赤毛の紀行家   作:水晶水

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 YsIV -The Foliage Ocean in CELCETA-始まります。


第三章 セルセタの樹海
プロローグ -招致ノ時-


Main Character:アドル=クリスティン

Location:ゼピック村

 

 

 

「手紙? 僕宛てにですか?」

 

「はい、セルセタの方から届いたみたいですけど」

 

 イスパニ北東部とロムン西部に挟まれるように位置する広大な樹海、通称セルセタの樹海と呼ばれる地域から僕に手紙が届いたらしい。樹海入りして帰ってきた者がほぼいないせいで、地図でも空白地帯になっているほどの未開の地のはずだが、そんなところから何故、しかも僕宛てに手紙が届いたのだろうか。

 

「誰からの手紙なんでしょうか?」

 

「…………アドルさんの名前しか書いてないみたいですね」

 

 謎の手紙の謎が更に深まってしまった。そもそも、ロムンに知り合いはプロマロックとガルマンにしかいない上、イスパニに至っては行ったことすらないのだ。いったい誰が僕に手紙を出すというのか。

 

「……とりあえず読んでみましょうか」

 

 こうも事前情報が出てこない以上、何はともあれ、これを読まねば始まらないので、フィーナさんから手紙を受け取って読むことにした。

 

 

 突然の手紙をお許しください。エステリアを平定したというあなたに知らせねばならないことがあったので、筆を取らせていただきました。

 我々は樹海の外の人に知恵を授ける方の手伝いをしている者です。今回手紙を送ったのは、そのお方からあなたをこのハイランドの地にお呼びするよう言付かったからなのです。

 この手紙が届いてから半月後に樹海の側に位置する都市、キャスナンまで迎えの者を送ります。この話をお受けになる気がないのであれば、キャスナンまで来られなくても結構です。

 しかし、我々としてはあなたの良き返事を期待しております。

 

 

 色々と何とも言えない怪しさを漂わせる手紙だった。樹海の中にあるという人里に、知恵を授ける​──内容から察するに賢者か仙人のような類の者がいるのだろうか。

 

「どんな手紙だったんですか?」

 

「何というか、怪しい手紙でした」

 

 渋い顔をしながらフィーナさんに手紙を手渡すと、フィーナさんもふんふんと手紙を読み始める。手紙を読み進めていくうちに彼女も渋い顔つきになっていったが、何か謎が解けたのか、ハッとした表情になって顔をこちらへ向けてきた。

 

「もしかしたら、私と姉さんが知っている方が関係しているかもしれません」

 

「フィーナさんと義姉さんが……ということは、有翼人絡みですかね?」

 

「はい、確かその人はセルセタの方へ渡ったと聞いたことがあるので、まだご存命であれば間違いないかと」

 

 有翼人が関係しているとなると、評価が一転して俄然興味が湧いてきた。

 

「どんな人なんでしょう?」

 

「『太陽の仮面』と『生命の書』という、この世の過去、現在、未来全ての記録を見ることが出来る神器を扱う方ですね。手紙の知恵を授けるというのも恐らくこれが関わっていると思います」

 

 何というか、随分とスケールが大きい人のようだ。つまり、その神器とやらで得た未来の知識を、それを必要とする人たちに教えているのだろうか。

 

「興味があるなら会いに行ってみるのもいいと思いますよ?」

 

 気になっているのが余程顔に出ていたのか、フィーナさんがにこにこ笑いながらそう言ってきた。

 

「では、そうしてみます」

 

「はい、あっ、お土産待ってますからね」

 

 おや、完全に一緒に行く気だったのだが、どうやらフィーナさんは留守番をする気満々らしい。

 

「あれ、一緒に行かないんですか?」

 

「あちら側は大事な用事のようですし、勝手にこちらの人数を増やすのは不味いと思いますよ?」

 

 そう言われると、こちらとしては反論は出てこない。招待されている以上は僕だけを名指しした先方の意思を汲み取るべきか。

 

「では、しばらく家を空けますね」

 

「はい、夫がいない間に家を守るのも妻の仕事ですからっ」

 

 まあ、姉さんもいるんですけどね、とフィーナさんが舌を出してウィンクをしてくる。ついつい可愛いフィーナさんの頭を撫でつつ、僕は座っていた椅子から立ち上がった。

 キャスナンは確か5年ほど前にロムンが属州化したイスパニの鉱山都市で、ロムンの西端に位置する都市だったはずだ。まだ行ったことのない場所なのでリターンの魔法が使えないとなると、少し早めに出た方がいいだろう。

 

「行ってきます、フィーナさん」

 

「はい、行ってらっしゃいアドルさん」

 

 挨拶を交わしてフィーナさんの後頭部に手を回して優しく引き寄せると、力が抜けたフィーナさんの柔らかい感触が伝わってくる。

 

「も、もうちょっとお願いしてもいいですか……?」

 

 数瞬口づけをしてから離れると、名残惜しそうな表情をしたフィーナさんが上目遣いでこちらを見上げてきた。しかも服の裾を掴んでくるオプション付きだ。

 結局、フィーナさんが満足して離れてくれたのは30分ほど経った後で、その間ずっとキスを要求されるのであった。(元)女神の祝福を大量に分けてもらって、僕の第二の冒険が幕を開けた。




 資料漁ってて思ったんですけど、空白期間を考えると、セイレン島(VIII)とカナン諸島(VI)の間で絶対1作分、もしかしたら2作分冒険があってるんですよね。そこに辿り着く前に新作出てくれませんか。

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