ーー苗木視点ーー
(chapter1の撮影が終わり、今はchapter2の撮影の真っ最中だ。
裁判場を去るときにモノクマが言っていた通り、ボクの部屋にあった舞園さんの人形も傷ついた床や壁も元通りになっていた。
そしてそのことをみんなに報告すべく食堂に向かい、今に至る。)
「な、苗木。どうだった?」
「部屋を見るだけだというのに遅いではないか!!」
「ご、ごめん。でも本当に元通りになってたよ…。まるで何もなかったみたいに…。」
苗木を励まし、これからもっと協力していけばいいと言う朝日奈。
しかし十神は……
「気休めにもならんことを言うな…。既に殺人は起きた。
次からはもっと簡単に裏切るヤツが出てくる。」
「舞園さやかが…口火を切ったせいでね…。」
その後、話し合いは黒幕の存在へと切り替わる。
「黒幕は、当初わたくし達が考えていたよりも、ずっと強大なようですわね…。」
「こんな手の込んだ舞台を用意し…、ただの異常者でないのは明白ですわ。」
「どうしてもここから出たいなら、俺達はヤツのルールに従い、他の誰かを騙して勝つ…それしかないということだ。」
しかし、いつも通り弱気な不二咲は……
「もう人を殺すなんて、ボクには出来ないよ…。
桑田君は、みんなが投票したせいで死んじゃったんだよ…。」
本気で弱気になっている不二咲。
それを受け、どうにか励ます一同。
そのとき、校内放送が夜時間を告げる。
しかしいつもと違いモノクマが喋り始める。
「先ほどのオマエラの会話には、責任を転嫁する人間の浅ましさが…見え見え隠れ見え見え…ぐらいに丸見えでした!
人が人を裁く責任は重いんだ!
秩序は、犠牲と責任の上に成り立つんだからねッ!」
そう言うと、放送はプツリと切れた。
モノクマに文句を言いつつ生徒たちは食堂を後にする。
***
翌朝、モノクマのアナウンスにより生徒達は体育館へと呼び出される。
全員が体育館に集まると、唐突に始まるラジオ体操。
石丸だけが律儀な反応を返す。
「はぁ~いい汗かいたねッ!」
そんなモノクマに、大神は呼び出しの理由を問う。
「それで…、このためだけに我らを呼んだのではあるまいな…。」
「このラジオ体操はただの体操じゃないのに…、まぁいいや!!
えー、それでは発表します!
この学園は、学級裁判を乗り越える度に〝新しい世界〟が広がるようになっております!
オマエラみたいなシラケ世代には、適度に刺激を与えてやらないとねッ!
てなわけで…、探索は自由だから、学級裁判後の世界を見てくるといいよッ!」
それだけ言うと、モノクマは消えていった。
その後、生徒達は学園を探索するために別行動を開始する。
***
苗木は、新しく移動可能となった2階に来ていた。
(学園内の構造自体は変わってないか…。なら、図書室から調べてみるか。)
そして図書室に着くと、十神、霧切、山田、腐川がいた。
(うわっ…、なんだか埃っぽいな…。)
図書室は、時間の経過を再現すべく実際に埃っぽくなっていたようだ。
(相変わらず無駄に拘ってるなぁ…。)
呆れ半分に図書室を調べ始める苗木。
そこには希望ヶ峰学園事務局からの手紙と壊れた旧式のパソコンが確認できた。
「この手紙…。」
「どうやら希望ヶ峰学園は既に、学校としての役割を終えているようね…。
埃の被り方からして、かなり前のモノのようだけれど…。」
「黒幕は無人と化した学園を乗っ取り、この妙な舞台を作り上げたわけか…。」
(うーん……なるほど…。
これはボク達の記憶が失われている間に起きたってことか…。
それと、ここにある〝深刻な問題〟ってなんだろう…?)
苗木は手紙から推測できる情報をまとめ、図書室を後にし更衣室へと足を向ける。
そこには、プールを前に興奮状態の朝日奈がいた。
他にも、セレス、不二咲が同伴している。
テンションの高い朝日奈をよそに、更衣室に入ろうとするとモノクマが現れる。
「更衣室に入るには、電子生徒手帳が必要だよ!
ドアの横にあるカードリーダーに生徒手帳をかざしてね!
ただし、男子の生徒手帳で入れるのは男子更衣室のみ…、女子の生徒手帳で入れるのは女子更衣室のみとなっておりますッ!」
モノクマと朝日奈、セレスのやり取りから、いかなる手段でも男子が女子の更衣室に入ることは出来ないことが判明する。
その逆もまた然り。非常時は除くらしいが…。
そして校則にも『電子生徒手帳の他人への貸与禁止』の追加が決定した。
その後、モノクマは去っていった。
「あ~あ…アイツのせいで上がった気分が台無しだよ…。
気分転換にひと泳ぎしてこーかな…。
セレスちゃんと不二咲ちゃんも一緒にどう?」
セレスと不二咲がやんわりと否定の意を告げ、その場はお開きとなる。
***
調査を終えた一同は、食堂に集まり結果報告をしていた。
「諸君ッ!新しい発見はあったか!?」
「図書室がありましたぞぉッ!」
「プールもあったよッ!トレーニング機が充実した更衣室もッ!」
「だが、出口らしきものは無かった…。」
「そうか、では僕の大発見を聞きたまえ…なんと、閉鎖されていた倉庫と大浴場が入れるようになっていたのだッ!」
結局、出口がなかったことを確認しその場は解散となった。
***
夜時間を告げる放送がかかると、苗木はベットに横になる。
(また暫くはここに泊まり込みかぁ…。
前回は騙されちゃったけど、今回は騙されないからな…ッ!)
決意を新たにし、苗木は眠りについた。
***
翌日、校内放送にてモノクマは朝であることと、校則が追加されたことを告げた。
そんな放送をよそに苗木は食堂へ向かうと、十神と石丸以外が集合していた。
「あれ…、石丸クンは?」
「石丸君でしたら、遅刻魔の十神君を呼びに行きましたわ。」
石丸を待つ間に、セレスと山田のあいだで紅茶に関するひと悶着があったが、そうこうしている内に食堂のドアが開く。
そこに立っていたのは1人であった。
「あれ…十神クンは?」
「それが、何回インターフォンを押しても出てこないのだ…。もしかしたら彼の身に…。」
石丸の報告を聞いた後、一同は十神を捜すために食堂を後にする。
***
苗木が図書室のドアを開けると、そこには優雅にコーヒーを飲みながら読書をしている十神がいた。
時間がたつにつれ続々と図書室に集まる生徒達。
「十神くん!こんな所にいたのかッ!」
「俺が何をしていようと俺の勝手だろう…。」
「何を…読んでたの?」
「推理小説だ…。」
「も、もしやッ!そのトリックをッ!」
「馬鹿を言うな…。俺が勝負をするときは、俺のオリジナルを使うさ。」
コロシアイをゲームだと言い切り、負ける気など微塵も見せない十神。
十神は周りを挑発しながら話を進めていく。
「兎に角、お前らも本気でこのゲームに参加するんだな。でなければつまらんからな…。」
そんな十神に不二咲は食い下がる。
「そんなの……ダメ…だよ…。」
「なに…?」
「こ、これは人の命が…かかってるんだよ?」
不二咲は、これが映画撮影であるとわかった上で発言していた。
彼…、いや、彼女はとことん平和主義らしい。
「俺達は仲間同士ではなく、競争相手なんだぞ…。」
「で…、でも…。」
不二咲の弱気な態度にイラつきだす十神。
「言いたい事があるならハッキリ言え。何もないなら黙っていろ。」
「……ご、ごめんなさい…。」
ついに黙ってしまった不二咲の代わりに、今度は大和田が十神に突っかかる。
「おい…そんなに弱い者いじめして楽しいか!?胸クソわりーんだよ…!!」
恫喝する大和田をものともせず、十神はひとしきり挑発して図書室から出て行った。
その後、全員が一緒にいる雰囲気でもなくなり、解散となる。
***
(今日は特に進展なしか…。それにしても十神クンは大和田クン達と仲良く出来ないのかな?あんまり話しているところを見たことないけど…。)
その日は終わりを告げ、苗木は一抹の不安を感じながらも眠りについた。
*****
朝を知らせる校内放送により目を覚まし、苗木は食堂へ向かう。
chapter1にて退場した生徒と朝食会をボイコットする生徒達により、いつもより食堂は広く感じられた。
そんな中、苗木は元気のない不二咲に声をかける。
「不二咲さん…、どうかしたの?」
「自己嫌悪中…なんだぁ…。」
「自己嫌悪?」
「昨日…十神君に…、怖くて何も言い返せなかった…。
大和田君に助けてもらって…、しかも〝弱い者いじめ〟なんて言われて…。
ホントにダメだよね…弱っちくてさぁ…。」
そんな不二咲に大和田は…
「女なんだから弱くて当たり前だろッ!?」
そのセリフに、ついに泣き出してしまう不二咲。
「お、おい…。泣くことねーだろ…。チッ…、わーッたよ!男の約束をしようじゃねーか!」
「男の…約束…?」
〝男の約束〟という言葉に反応を示す不二咲。
「男の約束だけは守れ…、兄貴が俺に遺した言葉だ…。」
「のこした…?」
「あぁ…兄貴はもう…いねぇ…。
んなことはいーんだよ…。
とにかく俺はもう怒鳴らねーから、オメェも泣くなって。」
「う…うん!ありがとう…大和田君…。」
取り敢えず元気になった不二咲。
だが、ハッキリと〝強くなりたい〟と言い残す。
彼女はなにか、小さな決意を秘めたようであった。
***
苗木はその日を何人かの生徒達と過ごした。
夜時間手前、苗木は小腹を満たすために食堂へと足を運ぶ。
そこには、石丸と大和田がいた。
この2人はお互い、クラスの中で一番仲が良い者同士であった。
不良と、それに付き合う幼馴染の美少女…ではなく、クラスメイトの風紀委員。
いつの間にか打ち解けていたそうだ。
しかし、そんな2人は言い争いをしていた。
「おぅ…苗木。オメェ、ちょっと立会人になれや。
こいつが俺を根性なしだとか抜かしやがるんだよ…。」
「根性が無いからすぐに暴力に頼ろうとするのだろう!?」
苗木を置いてけぼりにし、話はどんどんと進んでいく。
そして、強制的に浴場へと連れていかれてしまう。
そこで始まったのは、サウナでの我慢対決。
だが苗木は、最後まで見届けることなく夜時間を告げる放送を聞き、部屋へと帰るのであった。
(まぁ…死ぬなんてことにはならないと思うけど…。それにしても、大和田クンが言い出したにせよ…学ランを着たままじゃ流石に不公平なんじゃないかな…?)
*****
翌朝、苗木が食堂に入ると、昨日の2人が肩を組んで笑いあっていた。
「朝から気持ち悪いんだよね、2人してさ…。」
「はっはっは…、男同士の濃厚な繋がりが、女子にわかるはずもない…。」
そんな2人に勝負の結果を聞く苗木だが……
「そんな問題じゃねぇんだよッ!!」
「愚問だッ!ともに勝負をした事が大事なのだッ!!」
うるさい朝食会を終え、部屋に戻り一息ついていると…、不意にインターフォンが鳴る。
苗木がドアを開けると、腐川が部屋に入ってくる。
「ど、どうしたの?腐川さん…。」
「ちょ、ちょっと付いて来て欲しい場所が…あるの…。」
半ば強引に図書室に連れていかれる苗木。
そこにはやはり、十神がいた。
どちらが話しかけるか争っていると、十神が業を煮やし話しかける。
「おい、お前…、さっきから目障りだぞ。さっさと出ていけ。そっちの女もだ…。」
意を決して腐川が話を切り出すも、冷たく言い返す十神。
撮影外ではだいたい十神に付いて回る腐川に半ば諦めている十神だが、撮影中だけでも腐川を遠ざけたいようだ。
断固として同室を許さない十神に、2人は図書室を後にする。
「怒られちゃったね…。機嫌でも悪かったのかな…。」
しばらく沈黙していた腐川だが、嬉しそうな顔でこう言った。
「白夜さ……、」
「十神君…あんなに…あたしのこと心配してくれたッ!」
彼女は、どうやら二、三喋りかけられるだけでも幸せらしい。
そして、そのまま苗木を置いてどこかへ行ってしまった。
その後、特にすることもなく過ごした苗木が眠る準備をしていると、突然、校内放送が流れ出す。
「あー、もうじき夜時間ですが…、オマエラ!至急、体育館までお集まりくださーい!」
その校内放送に、仕方なく体育館へと移動を始める苗木。
(こんなタイミングで何なんだろう…?)
これから何が始まるのかと、結論の出ない予測をする苗木。
体育館に着くと、全員が既に集まっていた。
生徒達はこれから何が起きるのかと、軽い議論を交わす。
そこへ、いつもの如く唐突にモノクマは現れる。
「やっほーー!オマエラ、ちゃんと集まってる?」
「集まっているわ…。それより、どうして私達を呼び出したの…?」
「がっつくねぇ…、まぁいいや。
ボクはとても退屈しているんだよ…。
なかなか次のクロが現れないからさぁ!!
と、いうわけだから…うぷぷ…。
オマエラに、新しい〝動機〟を持って来たのですッ!」
前回のDVDを思い出し、顔をしかめる一同。
しかしモノクマは止まらないーーーーー
*****
ーー江ノ島視点ーー
(あたしの最終目的は苗木と白黒ハッキリさせることだけど…、あんまりアイツを狙い撃ちしても外の奴らに目を付けられるだけだし…。
少しだけアイツらの仲良しごっこに手を貸してやろうか…。
うぷぷ…、まぁそれもアイツら次第なんだけどねッ!)
こうして、chapter2の撮影は続いていく。
ーーウサミよりーー
ミナサン!こんにちはでちゅ!
chapter2が始まりまちたね!大和田くんと不二咲さんが心配でちゅ…。
今回はお仕事がないんでちゅが、chapter1の動機付けの時に大和田くんが不安定だったことは覚えておいてくだちゃいね!
それではミナサン、また会いに来てくだちゃい!