォォォォ!!」   

 

Shangri-laは瞬間的に砲塔を樹奈に向け、砲撃を開始した。

一発一発の攻撃の速さが今さっきとは全然違っていた。

だが連射速度が圧倒的に早い代わりに軌道は変わらなかった。

 

しかし、それでも回避することはほぼ不可能に近かった。

最初の数発こそ樹奈は回避できていたがあまりの連射数に残りの数十発は直撃してしまった。

 

樹奈「しまっ…!!」

 

樹奈は黒煙に包まれ…その姿が見えなくなった。

Shangri-laは直撃したことを確認し、連射をやめた。

そしてそのまま目を瞑って笑っていた。

 

Shangri-la「イヒヒ・・・オワッタネェ。クヤシイネェ。ザンネン‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹奈「そうですね、残念なのは貴方ですね。」

 

そう言った樹奈はShangri-laの背中を思いっきり殴った。

Shangri-laは貫かれなかったものの、その衝撃で60mほど吹っ飛ばされた。

 

Shangri-la「カハッ!?ナ・・・ナゼダァ!?ナゼ…ナゼイキテイル!?」

 

Shangri-laは突然の出来事で混乱していた。それもそのはずだ。つい先ほどまで連射を受けていた

アイツが何故自分の後ろに…?

 

樹奈「流石に少し痛かったですけどね。まあこの程度なら装甲を貫くなど笑い話ですよ」

 

樹奈がありえない方向に曲がっている自身の左腕を無理やり直していた。

バキッといった骨の音が聞こえた後、何の不自由もなく樹奈の左腕は動くようになっていた。

 

Shangri-la「・・・バケモノガ!シズメ!シズメェェェェ!」

 

そう言って体勢を立て直したShangri-laが再び樹奈に向かって砲撃を開始した。

だが樹奈はその砲弾を全て体で受けて、真っ直ぐにShangri-laへと歩み寄って行った。

 

樹奈「貴方には言われたくありませんね。確かその弾丸が…対艦娘用でしたよね。

  私にはその砲弾は効果ありませんよ。私、艦娘ではないので。」

 

砲弾が何度も何度も樹奈に直撃する。だが彼女にダメージはなさそうだった。

何発かが彼女を貫通していたがその都度貫通された部分が再生していたのだ。

 

樹奈「やっぱりこの特殊装甲はいいですね。大破しなくて済みますよ。」

 

樹奈は笑いながらそう言った。そしてShangri-laの目の前に着いた。

樹奈はShangri-laを一瞥した後…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹奈「貴方はどの種類の『艦娘』…ですかね?」

 

Shangri-la「エッ・・・・?」

 

樹奈はShangri-laの艤装を殴り、そのまま爆破させたのだ。

Shangri-laはその爆破に巻き込まれた。

 

Shangri-la「アア・・・ツキガ・・・きれい・・・ね」

 

Shangri-laの最後の言葉を聞き、樹奈は沈みゆくShangri-laを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹奈はその場に座り込んだ。

 

樹奈「…ごめんなさい…Shangri-la…」

 

彼女は泣いていた。

樹奈はShangri-laについて知っている。

それだけではない、他の研究対象についてもよく知っていた。

そして、その情報はこの鎮守府に来て確信へと変わった。

 

樹奈「マスタ―・・・やはり…貴方は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹奈が何かを言おうとした瞬間、

彼女の体の半分が無くなっていた。

 

彼女…樹奈はそのまま沈んでいった。

 

ありがとうと伝える事が出来ないまま、真実を吹雪たちに告げる事が出来なかったまま

深く、深く、堕ちて逝った。

 

 

 

 

 

 

彼女がいた場所には、彼女の装甲の一部が浮いていた。

 

 

 

 

 

 

 

???「真実に近づきすぎたのですよ。」

 

 

樹奈を沈めたと思われる人物が夜の暗闇の中、一人そう呟いていた。

 

 

    ~続く~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






樹奈は何を知っていたのでしょうか

結局、彼女は誰にも伝える事が出来ないまま、一人寂しく沈んで行ってしまったのです。

次回は…中間棲姫達のシーンを書きたいと思います。

次回もお楽しみに!

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