銃が最新の武器という記述からも、それが起源(8世紀)なのか、ヨーロッパで生産されるようになった頃(15世紀)なのかで非常に判断し辛い。
Main Character:アドル=クリスティン
Location:バギュ=バデット
道中、鎧と剣で武装した魔物と何度か戦闘になりながら、僕はバギュ=バデットと呼ばれるプレシェス山にある大地を抉り取ったような大穴の前まで来ていた。穴の底には森林が広がっているようだ。
落ちたら戻ってこれないだろうなと思いながら、バギュ=バデットから目を離し、僕はここから神殿とは反対方向にある盗賊のアジトへ向かった。
大穴に落ちてしまわないように気をつけながらダームの塔の方に進んでいると、大きな吊り橋とその終点に小屋のようなものがあるのが目に入る。ダームの塔の入口を塞ぐようにして建ててあるので、恐らくあれがアジトだろう。
一つ深呼吸をして緊張を解し、僕は1つ目の目的を果たすために吊り橋を渡り始めた。
「おや、兄ちゃん、こんな所にいったい何の用だ?」
吊り橋を渡り終えたところで、アジトの外に出ていた茶髪に髭を生やした男がこちらに気がついて声をかけてきた。
「実は銀の鈴をあなたたちが盗んだと聞いてここまで来たのですが」
「銀の鈴? それってあれか、麓の村の宝の銀の鈴か?」
「宝かどうかは知りませんが、大切なものだとは聞いています」
「それだったら見当違いもいいところだぜ。俺たちは金持ちからは盗むが、庶民には絶対に手は出さん」
ふむ、いわゆる義賊のようなものだろうか。話を聞く限りでは彼らは彼らなりの理念に基づいて盗賊をやっているらしい。そこに誇りを持っているような感じで、そういった事で嘘を吐くのも嫌いそうなタイプの人間に見える。
しかし、そうなると誰が犯人になってくるのか…。
「それにだ。銀製品に関しちゃ、俺たちのところからもいくつか盗まれちまってる。この辺りで盗賊って言ったら俺たちぐらいしかいないってのにだ。銀の鈴も多分そいつらの仕業なんだろうが、尻尾がこれっぽっちも掴めやしない。正直お手上げだよ」
やれやれ、といった風に男は大袈裟に肩を竦めてみせた。
本職の人間が分からないなら、外野の僕が考えても恐らく徒労に終わるだろう。なので、仕方ないが一先ず銀の鈴の話は頭の片隅に置いておくことにする。
「そうでしたか……。疑うような真似をしてすいませんでした」
「いや何、盗賊やってりゃそんなこともあるわな。別に気にしちゃいねぇよ」
僕が頭を下げると、男はそう言って豪快に笑い飛ばした。
「しかし、盗賊のアジトに乗り込んできて直談判とは、なかなか肝っ玉が座ってんなぁ。俺はゴーバンってんだ。兄ちゃん、名前は?」
「アドルといいます」
「なるほど、いい名前じゃねぇか。銀の鈴の件は悪いが何にも分かんねぇが、別に困ったことがあったらまた来てみるといい。力になるぜ」
それだけ言うと、ゴーバンさんはアジトの中へ戻っていった。どうやら気に入られたらしい。
しかし、銀の鈴の件は村で得た情報も全部無駄になってしまい、完全に振り出しに戻ってしまった。考えるのは後にして、先にイースの本の回収をしてしまおう。
来た道を引き返し、今度は神殿方面へと歩を進めた。入口付近は魔物が少し集まっていたので、軽く処理をしてから、今は神殿の入口の前まで来ている。
「ずいぶんと大きいですね……。ここを探すのは手間がかかりそうだ…」
少し弱気になる気持ちを奮い立たせつつ、僕は異空間から鍵を取り出し、神殿の入口を開放した。
中は当然人口の光もなく、今は外からの光で薄暗い程度だが、奥まで進んでしまえば何も見えなくなることが容易に想像できる。
僕はクリスタルと松明を異空間から取り出し、鍵とクリスタルをウエストポーチにしまい込んで神殿へと足を踏み入れた。
松明の光で神殿内を照らしてみると、外観からは想像出来ないくらい狭苦しい構造になっているように思える。
入口から5メライほど進んだだけで壁に突き当たり、そこから横一直線に他の部屋に通じるような場所もなく、ただ壁が広がっている。あるのは均一の距離で置かれている十数体の女神像だけで、事前に聞いていた魔物の姿も全く見当たらなかった。
何もしないわけには行かないので、とりあえず奥へ進んでいくと、壁際にある1体の女神像だけ違う色をしていることに気がついた。
明らかに何かがあると踏んでその金色の女神像に触れてみると、突然ウエストポーチの中身が強く輝きを発し、次の瞬間には僕はその場から姿を消していた。
言い忘れてましたが、1メライは1.2mで、1クリメライは1.2kmを指し示す単位です。