(今ここで答えるのは、いくらなんでも早すぎるな。)
少しの間考えた結果、俺はとりあえずすぐに答えるのはやめておくことにした。そもそも、俺が一之瀬とあったのは今日の朝なのにも関わらず、ここまで関係が進むのもおかしな話だろう。確かに俺は一之瀬のことが好きだが、ここで答えるのはリスクが大きすぎる。もっと後でもいいはずだ。
「何とも言えないな。俺たちは今日出会ったんだ。すぐに答えは出せないぞ」
「うん、そうだね~。いくらなんでもこの質問は早すぎたかな。変なこと聞いてごめんね」
「いや、別に気にしてないから大丈夫だ。話は変わるが一之瀬はどうしてこの学校に入ったんだ?」
「私?そうだねぇ~、やっぱり将来を保証してくれるところが大きいかな。それに、自分の力を試してみたかった しね。この学校は実力至上主義の学校、だからこそ正当に自分が評価されるだろうしね。君はどうして?」
「俺は……平穏を求めてだな。この学校は三年間外部からの接触を断てるだろ?俺はこの校則を求めてこの学校に入 学したんだ」
「平穏を求めて?何かこの学校に入っる前にあったの?」
「いや、そういう訳ではないんだがな……」
俺としたことが、少し一之瀬に話しすぎたようだ。俺の過去はあまり他人に知られる訳にはいかない。それでは平穏な生活を送ることができなくなってしまう。しかし、ここで話しをやめるのも逆に怪しまれるかもしれない。俺はどうするべきなのだろうか……
「どうしたの綾小路君?何か話したくないことでもあった?」
(やばいな、顔に出ていたか。これじゃあいよいよ誤魔化せなくなるぞ)
「お話し中のところすまないが、注文の品を持ってきたぞ」
危うく誤魔化せなくなるところだったが、ちょうど良いタイミングに料理がきてくれた。それにしても、思っていた以上にボリュームがあるな。値段が安かったから、もっと少ないと思っていたんだがな。
「おいしそうだな。冷めると勿体無いし、とりあえず話す前に食べようか」
「そうだね。それじゃあ食べよっか。いただきます!」
今、綾小路君が話をそらそうとしていた気がする。何か話したくなかったことでもあったのかな?けれど、平穏を求めてか~、両親との関係が悪かったりしたのかな。とりあえずは触れないでおこう。それにしても、このカルボナーラはおいしいな。麺がしっかりしてて、ソースも濃くてすごくおいしい。
「このお店、すごくいいね。料理もおいしいし、景色もきれいだしね」
「ああ、オムライスもすごくおいしいぞ。少し食べてみるか?」
「うん!もらうことにするよ」
そう言って一之瀬は俺のスプーンをとってオムライスを食べた。
「確かにおいしいね。綾小路君と一緒に来れて嬉しいよ」
「ああ、俺も嬉しいよ。そういえば、俺の使ったスプーンそのまま使ってたけど良かったのか?」
「いや?別に気にしてないけど、もしかして嫌だった?」
「一之瀬が気にしてないなら別にいいぞ」
(いきなり俺のスプーンをとったから、何をするのかと思ったがそのまま使うとは思わなかった。こっちは間接キスかとかなり驚いたのだが一之瀬はあまり気にしていないようだな)
「そうだ、綾小路君もこれ食べてみる?」
一之瀬がカルボナーラを差し出してきたのありがたくいただくことにする。少し食べてみたが、ソースの濃さがほどよく麺が細いので俺好みの味だった。本当にここに来て正解だったな。この後は一之瀬と一時間ぐらい話した後、それなりの時間になったので俺たちは店を出て寮の前で別れることにした。
「それじゃあね~、綾小路君。また明日!」
「また明日な。」
寮の前では一之瀬とはあまり話さずに、すぐ別れた。それにしても、入学初日から色々なことがあったな。これが一日とは到底思えない。明日からはこの学校での生活が本当の意味で始まる。俺はこの先上手くやっていけるのだろうか。不安が尽きることはないが……、一之瀬がいるならどうにかなりそうな気がした。
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