赤毛の紀行家   作:水晶水

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 デュレンさんの性格は若干旧盤混じってそうだなって感じになってますね。




L.目覚めし鎧獣アルドヴォス

Main Character:アドル=クリスティン

Location:キャスニア鉱山 最奥部

 

 

 

 

 

 フロア中央にアルドヴォスの怪腕が叩きつけられ、礫が四方へ高速で飛散する。何もせずに受ければ一発一発が重い一撃となり得るが、流石にそれを容認するほど二人はやわではなかった。

 アドルは翼を広げて攻撃範囲外である上方へ飛翔し、デュレンは己の全身に魔力を纏わせて礫の雨をやり過ごす。魔力を使いこなすデュレンの姿を見てアドルは驚愕するが、戦闘中であると気を持ち直して、その疑問を今は頭の隅へと追いやる。

 

「ふんっ!」

 

 散弾の如き土塊を受けきり、デュレンは腕を振り下ろして隙を晒すアルドヴォスへと突撃し、魔力を纏わせた鉄製の手甲を厚い甲殻が覆う魔物の腕へと叩きつけるが​────

 

「〜〜〜〜っ!」

 

 激しく金属同士がぶつかる様な音が鳴り響き、頑丈な鎧のようなそれは逆に攻撃してきたデュレンへと衝撃を弾き返してきた。思わぬ反撃に彼は顔を顰めて一歩下がり、アルドヴォスはそれを腕を振り上げて追い縋る。

 

「デュレンさん下がって!」

「っ! おう!」

 

 が、アルドヴォスと対峙しているのはデュレン一人ではない。先制攻撃を受けて魔物の視界から逃れるように飛び上がっていたアドルがデュレンへと指示を飛ばしながら、異空間から取り出したファイアーの杖からアルドヴォスの腕に向けて火球を飛ばすと、デュレンを薙ぎ払わんと振るわれていた腕にそれが着弾するのと同時に爆発し、再び魔物の腕を地面に縫い付けた。

 

「すまん助かった!」

「いえ、それよりも腕には打撃も通りそうにないですか?」

「あぁ、ありゃあちっと硬すぎるな。ほれ、お前さんの魔法でも無傷みたいだぜ」

 

 そう言いながらデュレンは爆煙が晴れたアルドヴォスの方へと顎をしゃくり、アドルの視線をそちらへと促す。アドルはそれに倣って自分が魔法を放った腕へと視線を向けると、そこには煤を被っただけで、傷一つついていない魔物の剛腕があった。

 

「見た目通り……いえ、見た目以上に頑丈なようですね」

「まったく、骨が折れるどころの話じゃないな」

「やはり比較的弱そうな胴体を狙うしかなさそうですが、デュレンさんに任せても?」

「しゃあねぇな、適材適所ってやつだ。代わりに援護は頼んだぜアドル!」

 

 思わぬ甲殻の堅牢さにアドルは奧噛みするが、瞬時に頭を切り替えて攻撃の通りそうな部位を探りそれを見つける。それはデュレンも同様だったようで、目線を鋭くして自身が飛び込むべきアルドヴォスの懐を見据える。

 そして、言い終わるが早いか、デュレンは真っすぐに魔物へと跳び出した。当然アルドヴォスもそれを傍観するだけでなく、今度は腕を薙ぎ払ってこれを阻止してこようとするが、それは当然アドルも同じである。彼は先ほどよりも出力を上げたファイアーの魔法の爆炎で以て弾き飛ばし、風を切り裂きながらデュレンへと迫っていた腕はあらぬ方へと向けられた。

 進行ルートを確保されたデュレンは迷わず場に残る黒煙の中を突っ切って直進すると、彼の目の前に見るからに腕よりも装甲が薄い魔物の下腹部が現れる。それを見たデュレンは走る勢いのまま拳を大振りに構えると────

 

「お……らぁっ!!!」

「!? ギィィィィィィィィィ!!!」

 

 全力でそれを叩き付けた。魔物の甲殻に拳を起点としてビシリと放射状に大きく罅が走る。

 彼らの目論見通りそこは弱点であったようで、アルドヴォスから悲鳴のような咆哮が上がり、魔物に大きなダメージが入ったことは明らかだ。

 

「そらもう一発ッッ!!」

 

 怯む魔物へダメ押しの一撃。拳よりも大量の魔力を込めて放たれるデュレンの必殺の回し蹴りは罅割れた魔物の腹部を貫き、それが致命的な傷になったのか、アルドヴォスはアドルがエステリアやイースで見た魔物たちと同様にその巨躯を灰へと変えてこの世から消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

「やりましたねデュレンさん」

「へへ、俺もなかなかやるもんだろ?」

 

 地面へと降りてきて翼を消しながらデュレンへと声をかけるアドルに対して、デュレンは自慢気な笑みを浮かべながらそう返す。

 

「はい、正直どんなものかと思っていましたが心配するだけ損でした」

「はっはっはっ! まあ、伝説の翼の民のお眼鏡に適ったってんなら里でも自慢できるってもんよ」

 

 アドルの素直な賞賛に更に気分を良くしたのか、デュレンは大口を開けて声を上げて笑う。彼は割と調子に乗りやすい質であった。

 

「さて、鉱山長たちはこの奥か」

「ええ、恐らくは。行きましょうか」

「おう」

 

 デュレンが一頻り笑った後、二人はアルドヴォスが塞いでいた遺跡の奥へと続く道へと視線を送る。

 もう巨大な魔物を討伐した影響で魔物の気配は感じなくなったが、要救助者たちの容体が分からない以上急ぐに越したことはないだろう。そんな風に考えながら、アドルたちは再び坑道の奥へと歩を進め始めた。




 緊迫する戦闘描写ってやっぱり難しいですね。

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