『ありがとう』をキミに   作:ナイルダ

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オリジナルの設定をここで1つ。
それは腐川のもう1人の人格であるジェノサイダー翔のことです。
原作通りの設定だと平和な世界では普通捕まるだろうと思ったので、無理矢理設定を付けて捕まらないようにしました。


chapter2 週刊少年ゼツボウマガジンⅢ

ーー苗木視点ーー

 

2回目の学級裁判は腐川のもう片方の人格の露呈というハプニングがあったものの、石丸以外が大和田をクロとして決着した。

 

腐川の〝知られたくない秘密〟は、〝正義の殺人鬼 ジェノサイダー翔〟でもあることだった。

〝ジェノサイダー翔〟は、法で裁くことの出来ない極悪人や、本来死刑を言い渡されるような指名手配犯などを殺して回っていることで世間では有名だった。

そして〝この事〟を知っていたのは、78期生では苗木、十神、霧切、あとは学園上層部だけであった。

実際に殺人を行っているわけだが、彼女が捕まっていないのは〝解離性障害が認められたこと〟や〝重罪人のみを殺していたこと〟などが大半の理由である。

〝希望ヶ峰学園 特別科の生徒である〟ということも、理由の1つであったが…。

そんな翔の人格は、希望ヶ峰学園入学以降は〝とある事件〟と関わるまでなりを潜めていた。

十神を巻き込み〝腐川の心の闇〟と向き合った苗木は、腐川自身の人格と翔の人格とを折り合わせることに成功した。

しかしこの件も、色々とストーリーがあったわけだが…それはまた別の機会に話すとでもしよう。

 

 

そんなこんなで決着した裁判。

モノクマが正解だと告げたことにより、大和田が今回のクロであると確定した。

 

「…ということで、不二咲千尋クンを殺したクロは…大和田紋土クンでしたッ!!」

 

この数日で大和田とより仲を深めた石丸は、尚も抗議を続けている。

 

「この裁判は、どこか決定的に間違っているッ!

兄弟が人を殺すはずがないッ!!

兄弟も何か言ったらどうだッ!!」

 

石丸が大和田を揺すっても、彼は反応を示さない。

 

「うぷぷ…じゃあ、何も喋らない大和田クンの代わりにボクが話そうかな!

どうして今回の事件が起きてしまったのかをッ!!」

 

モノクマは大和田をよそに話を進めていく。

 

 

「あるところに1人の少年がいました。彼は男であったものの、とても小さく、か弱かったのです。そして彼はこの事をコンプレックスに思っていました。

弱い弱いと言われ続けた彼が自身を守るためにとった行動は、より弱い殻の中に自分を隠すことだったのです。

それは、〝女装をし、女として振る舞うこと〟でした。

女として振る舞うことで、彼は〝男のくせに〟などと言われることはなくなりました。

しかし、彼は自分で入った殻の中から出ることを、極度に恐れるようになりました。

殻を破ってしまえば、また辛い世界が彼を待ち受けているからです。

そして、コロシアイ学園生活でついに、その秘密が明かされてしまう事態になったのですッ!

彼はこのまま〝絶望〟するはずでした…。

しかし!生意気なことに彼は、今回の動機をきっかけに変わろうとしたのですッ!

彼はその日から行動に移しました。

それは体を鍛えること、そしてその相手に選んだのは…、彼が目指す男らしさを兼ね揃えていた大和田クンだったのです。」

 

 

未だにうつむき続ける大和田だが、かすかに肩を震わせている。

モノクマは一息つき話を変える。

 

 

「そしてまた、あるところに1人の少年がいました。

彼は荒んだ家庭の中で唯一信頼できる兄の影響を受け、暴走族として生きていました。

あるとき、リーダーであった兄が引退することになり、二代目として彼が新たなリーダーとなることが決まりました。

兄の背中を追い続けることしかしてこなかった彼…、チーム内で囁かれる彼の評価…。

様々なことが大きな重圧となり彼を襲いました。

そして、〝弱かった彼〟がとった行動は、偉大な兄に勝つこと。

そして行われた二人きりのバイクレース。

〝強くありたかった彼〟は勝利に拘るあまりに無茶な走りをしました。

そんな彼の目の前には大型のトラックがッ!

しかし、彼は生きていました。

兄に庇われ、生きてしまいました。

そう、彼は実の兄を殺したのですッ!

レース後、彼は事実を捏造し〝偽りの強さ〟という殻の中で生き続けることにしたのです。

そして、コロシアイ学園生活でついに、その〝偽りの強さ〟が露呈してしまう事態になったのですッ!

〝弱い〟彼は何をするでもなく、ただ事実から逃げ続け、〝絶望〟することしか出来ませんでした。

しかし、そんな彼の元へとやって来た小さな少年がいました。

少年は彼に…知られたくないであろう、ずっと隠し続けてきた秘密を打ち明けたのですッ!

彼は思いました…、目の前の小さな少年は、自分よりも〝強い〟のだと。

逃げ続けることしか出来ない自分と変わろうと覚悟を決めた少年。

彼らは、お互いが望むモノをそれぞれもっていたのです。

〝強い肉体〟を持った彼と、〝強い心〟を持った少年。

彼は少年の持つ〝強さ〟に嫉妬しました。

そして…、今回の事件が起きてしまったのですッ!」

 

 

一通り話し終えたモノクマ。

すると、今まで沈黙していた大和田が口を開ける。

 

「……そうだ…、俺は〝弱い〟。弱いから…不二咲を殺しちまった…。」

 

「嘘だッ!嘘だ嘘だ嘘だッ!兄弟が…そんなことをッ!」

 

罪を認めた大和田。

しかし石丸は抵抗し続ける。

そんな中、霧切が話し始める。

 

「大和田君は…、それでも彼と交わした〝男の約束〟を守ろうとしたんじゃないかしら…。

あのまま男子更衣室で死体が発見されれば、彼が男であるとすぐにバレてしまう…。

だから現場の移動を行った…。」

 

霧切の質問とも言える言葉に、大和田が返事をすることはなかった。

 

「うぷぷ…。それじゃあ始めようかッ!おっしおっきターーーイムッッ!!」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

バイクに乗り、手足を拘束される大和田。

その操縦席にモノクマが現れ、乱雑に運転を開始する。

猛スピードで球状の鉄格子に突入し、そのまま回転するバイク。

そして、鉄格子が光り始め中の様子は見えなくなる。

 

暫くして、発光を終えた鉄格子の中には…、バイクのみが残されていた。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

撮影の完了を告げる校内放送をきっかけに、正面玄関に移動を始める生徒達。

重い空気の中、苗木は考える。

 

(頼むから2人とも無事でいてくれ…ッ!)

 

苗木は必死に願いながら学園の外へと歩みを進める。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

学園の外に出ると、怯えた表情の不二咲と、驚いた表情の大和田がいた。

 

(よかった…。2人とも無事みたいだね…。)

 

安堵した苗木と生徒達は2人に近づいていく。

江ノ島を除く15人が集まる。

しかし、その場は沈黙が支配していた。

そんな中、口を開いたのは舞園だった。

 

「ほら…、不二咲君…。きっと大丈夫…。

私や桑田君にだって話せたんですから…!」

 

「そうだぜッ!そんなちっせーこと気にするヤツは、オレが殴ってやるからよッ!」

 

2人に背中を押され、涙ながらに話し始める不二咲。

 

「ご、ごめんねぇ…、今までみんなを騙してて…。

気持ち悪いよね…、こんな格好をした男の子なんて…。」

 

声がか細くなり、うつむいてしまう不二咲。

そんな不二咲に声をかける苗木。

 

「不二咲さん…いや、不二咲クン…かな?

あはは…、どうやって呼ぼうか迷っちゃうね…。

でも、ありがとう…。ずっと秘密にしてきたことを打ち明ける…、とても勇気が要ることだと思うよ…。

そして、それが出来た不二咲クンを…ボクは尊敬するよ。」

 

苗木の言葉に顔を上げる不二咲。

 

「気持ち悪くないの…?」

 

不二咲の発言に、今度は他の生徒達が声をかけていく。

 

「ふん、お前が女だろうと男だろうと、世界に与える影響などたかが知れている。

気にするまでもない。」

 

「あらあら…、相変わらず素直じゃありませんこと。

しかし、すっかりわたくしも騙されてしまいましたわ。

ふふっ…、案外ギャンブルが強かったりするかも知れませんわね。」

 

「男の娘…ktkr!!僕は二次元にしか恋しませんが…、萌えるッ!凄く萌えますぞッ!!」

 

「ちょっとどいてよねッ!あぁ、不二咲ちゃん!私も全然気にしないよ!」

 

「朝日奈よ…、不二咲は女扱いされるのが苦手なようだが、呼び方を変えた方がいいのでは…。」

 

「ああ!ごめんね、どうやって呼ぼうかなぁ。」

 

「ありがとう、朝日奈さん…。呼び方は変えなくても大丈夫だよ…!」

 

泣き顔から笑顔へと変わり、他の生徒とも話していく。

不二咲と話し終えた苗木は、舞園と桑田の元へと移動する。

 

「2人ともありがとね…、不二咲クンのこと。」

 

「当然のことをしたまでですよ!ありのままを受け入れる。

苗木君が私にしてくれたことです…。」

 

「しっかし驚いたなぁー。マジで女子だと思ってたぜ。

まっ、不二咲は不二咲ってことだな。馬鹿なオレにはこれで十分だ。」

 

撮影も終了したとあってガヤガヤとした雰囲気であったが、不二咲が大和田の前に来ると、次第に静かになっていく。

 

「あ、あのね…。大和田君………」

 

言葉に詰まる不二咲。

しかし、大和田が話し出す。

 

「俺はてっきり…、本当に不二咲を殺しちまったのかと思ってたぜ…。

生きていてくれて…よかった…。

また取り返しの付かねーことをしちまったのかと……。

いや…ダメだな…。俺はこんな事になってからも…自分の心配ばかりだ…。」

 

拳を握りしめ、うつむく大和田。

そんな大和田に不二咲は言う……

 

「ねぇ…、大和田君…。

大和田君はチームのみんなに嘘をついていたかも知れない…。

でもさ…、大和田君が率いたチームが日本一になったんでしょ?

それはきっと…、大和田君だから出来たことなんだと思うよ。

みんなが信じたのは〝偽りの強さ〟だったのかも知れない…。

だけど…、大和田君なら…その〝偽りの強さ〟を〝本物の強さ〟に変えることが出来ると思うよ…!

だから、ボクと一緒に少しずつでも頑張っていこうよ…。

そうすればきっと…、いつの日か…お兄さんと向き合える時が来ると思うから…。」

 

大和田の頬には一筋の涙が伝う。

そして、声を震わせながら大和田は告げる。

 

「やっぱりオメーはつえーよ。

オメーに酷いことをしちまった俺でも…、そんな俺でも…どうか力を貸して欲しい…ッ!

都合がいいかもしれねぇ…、だけど…俺が〝本当の強さ〟を手に入れる為に、手を貸してくれないか…ッ!」

 

大和田は深々と頭を下げた。

そして、不二咲はーーーーー

 

 

 

 

 

「もちろん…、一緒に頑張ろう。……〝男の約束〟だよッ!」

 

 

 

 

 

先程の『変わりたい』という発言はどこへやら、特別可愛らしげに返事をするのであった。

2人の会話を聞き、穏やかな雰囲気に包まれる一同であったが、それは石丸の号泣によって壊される。

 

「うおぉぉぉおおお!!!!

僕は今…モーレツに感動しているッ!!!

2人とも!僕に出来ることがあるのなら、いつでも言ってくれ!

助力は惜しまないぞッ!!!」

 

 

 

 

 

そして笑顔が溢れるその場所に、学園の中から歩いてくる人影が1つ。

 

 

 

 

 

chapter2 END




ーーウサミよりーー

ミナサン!こんにちはでちゅ!
今回はミナサンの絆が深まったようで、先生はとても嬉しいでちゅ!
それでは、お仕事をしていきまちゅ!


以下ウサミファイルより抜粋

・ジェノサイダー翔は〝正義の殺人鬼〟と呼ばれている。

・ジェノサイダー翔は希望ヶ峰学園の力により黙認されている模様。

・chapter2の撮影が完了する。

・不二咲千尋、大和田紋土は存命。


それではミナサン!また今度も会いに来てくだちゃいね!

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