異世界に転生したはいいけど原作キャラの兄とか聞いてないです   作:シャイニングピッグEX

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今回は型月要素が大きいので、原作とはそう関わりません。学校生活については序盤はカットです。アリアの学年の一つ上なので、どうしても少なくなる上、作中で理由を説明します。

戦闘描写の練習でもあります。


第一話 七夜として

さて、七夜志貴さん、つまりは父上。

私、七夜志葵は今戦場にいます。

任務は、武偵高に薦められるような仕事ではなく、スコア900クラスのものであります。

異能頼りの、体術を修めるのがやっとといった駄目息子ですが、七夜一族の皆さま方に胸を張れるような活躍を出来ていたら幸いです━━

と、いう前置きはここまでにして。

スコア900クラスの仕事というのは、簡単ではない。

常に命の危険が付きまとうものであり、前衛で極限を求める殺人鬼が任務を受けているならば、尚更酷いものとなる。ミスをすれば即死、いやミスをせずとも何らかの犠牲が起きておかしくない---そういった難易度である。

昔、知り合いに言われたこともある。

「お前は少し生き急ぎ過ぎではないか」と。

確かに、そうだ。だが、自分は「退魔」の七夜一族だ。

さらにその最後の一人であるならば、責任感が強くなるのも当然のことであると言える。

自分は、少し異常なところがあると自覚している。

だが、日常(人間)非日常(化け物)の境となるものが多くはない以上、それを間引く者が誰であれ必要であるのも事実。

そして自分が「死」という概念を求め続けている殺人鬼であるならば、それはきっと異常なのだろう。

今回の相手は━━吸血鬼。

(さて、どう動くか━━)

態々公園の端まで誘導したのだから、ここで仕留めたいところである。

今は、昼。普通なら外に出させた時点で勝ちであるのだが・・・

(━━相手は上位クラスの吸血鬼。ただそれだけで勝てるとは思えないな。)

武偵高の学生服を着たまま各地を旅すること数多く。

今回の旅先は、京都。

困ったことに、自分には放浪癖もあるようなのだ。

任務を受け、その場所へ行き、為すべきことを為したならば、「次」を求める。

自分は、それが性に合っている。それを自覚し、8年ほど、だろうか。契約も、切って結んで、を繰り返している。

ちなみに、今がなぜ昼なのか、学校はどうしたのかと、問われたならば。

武偵高は、極端な話、単位さえ間に合っていれば(普通の授業は半ば通信制であったとても)何ら問題はない。教師も説得済みであるため、今更という話だ。

(しかし、今は目の前のことに集中しなきゃあな━━障害物は後ろのトイレの建物にそのさらに後ろの柵だけか?いやここは公園だった。周りの木を失念したらいけないな)

『相棒、相手はどうだ?』

視たところ、身体能力は恐らくそこまで高くない。驚異的なものは感じず、あまりに希薄だ━━

(つまり、隠密系統だろうな、こうやってるのもまずいかもしれない。ここまで来たんだから、やることは決まっている。交代だ、七夜)

観察は神崎、攻撃は七夜。いつだってそうしてきた。今回は直観の入り込んだ行動であったが、ナイスタイミングだったろうか。

「━━承った。吸血鬼、その命を確実に貰い受けよう」

入れ換わったその刹那、正面から襲撃を受ける。

見た目自体は、人間と変わるところは見受けられない。顔色こそ白いが、女性体であるためか誤差程度である。それを吸血鬼だと見分けられたのは、(いずれ説明するだろうが)相棒の、神崎の活躍が大きい。

それはそうだ。自らの後ろに障害物がある以上、俺の目の前にくるに決まっている。

降り下ろされた右手の五本の鉤爪による攻撃を、ナイフで弾く。

本当ならば押し返すくらいはしたかったところだが、さすがに吸血鬼。破壊力で挑むのは間違っている。

しかし、五本全て完全に避けるには至らず。七夜の頬を二本の爪が紙でも裂くように傷つける。そこに調子づいたのか、相手はすぐさま左手で追撃を放とうとする。が、それは悪手だ。振りかぶった隙に蹴りを当てて距離を開けると、左手のナイフを構え直す。

「━━捉えた、死ね」

興奮こそしていたが、冷徹に声を響かせる。

 

その時、七夜の眼は確かに視た(・ ・)

線を、なぞる。少しずつ、少しずつ、総てを、確かに。

そして、その動作が終わると、吸血鬼はただの肉片と成り果てていた。

暫くはナイフを構えたままだったが、何も起こる様子が無かったので、神崎に交代する。

「さて、後は証拠を送って完了、と・・・」

『今日は三人。少しずつではあるけど、近づいてる━━よな?相棒。』

「そう不安になるなよ、七夜」

しかし、一つ危惧していることがあった。上位の吸血鬼一人(?)を相手にするのも、能力を使ってやっと。ならば、自分の母親がいるかもしれないあの吸血鬼グループにいるモノ(・ ・)達を、いつであってもいいが、倒すことは叶うのだろうか?まあ、そう易々と最上位に会うはずはないのだが。

『で、なんで態々京都まで?気分か?』

七夜の声で思考の世界から引き戻される。思うと、それもあるけれど、さすがにそれだけで中途半端な移動をすることはないな。では、少し勇気がいるけど・・・やるか!

「おい、やっこさーん、ここにいるんだろ?」

公園の中で(あまり人がいなかったのが幸いではあるが)叫ぶ。

そして現れたのは━━

「・・・・・・・・・・・・・・・師匠の計らいか?これは。なんでお前がここにいるんだ、遠山金一(・ ・ ・ ・)

「お前が入りたいと言ったんだろう。しかし、まだ12時だ。待ち合わせより三時間も早いぞ」

面子が予想外なんだよ。それにいるお前もお前だろう、とつい呟いてしまう。

「折角だ、飯でも食わないか、弟弟子。いや、妹弟子か?」

その言葉を聞き、戦闘中のカナの時の自分を思い出したのか、金一は体を震わせる。

「━━何だと、中二病。後、弟弟子はお前だろう、志葵」

「それは仕方無いだろう、俺の一族は閉鎖的だったんだ。それに由緒正しい所なんだから、古風な物言いになっても、不可抗力だ」

任務以外では珍しく出てきたと思ったら言いたいことはそれかよ、七夜。

そう、俺達は兄弟弟子。あるいは兄妹弟子、姉弟弟子。それについては次に説明させて貰おう。だが、最後に目的だけ言うならば。

「俺を確かに、イ・ウーに入れて(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)くれるんだよな?金一」

 

「師匠が手を打ったのならば、仕方ない。歓迎するよ」

七夜は兎も角、俺としては面倒なんだがな。アリアにも秘密が増えてしまったし。心の中で、溜め息をついた。




金一くんとは関わりがあり、敵サイド系の主人公。
能力の伏線等多めではありますけれど、型月詳しい人ならすぐに分かりますよね。
戦闘の表現とか苦手なので、何かおかしいところがあったり、感想・質問等あれば教えて下さると嬉しいです。

え、上位吸血鬼って書いてあるのに雑魚同然なのはおかしい?安心してくれ、その上の強さはおかしいぞ。

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