やはり俺とこのダンジョンは間違っている 作:ばーたるゃん
「うわぁ...」
ヘスティア・ファミリアがアポロン・ファミリアを壊滅させて久しい...というほどに時間がたったわけでもなく、崩壊した元ホーム。教会を見る。
「......」
ベルはアレ以降ここに来るヒマもなく、ヘスティアさんは時間稼ぎと来た。どうやら、ここに居たわけではないらしいことは分かる。
荷物という荷物があるわけではないが、やはり、考え深い。
異世界転生だ。そもそもどういう原理かよくわからない上に転生じゃなくて転移だろという声は多い。実際に転生した例もあるが、そのどれもがチート能力か追放だ。追放というと俺にぴったりだからそっちに送ってほしかった。もともとボッチだから、結果としてチート能力がもらえるだけだ。
そも、チート能力ならもらっているに等しい。いやまぁ普通の人間からすればどんなものでも、例えば、ステイタス、アビリティもすさまじい能力だ。以前、自分の身長から割り出して、50mを測って走ってみた。まさに一瞬と言ってもいいだろう、距離は距離とも感じない。息切れもしない。一息のうちに駆け抜けられる距離になったのだ、小中高と無駄に走らされた50mが。
嫌な思い出--ですらない。周りが何秒だった? 俺7秒だったぜとか言ってても俺は関係なかった、親すらも聞いてくれなかった。
「お」
わざわざ廃墟になったところに来た理由は、荷物の回収を命じられていたから。地上の瓦礫を退けると、地下への階段が。埋まってはなかったようだ。埋まっていた場合掘り起こす必要があったと考えると背筋が凍る。
アポロン・ファミリアにつぶされて以来、手付かずだった。魔法の痕跡も残っている。
「......」
痕跡というと、右腕だ。再生して以降は問題ないが、つまり、つまり、だ。初期の状態で腕が治るのだったら、レベルが上がれば...いや、魔力のアビリティが上がれば、どうなる?
攻撃魔法は威力が上がり、回復魔法は回復量が増すという。
「......」
毎日30秒限りの発動。それで上昇するステイタスなどたかが知れている。魔法の発現が、魔導書以外条件がわからないことを考えると、新しい魔法も難しそうだ。どうせならチート能力みたいなの欲しいよね、アメコミみたいな。
そんなことをテキトーに考えながら、目当てのものを見つける。
「服と...本、金...食器。」
貧しかったということもあり、ボロともいえるがやはり、思い出が詰まっているとかそういう奴だろう。
「こんなもんか。」
集めきったので、ベッドにあおむけで倒れこむ。上のガレキに手間取ったとでも言おう。館の改築には時間がかかる。
そう、つい先日のこと、館があまりにも悪趣味ということ、金をむしり取ったということ、それら二つが重なって改築が決定したのだ。
「よくよくかんがえるとひでぇ...」
家を追い出してそこに住む。いや、そもそも今の人数だけで住むとは限らない...?
そうだ、ヘスティア・ファミリアはかなり人気を集めた。アポロン・ファミリアにも改宗を考える者が居るだろう。ベルの活躍は甚だしいものだった。中継されていたこともある。どれだけの人が増えるだろうか。増えたら居づらいなぁと思う反面、増えると喜ぶベルの姿も想像がつく。屈託のない笑みというのが、つくづく嫌になる。
大切に思う? それはそうだろう、自分の命の恩人で、なにより戸塚に若干似ていなくもない。いや、似てない...? たぶん似てない。けどまぁ良い奴なんだろうな、とはわかる。14歳、中学生だ。別に嫌う理由がなく、なついてくれるというのならば、それでいい。裏があるようには思えない。 ...いや、御託を並べているが...結局は、よりどころが必要だ。
理由なのだろう。意味も分からない世界で最初に見つけた寄りかかるもの。 ベルを助ける。これが崩れれば、何が目的と言えようか。
目的を達成するには手段が必要だ。その手段は? この世界ではステイタス、アビリティと言われるソレ。
さて真剣な話となると飄々と躱していきたい。この手段がなくとも俺にできることは? ...ないなりにできることは。
傍にいることなんて考えるだけで産毛が逆立つようなことは選択肢の中にもない。
「......はぁ。」
考えをこねくり回してもおそらく何も出ない。ひらめくまで待つのが一番、果報は寝て待てともいう。
「......」
文字通り寝て待とう、多少のサボりは許されるだろう。ここ最近は忙しかったのだから――――
設定忘れました。書き直しを考えています。