Main Character:フィーナ
Location:ゼピック村
「ふんふふんふんふ〜ん♪」
私の仕事である朝食作りを鼻歌混じりでこなしていく。最初の頃は上手くできないこともあったが、今はもう慣れたもので、こんな風に小躍りしながら料理するのもお手の物である。
「よし……と、アドルさーん! 姉さーん! 朝ご飯出来ましたよー!」
皿に盛り付けを終えてから、まだベッドの上で夢の世界に旅立っている2人を大声で起こす。朝が弱い姉さんもだいたいはこれで起きてくれるが、意外や意外、それ以上に朝が弱いアドルさんはこれで起きてくれることは稀なのだ。
「おはようフィーナ。あら、今日はベーコンエッグなのね」
「おはよう姉さん。ちょっと先に食べてて」
「ゆっくりでいいわよ〜」
間延びした姉さんの声を聞き流しながらアドルさんの部屋へ向かう。普段はしっかりしているのに、彼は起きるのだけは本当に苦手なのだ。そういうところも可愛いのだけれども。
部屋に入ると、そこにはベッドの上で姿勢良く眠るアドルさんがいた。規則正しい寝息を立てていて、放置していたら、まだあと2時間は寝ていそうだ。
「アドルさん、朝ですよ」
無防備な寝顔を眺めていたい衝動を堪え、アドルさんの肩に手をやってゆさゆさと身体を揺さぶって起こそうとするが、彼の可愛い寝顔は揺らす前と比べて何も変化が起きなかった。今日は一段と手強いようだ。
(きょ、今日は眠いが深い日みたいですね……)
どうやら今日は2週間に1回ほどの周期で来る、アドルさんの眠りが深い日らしい。明らかに私の挙動が不振になるが、これは仕方がないことなのだ。
(ま、まずは……)
起こさないように慎重な手つきでアドルさんの頬に触れると、すべすべとした感触が私の手に伝わってくる。ああ、これはいつになっても飽きることのない魅惑のほっぺ……。
気持ちの悪い笑いが口から漏れそうになるのを我慢して、満足のいくまで堪能すると、次に私の身体はアドルさんに軽く馬乗りになった。
ギシリとベッドが軋む音を聞きながら、上から覆いかぶさるようにしてアドルさんの寝顔を再三観察する。最近18歳になったと言っていた──もちろん誕生日は盛大に祝った──が、この幼さ残るどころかまだ抜けきれていない顔を見ると、それも何だか信じられない気がしてくる。アドルさんが背が低くて童顔なのは、恐らく白エメラスが身体の一部になっているせいだろうが、それにしたってこの可愛らしさは少し反則級だと思う。
起きている時の、この可愛らしい顔からは想像出来ないぐらい落ち着いた雰囲気や、戦う時のキリッとしたカッコ良さが巻き起こすギャップも大好きだが、こういう風にストレートに可愛さを見せてくるのも────おっと、ここで思考に熱中してしまってはいけない。
馬乗りの状態で視か────んんっ、観察を続けるのも悪くはないが、時間は限られているので早く次に進むとしよう。
「んっ……」
アドルさんの寝顔を見るのを止めて、私は顔をゆっくりと近づけていき、未だに眠りこけるアドルさんに口付けを落とした。口を尖らせて相手の唇に軽く接触させるキス──アドルさんはバードキスと言っていた──を1度、2度、3度と何度も重ねて気分を高めていく。
「んふっ……ちゅっ……」
啄むのもそこそこに、1度距離を取ってから再びアドルさんの口にキスをする。今度は舌と舌を絡ませる──アドルさんはディープキスと言っていた──キスだ。アドルさんが寝ているせいで、相手側の反応が薄くて少し味気ないが、一方的に蹂躙するこれはこれで良いものである。
「んん……?」
「!!」
キスに夢中になりすぎたせいで、アドルさんが起きる兆候を見逃していた。激しい攻勢に出ている最中にアドルさんの重い瞼が開かれ、至近距離で視線が交わる。まだ状況を理解できてなくてぼんやりとしているのも可愛い。
「ぷはっ……お、おはようございますアドルさん」
「……おはようございます?」
アドルさんが起きれるように一旦離れると、寝惚け眼のアドルさんもそれを追従するように半身を起こしてくる。
「朝ご飯出来てますよ。先に行って待ってますから」
「……あぁ、すいません、また起きなかったんですね」
くあぁ、と大きく欠伸をしてから身体を伸ばすアドルさんから降りて、赤くした顔を見られないように足早に部屋から出ていく。
今日はいつもより少し激しく攻めたせいで、あそこまでしかいけなかった。次の勝負はまた2週間後になるが、その時は最後までいけるよう頑張ろう。
フィーナ様のスリーサイズと身長から算出した結果、フィーナ様はEカップであることが判明したことをここに記しておきます。サブタイのEとお揃いですね(イシオスブレードが額に刺さる音)。