赤毛の紀行家   作:水晶水

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 顔面兄弟(?)の回です。

 劇鼠らてこさん、評価ありがとうございます!

 評価バーがアドルさんの髪の色になったので感激の極みです!


X.ヨグレクス&オムルガン

Main Character:アドル=クリスティン

Location:ダームの塔

 

 

 

「そういえばアドル、本を何も無い所から取り出してたあれは何なんだ?」

 

 それなりに増えたメンバーでダームの塔に戻った時に、ドギさんがそう口にした。他の人たちも気になっていたようで、足は止めずに興味深そうな視線をこちらに向けてくる。

 

「あー、何と言いますか……生まれた時から使えたんですけど、自分でもこれが何なのかよく分かってないんですよね。ルタさんはこれが魔法だと言っていましたが」

 

「レア様は何かご存知ないのでしょうか?」

 

 僕の言葉のパスをルタさんはレアさんに転がした。

 

「そうね……少なくとも私がアドルさんに力を与えたことはないわね。見ている限りだと借り物の力ではなく自分自身で力を引き出して使っている……と思うのだけれど……」

 

 確信がないようで、レアさんは煮え切らない表情でそう言った。女神様にもらった力なので借り物と言えば借り物なのだが、魂の状態で直接付与されたので定着具合が普通に力を与えるのとでは違うのだろうか。

 

「本人も分かんねぇ、女神様も分かんねぇってんならもう何か便利な力ってことでいいんじゃねぇか?」

 

「話を切り出したドギさんが言うことではないと思いますよ」

 

「はっはっはっ! こまけぇこたぁいいんだよ!」

 

 ルタさんのツッコミを受けたドギさんが豪快に笑い、一先ずこの話は終わることになった。

 

 

 

 そうこうしているうちにもう一つの鏡の間を抜けて、今はまたあの扉の前に立っていた。扉を消して先に進むと、突き当たりに1枚の鏡があった。ロッドがないと先に進めないため、今回は皆に待ってもらうことはできなさそうだ。ラーバさんにロッドを使ってもらい、全員で鏡を潜ると、それはお馴染みの大広間に繋がっていた。

 部屋に入った瞬間、部屋の中心に描かれた紋章から何かがせり出してきた。紫電を走らせながら現れたそれは赤と青の2つの巨大な顔だった。

 ギロリと2つの顔がこちらを睨んできたかと思うと、それらは大量の火の玉を放ってきた。ギョッとしつつも、3人を庇うように僕とドギさんが前に出て飛んでくる火の玉を叩き落としていく。

 

「熱ッ!!」

 

 ドギさんの声を聞いてそちらの方を見ると、ドギさんの腕から煙が上がっていた。防戦一方では不味いか。

 

「ドギさんこれを!」

 

「サンキューアドル!」

 

 僕はドギさんにクレリアの盾を投げ渡して魔物の方へ突貫した。ドギさんは盾で上手いこと火の玉を弾いているようだ。

 

「アドルさん! その魔物は赤い方を倒せば両方倒せるわ!」

 

 走って高速で飛来する火の玉をクレリアの剣で切り裂きながら魔物との距離を詰めていると、後ろからレアさんの声が聞こえてきた。

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

 跳び上がって弾幕から抜けて、赤い顔面の真上からクレリアの剣を突き立てると、それは抵抗なく深々と突き刺さり、赤い魔物を灰へと変えた。それにつられるように青い方も消滅する。

 

「アドル! やったじゃねぇか!」

 

 盾を投げ返しながらドギさんが声をかけてきた。僕はそれを受け取って皆の元へ戻っていく。

 ドギさんの腕にヒールポーションをぶっかけてから鏡の反対側にあった扉を抜けると、長い長い階段が目に入った。その階段を登った先には今まで見た物よりも、頑丈で豪奢な造りの扉が待ち構えていた。

 

「い゛っ​──────!!」

 

 扉を開けようとして触れてみたら、腕に鋭い電撃が走った感覚がした。扉を見てみると、黒い稲妻が薄く走っているのが見て取れる。

 

「ルタ殿、アミュレットを」

 

「はい」

 

 レアさんの言葉に従ってルタさんが扉の前でアミュレットを掲げると、扉に纏わりついていた黒雷が綺麗さっぱりなくなった。

 

「アドル! 今度はしっかり護衛しておくから、頑張ってこいよ!」

 

「はい、頼みますドギさん」

 

 ドギさんが突き出した拳に僕も拳を合わせる。

 

「アドルくん、後は任せたぞ」

 

「はい、任されました」

 

 頭を下げてお願いしてくるラーバさんに頷いて意思を示す。

 

「アドルさん、同じ神官の子孫として、ダルク=ファクトのこと、お願いします」

 

「はい、この手で決着をつけてきます」

 

 真摯な目でルタさんが訴えかけてくるのを力強い言葉で返す。

 

「アドルさん、勝ってきてね」

 

「ええ、必ず」

 

 最後にレアさんの言葉に送り出され、僕は重い扉の向こう側へ進んだ。




 この投稿ペースは多分第二章までしか維持できなさそう。

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