Main Character:アドル=クリスティン
Location:ダームの塔
「ここです。この石像の間の壁に消えていったんですよ」
牢を脱出してから、僕達は再びあの石像が立ち並ぶだけの階層まで戻ってきていた。ルタさんの話によるとこの階層のどこかにいるらしい。
「消えていった、と言いますと?」
「まるで見えない道があるかのように歩いていったんです。追いかけようと思ったのですが、その直後に魔物に捕まってしまいまして」
見えない道を探す力ならちょうど心当たりがある。僕は異空間からマスクオブアイズを取り出して装着すると、石像と石像の間に奥へと続く道があるのが確認できた。
「ありました。ルタさんこっちです」
ルタさんを先導して壁の中へ入り込むと広い空間に出た。部屋の奥の方に人影が確認できる。恐らくあの人がラーバさんだろう。
「あなたがラーバさんですか?」
「いかにも、わしがラーバじゃが、お前さんたちは?」
「アドルと申します」
「私はルタ=ジェンマです」
それぞれが一先ずは自己紹介をする。
「実はドギさんから、あなたが塔について詳しいとお聞きしまして。あとこれをどうぞ」
「おや、それはわしの偶像じゃないか。ありがとう。お礼に2人にはこれをやろう。邪悪な力から守ってくれるネックレスじゃ。これで塔内のトラップも全て回避できる」
偶像をラーバさんに手渡すと、代わりに青い宝石があしらわれたネックレスをルタさんと僕に渡してくれた。早速首からかけてみる。
「ラーバさん、魔物が大切な何かを守ってそうな部屋は塔内にありますか?」
「そうじゃな……入口に3つ石像が置いてある階層から更に2つ先の階層に何やら大きな扉で固く閉ざされた部屋があったが、もしかしたらそこに何かあるかもしれんの」
扉と聞いて、神殿と廃坑で見たアレを思い出した。多分それだろう。
「そこに何か用があるのか?」
「はい、多分そこに僕が探している物があります」
「ふむ、ではわしも着いて行こうかの。なに、心配はいらん。これは気配を消してくれる代物でな。邪魔にはならんじゃろうて」
そう言って、ラーバさんは得意気に偶像を軽く掲げる。
「分かりました。それでは行きましょうか」
2人が首肯したので隠し部屋から抜け出して再び上を目指した。
2人を護衛しながら3つの石像の階層に辿り着くと、ラーバさんの言う通り、また謎の光を浴びたが今度は気絶することなく先に進むことが出来た。そのまま次の階層まで進むと、青髪の青年、ドギさんが前から現れた。
「何だ、ラーバさん、合流したのか」
「流石に偶像があっても、この老体1人でダームの塔にいるのはな」
既知の仲のようでドギさんとラーバさんが親しげに話している。2人とも塔の中で出会って結構長い付き合いらしい。
「よし、じゃあ俺も着いていくとするか。単身乗り込んできたアドルはともかくとして、他2人は俺も少し心配だ」
「はい、私も借り物の武器はありますが戦いはからっきしですからね」
六尺棒で結構危うい感じで魔物と戦っていたルタさんがドギさんの同行を後押しする。僕としても、本を守る魔物と戦っている間にドギさんが2人を守ってくれるなら安心して戦いに集中できるので、ドギさんの同行を断る理由はない。
「こちらからもよろしくお願いします」
「おう!このドギ様に任せておけってな!」
そう言って、ドギさんはドンと自身の胸を拳で叩いた。体躯も合わさって実に頼もしい。
ドギさんも加えて更に上の階層へ進むと、ラーバさんが言っていた豪奢な造りの扉の前まで辿り着いた。やはり例の扉で間違いないようだ。
「ここじゃな」
「では行ってきます。ドギさん、2人をよろしく頼みますね」
「任せとけ」
「アドルさんもお気を付けて」
手で触れて扉を消し、3人に見送られながら奥へ進むと、巨大なカマキリ型の魔物が奥の扉を守るようにして立ち塞がっていた。
魔物は僕を視界に入れると威嚇するように声を上げ、鎌を振り上げてくる。それに応えるようにしてクレリアの剣と盾を構えた。
ダームの塔における、イースの本を守護する魔物との第一戦が幕を開ける。
内容自体はは弄っていませんが、全話読みやすいように訂正しておきました。