Main Character:アドル=クリスティン
Location:草原街道
翌朝、朝食をいただいてから僕は早い時間からミネアの街を旅立った。というのも、バルバドミネア間と比べると、ゼピック村まではかなり距離が離れていて、また、魔物や凶暴化した獣の類も最近は多く確認されているとのことなので、ここ草原街道で野宿することになるのは避けたかったからだ。
魔物に関してだが、元々エステリアは国土の4割が今歩いているような草原で、異変が起きる前はたまに凶暴な獣がいるぐらいで、比較的平和な国だったらしい。
ところがある日、今は廃坑になっているラスティン鉱山の坑道の奥から数え切れないほど大量の魔物が現れて、またたく間に鉱山を魔物の領域にしてしまった。
あまりに突然のことに抵抗することもできず、鉱夫達は負傷者を出しながらも命からがら逃げ出して来たのだとか。
エステリアは今現在、ロダの樹という何故か魔物が近寄らない巨大な老木の近くにあるゼピック村と、ミネアの町、バルバドの港町以外の集落を魔物の侵略によって失くし絶体絶命の危機にある。
嵐の結界のせいでエレシア大陸に逃げることも出来ず、全滅も時間の問題だったらしい。
サラさんから教えて貰ったことを頭の中で思い返しながら街道を進んでいると、前方から人型の何かがこちらへ向かってくるのを視界に捉えた。
死人のような青白い肌に長い耳、それと真っ赤な目が特徴の魔物で、確か名前はカーロイドと言ったか。そのカーロイドが3体、ボロボロの剣を携え、こちらを威嚇するような声を上げながら襲いかかろうとしている。
魔物と戦うのは初めてだが、戦闘自体はこの1年半で何度も何度も繰り返してきた。故に僕は焦ることなく腰から長剣を抜刀し、先頭のカーロイドに疾走する。
「ふっ! はぁっ!!」
出会い頭に一閃、唐竹割りの要領でまずは1匹絶命させ、続いて来た2匹目に振り下ろした剣を逆袈裟で振り抜いて上半身と下半身を泣き別れさせた。
「ギギィッ!!」
舞う血飛沫の向こうから3匹目が跳びかかってくるが、僕はこれをバックステップで回避する。
最後のカーロイドは盛大に剣を空振り、そのまま着地したが、僕はカーロイドが踏ん張る一瞬を狙って首を両断した。
剣に付着した血を払い納刀すると、カーロイドたちの死体が灰になって消えた。
ひとまず異空間から革袋を取り出し、水分補給をして一息つきながら、魔物は死体を残さない性質を持っているとサラさんが言っていたことを今更ながら思い出した。
まだ出発してからそこまで時間が経っていないことから、僕はサラさんに聞かされた魔物の恐ろしさをこの身をもって理解した。殺意というか何というか、人間に対する攻撃性が強すぎるのだ。
結局、それ以降もカーロイドを筆頭とした魔物や魔獣の襲撃に逢いながらゼピック村へと歩を進めることになる。
橋を渡る時に両側から魔物に襲われるなどといった危うい場面もあったが、太陽が真上に来る頃にはロダの樹の下まで来ることが出来た。ゼピック村まであと少しだ。
区切りのいいところで終わらせようとするとこんな感じで短くなりますが、もっと1話1話のボリュームを増やした方がいいか悩みます。