異世界に転生したはいいけど原作キャラの兄とか聞いてないです   作:シャイニングピッグEX

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かなり長い期間で分けて書いたためかすごい違和感があります。奇術師志葵とか明確にキャラ立てたのこれ初でしょうし。


第六話 俺なりのテスト

その時、キンジは登校中だった。どうせあのクソ先輩のチームに参加するんだろうなぁ・・・とか思いながら。

でもこれ以上授業をサボりたくはないなぁ・・・とも思いながら。

そしてとなりのクソ先輩の妹のバカパートナーを誰かどかしてくれないかなぁ・・・と思いながら。

今は朝の6時。まだまだ早い。一人で行こうとしたからだが何故かアリアがついてきたため、結局は無駄な努力であったが。

自分(というより実質アリアの)部屋から出てしばらくすると、例の如く理子が突っ込んできた。━━━━━妙に様子がおかしいがそんなことを言ったらいつもおかしいので無視していたが、後に後悔することになる。

「ふふふ・・・今日も朝からお熱いですねえお二人様」

「だれが熱くなるもんですかこのドレイと。むしろ今のあたしは氷点下よ」

「辛辣なアリアたんも・・・イイね!」

「たんはやめなさいたんはァ!」

そういって銃を乱射しようとするアリアを止めるのも俺の仕事。慣れた。悲しいことに。将来は中間管理職かな・・・俺・・・

しかし何故か今日はやけにアリアと理子が睨み合ってるな。どうしてだろうか?

・・・アリアは感情の起伏が激しいし、理子は理子だから気にするだけ無駄な努力か。

しばらくは(こちらにしてみれば心外だが)他愛のないトークが進んだが、理子からの一言でそれすら吹き飛ぶことになる。

 

「ねえキーくん!少し相談があるんだけど・・・ヌフフ、恋の相談が━━━いや冗談だけど。まあ何はともあれ○○教室に来てよ!」

普段から真面目ギリギリの授業しかやらないこの学校(笑)において特別教室など無いも同然。仕方なしとアリアに別れをつげて━━━ただし本人は「後で言わないと風穴!」とのことだったが━━━誰にも聞かれずの密会をすることに成功した。

理子は教卓の上に跳んで座り、キンジはそれを立って聞く。

 

「・・・で、何のようだよ。理子?」

こいつの考えることはいつもながらよくはわからない。ならいつも通り初めから聞いてしまおう。

 

「いや、このままじゃキーくん死んじゃうよ?って思って☆」

縁起でもないことをよくもまあこんな軽く言えるものだ。知り合いに対して、いや知り合いだからか?

「また電波でも受信したか?いい病院を紹介しようか」

「そういうのはどうでもいい!とにかく、このままじゃキーくん死んじゃうよ?例えば、さ」

その時、理子が何の脈絡もなく近づいてきた。それこそ、キスでもするのではないかと思うほどに。自分ですらそう思ったのだから、とにかくこれ以上ない至近距離だったのだ。

「こんな風にね!」

普段なら、動揺を隠せなかっただろう。ヒステリアモードなどという一種の爆弾を持つ自分はそういったことに興奮と同時に「ヤバイ」という冷えた危機感が必ずよぎる。しかし今はそれがなかった?━━━なぜだろう。しかしその疑問を払拭する前に、足に衝撃を受ける。

(いっつ・・・!足を蹴られた!?理子に、なんでだ?)

どうにか声を漏らさず静かに左手で内ポケットの拳銃を・・・・抜かなかった。敢えて安全装置を解除しただけでバタフライナイフのグリップで殴打する。

理子の方を見ると、腕を組んでこちらを涼しい顔で見ているのみだった。元々教卓に座っていたが、今は黒板を背に、(正確には少し離れていたが)立っていた。

(誘っているのか!?いやだが、待ってると不利なのはこちらだ、既に『仕掛けられた』以上は・・・リズムが乱れてしまっている!)

「んんー、悩んでる?いいね若人、って年齢は関係ないか・・・まあそんなことはどうでもいっか。今回は様子を見にきただけだし。で、ここからどう崩すのかな?キーくん?」

正直な話、何がなんだか訳がわからなかった。朝早いからいまいち頭が回っていないというのもあるだろう。

(くそ、ヒステリアモードの俺だったら、こんな時・・・!)

無意識の内に普段は嫌悪しているものに頼らねばならないほど、今の自分は不甲斐ない。そして分かったことは、アリアのいう『ダメな方のキンジ』に頭脳面は期待できない。朝から何の変化も感じ取れていない今は、仮説すら立てられそうもない。つまりは、だ。

理子の意図はさっぱり分からないが、そんなことは関係ない!これくらいは正当防衛だ!多分!

 

もう一度、このバタフライナイフのグリップで、思いっきり━━━(よくよく考えるとグリップで殴る時点で手加減なのだけど)

(ぶんなg・・・って痛っ!?」

理子の腹の辺りを狙ったのだが、数センチ前で何か鋭いものにぶつかり、正確には切られかかった。その痛みにさすがに今度は我慢できず小さいながらも声を出してしまう。

(まずいまずい、暴行なんてばれたらマスターズに干される!主に俺が、正当防衛を無視されて!)

刺したり拳で殴ったりといった直線的な動きとは少しぶれていため、謎障害はクリーンヒットせず戦闘は続行可能だろうが、もしそうでなければ何もわからず敗北するところだった。

とにかく、近接攻撃は駄目だ。そして、先ほど理子の左手が動いた。ならばあちらからみての右を、こちらからみて左を狙うべきだ。だが、拳銃は使えない。おそらく、まだ、バレていない。安全装置が外れ、弾もどさくさに紛れて込めてある。後はトリガーを引くだけだ。ここまできたならば、あえて(・ ・ ・)耐える!

自分達の使う制服は防弾制服だ。銃弾は打撃にしかからない。だが狙えば。そう、狙いさえすれば最高の打撃だ。元来人間の最高の武器は打撃なのだから、それが決まればまだ希望はある。

そこまで思案したところで静寂を破るように問いを投げ掛けられる。

「もしかして、この現状が何も把握できてない?キーくん?」

「・・・何の・・・ことだかわからないな」

耳の痛い言葉だが、それにあっさり頷くメリットがこちらにあるかと言われれば微妙だ。どうすればよいか判断に困ったがとりあえず濁して答える。

「把握できてないと仮定して進めさせてもらうけど。うーん、アドバイスとしては・・・こういった奇術(・ ・)を破るにはいつだって逆転の発想だよ。そうだねぇ、一つ!君が把握できてない『現状』の一つだけでも分かったのならここは退いてあげちゃう!それができないならネクラキンジくんはここ眠ることになるけど」

逆転の発想。だが、そういわれてもこちとら想像力に乏しいネクラ扱いキンジくんだ。判断材料が少なすぎてどうしようもない。

だが、やはり何か引っ掛かるところがあるのは確かだ。

(・・・・駄目だ、やっぱ考えても仕方ない!)

キンジは理子に向けて飛び込み、左足で跳び蹴りを放つ。

しかしそんな見え見えの動きに引っ掛かるような理子ではない。相も変わらず構えはとらないがそれでも後ろに下がる。

避けられるのは想定内だ。途中でわざと体勢を崩し転ぶ。これは無駄な行動ではなく、理子に近づくためにした行動だ。体は痛いが、そんなことは無視。

理子は先ほど教卓の横にいて、そのあと後ろに下がった。つまり今は黒板と理子との間にほんの少しの隙間があるのみで、後退は不可能。余裕からそうしたのかもしれないが、今のキンジはそれが唯一のチャンスではないかと思っていた。

(これ以上下がることは壁に穴でも開けない限りできない。だからこそその隙を全力で突かないと)

今はちょうど理子の左側。右半身ならあの防御の死角ではないか、と祈りをこめてもう一度、

今度はナイフで右腕を最大限伸ばし、理子に斬りかかるッ!

理子にしてみれば、「転んで近づいてくる」というのは予想外だったのだろうか、それとも無理のある姿勢で斬りかかってきた自分に対しての余裕だろうか、しばらく固まっていた。

 

「っ!・・・やるじゃないキンジくん」

ここで、理子の右手が動き、またもや何かに攻撃は遮られる。

 

キンジ自身もよく理解していたのだが、この攻撃方法には大きな穴がある。

まず、先程は自分は理子の腹をナイフで殴ろうとした。腹というのは当然だが人間の体の(横の)中心部分だ。

そこを殴るとなると、防ぐのは「左手」でも「右手」でも可能なのではないか?という仮説がたてられてしまう。

それを信じたくはなかった。

だが、結果としては理子の右手の指は動き━━━やはり、防がれた。現実とは非情なものである。

(マジで痛い・・・これからあいつが受ける痛みに比べれば全然だけどな)

それでいい、とキンジは思った。自分には最後の切り札である拳銃が、いつもの頼れるベレッタがある。先程安全装置は外してあるため、後はトリガーを引くだけだ。

(これで・・・決まりだ!)

「ねえ、キーくん。ここは教室だよ?銃の安全装置を外すには悪いと思わない?」

「━━━え?」

完全に相手が気づいていないと思われた、致命の一撃。勝利を確信するのも仕方のないことだ。

無論、それはキンジ自身が「気づかれていない」とおもったからの話である。

(な、に・・・ッ!?)

なんと理子は素手で銃弾を弾き返したのである。

(いやいやおかしいだろ!それだけの筋力があるとしても銃弾を手で弾くって完全に位置を把握しててかつ角度とかも詳細に理解しなきゃ、いつのまに人間やめやがった!?)

「思ったよりは健闘したけど、ここでラストチャンスかな、キーくん?勝負といこうか( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)!」

(・・・考えろ、考えるんだキンジ!相手が現状を推理すれば助けてくれるだなんて提案をしたんだぞ!それを活かさずしてどうする!?)

途中で、理子は俺に対する呼び方を崩した。その理由が何となく気になった。

疲れで、素になったとかだろうか。

いや、ありえない。あいつの素とかどうでもいいとこで出しといてここぞというときには絶対出てこない。この線はないだろう。

とすると、この呼び方がなれていなかったとか。

だがそれもおかしい。慣れていないとか、理子は話をめちゃくちゃにしてくるし人を何度も呼ぶタイプの人間だ。ならば理子が偽物だとか妙なことを考えなければいけない。

・・・理子が偽物?何だか酷い片寄った思考だがなんだかいけそうな気がしてきたぞ。今までの違和感が消えるし。

先程の『勝負といこうか』という口癖を、どこかで聞いた気がする。いや、聞いた、というよりも見た。誰かの報告書に書いてあったはずだ。誰の、というのは少し目を開けるだけで思い出した。

理子から少し前に受け取った情報。そういえば、つい最近銃について何者かから律せられた気がする。そして、『奇術』を破るにはいつだって逆転の発想という言葉。

さらに、自分のことを若人と呼んだ。これは普通世代が違う相手にしか使わないだろう・・・と、いう希望的観測である。

(武偵にあるまじきテキトー回答だが・・・ま、白紙提出よりずっとマシか)

「お前は理子じゃない!」

「・・・・ほえ?」

普段の理子なら絶対出さない可愛らしい声が漏れたようだ。・・・・この反応はどっちだ!?当たりか外れか、しかしテキトー理論であれど一度展開してしまった以上続けるしかない。

「あ、えーとそうだ、あんたの名前は神崎志葵!」

言い淀んだのは後悔だ。最後までペースを握らせてもらえなかったな。

「うわ、なにそれ。引くわー。私理子チャンデスヨ」

あれ、ミスったか?という動揺と緊張が解けたことによる疲労が押し寄せ頭のなかが瞬間真っ白になる。

「もちろん嘘だッ!ここにいるのはなんとびっくり大正解・奇術師の神崎でーす!」

理子の姿はどこにいったのか、次に視界に入ったのは冴えない男センパイ一人である。なぜかメガネをかけていたが。

「念をおしておくが、あんたが何をしたかったのか。ほら、今からキリキリ吐いてもらうぞ!!」

ここで鬼のごとき形相で怒りをぶつけた俺遠山キンジはきっと悪くない。私怨入ってるけど。

 

「おお、怖い怖い。では前後の顛末から語るとしましょうかね」

━to be continued!





いつもの通り、意見・感想・誤字報告等ありましたらよろしくお願いします。

そしてあけおめです(今更)

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