一撃男の異世界旅行記   作:鉋なんか

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今回は前回の続きなんですが短めです。

多少のオリジナル設定や原作をある程度知らないとわからない点もございます。その他にも少しキャラ設定がおかしい、戦い方が単純だ、お食事中になんてものを投げてるんだ、等々がございますがご了承ください。

誤字脱字等がございましたらご気軽にご報告お願いします。



拳をひねる

 

 

 

3人の中で一番最初に飛び出したのはクロメだった。

 

 

デスタグールがバラバラになりホリカマが壁から生えている状況にも関わらずそれらを無視してサイタマのもとへと走り出す。

 

 

「ナタラッ‼︎」

 

 

クロメは死体人形の最後の一体であり自分の護衛であるナタラを呼び出す。

 

 

地面から這いでるようにして現れたナタラはクロメと同様に一気にサイタマに向かって走り出す。

 

 

 

 

サイタマは近づいてくる足音の主を見て深いため息を吐く。

 

 

 

 

ナタラは自分の武器である青龍偃月刀(トリシュラ)を抜き放つと少し距離を置き勢いよくジャンプをして飛びあがる。

 

 

サイタマは視線をナタラに合わせるが太陽を背にとるナタラをその目で捉える事は出来なかった。

 

 

 

ナタラは勢いよく青龍偃月刀の柄を伸ばし空中からサイタマの左の肩に向かって振り下ろす。が、振り下ろされた青龍偃月刀をサイタマは左手で何の苦もなく掴む、掴んだ衝撃でナタラの青龍偃月刀にヒビが入り、もう一度でも使えば壊れてしまいそうなほど脆くなってしまった。

 

 

しかしナタラはサイタマの集中を自分に集めることに成功した。

 

 

ナタラに集中しきったサイタマはナタラの陰に隠れるようにして接近していたクロメに気づくのに一瞬遅れてしまう。

 

クロメはナタラの青龍偃月刀を掴むためガラ空きになったサイタマの胴に刀を当て斬り捨てる。

 

 

 

 

 

しかし、上から飛んできたランによってクロメは上空へと連れさらわれてしまう。

 

「グッ」

 

「なっ⁉︎」

 

 

 

 

クロメはランに文句を言おうとするが先ほど自分がいた場所にナタラが勢いよく振り下ろされる姿を見てランが自分を助けた理由を悟る。

 

 

 

「あまり一人で行動しないでください、流石に一人であれを倒すのは無理です」

 

 

ランは真剣な表情でクロメにそう言う。

 

 

 

ランはクロメを助けた時に足を地面に思い切りぶつけたらしく歯を強く食いしばり痛みを堪えているのが見てわかった。

 

 

 

地上ではボルスが向かってくるサイタマにルビカンテの炎を回避しづらい不規則な形で放射しているがいかにも素人の動きで全てが回避されジワジワとその距離を縮められていた。

 

 

 

 

ナタラはホリカマの隣で下半身だけが壁から生えていた。

 

 

 

ランはクロメを地面に降ろすと今度はボルスのもとえと行きギリギリのところでサイタマの一撃を回避する。

 

 

サイタマのただ腕をふるっただけの風圧でランとボルスの二人はクロメのところまで吹き飛ばされた。

 

 

ランはマスティマを使いギリギリまで勢いを殺し地面に足をつける。

 

ビキンビキンと感じる足の痛みを堪え、産まれたての子鹿のように足を震わせながらも立ち上がる。

 

 

「ランくん大丈夫⁉︎」

 

「ラン‼︎」

 

その様子を見てボルスとクロメが心配そうに声をかけるが

 

「私はいいですから、今は目の前の敵を倒すことに専念してください‼︎」

 

ランの吐き捨てるような強い言葉にボルスもクロメも言葉を失う。ランは痛みを堪えこの状況下で思いついた作戦を2人に告げる。

 

 

 

 

失敗は許されない、一か八かの勝負

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボルスはサイタマに向かって奥の手である『岩漿錬成(マグマドライブ)』を放つ。

 

タンクの中身を少し使い一直線に放つ技。使用後、ルビカンテの威力が下がるというデメリットもあるがランに頼まれた『一直線かつ目の引かれる技』であることには変わりはない。

 

絶対に当てる‼︎その一心で放ったそれは空中に赤い光を残しながら超高速でサイタマの元へと向かう。

 

 

サイタマは目の前に迫る灼熱の溶岩に気づくとギリギリのところでひょいと避ける。

 

 

 

そして気がつく、溶岩の後ろに隠れるようにして飛んできたランに。

 

 

 

 

 

サイタマはすぐさま拳を握り、ふるう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチィイイイン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふるった手は勢いよく跳ね返された。

 

そして

 

サイタマの体が大きく後ろに後退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスティマの奥の手である『神の羽根(かみのはね)

 

それは、ありとあらゆる攻撃を跳ね返す技である。

 

この奥の手は円盤状のパーツを分解して出力を上げ、光の翼で、敵の攻撃を跳ね返す技である。

 

 

ただささえ分解され壊れやすくなったマスティマは男の拳を跳ね返すのと同時にサイタマの拳のあまりの勢いにより粉々に砕け散った。

 

 

 

ランは返しきれなかった勢いに乗り、空の彼方へと吹き飛ばされていく。

 

 

 

「それでいい」ランは消えゆく意識の中そう呟いた

 

 

 

周囲が全て炎、圧倒的不利な状況での戦闘。圧勝

 

 

 

本来であれば帝具使いの将軍数人で討伐する 超級危険種。一撃

 

 

 

暗殺者であるクロメのフェイント。通じない

 

 

 

銃弾よりも早いボルスの火炎放射。楽々回避

 

 

 

相手の技をそのままそっくり返す反射。

あまりの強大な力故え、反射しきれず。

 

 

 

 

 

 

 

(まさか帝具が耐えきれないほどの力で殴られるとは…、)

 

そのことだけはランも思いはしなかった。

 

 

 

 

 

ランの役目はギリギリまでクロメを男の近くに運ぶこと。

 

 

 

 

先ほどのクロメとナタラが仕掛けた時とは違い、男は完璧にバランスを崩している。

 

 

 

骸人形であるナタラを操っているときと操っていない時とではクロメの刀を操る速さは比べ物にならない。

 

 

 

 

 

クロメは必殺の居合で男の首を狙う。

 

 

 

 

 

 

 

長いこと離れ離れであった姉妹が互いに抱きつくかのように、一気に男に飛びかかり その距離を更に縮める。

 

 

 

 

 

そして抜刀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パン

 

 

 

 

 

なにかが割れる音がした

 

 

 

 

 

AM 08:00 サイタマ 帝都貴族街を移動中

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都 北部 時計塔広場

 

 

 

『帝都の中の公園でもっとも広い公園は?』

そう聞かれたら誰もがこの時計塔広場のことを指すだろう。もし違う答えが帰ってきたらそいつは田舎者か帝都のことをまったくもって知らない馬鹿である。

そう言われてもおかしくないほどこの時計塔広場は広い。

 

しかし今現在この時計塔広場はとある4人により貸切状態となっていた。

 

 

 

 

 

「てめぇが俺の親父の顔面を腫れあがらせた犯人なんだってな」

 

 

顔に大きなばつ印がついた褐色の肌の青年はドスをきかせた声でサイタマに話しかける。青年は、かなりイラついているようで首の骨や指の骨をパキパキならし威圧的な態度をとる。

 

 

話しかけられた方のサイタマもいちいち殴った人間のことなど覚えておらず、顎に手を当て首を少し傾け思い出そうとする。まったくもって思い出せないが。

(うーん?誰のこと言ってるかわかんねー)

 

 

 

 

 

 

顔にばつ印のついた褐色の肌の青年、シュラはここ数週間の恥辱にまみれた日々を思い出す。

 

 

 

 

久々に帰ってきた帝都、父親に立派に成長した自分の姿を見せたいという思いと玩具(オモチャ)で遊びたいという子供の様な欲求を持っていた。

 

 

宮殿に着くまで少し時間がかかると思った彼は早くオモチャで遊びたいという欲求を押さえつけていたが、彼がいた頃の帝都には無かった街の人々の明るい笑顔や笑い声を聞き急激に人の泣き叫ぶ姿や自分に媚び諂う姿が見たくなった。見たくなってしまった。

 

 

 

普段から抱きたい女を抱き、ムカつく奴を殴り、美味い酒を呑み、美味い食事をとってきた。高慢で自分に絶対の自信を持ち他者を見下すシュラが当然我慢などできるはずもなく、スラム街で少々おいたがすぎてしまった。

 

 

 

それが彼の過ちだった

 

 

 

るんるん気分で事を終えた彼を待っていたのは目が使えないであろう髭面で坊主の杖をついて歩いているおっさんと帝都宮殿内にいるはずの近衛兵数十人であった。

 

 

近衛兵に周囲を囲まれて逃げられない状況になり彼はすぐさま自分が誰であるかを言おうとしたが、急に体が重くなりその場に倒れ伏し目が覚めた時にはすし詰め状態の牢獄の中にいた。

 

 

 

牢獄の中は最悪だった。

 

 

 

薄暗く汚れていて石の床は冷たく少し湿っていて、アンモニアと排泄部、吐瀉物や血が壁の至る所にぶちまけられていた。それでいてあまり広くない牢獄に10人以上の人間と同室にされ、服はボロボロで薄汚れた麻の布でできたものに着替えさせられていた。

 

 

牢獄の中のトイレからはネズミの鳴き声が聞こえハエやゴキブリが常にいた。同室の人間は膝を抱えぶつぶつと何かを小声で呟き涎を垂らしていてこちらから何を話しても一切聞こうとしない、かと言って向こうから話しかけられた時に無視すると自分の糞尿を投げてくるためシュラは無視することができなかった。

 

 

唯一の楽しみは食事の時でそのときだけは同室の人間は静かになる、と言っても食事はシュラが食べてきたどんな料理よりもまずく重湯に泥水を入れた様なものでシュラは一口食べた瞬間に食べない方がマシだと思うほどだった。しかし3日後、流石に限界を迎えたシュラは苛立ちを抑えながら薄汚れた皿に入った少量のそれをすすった。

 

 

その数日後、大臣との面会が叶い全ての事情を知ったシュラは自分にこんな屈辱を味合わせ尚且つ父親に呆れられる原因を作った男をぶち殺す事を決意した。

 

 

 

 

 

 

決意されたとうの本人はというと

 

 

(上半身裸ってことは変質者だよな?)

 

 

目の前のほぼ上半身裸の男を変質者と決めつけていた。

 

 

 

 

 

 





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