恐竜ドラゴンさん、評価ありがとうございます!
Main Character:アドル=クリスティン
Location:貿易都市プロマロック
リターンの魔法でプロマロックまで飛び、キャスナン行きの馬車の乗合所まで行くと、そこは大勢の人がごった返していた。ざっと見た感じ、鉱夫のようなかっこうをした人たちが多いような気がするが、どういう集まりなのだろう。
「アドルじゃねぇか! どうしたんだこんな所で」
「ドギさん、それにフレア先生も」
「おや、久しぶりだね。あれから調子はどうだい?」
「はい、おかげさまでこの通り」
遠巻きに人集りの様子を見ていると、背後から見知った2人に声をかけられた。全くもって偶然の邂逅だが、彼らもキャスナンに行くのだろうか。
「お2人もキャスナンへ?」
「僕はセルセタの花の原種を採りに行くためにね」
「俺はその護衛ってわけだ」
ということは、2人とも僕と同じで樹海の方に用事があるということか。
「僕はこんな手紙が届きまして」
「んん? …………随分と変わった手紙だなこりゃ」
「フィーナさんが言うには、これが有翼人が関係しているらしくて、それでこの話を受けようかなと」
なるほどなぁ、と納得した様子でドギさんが手紙を返してきた。
「でもこの様子だと、キャスナンまで行くのは大変そうですね」
「ああ、アドルくんそれなんだけどね、アドルくんさえ良ければ僕たちと一緒に行かないかい?」
もうキャスナン行きの馬車を確保しているんだ、とフレア先生がにこにこと笑う。同乗させてもらえるのならこちらとしてもそれは願ったり叶ったりではあるが。
「まあ、代わりに護衛として仕事をしてもらうことになるけどね」
「それは構いませんが、よろしいので?」
「今は商隊も人手が欲しいんだとよ。ここは素直に話に乗っとこうぜ」
なんでも、今キャスナンではゴールドラッシュが起きているらしく、ロムン中の商人や鉱夫がこぞってキャスナンまで向かっているらしい。また、それを狙った野盗なども増えているらしく、お金をかけずに護衛が増えるなら商隊側としても望むところなのだそうだ。
「そういうことならよろしくお願いしますね」
まあ、お金を払わなくていいならそれに越したことはない。タダより高いものはないと言うが、万が一の時は武力行使も辞さないつもりでいれば何とかなるだろう。
Location:辺境都市キャスナン
馬車に揺られる数日の旅を経て、僕たちはキャスナンに辿り着いた。街は活気に溢れた様子で、もう昼間なので鉱夫たちの姿は見当たらないが、それでも多くの人が街を賑わしている。
「僕たちは明日から樹海に入るつもりだけど、アドルくんはどうするんだい?」
「そうですね……」
商隊の人たちとは別れて、昼間なのもあって若干人入りが疎らな酒場で料理を摘みながら、僕たちは今後の話を進めていた。
想定よりも早く到着することが出来たので、1週間ほど迎えを待たねばならない時間が生まれてしまった。リターンの魔法があるので一旦ゼピック村まで戻るのもありと言えばありなのだが、それをしてしまえば、出発した時のことを考えると、次は家から出れなくなりそうだ。
「まだ約束の時間までかなりありますし、僕も同行していいですか?」
「おお、アドルが来てくれるなら百人力だ。先生も早めに村まで帰れるかもな」
「うん、あまり診療所を空けるわけにもいかないし、僕としてもアドルくんがそうしてくれるなら助かるよ」
そういうわけで同行を願い出ると、2人は快く迎え入れてくれた。身の上の都合のせいでもあるが、交友関係が狭い僕にとって、2人のように友人として接してくれる人は素直にありがたい。
「じゃあそうだね、明日の朝にまたここに集合しようか。宿は2人の分も取っておくから、折角だし街の方を見てくるといいよ」
僕は慣れない長旅で疲れてるから先に休ませてもらうね、と言いながら、先生は酒場の上階にある宿へと歩いていった。
「だとよ、どうする?」
「僕は色々と樹海について聞いて回ることにします。僕は別件でも用事がありますし」
「分かった、じゃあ俺はその辺を適当に出歩いてくるとするか」
また明日な、と背中越しに腕を上げながらドギさんが酒場から出て行く。僕も腹拵えを終えたし、あまり期待出来ないだろうが、少しでも情報を集めるとしよう。
この後のことを考えながら、僕もドギさんの後を追うようにして席を立った。
結婚したってことはもうフィーナ=クリスティンって事なんですよね。思わず気持ちの悪い笑みを浮かべてしまいました。