赤毛の紀行家   作:水晶水

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 夢に出てくるフィーナ様がもっとイチャイチャさせろとせがんできます。

黒須家さん、評価ありがとうございます!


H.戒めの頭蓋ゲラルディ

Main Character:アドル=クリスティン

Location:溶岩地帯の村

 

 

 

「お父さん!」

 

「タルフ!!」

 

 溶岩に囲まれた集落に着くと、少年は顔を喜色に染めて駆け出して行った。向かった先からも少年と同じ髪色をした男性が走ってきているので、親子の感動の対面と言ったところだろうか。

 聖獣たちと2人が笑いながら抱き合っているのをしばらく見ていると、周りの家々からも何事かと人が出てき、僕らを見てギョッとした顔をして、青髪の親子の姿を見て微妙な表情で何かを察するような顔をしていた。

 道中タルフ君から攫われた経緯を聞いていたが、どうにも赤毛の男​、つまり僕のことを足止めするための策略として、黒衣の男がタルフ君を幽閉するよう魔物に指示したらしい。早い話、攫われた原因が攫われた子を連れて帰ってきたので困惑しているといったところだろうか。

 

「タルフを助けてくださってありがとうございます」

 

「いえ、元はと言えば僕が原因のようですので……」

 

 そう言って抱擁を終え、誠心誠意に頭を下げてくるタルフ君の父親に頭を上げるよう促すが、彼は深く頭を下げたままだ。

 

「タルフからあなたが女神様の使いであることを聞きました。それは魔物にとってあなたが脅威であり、私たちにとっては希望の光であることを意味します。ならば、魔物が今回のような手段に出ることも理解できますし、私たちがあなたを責めることは筋違いであることも理解しております。何より、あなたを謗ることは神官ハダルの子孫として最も恥ずべきことです」

 

 そう言って、最終的に跪いて彼は僕に礼を尽くしてきた。しかし、タルフ君たちが神官の子孫だったとは。それなら確かに、腹立たしいが下手な人質よりは周りへの影響も考えるとこの上なく効果的であろう。

 

「僕自身が偉い訳ではありませんよ。頭を上げてください」

 

「しかし……」

 

「あまり慣れてないんです。楽にしていただけると助かります」

 

 そう仰るのならと、ようやくタルフ君の父親は立ち上がってくれた。その目には未だに畏敬の念が宿っているが、それはもう血筋が為すものとして諦めよう。しかし、何というか敬われるのはやはり慣れない。

 

「神殿に向かうにはどちらに行けばいいでしょうか?」

 

「ここの橋を下ろせば、後は道なりに進めば辿り着けます。しかし、途中で巨大な魔物が道を塞いでまして……」

 

 魔物が徘徊していたのでそうだろうとは思っていたが、やはりこの溶岩地帯にもそれらを統率する個体がいるらしい。

 

「魔物に関しては問題ありません。橋を下ろせるのはいつ頃になるでしょうか?」

 

「今からでも大丈夫です。下ろしましょうか?」

 

「はい、お願いします」

 

 少々お待ちになってくださいと残して、タルフ君の父親は跳ね橋の方へ駆け足で向かっていった。待ち時間を有効活用しようと思い、橋が下ろされる間に聖獣たちと話すために、僕はテレパシーの魔法を発動させる。

 

「皆さん、ここまでの案内ありがとうございました」

 

「僕たち役に立った?」

 

「はい、とても」

 

「やったー!!」

 

 僕の言葉に、心底嬉しそうな声を上げて聖獣たちが跳ね回る。可愛い。

 

「女神様、頑張ってね!」

 

「女神様、これあげる!」

 

「これは?」

 

「ロダの実だよ! 食べると甘くて頭がとってもスッキリするの! 疲れたら食べてね!」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 お礼を述べると、聖獣たちは激励の言葉とロダの実を残して、住処の方へ帰って行く。最初から最後までずっと元気だったな。

 

 

 

Location:バーンドブレス

 

 

 

 聖獣たちと別れた後、無事に跳ね橋も下りたので、僕は村人たちに見送られながら神殿へと向けて出発し、いつまでも慣れない暑さに辟易としながら進んでいると、突き当たりに紋章が刻まれた扉があるのを発見した。扉を開いてその先に進むと、部屋の中はドーナツ状に溶岩に囲まれたドームのような造りになっているのが見て取れた。そして、中心の溶岩から10メライほどの魔物の上半身が突き出ているのも確認できる。あれほど大きいと、こんな所に生息している魔物なので炎は有効そうに見えないが、距離を取りつつファイアーで攻撃するしかなさそうだ。

 

(気づかれましたか)

 

 どう攻めるか考えていると、あちらもこちらに気づいたのか、ゆっくりとした動作で僕の方へと身体を向け始める。しかし、軸を合わされる前に、僕は杖に魔力を回しながら走り出した。それを追いかけて、地面を這うようにして横薙ぎに振るわれる腕を跳び上がって避け、着地と同時に杖を振るい、振り抜かれた腕にファイアーの魔法を着弾させると、激しい爆発の衝撃で魔物の巨体が大きく揺らいだ。

 姿勢を崩したところに怒涛の勢いで魔炎を放ち、容赦なく連撃を撃ち込んでいくと、魔物は身体の歯車を軋ませながら苦しそうな呻き声をあげる。

 

(黒い真珠の衝撃で忘れてましたが、これは素の状態でも氷壁の時より威力が上がってますかね)

 

 思い出すのは女神像に残された力を受け取って、翼の枚数が2枚増えた出来事。神様や天使の格は翼の枚数で決まると何処かで聞いたことがあったが、翼が2対になった影響で魔力の出力も増えたのだろうか。

 そんなことを考えながら、魔物の周りを回りつつファイアーを撃っていると、魔物が溶岩を手で掬い、こちらの方へ乱暴に撒き散らしてきた。流石にあれが当たれば重傷どころの騒ぎでは済まないので、杖先で魔力を溜めてから一気に溶岩に向けて放ち、引き起こされる爆風でまとめて溶岩を吹き飛ばす。しかし、爆炎が晴れるとその向こうから真っ直ぐに魔物の腕がこちらに迫ってきていた。

 

「そぉ​────れっ!!」

 

 魔物の腕をギリギリまで引きつけ、杖先に魔力をチャージしながら遠心力を乗せた杖での直接攻撃をカウンター気味にぶつけると、より指向性を持った爆発が魔物の腕を弾き飛ばし、その勢いのまま片腕を引きちぎった。僕も当然至近距離の爆発に晒されるが、翼を魔力で強化し、これを身体と爆発の間に上手く挟み込むことで、衝撃を最小限に抑えることに成功する。

 晴れた視界の先には大きく仰け反った魔物の姿が映り込んでいる。僕がこの隙を逃すはずもなく、戻ってくる魔物の顔に向かって、極限まで溜めた炎の魔法を解き放ち、引き起こされた爆発は巨大な魔物の顔を身体と泣き別れさせた。

 

「はぁ…………」

 

 灰になっていく魔物の残骸を見ながら、灼熱の地で動き回ったせいで、身体にすっかり篭ってしまった熱を吐き出すつもりで大きく深呼吸をする。とにかく、これでようやく神殿へ行くことが出来る。しばらく暑いのも寒いのも勘弁願いたいと思いつつ、僕は奥の扉へ進むべく足を動かした。




 ゲラルディはオリジンの方のデザインですね(クロニクルズ版のあいつをどう表現していいか分からなかった顔)。

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