赤毛の紀行家   作:水晶水

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 不定期更新らしからぬ更新速度。


O.ロダの樹

Main Character:アドル=クリスティン

Location:草原街道

 

 

 

 翌朝、レアさんの言う通りに僕はロダの樹のところまで来ていた。下から見上げると首が痛くなってくるなと思っていると、風が吹いてもいないのにロダの樹の葉がさざめいた。

 

《ふむ? どうやらお前は植物が理解できるみたいだね》

 

 さざめきに混じって何かの声が聞こえてくる。

 

《私の名前はロダ。お前の名前は?》

 

「僕はアドルといいます」

 

 どこに耳の働きをする器官があるのか分からないので、普段よりも少し大きな声でロダの樹に返事をした。

 

《アドル、お前はここから南にいる私の弟の元に行くといい。そこに君の力になる物が埋まっている》

 

「それは何なのでしょうか?」

 

《はるか昔、イースの時代に生み出された物だよ》

 

 イースの本か、あるいはそれに準ずる物だろうか。まあ行けば分かるだろうし、一先ずはロダの樹(兄)の言う通りにロダの樹(弟)のところへ行くとしよう。

 

 

 

 指示通りに南下し、僕はもう1本のロダの樹の前までたどり着いた。木の根元に立つと、兄の樹の時と同じように弟の樹の葉もさざめき始める。

 

《兄者から話は聞いている。勇者よ、少し私の話に付き合ってくれるか?》

 

 ロダの樹からの問いかけに、僕は大きく首肯して応えた。

 

《勇者よ、今エステリアにイースの時代が甦ろうとしている。イースの災いがエステリアの地に降り立ち、その大いなる魔の力はやがてエステリアだけでなく世界中を絶望に叩き落とすだろう。故にだ、勇者よ、これを持っていけ》

 

 ロダの樹がそう言うと、それと同時に彼の根元から眩い銀色の光が溢れ出した。あまりの眩しさに手で顔を隠す。徐々に光が収まり、光の中身がその姿を現した。光を放っていたのは銀の剣だった。

 剣先が少し反り返った片刃の片手剣を手に取り、素振りをして具合を確かめるが、妙に手に馴染むような気がした。

 

《世界を襲う悲劇を救えるのはお前だけだ。残りのイースの本はダームの塔に隠されている。往け勇者よ、今こそ旅立ちの時である!》

 

 その言葉と共に一際大きく葉を揺らし、それっきり、ロダの樹が語りかけてくることは無かった。

 6冊全て集めたらどうなるのかは分からないが、時間もあまり残されていない以上、早いところダームの塔に行ったほうがよさそうだ。

 塔ではこれまでにないぐらいの激闘を繰り広げることになるだろう。しかし、死ぬわけにはいかない。世界のことやまだ見ぬ冒険、そしてフィーナさんとの約束のこともある。僕はより一層気を引き締めて、天高くそびえ立つダームの塔を見やって、ロダの樹の下を離れた。

 




 シルバー装備が揃いました。

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