赤毛の紀行家   作:水晶水

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 現在地はダームの塔11階です。


U.飢えたる奇岩コンスクラード

Main Character:アドル=クリスティン

Location:ダームの塔

 

 

 

 ラーバさんの指示通り、反対側の回廊まで来ると、そこには魔物の顔が掘られている柱が並んでいた。一つ一つそれを見ていくと、殆どはただの魔物型の柱だったが、1本だけ奥の方まで繋がっている穴が空いた柱があった。恐らくこれが管になっているらしい柱なのだろう。

 

「アドル!」

 

 どうしようかと考え込んでいると、僕が来た方とは反対の方からドギさんとルタさんがやって来た。そういえば、ドギさんは牢屋の壁を拳一つで壊していたような。

 

「ドギさん、この柱を壊すことってできますか?」

 

「んん? それは余裕だが、何だってそんなことを?」

 

「ラーバさんが言うには、これを壊さないと先に進めないらしいんです」

 

「なるほど、そういうことなら任せな。おらぁっ!!」

 

 掛け声一つ、ドギさんの鍛え上げられた拳は易々と悪魔の石柱を粉々に破壊した。流石である。

 

「では、ラーバさんの所へ戻りましょう」

 

 独りにしておくのは不味いので、ラーバさんがいた悪魔の部屋まで走って戻っていく。道中、ルタさんとラーバさんは女の子を連行している魔物達に見つかったせいで離れ離れになったのだと教えられた。どうやらまだ他にも人がいるらしい。

 

 

 

 紫色の階層まで戻ってくると、さっきまで流れていた奇妙な音が聞こえなくなっていた。息苦しさも感じないので、風が送られなくなったということだろう。

 

「おーい! こっちじゃ!」

 

 ラーバさんが小部屋から顔を出して呼んでくる。一先ずこの安全な小部屋で今後の方針を話すことにした。

 

「わしは攫われていた女の子を助けるべきだと思うんじゃが」

 

「はい、私もそうした方がいいかと」

 

 僕としても人を見捨てるつもりは無いのでその意見には肯定である。ドギさんも腕を組んで首肯しているので満場一致だ。

 

「どこに連れていかれたのか、心当たりはありますか?」

 

「うむ、恐らくラドの塔に連れていかれたのじゃと思う。しかし、ラドの塔まで行くにはロッドが必要なんじゃ」

 

 聞きなれないワードが耳に挟まる。

 

「ラーバさん、そりゃいったい?」

 

「この階層を抜けた先に鏡の間というのがあるんじゃが、そこを抜けるために必要な物なのじゃ。わしが持っておった分は魔物に奪われてしもうての。この先にあるアドルくんが開ける扉の向こうまで持っていかれるところまでは見たんじゃが……」

 

「では、とりあえずそれを取りに行きましょうか。案内をお願いします」

 

 どうやら、イースの本がある部屋までロッドというものが持っていかれてしまったらしい。

 

 

 

 その後はラーバさんの案内に従って鏡の間と呼ばれる階層まで進んだ。ラーバさん曰く、ここの階段を進んでいった先に例の扉があるらしいので、皆には鏡の間で待っていてもらい、僕は1人で扉の前まで来ていた。

 扉を消して入室すると、部屋のそこら中に瓦礫が転がっていた。そして、部屋の中心には妖しく光る巨大な赤い宝石のようなものが浮いている。それが一際大きく輝いたかと思うと、部屋の瓦礫が浮遊し始め、それがゆっくりと纒わりつくように宝石の周りを回転し始めた。

 回転する瓦礫を避けながら距離を取ると、宝石を中心として球状に瓦礫の鎧を形成した何かが動き出す。これは本当に魔物だろうか……?

 ぐるぐると回転する瓦礫の隙間から宝石が見え隠れする。何というか、なんとも分かりやすい弱点である。しかし、不用意に近づいて攻撃するわけにもいけないので、僕は異空間から長弓を取り出し、矢の代わりにクレリアの剣を弓に番えて、宝石に向けて構えた。意識を落ち着けて撃ち抜くべき一点に集中する。

 

「疾ッ​──────!!」

 

 宝石目掛けて真っ直ぐクレリアの剣が弓から放たれる。剣は高速で回転する瓦礫の間をすり抜けて進み、寸分違わず宝石の中心に突き刺さった。突かれた一点を起点に罅が広がり、やがてそれはバラバラに崩れ去ると、瓦礫ごと灰になって消え失せた。

 長弓をしまいこんで放った剣を拾い上げて、目的の物を回収すべく奥の扉へ進むと、祭壇の上に黄緑色のイースの本と柄が短い杖のような物が置いてあるのが目に入る。それらを手早く回収して、僕は皆が待つ鏡の間へ走っていった。

 




 イース界1弱いと名高い(?)コンスクラードくん。残念ながらこの小説でも一瞬で退場してもらいました(原作でも寿命10秒以下の模様)。武器の貯蔵は十分です。

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