ーー苗木視点ーー
モノクマは〝動機〟について話し始める。
「えー…今回の動機のテーマは…、〝恥ずかしい思い出〟や〝知られたくない過去〟です!
人間生きて生きていれば誰しも、そういうことの二、三はあると思うけど……。
今回はボクの独自の調査により、オマエラのそんな思い出を集めてみましたッ!」
そう言うとモノクマはそれぞれの名前が書かれた封筒を取りだし、床へと放り投げた。
それを拾う生徒達。
(一体何が書かれているんだろう…。)
恐る恐る中を確認すると、そこには……
〝苗木クンは小学校5年生の時にイジメられていた〟
(そう言えば…、そうだったっけ…。)
少し昔を思い出す苗木。
一方で封筒の中を見た生徒達は、一様に驚いた反応を示していた。
モノクマはそんな生徒達に構うことなく喋り続ける。
「タイムリミットは24時間でーす!!
それまでにクロが出ない場合は……。
この恥ずかしい思い出を、世間にバラしちゃいますッ!
キャー、ハズカシー!!」
そう言うモノクマに生徒達は、
「それが…お前の言う〝動機〟か?」
「そうだけど?」
「確かにバラされたくないけど…、こんな事でボクらは人を殺したりなんてしないぞ…ッ!」
「そうだ!実にくだらないな!」
「そんなぁ…、せっかく用意したってのに…。
はぁ~あ…残念、残念…。
じゃあ、24時間後に、この秘密をバラして自己満足に浸るとするよ…。」
落胆した様子のモノクマはどこかへと消えていった。
その後、秘密を言い合うことで殺人を阻止しようと石丸が提案するが…、
「あ、あたしは嫌よ。話したくない…。ゼッタイに…ッ!」
「わたくしも…話したくありませんわ…。」
「同感だ…。話す必要などない…。」
拒否を示す生徒達。
不二咲もまた、拒む様子を見せる。
「ごめんなさい…今は話したくない…。
で、でも…このままじゃダメだけど…、後できっと話すよ…。
頑張って…強くなって…、みんなに話すから…。」
少し様子のおかしい不二咲を朝日奈が励ます。
「ここまで反対されちまったら…いくら兄弟でも…却下せざるを得ねーな…。」
顔をうつむかせ、様子をうかがい知れない大和田も否定の意を示す。
石丸は渋々といった表情で諦めた。
そこへ、夜時間を知らせる校内放送が流れる。
***
自室に戻った苗木は、先程のことを考えていた。
(知られたくない過去か…。
ボクの〝コレ〟を知っているのは江ノ島さんくらいだろう…。
舞園さんにだって話していない、〝ボクの小学生時代〟…。
何度か聞かれたけど、話すような内容じゃないしね…。
まぁ、どうしても話せないってわけじゃないんだけど…。
それにしても、これがシナリオ通りなら殺人が起きるのか…。
本当にこんな事で…?)
そんなことを考えながら、苗木は眠りにつくのであった。
*****
ーー大和田視点ーー
モノクマが投げ捨てた封筒を拾い、中を確認する大和田。
そこには……
〝大和田クンは実の兄を殺した〟
封筒の中には、短くそう書かれた紙切れが入っていた。
chapter1の撮影後、1度リセットされた大和田の思考はまたしても乱れ始める。
(ど、どうして…ッ!〝コレ〟は…俺しか知らねーはずだッ!!)
大和田の頭の中を〝兄を殺した〟という言葉が反響する。
しかし、モノクマの爆発の際に見せた程の動揺はなかった。
あのときは、久しぶりであった事と不意打ちであった事により完全に我を失ったが、今回は違った。
どうにか踏みとどまった大和田は、さらに仲が深まった石丸の意見に言葉をもって否定する。
(わりーな…兄弟…。コレだけは…どうしても…。)
以前程の混乱はしていない大和田ではあるが、冷静ではないのは確かであった。
***
ーー不二咲視点ーー
不二咲はモノクマが投げ捨てた封筒を拾い、中を確認する。
〝不二咲は男の子である〟
そう書かれた紙切れが封筒には入っていた。
学園の関係者で〝この秘密〟を彼自身が話したのは学園長だけであった。
彼は1年もの間〝この事〟を隠し通していた。
何度か怪しい場面はあったが、それでもクラスメイトに知られることはなかった。
なぜ江ノ島が知っていたかと言えば、〝あの事件〟のときに学園長室で不二咲のプロフィールを見たからである。
(ど、どうしてぇ…。この事は秘密にしてくれるって言ってくれたのに…。)
不二咲は学園長がコレを用意したと思い込んだが、その予想は外れていた。
(24時間以内に殺人が起きないとバラされちゃう…。
でも…これはチャンスかも…。
たとえ、みんなに知られちゃっても…これを機に…ッ!)
不二咲は変わろうとしていた。
どうしても自分から言い出すことが出来なかった〝秘密〟。
きっかけはともかく、不二咲はついに覚悟を決める。
江ノ島の台本では、彼が事件において2人目の犠牲者になることは確定事項ではなかった。
あくまで大和田と不二咲に狙いを絞っただけに過ぎず、今回の動機で殺人が起きるかは、江ノ島をもってしても不確定の未来であった。
だが、江ノ島の予測は外れることなく的中する。
*****
ーー???視点ーー
夜の男子更衣室。そこには2人の生徒がいた。
「ご、ごめんねぇ…。待たせちゃった…?」
「いや…問題ねぇぞ…。」
元々更衣室にいた少年は、たった今入ってきた生徒に若干の違和感を抱く。
(あぁ…?男子更衣室には男しか入れねぇはず…。)
そんな違和感は、後に入ってきた少年の告白により解消される。
***
(男…だったのか…。)
「どうして…、俺にそんなこと言ったんだよ…。秘密なんじゃ…なかったのかよ…。」
「変わりたいんだッ!これを機に…〝弱い〟自分からッ!」
小さな少年はそう言うと、大きな少年に背を向け運動する準備を始める。
一方でそれを聞いた少年は、押し黙ったままであった。
しかし、その少年の手にはしっかりと…、ダンベルが握られていた。
(変わりたい…か…。
オメェは〝強い〟よ…。
嘘をつき続ける俺よりも…今も過去から逃げ続ける俺よりもッ!!)
少年は無意識のうちにダンベルを振り上げていた。
そして……
(気が付いたら俺は倒れていた。
体を起こして辺りを見回すと、そこには『血まみれのアイツ』がいた。
何度声をかけても、何度揺すっても…、ソイツは目を覚まさねぇ…。
俺は…取り返しの付かないことをしちまった…。)
呆然としていた少年であったが、暫くして再び動き出す。
〝男の約束〟を守る為に。
*****
ーー江ノ島視点ーー
「あーあ…、まぁいいか…。
にしても…、アイツらに的を絞ったものの、ここまで上手くいくとは…。
予想通り過ぎて絶望的なんですけど…。
はぁ…学級裁判の準備でもしとこ…。」
一部始終を見ていた江ノ島であったが、彼女は平然と作業を進めていく。
*****
ーー苗木視点ーー
翌朝、苗木はモノクマの声で目を覚ました。
「直接現れて…、何の用なの…。」
眠そうな苗木であったが、モノクマの言葉を聞き急激に覚醒していく。
「いいの~?そんなに落ち着いていて…。クラスメイトの誰かに、何かあったみたいだけど…。」
少し焦った苗木であったが、落ち着きを取り戻す。
(何かあったって…、殺人かな…?でもどうせ人形だろ…?)
しかし、モノクマの去り際の発言に動揺を隠せない。
「言っておくけど…、今回〝ボクは〟人形なんて用意してないからね…。うぷぷ…。」
それは苗木にしか聞こえない声量であった。
***
慌てて食堂へと向かうと、そこには、葉隠、朝日奈、大神、十神がいた。
暫くモノクマが言っていたことを話し合い、学園の探索を始める一同。
苗木は色々な所を調べた後、更衣室へと入ろうとした。
(あれ…?ロックが外されてる…。)
すると、校内放送より捜査のためにロックを外していると告げられる。
遅れて入ってきた十神がモノクマの発言を確かめるべく、女子更衣室のドアを開ける。
そこには……
『血まみれになり、磔にされた不二咲千尋』
が確かに確認できた。
先程のモノクマの発言と、目の前の光景とがゴチャゴチャになり、苗木は無意識のうちに悲鳴を上げる。
***
苗木の悲鳴を聞きつけ、更衣室に入ってくる石丸。
すると、死体発見アナウンスが鳴り響く。
暫くして生徒達は、女子更衣室に磔にされた不二咲の周りを取り囲むように立つ。
遅れてきた腐川が血を見た瞬間に倒れ、突如口調が変わった様子で再起動したが、朝日奈と石丸に付き添われその場を後にする。
そしてモノクマが例のファイルを配り終えると、いよいよ捜査が始まった。
その前に、モノクマによって『同一のクロが殺せるのは2人まで』という校則が追加されたが、苗木は前回同様に捜索をしていく。
***
(今回の捜査…、十神クンに振り回されるし、何だか疲れたよ…。
それより、霧切さんに不二咲さんのことを聞いても、人形かどうか教えてくれなかったし…。もし本物だったら…。)
一定時間が経過し、エレベーターに集合する旨を伝えるアナウンスが流れる。
赤い扉の部屋に苗木がく着くと、腐川以外が既に集合していた。
その後、モノクマが腐川を引きずってくる。
そして一同はエレベーターへと乗り込む。
そして、二回目の学級裁判が今始まるーーーーー
ーーウサミよりーー
ミナサン!こんにちはでちゅ!
ついに起こってしまった2回目の事件…いったいどうなっているんでちゅかね…。
それはそうと、お仕事をしていきまちゅ!
以下ウサミファイルより抜粋
・苗木は小学生時代にイジメにあっていた。
・大和田は過去を克服出来ていない。
・不二咲千尋は男子である。
・〝不二咲千尋〟の死体は本物?
・江ノ島は不二咲の人形を用意していない模様。
それではミナサン、また今度も会いに来てくだちゃいね!