赤毛の紀行家   作:水晶水

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 ボスラッシュ1匹目、ファイッ!!


T.残虐なる鎌ピクティモス

Main Character:アドル=クリスティン

Location:ダームの塔

 

 

 

 まだ大きく距離が空いているにも関わらず、大カマキリが自身の鎌を振り下ろしてくる。嫌な予感に従い大きく横へ転がると、鎌が描いた軌跡の直線上に鋭い斬撃痕が走った。

 

(真空刃といったところでしょうか。遠距離攻撃ができないこちらの分が悪いですね)

 

 続けて飛んでくる真空刃を走って避けながら魔物との距離を詰める。直接打ち合って質量差による力負けは怖いが、どの道僕は近づかなければ倒すことが出来ないのだ。クレリアの性能を信じよう。

 剣の間合いまで侵入し、鎌の直接攻撃を盾で受け流して、大カマキリの脚目掛けて剣を振るう。強力な魔物と言えど、クレリアの剣の前ではその硬さも紙同然のようで、驚くほどあっさり魔物の脚を1本斬り飛ばした。緑色の体液が噴き出し、魔物は痛みのせいかより激しく暴れ始めた。

 滅茶苦茶に振るわれる鎌による攻撃を至近距離で何とか避け続ける。直撃コースはクレリアの剣で上手く角度をずらして弾き、鎌の方にもじわじわとダメージを負わせていった。

 数合打ち合って罅割れた鎌に叩きつけるように剣を振るうと、魔物の鎌が大きな音を立てて砕け折れる。

 

「これでっ!!」

 

 破片が空中に飛び散る中、僕は武器を破壊されて隙を晒した大カマキリの胴体に全力で横薙ぎの一撃を放った。剣は僅かな抵抗もなく魔物の胴体を素通りし、間もなく大カマキリは真っ二つに両断され、灰になって消滅した。

 大きく息を吐いて剣に付着した体液を払うと、休む間もなく奥の扉へ進んだ。扉の向こうにはイースの本が祀られた祭壇が設置されていたので、僕は黄色の装丁の本を異空間に放り込むと、すぐさま幾重もの斬撃痕が残る部屋を後にした。

 

 

 

 戦闘時間は体感数分ぐらいだったが、部屋の外に出ると3人の姿は見当たらなかった。辺りを見回してみると壁や床に強力な力で破壊されたような跡が見受けられる。恐らく魔物の襲撃にあってドギさんが暴れたのだろう。

 来た道を早足で戻っていったが、破壊の跡は上の階へ続いていっているようだった。途中血痕は見なかったので、無事ではあろうとは思いつつも、僕は急いでその痕跡を追っていくことにした。

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

 

 上の階層に進むと、ドギさんの雄叫びが奥の方から聞こえてきた。声の方へ急行すると、狭い通路で立ち塞がるようにして魔物の群れを相手にしているのが見えた。僕は群れの後ろから強襲して一匹残らずこれらを灰に変える。

 

「すまねぇ、アドルが部屋に入った後に魔物が大勢押し寄せてきてな……。守りながらじゃ相手できそうに無かったから2人を先に行かせちまった……」

 

 肩で息をしながらドギさんが何があったかを説明してくれた。

 

「とにかく無事で良かったです。急いで2人に追いつきましょう」

 

「あぁ、そうだな」

 

 ドギさんが息を整え終えてから僕とドギさんは2人を捜索するために走り出した。

 

 

 

 魔物を倒しながら道なりに進んでいると、僕達は分かれ道に直面した。

 

「俺はこっちに行く。アドルはあっちの方を頼んだぞ」

 

「はい、そちらは任せます」

 

 素早くそれぞれの道へ分かれ、再び走り出す。

 更に上の階層へ進むと、何やら今までとは雰囲気が違う紫色の不気味な階層に辿り着いた。入った瞬間から奇妙な音が聞こえ、それのせいか身体に気持ちの悪い感覚が走っていく。

 

「アドルくん!こっちじゃ!」

 

 危うい足取りで何かの部屋の前を横切ろうとした時、中からラーバさんの声が聞こえてきた。声に従って部屋の中に転がり込むと、身体を蝕んでいた感覚が消え去っていく。

 

「すまない、あの後魔物に捕まってしまっての……」

 

「いえ、ご無事でなによりです」

 

 少し血を流しているが、それ以外は特に問題なさそうなラーバさんを見て安堵の息を吐く。

 

「廊下で変な音を聞いたじゃろう?あれは悪魔の曲と言って、外から吹き込まれる風で奏でられているみたいなんじゃ」

 

 僕が渡したヒールポーションを傷にかけながらラーバさんがそう言う。

 

「ここから反対側の回廊にある柱が風を通す管になっているらしい。アドルくん、そこまで行って風を止めてきてくれんか。ここから先に進むにはそれが必要じゃ」

 

 僕はラーバさんの言葉に頷き、ドギさんが登っていった道を目指して部屋から飛び出した。




 やっぱりこのぐらい余裕が無いとボスラッシュキツいと思うんすよ。

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